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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第44話

その後士官学院の裏門、旧校舎へと迂回するカレイジャスとB班、そしてC班を見送ったリィン達A班はトリスタへと足を踏み入れた。



~トリスタ~



「ふうっ、なんとか無事にトリスタに入り込めたね。」

「ええ、なんだか静まり返っていますが……――――え。」

トワの言葉に頷いたリィンは町の中に倒れている兵士達の死体に気付いて呆け

「貴族連合軍の兵士達……!」

「……ッ……!もしかして全員、既に……?」

兵士達の死体に気付いたラウラは目を見開き、エリスは息を呑んだ後表情を青褪めさせて死体を見つめた。

「……ええ。全員殺されているわ。」

「ん。死体の状態から考えるとわたし達が来る少し前くらいに殺されたみたいだね。」

「い、一体誰がわたし達より先にトリスタに入って貴族連合軍の兵士達を殺したんだろう……?」

兵士達の死体を調べたサラ教官とフィーはそれぞれ重々しい様子を纏って答え、トワは不安そうな表情をしていた。



「……誰が俺達より先に兵士達を殺したのか気にはなるが、今は士官学院の奪還が先だ。」

「うんっ……みんな、もうひとふんばりだよ!このまま一気に――――」

「フン、お前らだったか。」

リィン達が決意を固めていると交換屋の店主――――ミヒュトがリィン達に近づいてきた。



「ミヒュトさん……!」

「無事だったんですね……!?」

「ああ、お前達もついに帰ってこれたみたいだな。ただできればもう少し早く帰ってくるべきだったかもしれねぇな……」

「え……それはどういう事ですか!?」

重々しい様子を纏って呟いたミヒュトの言葉を聞いたリィンは血相を変えて尋ねた。



「一昨日の昼くらいか。士官学院の貴族生徒の何人かが貴族連合軍にどこかに連れ去られる所を見た。」

「そ、そんな………!?」

「遅かったか……!」

「……ッ……!俺達がもっと早く来ていれば……!」

「兄様……」

ミヒュトの口から語られた凶報にトワは表情を青褪めさせ、ラウラは厳しい表情をし、拳を握りしめて身体を震わせているリィンをエリスは辛そうな表情で見つめていた。



「ミヒュトさん、誰が連れ去られたかわかりますか!?」

「ああ。”ブルーメ伯爵家”の令嬢と”マッハ子爵家”の子息、それと”ハイアームズ侯爵家”の三男とその執事だ。」

「という事はエーデルちゃんとランベルト君、それとパトリック君とセレスタンさんが貴族連合軍に……」

「部長…………」

「どうして執事の方まで連れて行かれたのでしょう……?」

血相を変えたサラ教官の問いかけに答えたミヒュトの話を聞いたトワは辛そうな表情をし、フィーは心配そうな表情をし、エリスは戸惑いの表情で呟いた。



「……恐らくパトリックが連れ去られるのを知って、パトリックの為にも自分を連れて行くように申し出たのかもしれないな……―――ミヒュトさん、ちなみにトリスタにいる兵士達を殺したのは誰かわかりますか?」

エリスの疑問に答えたリィンは真剣な表情でミヒュトを見つめて尋ねた。

「ああ。トヴァルの情報にあった連中――――”結社”の”鉄機隊”の連中の仕業だ。」

「え…………」

「”鉄機隊”だと!?」

「ハアッ!?確か連中はメンフィルに降ったはずでしょう!?」

「サンドロッド卿は彼女達のこの行動についてご存知なのでしょうか……?」

「サンドロッド卿からそんな話は聞いていないけど……もしかして彼女達の独断なのかな……?」

「……それで”鉄機隊”はその後どこに行ったの?」

予想外の存在が現れ、貴族連合軍の兵士達を殺した事にリィン達がそれぞれ驚いたり、信じられない思いでいる中フィーは真剣な表情で尋ねた。



「学院の方に向かって行った。奴等が何を考えているのかわからねぇが……油断するなよ。」

「はい!みんな、万全の態勢で士官学院に突入するぞ!」

「おおっ!!」

その後準備を整え、仲間達に”鉄機隊”の存在を通信で知らせたリィン達は士官学院の前で立ち止まってトールズ士官学院を見つめた。



「トールズ士官学院……俺達Ⅶ組も、ここから始まったんだよな。」

トールズ士官学院を見上げたリィン達はそれぞれ士官学院での思い出を振り返った。

「オズボーン宰相が狙撃され、帝都が占領されたあの日から2ヶ月って所ね。」

「まだ2ヶ月しかたっていないのだな……」

「……何だかずいぶんと遠いところまで来た気がするね。」

サラ教官やラウラ、フィーはそれぞれ士官学院を見上げて物思いにふけった。



「士官学院を―――俺達Ⅶ組の始まりの場所を。何としても、俺達の手で掴みとってみせるぞ!」

「行こうっ、みんな!」

「はいっ!!」

リィンとトワの号令に答えたA班の面々はトールズ士官学院に突入した!



