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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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外伝~クロウの脱獄~前篇

同日、12:45――――



リィン達がトリスタに到着し、それぞれ潜入をし始めたその頃クロスベル郊外にある拘置所―――”ノックス拘置所”の一室ではクロスベル解放作戦の際、警備隊に拘束されたクロウがベッドに座って悔しそうな表情をしていた。



~クロスベル郊外・ノックス拘置所~



「ちくしょう……どうしてこんな事になったんだ……!ちくしょう……ちくしょう……!」

ベッドに座っているクロウは悔し涙を流しながら何度も無念の言葉を呟き続けていた。

「フフ、悲願を叶えられなかった君の気持ち、僕もよくわかるよ。」

するとその時ヨアヒムが転移魔術でクロウの目の前に現れた!



「……あ?誰だ、お前?」

「初めまして。僕の名はヨアヒム・ギュンター。大いなる叡智を求め、崇める者の一人さ。」

「ヨアヒム・ギュンター……?―――――!クロスベルに生き残っていた”D∴G教団”の司祭か。死んだと聞いていたが…………」

ヨアヒムの名前を知り、ヨアヒムの事を覚えていたクロウは眉を顰めてヨアヒムを見つめていた。

「ああ、その情報は間違っていないよ?今の僕は”亡霊”だからね。」

「ハッ……それでその亡霊が俺に何の用なんだ?」

「フフ、クロウ・アームブラスト。僕と手を組む気はないかい?そうしたらこの拘置所から出る手伝いもしてあげられるし、君の願い―――”灰の騎神”との決戦も可能だよ?」

「ハッ、どうやってリィンと俺の約束を叶える気なんだ?(ケルン)も破壊されたオルディーネを直す事なんて無理だぜ?」

ヨアヒムの誘いを知ったクロウは鼻を鳴らして厳しい表情で指摘した。



「確かに僕の知識や技術では”騎神”は直せない。だが教団が開発した”大いなる叡智”を使えば、君自身が”騎神”になれるかもしれないよ?」

「……何だと?一体どういう事だ。」

「フフ。それはね―――」

そしてヨアヒムはクロウに自身の考えや提案を伝えた。

「…………本当にそんな事ができるのか?」

「ああ、”力”への渇望が強い君ならできると思うよ。何せ君のように力に渇望している他の者が”グノーシス”を扱い、自身が望む姿と力を手に入れたのだからね。」

「………………………ハッ、確かに魅力的な話だが”ルバーチェ”のように俺を利用する気満々だろうが。その手には乗らないぜ。」

ヨアヒムの話を聞き、少しの間葛藤していたクロウは鼻を鳴らしてヨアヒムを睨んだ。



「おや、断わるのかい?―――カイエン公の指示によって捕えられた君の同級生達がどうなってもいいのかい?」

「!?どういう事だそれは!?何でそこでカイエンのオッサンが出て来るんだ!?」

しかしヨアヒムの口から語られた驚愕の事実にクロウは血相を変えて尋ね、ヨアヒムはクロウに追い詰められたカイエン公が次々と協力を打ち切る貴族やいつ協力を打ち切ってもおかしくない貴族達を再び掌握する為に、人質として貴族達の家族を捕え、幽閉している話をした。

「そこまで墜ちたのかよ、あのオッサンは!―――それで本当に士官学院にも手を出したのか!?」

「勿論だとも。そのおかげで士官学院にいた子供達を人質に取られた貴族達は未だ貴族連合に協力しているのだからね。さて……もう一度聞くけどどうするんだい?もし僕に協力して、僕の悲願を叶える事ができればカイエン公の手によって捕えられた君の同級生達を解放する事は約束しよう。」

「……ッ……!テメェの”悲願”とやらは何なんだ?」

ヨアヒムの提案に唇を噛みしめたクロウはヨアヒムを睨みつけて尋ねた。

「フフ、僕の望みは唯一つ。”真なる神”であるキーア様の元、平等な世界を作る事さ!」

「ハッ……聞いていた以上に狂ってやがるな。………………――――いいぜ、テメェの提案、載ってやるよ。ただし一つ約束しろ。」

「何だい?」

「悲願を叶えたテメェが何をしようとどうでもいいが……士官学院の連中―――いや、エレボニアとユミルをテメェの狂った計画に巻き込まない事を約束しろ!」

「おやおや……メンフィルをも巻き込んだエレボニアの内戦を引き起こした主犯の一人がそんな事を言うなんてね。”彼ら”に対する償いのつもりかい?」

クロウの要求を聞いたヨアヒムは不敵な笑みを浮かべてクロウを見つめて問いかけたが

「……………」

クロウは何も答えず、殺気を纏ってヨアヒムを睨んでいた。



「フフ、いいだろう。事が終わり次第僕達”D∴G教団”がエレボニアから手を引く事、僕の魂にかけて誓おう。さあ、これが”グノーシス”だ。思う存分暴れたまえ!」

「フン………………」

ヨアヒムから青い錠剤――――”グノーシス”が入った瓶を受け取ったクロウは数粒の錠剤を飲み込んだ!

「……ッ……!?”力”が…………!―――らあっ!!」

”グノーシス”による力を得たクロウが扉を殴ると何と扉は吹っ飛んだ!

