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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第37話

12月26日―――





同日、16:50――――





クロスベル帝国が建国された日の夕方、リィン達はようやく完成したゼムリアストーン製の”騎神用の太刀”の前に集まっていた。



~カレイジャス・格納庫~



「これが……―――これがゼムリアストーンを加工した”騎神用の太刀”ですか。」

ヴァリマールの中にいるリィンはゼムリアストーン製の太刀を驚きの表情で見つめていた。

「フン、その通りだ。全長7アージュ余り―――特殊な形状のため精錬と加工は困難を極めた。そこの酔狂な貴族がいなければ完成はしなかっただろう。」

ヴァリマールの中にいるリィンに説明したシュミット博士はパントに視線を向けた。



「は、博士!パント卿に失礼ですよ!?」

「ハハ、気にしなくていいよ。周りの者達からもよく酔狂者だと言われているしね。」

「フフ、パント卿の酔狂さはメンフィル国内でも有名ですものね。」

「クスクス、そう言う所もまたパント様の素晴らしい所ですわ。」

シュミット博士の言葉にジョルジュが慌てている中、パントとシグルーンは苦笑し、ルイーズは微笑みながらパントを見つめた。

「それにしても……まさかパントさんが導力技術にあんなに詳しいなんて、驚きました。」

「確か趣味は魔術の研究じゃありませんでしたっけ?」

アリサとサラ教官は目を丸くしてパントを見つめた。



「私達の世界の技術―――魔導技術には魔術に通じるものもあってね。だからメンフィルが異世界と交流を始めた当初から、私はゼムリアの技術―――導力技術にも魔術の研究で何か参考にならないかと思ってね。それで一時期は導力技術について寝る間も惜しんで勉強し、リベールの導力技術に関して詳しい方にも色々と教えて貰った事があるんだ。」

「え……リベールの導力技術者ですか?」

パントの話を聞いたジョルジュは目を丸くした。

「ああ。アルバート・ラッセルという方だ。」

「ラッセル博士ですって!?」

「”導力革命の父”と称されているリベール一の導力技術者ですか……!」

「ど、道理で導力技術に詳しい訳だ……」

「そりゃ教師がリベール一の導力技術者だったら、普通の人達より詳しくなってもおかしくないもんね~。」

パントの答えを聞いたアリサとユーシスは血相を変え、マキアスは疲れた表情をし、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ

「フン、まさかここで奴の名が出て来るとはな。――どうだ?私の元で研鑽を積むつもりはないか?貴様なら更なる高みに登れるぞ。」

シュミット博士は鼻を鳴らして呟いた後パントを勧誘し、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「博士……お願いですから、少しは相手の立場を考えて発言してくださいよ……」

「まあ、相手は”規格外”だらけのメンフィルの貴族だから、案外頷くかもしれないね。」

「ア、アハハ……」

ジョルジュは疲れた表情で指摘し、ジト目でパントを見つめるフィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいて苦笑していた。



「そ、それはともかく………素晴らしい輝きの刀ですね。」

「はい……これ程の輝き、今まで見た事がありません。」

「それに刀からウィル様に創って頂いたこの武具以上の凄まじい魔力を感じますわ……」

アルフィン皇女の言葉にエリスとセレーネはそれぞれ頷き

「ゼムリアストーン……七耀脈を通じて結晶化する謎の鉱石か。」

「……以前の剣と比べると、威力はどれ程違うのでしょうか?」

アンゼリカの言葉に続くようにセドリック皇太子は興味ありげな表情で太刀を見つめながら呟いた。



「正直、名工の鍛えた物と斬れ味は比較しないでくれ。だが、多分ヴァリマールの”手”には馴染むと思うよ。」

「わかりました―――それでは。」

ヴァリマールが太刀を手に取ったその時、ヴァリマールの(ケルン)と太刀の柄にはめ込まれた球体が反応し合った!