~トールズ士官学院~



「待っていましたわよ――――”有角の若獅子達”。」

「あ……!」

士官学院に突入したリィン達は正面門の前で立ち塞がっているデュバリィに気付いた。



「”鉄機隊”の”神速のデュバリィ”……!」

「……どうやら士官学院にいた兵士達もそっちが殲滅したみたいだね。」

デュバリィを見たラウラは目を見開き、フィーは一か所に固められてある兵士達の死体に視線を向けた後デュバリィに視線を向けた。

「ええ。それと”旧校舎”と”裏門”の方も対策をとらせていただきました。」

「あ……!」

デュバリィの言葉にトワが驚いていたその頃、アンゼリカ達B班、アリサ達C班もそれぞれ裏門と旧校舎への潜入を成功させていた。



「よし……なんとか潜入できたか。」

「ニシシ、裏門は予想通り警戒が薄いみたいだねー。」

「リィン達の方は大丈夫かな……リィン達の話によるとレグラムの時に現れた”鉄機隊”が現れたらしいし。」

「ひょっとしたら既に戦闘を開始しているかもしれないな……」

「……しかしわからんな。結社が崩壊した事で戦う理由がなくなり、更に奴等の主が俺達の”協力者”であるのに、何故奴等は俺達と敵対するような真似をしているのだ?」

裏門への潜入を果たしたアンゼリカは安堵の表情をし、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、エリオットとマキアスは不安そうな表情をし、ユーシスは真剣な表情で考え込んでいた。



「フフ、我々にも色々と複雑な事情があるのさ。」

裏門への潜入を果たした事に安堵していたアンゼリカ達だったが自分達に近づいてきた甲冑の女騎士―――アイネスを見ると顔色を変えた。

「……”神速のデュバリィ”と類似している鎧を確認。恐らく”鉄機隊”に所属している者です。」

「フン、そんな事言われなくてもみればわかる。」

アルティナの指摘にユーシスは鼻を鳴らして呟きながらもアイネスを警戒し

「初めましてになるな。我が名はアイネス。”鉄機隊”が隊士の一人にして、”剛毅”の名を冠する者だ。」

アイネスは興味ありげな様子でアンゼリカ達を見回して自己紹介をした。

「で、出た……!」

「君達の主のやり……じゃなくて”鋼の聖女”は僕達の協力者なのに、何で僕達の邪魔をするんだ!?」

エリオットは表情を引き攣らせ、マキアスは信じられない表情でアイネスを見つめて指摘した。

「それは――――」

アイネスが事情を説明し始める少し前、アンゼリカ達同様アリサ達も旧校舎に到着していた。



「何とか潜入できたわね……」

「ああ。街道の戦いに戦力をつぎ込んでいるおかげで、ここまで戦闘せずに潜入する事ができたな。」

「ですが、校舎内では兵士達との戦いは避けられないのでしょうね……」

旧校舎への潜入を果たしたアリサとガイウスは安堵の表情をし、セレーネは辛そうな表情をした。

「……皆さんにとって貴族連合軍の兵士達は大した障害にはならないでしょうが、レグラムで皆さんが戦った相手ですと相当な障害になるでしょうね……」

「それは……」

「――――”鉄機隊”ね。にしても連中は何を考えているのかしら?連中はメンフィルに降った上連中の主の”鋼の聖女”はこっちの味方をしているのに……」

そしてメサイアの言葉を聞いたエマが不安そうな表情をし、セリーヌが考え込んでいたその時

「ふふっ、御機嫌よう。」

女性の声が聞こえたと同時にアリサ達に向かって数本の矢が襲い掛かり

「させません!」

メサイアがアリサ達の前に出て剣を振るって襲い掛かる矢を斬り落とした!



「フフッ、かの”灰の騎神”の守護者である異種族も混じっているとは。腕がなるわね。」

メサイアを見たエンネアは不敵な笑みを浮かべ

「そ、その鎧は……!」

「レグラムで戦った”神速”と同じ”鉄機隊”か……」

エンネアを見たアリサは不安そうな表情をし、ガイウスは真剣な表情で呟いて仲間達と共に武器を構えた!