「さてと……とっととトンズラするか…………」

部屋から出たクロウは近くのパイプを引きちぎって臨時の武器にして拘置所からの逃亡をしようとした。



「あ~あ……解放されたのは何よりだけど、俺達はこれからどうなるんだろうな……」

「少なくても”六銃士派”の連中のように出世はできないだろうな……ハア、こんな事ならさっさと”六銃士”達に寝返るべきだったぜ……―――え。」

するとその時拘置所内を巡回している元国防軍の兵士達が現れてクロウの姿と破壊された扉を見て呆けた。

「なっ!?だ、脱走だと!?」

「と、捕えろ!」

そして国防軍の兵士達は武器を構えたが

「遅いんだよ!ハアッ!!」

「グアアアアア――――ッ!?」

「ギャアアアアアア――――ッ!?」

クロウはグノーシスによって強化された身体能力で一気に兵士達に詰め寄ってクラフト――――アークスラッシュを叩きこんで一撃で戦闘不能にした!



「ぐっ……き、貴様…………」

「に、逃がすものか……」

地面に叩きつけられた兵士の一人はすぐに気絶し、もう一人の兵士は気力でエニグマのボタンを押した。すると警報が鳴りだした!

「チッ、オーブメントを使った警報システムか……!」

拘置所内に鳴り響く警報を聞いたクロウは舌打ちをした。

「フフ、恐れる事はないよ。幸いここに配備されているのはクロスベル解放の際に”六銃士”や”六銃士派”に敗北した元国防軍の兵士達。”六銃士”に直々に鍛え上げられた”六銃士派”の警備隊員や警官達と違い、碌に実戦経験もない彼らが今の君を止める事等不可能さ。―――さてと僕は拘置所内で更なる混乱を起こするから、君はその間に脱出したまえ。」

「…………チッ、ヴィータ以上に胡散臭い野郎だな。」

転移魔術でヨアヒムが消えるとクロウは厳しい表情でヨアヒムが消えた場所を見つめた後脱出を開始した!



「う、うわあああぁぁぁぁぁ!?」

「あ、悪魔……!?グアッ!?」

「ががっ!?」

クロウが脱出を開始したその頃、拘置所内ではヨアヒムが召喚した悪魔たちが猛威を震い、国防軍の兵士達を圧倒していた!

「オイオイオイ…………一体何が起こっていやがるんだ?まるで俺らがこんな事になる羽目になった”あの時”みたいじゃねぇか。まさかヨアヒムの野郎のような奴の仕業か?」

拘置所の一室で悪魔達と激闘する兵士達の様子を見た大男―――ガルシア・ロッシは厳しい表情で考え込み

「!!」

激闘の最中に兵士達が投擲した手榴弾が自分がいる部屋に投擲された為、扉から離れた。すると扉は爆発によって破壊された!

「……さてと。会長や手下の連中を助けて脱獄する絶好の機会だが、どうするかねぇ…………」

現状は脱獄が可能である事に気付いたガルシアは考え込んだが、かつて自分が脱獄を手伝った人物―――ロイドの姿をふと思い浮かべ、静かな笑みを浮かべた。

「クク、あんな状況でありながら抗い続ける事を決め、見事抗い切ってクロスベルの”真の英雄”になったあの大馬鹿弟を手助けした野郎が脱走なんてダセェ真似はできねぇな……―――今回の騒動を収める手伝いをして、俺達の減刑を交渉の材料にする方が”英雄”を助けた野郎らしいやり方だな……!」

自分自身がやるべき事を決めたガルシアは不敵な笑みを浮かべて部屋から出て、兵士達と戦い続ける悪魔を背後から強襲した!

「らあぁぁぁぁぁ―――ッ!!」

「―――――!?」

ガルシアの強襲によって背後からタックルされた悪魔の一体は吹っ飛ばされて壁に叩きつけられ

「こいつで止めだ!!」

そしてガルシアが追撃に放った体重を乗せた重い蹴り――――バーストキックで頭を破壊されて絶命した!



「なっ!?ガ、ガルシア・ロッシ!?」

「まさかこの混乱に乗じて脱走をするつもりか!?」

突然の出来事に驚いた兵士達だったが、すぐに武器を構えてガルシアを睨んだ。

「フン、テメェらがちゃんとここを守れてねぇから、俺自身の身の安全の為に仕方なく手を貸しただけだ。―――拘置所内に放たれた悪魔共の掃討に手を貸してやる。状況を教えろ。」

「な、何だと!?」

「貴様が我らに手を貸すだと……?そんな戯言、信じられるものか!」

ガルシアの話を聞いて驚いた兵士達だったが、すぐに気を取り直してガルシアを睨んだ。

「今そんな細かい事を気にしている場合か!このままだとテメェらの仲間達がやられるぞ!?」

「そ、それは…………」

しかしガルシアに指摘された兵士達はそれぞれ複雑そうな表情で顔を俯かせ

「わ、わかった……だが、他の”ルバーチェ”の連中を部屋から出す事はできないぞ!?」

やがてガルシアに一時的に手を貸してもらう事を決意し、ガルシアを見つめて言った。

「フン、そんな当然の事、言われなくてもわかっているぜ。」

そしてガルシアは兵士達と共に拘置所内に放たれた悪魔達の掃討を開始した! 
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