「これは―――」

「騎神と刀が共鳴し合っている……?」

「うんうん、間違いないよー!」

共鳴し合う騎神と刀の様子に仲間達が驚いている中、ヴァリマールは刀を構え直した。

「す、凄いや……」

「……見事だな。」

「ん、カッコいい。」

「フフ、姉様にも今の兄様を見て頂きたいです……」

「エリゼお姉様もきっと驚くでしょうね……」

刀を構え直したヴァリマールにエリオット達が見惚れている中、エリスとセレーネはそれぞれ微笑み

「よ、よくわからないがとんでもないのはわかるぞ。」

「ああ、これならばきっと―――」

マキアスの言葉に頷いたユーシスは静かな笑みを浮かべた。



「武装でばいすカラノふぃーどばっくヲ完了―――タシカニ”手ニ馴染ム”心地ダ。」

「はは、そっか。」

「行けそうね?」

「……ああ、想像以上だ。これで何とか―――クロウの背中が見えて来た。」

セリーヌに視線を向けられたリィンは静かな表情で頷いた。



「シュミット博士、パント卿。ジョルジュ先輩も―――本当にありがとうございました。」

「フン、礼は無用だ。私は私の知的好奇心を勝手に満たしただけのこと。それを貴様がどのように使うかは関知するところではない。」

「はは、照れ隠しとかじゃなくて本当にそう思ってるんだからな……」

「フフ、私は”紅き翼”の協力者としての義務を果たしたまでだ。それに私にとっても興味深い体験になったからお礼を言いたいのは私の方だよ。」

リィンに感謝されたシュミット博士の答えを聞いたジョルジュは苦笑し、パントは口元に笑みを浮かべてヴァリマールを見つめた。



「―――私は部屋で休んでいる。ルーレについたら起こせ。」

「ちょ、ちょっと、博士!?」

そしてその場からさっさと去って行くシュミット博士を見たジョルジュは驚き、リィン達は冷や汗をかいた。

「何はともあれ……これでオルディーネと戦う準備も整ったな。」

「問題はクロスベルにいるクロウがいつ俺達の前に現れるかだな……」

ガイウスは静かな表情で呟き、ユーシスは真剣な表情で考え込み

「そう言えばクロスベルは今頃どんな状況なんだろうね……?」

「パント卿達の話によれば、本日にクロスベルの解放作戦が行われるとの事だが……」

「………そこの所を今トワが調べているようだけど……遅いわね?あの子、一体何をしているのかしら?」

エリオットは不安そうな表情で考え込み、ラウラは真剣な表情で考え込み、サラ教官は眉を顰めていた。

「み、みんな……!」

するとその時トワが慌てた様子でその場に現れた。



「トワ?どうしたんだい?そんなに慌てて。」

「じ、実は……東の国境――――クロスベル方面で尋常な事態が起こったらしくて……!今、ブリッジのみんなに急いでクロスベル方面に向かっている所なの!」

アンゼリカの疑問にトワは真剣な表情で答え

「じ、尋常な事態ですか……?」

トワの答えを聞いたアルフィン皇女は不安そうな表情をした。

「……殿下。あたし達は甲板でクロスベル方面がどうなっているか確かめますので、殿下達はブリッジに向かって下さい。」

「……わかりました。」

そしてサラ教官の言葉にセドリック皇太子は静かな表情で頷いた。



~ブリッジ~



「東北東への針路良好―――念の為、周囲への警戒を!」

「航行速度、間もなく最大巡航速度に到達しますっ!」

「この分だとすぐに要塞方面に着きそうだな……」

「双龍橋の第四機甲師団と鉄道憲兵隊への状況の確認も順次お願い!」

「イ、イエス、マム!」

「おや、そうこうしている間に何か見えてきましたねぇ。」

艦内の船員たちが忙しく働いている中、トマス教官は呑気そうな様子で呟き

「な、何なの?この不思議な反応は―――」

観測を務めている生徒は戸惑いの表情をした。一方リィン達は甲板で要塞方面に到着するのを待っていた。



~甲板~



「あ―――クロスベル方面が見えて来たよ!」

「なにやら向こうの空がぼんやりと光っているが―――」

「な……っ!?」

甲板で要塞方面に到着するのを待っていたリィン達はクロスベル方面に見える”大樹”―――”碧の大樹”を見て絶句した!



「な、何よ、あれ……!?」

「ま、前に見かけた蒼い障壁は消えているみたいだけど……」

「碧い……大樹……?」

大樹を見たアリサとエリオットは不安そうな表情をし、ゲルドは呆け

「途轍もなく巨大な”何か”が現れている……!?」

「あの碧色に輝くものは一体―――」

「何かの植物――”樹”にも見えるけど……」

マキアスとリィンは厳しい表情をし、フィーは考え込んだ。



「あんな常識外れなもの、伝承でも聞いたことがないぞ……!」

「ああ、この世のものでないような”息吹”を感じる……」

ユーシスの言葉にガイウスは頷き

「クロスベル方面にいるエリゼお姉様はご無事でしょうか……」

「姉様…………」

「きっと、大丈夫ですよ……何せエリゼさんはかの”剣聖”や”姫将軍”を始めとした英傑達に鍛えられているのですから。」

クロスベル方面にエリゼがいる事を思い出したセレーネとエリスは心配そうな表情をし、そんな二人を安心させるかのようにルイーズは優しげな口調で答え

「シグルーン中将。至急エリゼに連絡を取ってクロスベルの状況を聞いてもらえないか?私はリウイ陛下に連絡を取る。」

「ハッ!」

パントとシグルーンはその場から走り去った。



「セリーヌ、あれは何なの……?」

「……わからないわ。”魔女”の言い伝えにだってあんなものは……」

エマに尋ねられたセリーヌは複雑そうな表情をし

「……いったいクロスベルで何が起きているというの―――?」

サラ教官は厳しい表情で大樹を見つめていた。一方その頃クロウ達もラマール州の領邦軍の飛行艦の甲板から大樹の様子を見つめていた。



翌日、リィン達はトヴァルからの連絡があり、トヴァルからの情報―――クロスベル方面に突如現れた大樹についての説明を聞いていた。 
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