「あ、あの……どうしてまだわたくし達と戦うのですか?」

「貴女方はメンフィルに降った上貴女方の主であるサンドロッド卿は私達の協力者なのに、何故私達と敵対するのでしょうか?」

「というか”鋼の聖女”は今回の事を知っているのかしら?」

「いいえ、今回の件は私達の独断。マスターは今回の件について全く関わっていないわ―――」

セレーネやエマ、セリーヌの疑問にエンネアは答えた後事情を説明し始めた。



「その……どうしてこのような事を?」

それぞれの班が”鉄機隊”の面々と対峙している中エリスは不安そうな表情でデュバリィに尋ね

「あんたらの親玉の”鋼の聖女”はあたし達の味方の上、あんたら”鉄機隊”はメンフィルに降ったって聞いているわよ?あたし達に敵対するような事をしてあんたらの親玉もそうだけど、メンフィルが黙っていると思っているのかしら!?」

「フウ……そこで何故私を睨むのか理解不能ですわ。私達が貴方方の手間を省いてあげたのですから、むしろ私達に感謝するべきと思いますけどね。それと今回の件は私達の”独断”の為マスターには話していないので、マスターはご存知ではありませんし、”英雄王”からも今回の件の許可は頂いていますわ。」

エリスに続くように自分を睨んで質問するサラ教官に対し、デュバリィは呆れた表情で答えた。



「ふえええっ!?」

「リウイ陛下が!?」

「意味不明だし。というか何でこんな事をしたの?」

驚愕の事実にトワと共に驚いたリィンは声をあげ、ジト目で呟いたフィーはデュバリィを警戒しながら問いかけた。

「貴方方も存じているように”結社”の”盟主”は討伐され、更にマスター―――”鋼の聖女”を除いた”蛇の使徒”達も討伐され続けている為、実質結社は崩壊したと言ってもおかしくないでしょう。そしてマスターに忠誠を誓う私達”鉄機隊”はメンフィル帝国に寝返りました。ですが私達”鉄機隊”にも”誇り”があります。かつては”至高の武”たる存在であるアリアンロード様が率いる部隊である事や隊士の一人一人が”執行者”と同等の力を持っている事から結社の精鋭部隊と恐れられていた”誇り”が。そしてその”誇り”を捨て、新たなる”鉄機隊”に生まれ変わる為にかの”獅子戦役”で活躍した”獅子心皇帝”が建てた学び舎で学ぶ者達であり、貴方方の前に何度も立ち塞がった”結社”の件も含めて”槍の聖女”の愛弟子と言ってもおかしくない私達”鉄機隊”とも色々と因縁がある貴方方こそが”結社の鉄機隊の最後の相手”として相応しいと思ったのですわ。」

「あんた…………」

「結社の鉄機隊としての意地を捨て、新たなる鉄機隊として生まれ変わる為……か。」

デュバリィの説明を聞いたサラ教官は複雑そうな表情をし、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた。



「……俺達にも譲れないものがある。トールズ士官学院を―――俺達自身の居場所を取り戻すという目的が。そこに、あなた達が立ちはだかるというのなら!」

「うん………!意志を貫くためにも、どうしてもぶつかり合う時だってあるよね……!わたしたちは、そのために士官学院に帰ってきたんだから!」

一方リィンとトワはデュバリィと戦う決意をし、仲間達と共に武器を構えた!

「――――それでこそ我ら”鉄機隊”の最後の相手に相応しい者達ですわ。悲願であるトールズ士官学院の奪還を叶えたければ、かつての”特務支援課”のように私達という”壁”を乗り越えてみせなさい!」

リィン達の決意に満ちた表情を見て満足げな笑みを浮かべたデュバリィは剣と盾を構えた!

「以前の立会いは小手調べ……舐めてかかったら容赦はしません。”鉄機隊”が筆頭隊士、”神速のデュバリィ”―――いざ、尋常に勝負ですわっ!!」

「”鉄機隊”が隊士、”剛毅のアイネス”―――かつての過去と決別する為””有角の若獅子達””の”壁”として立ち塞がらん。来い――――”有角の若獅子達”!!」

「”鉄機隊”が隊士、”魔弓のエンネア”―――これより””有角の若獅子達””との決戦を開始するわ!!」

「Ⅶ組A班、全力で行くぞっ!!」

「フフッ、アクセル全開で行くよ、君達!!」

「Ⅶ組C班、全力で行くわよっ!!」

「おおっ!!」

デュバリィ達がそれぞれ名乗り上げるとリィン達もそれぞれ号令をかけてデュバリィ達との戦闘を開始した!



かつてエレボニア帝国で起こった内戦―――”獅子戦役”を終結させた英雄である”獅子心皇帝”と”槍の聖女”。それぞれの意思を継ぎし者達がぶつかり合う決戦が始まった……! 
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