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おぢばにおかえり

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第三十話 春季大祭その二

「何でそうなるのよ。私が悪女って」
「そこまでは言わないけれどね」
「けれど年下よね、その子」
「一年よ」
 この言葉にはまた普通に答えることができました。どうにも普通に答えることさえ難しくなってきました。こうした話の中心に置かれるとどうも。
「一年生なのよ」
「うわっ、やっぱり年下相手に」
「先輩としてってやつなのね」
「変な意味じゃないわよ」
 大体男の子と付き合ったことのない私が何でなんでしょうか。
「言っておくけれどね」
「潔白だってこと?」
「そうよ。キスもしていないし」
「いや、誰もそれはね」
「聞いてないし」
 言ったらまた突っ込まれしました。
「そういうことは聞いてないわよ」
「大体ちっちがキスなんてねえ」
「ねえ」
 顔を見合わせて私に言うのでした。
「そんなのしないってわかってるし」
「奥手だから」
「当たり前よ。そういうことはね」
 キスなんて、って思う人もいますけれど私はどうも。キス一つでも大切な人としたいって思っています。それは真面目過ぎるんでしょうか。
「やっぱり。大切な人としないと」
「ちっちらしいけれどね」
「それでもその一年の子とデートしたんでしょ?」
「勝手について来たのよ」
 それが真相なんですけれど。どうも皆それを理解しているのかしていないのか。全然わかってくれません。どうしてでしょうか。
「勝手にね。帰り道ずっと」
「ずっとなの」
「詰所に行って憩の家に行ってそれからお墓地に行って」
 昨日のことなのでよく覚えています。
「それから参拝して寮に帰ったのだけれど」
「その間ずっと一緒だったのよね」
「ええ」
 事実なのでそれは認めて頷きます。
「そうよ」
「やっぱりデートしたんじゃない」
「ねえ」
 やっぱりこんなことを言います。全然わかっていません。
「その子と」
「ちっちにとってははじめてのデートだったわけね」
「何でそうなるのよ」
 皆あくまでデートと言い張るので私もうんざりしてきました。
「デートデートって。そんなことあるわけないのに」
「誰も悪いなんて言ってないじゃない」
「そうじゃないの?」
「それは」
 言われて気付きましたけれどそれはその通りです。阿波野君とのことは誰も悪いとは言っていません。それは確かですけれど。
「そうだけれど」
「でしょ?じゃあちっちも」
「覚悟を決めなさい」
「うう・・・・・・」
 私が言葉を詰まらせてしまうと。またあの能天気な声が。
「あっ、先輩」
「こんな時に」
 思わず舌打ちしそうになりました。そういうのは嫌いなんですけれど危ないところでした。
「何よ」
「ちょっと偶然通り過ぎただけなんですけれど」
 阿波野君はいつもの無闇に明るい声で私に言ってきました。 
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