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藤娘

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第四章

「師を越えるものだからな」
「それがあるべきなのですね」
「これははじめて言うがな」
 美津ノ助にだ。
「御前はそれをした、そして御前が弟子を取ればな」
「その弟子にですね」
「御前を越えさせろ、いいな」
「はい」
 確かな声でだ、美津ノ助は坂東に答えた。
「そうしていきます」
「そして舞台だが」
 彼のそれはというと。
「もう言うことはない」
「それもですか」
「藤娘以外もな」
 それもというのだ。
「もうな」
「ですか」
「後は弟子に伝えろ」
 その備えたものをというのだ。
「いいな、そしてな」
「その弟子にですね」
「御前を越えさせろ、いいな」
「そうさせてもらいます」
「ではな」
 坂東は確かな微笑みで応えた、そしてだった。
 美津ノ助は師の名も受け継いだ、それから弟子を取ってだ。
 藤娘を舞わせてだ、こう言った。
「演じるんじゃない、なれ」
「なるんですか」
「そうだ、藤娘そして藤になるんだ」
「そうなることがですか」
「大事だ、演じるな」
 師に言われたことをだ、彼も言うのだった。
「いいな、なるんだ」
「どうしたらなれますか?」
「稽古だ、稽古をしていってだ」
 そうしてというのだ。
「藤になるんだ、いいな」
「稽古をしてですか」
「なれ、いいな」
 こう言うのだった。そうして藤になる者を受け継がせていくのだった。それも彼以上の芸を持った者もまた。


藤娘   完


                          2015・10・22 
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