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目を閉じて小旅行

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第一章

                 目を閉じて小旅行
 この時私は怒っていた、そしてその怒っている理由を彼に行っていた。
「何で急にお仕事入ったのよ」
「いや、そう言われても」
 彼はその私にバツの悪い顔で返した。
「仕方ないじゃない」
「それで旅行が潰れても?」
「だから急でさ」
 その話が来たというのだ。
「それでなんだよ」
「旅行行けなくなったのね、私達」
「いや、俺は行けないけれど」
「私はっていうのね」
「女友達と行ったら?」
「馬鹿言わないでよ」
 彼の提案にだ、私は怒った顔で返した。
「何であなた以外の人と行くのよ」
「俺じゃないと駄目なんだ」
「当たり前でしょ、二人で予約したのよ」
 二人で何処に行くか話してだ。
「それならよ」
「俺じゃないと駄目なんだ」
「当たり前よ、じゃあこの旅行はね」
「流れるってことで」
「キャンセルするか」
 それかだった。
「その友達にね」
「言ってなんだ」
「代わりにどう、って言ってみるわ」
「それじゃあ」
「そう、この話は流れたわ」
 私の中では今完全に終わった。
「もういいわ、けれどね」
「怒ってるよね」
「見た通りよ」 
 実際に牙を出しそうな感じの顔になっていると自分でもわかった、私はその顔で彼を見上げてそのうえで言った。
「怒ってるわよ」
「やっぱり」
「折角楽しみにしてたのに」
「けれどね」
「けれど?」
「今度行こう」
 彼も必死に私に言う。
「そうしよう」
「その今度もまたじゃないの?」
「俺に急な仕事が入るっていうんだ」
「そうなるんじゃないの?」
「いや、流石にそれは」
 彼はバツの悪い顔のまま私に答えた。
「わからないよ」
「そうよね、今回だってね」
「急だったから」
「普段急に入らないでしょ」
「俺の仕事はね。けれどね」
 今回はだ、例外中の例外としてというのだ。
「そうなったから」
「全く、何だってのよ」
「今日サービスするから機嫌をなおしてよ」
 こうもだ、彼は私に言って来た。
「ここはね」
「どうするっていうのよ」
「何でも好きなもの言ってよ」
 こう私に言って来た。
「食べものでも飲みものでも」
「それでっていうのね」
「買いものでも」
 そうしたもので、というのだ。
「だから機嫌なおして」
「買うものは今はね」
「何もないんだ」
「ええ、けれどね」
 むっとしたままの目でだ、私は彼に言った。
「食べものはね」
「本当に何でも奢るからさ」
「じゃあスパゲティがいいわ」
 私の大好物だ。 
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