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人徳こそ

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第八章

「あの人の確かな証拠掴んで警察に通報したらしいわ」
「それでか」
「ええ、昨日お客さんに言われたけれど」
「あの如何にもなおっさん捕まったんだな」
「やっぱり総会屋さんで」
 その職業の話にもなった。
「他にも詐欺とか色々やっていたみたいよ」
「そうか、悪い奴だったんだな」
「正真正銘の悪人だったのよ」
「けれどか」
「ええ、お客さん達のお陰でね」
 啓太郎に何かをする前にというのだ。
「解決したわ」
「それは何よりだな」
「本当にね。それでわかったけれど」
 あらためてだ、優子は浩輔にこうしたことを言った。
「店長さん確かに商売は下手だけれど」
「それでも慕われてるんだな」
「ええ、お金はないけれど」
 それでもというのだ。
「人徳があるのよ」
「そうした人ってことだな」
「そうよ、だからね」
 それで、というのだ。
「お金以上のものを一杯持ってるのよ」
「そういうことだな」
「そう、世の中お金よりもね」
「人徳か」
「それが大事ってことよ」
「そしてあの店長さんにはそれがある」
 浩輔も言った。
「そういうことだな」
「そう、商売もね」
「お金よりも人徳」
「あまり儲かっていなくてもそれがある人は違うのよ」
 それが啓太郎だというのだ、そうしたことを話してだった。優子は浩輔に対して微笑んでこう言ったのだった。
「じゃあ今日もね」
「アルバイト行くんだな」
「そうして来るわ」
「ああ、それじゃあな」
 浩輔はその優子に笑顔で告げた、そのうえで優子の背中をその笑顔で押してその人徳のある店長のところに行かせるのだった。


人徳こそ   完


                          2015・11・21 
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