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政岡

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第二章

「そういうものですか」
「それわからんやろ」
「はい、わてには」
 首を傾げさせてだ、玄朴は師匠に答えた。
「どうにも」
「あんたは船場の材木屋の次男やさかいな」
「そんな話は」
「縁がないわな」
「はい、どうも」
「わてもや」
 かく言う惣流もというのだ。
「わても家はな」
「師匠は梅田でしたな」
「あそこで兄貴は米問屋やっとるわ」
「そうでしたね」
「お武家さんの世界はな」
「ほんま縁がありませんな」
「大坂なんてお武家さんは殆どおらんかった」
 まさに数える程しかだ、江戸時代大坂は何十万もの人間がいたが武士はその中で数百人位しかいなかったのだ。
「そんなんやったわ」
「それやったら」
「余計にわからんな」
「そうなりますな」
「そら政岡も怖い思うわ」
「よお自分の子供殺されるの黙って見られた」
「後で亡骸抱いて泣いて仇取るにしてもな」
 その八汐を討ち果たすのだ、息子の仇を。
「そうしてもな」
「その場でああ出来る」
「わて等にはわからん、出来るもんやない」
「しかしそうするのがですか」
「お武家さんとされてたんや」
「そうなんでっか」
「そや、先代萩は大坂で出来た演目やけど」
 それでもというのだ。
「基本お武家さんやな」
「そっちのお話でっか」
「そういうことっちゃ、そもそも出て来るのお武家さんばっかりやろ」
「もう皆」
「そういう作品や、それでそこに出る政岡もや」
「お武家さんで」
「お武家さんの考えが出てるっちゅうこっちゃ」
 こう弟子に話した。
「そやからあんさんが怖い思うのも道理やけどな」
「お武家さんから見たら」
「ああいうのもありなんや」
「そういうことでっか」
「そうなるんや、けどな」
「けど?」
「あんたええことに気付いた」
 ここで笑って弟子に言った。
「ほんまにな」
「政岡のことにですか」
「そや、政岡からお武家さんの考え知ったやろ」
「ええ、まあ」
「大阪、今はな」
 今の呼び方でも言った。
「昭和やけど元々お武家さんは少ない」
「さっき話した通り」
「そやから落語でもや」
「どうしてもお武家さんの話はですか」
「弱なる、けれどそこを知ったらな」
「お武家さんが出る落語もですか」
 そうしたものもというのだ。
「これからはもっと」
「出来るんや、そやからな」
「わてがここで思ったことはですか」
「ええこっちゃ、それでや」
「はい、それで」
「今度その先代萩観に行くで」
「歌舞伎のそれを」
「浄瑠璃でもあったな」
 歌舞伎だけでなく、というのだ。 
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