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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第7話

同日、13:30――――





~カイエン公爵城館~



「ほ、報告!メンフィル軍は上空より強襲し、貴族街を陣取り、守備兵達を撃破しながら貴族街にある貴族の方々の家に突入し、当主の方々を次々と殺害しているとの事!」

「な、何だとっ!?お、おのれ薄汚い簒奪者共が……っ!オーレリア将軍やパンダグリュエルにはまだ連絡が取れないのか!?」

兵士からの驚愕の報告を聞いたカイエン公爵の長男―――ナーシェンは目を見開いた後怒りの表情で兵士に怒鳴った。

「そ、それが……オーレリア将軍閣下はオルディス襲撃の報を聞いて正規軍との戦闘を中断してこちらに急行しているとの事ですが、戦闘していた場所からオルディスまでの距離が相当ある為空挺部隊をどれだけ急がせても最低2時間はかかるとの事です!しかも撤退をし始めた我が軍に正規軍が追撃を始めた為、撤退に少々時間がかかるとの事です!」

「グッ!?おのれ、諦めの悪い賊軍め……っ!パンダグリュエルの方はどうだ!?」

兵士の報告を聞いたナーシェンは表情を歪めた後続きを促した。



「そ、それが……何故かパンダグリュエルに通信ができないのです!何度も通信をしても繋がらないのです!恐らくはパンダグリュエルに”何か”あったか、妨害電波のようなものがパンダグリュエルの周囲に流されているかと思われます……!」

「何だとぉっ!?」

「―――もう私達に勝ち目はありません。これ以上犠牲者を出さない為にも大人しくメンフィル軍に降伏すべきです、兄上。」

兵士の報告を聞いたナーシェンが声を上げたその時、ドレス姿の女性が橙色の髪の娘と共に部屋に入って来た。



「ユ、ユーディット様……っ!それにキュア様まで……!」

「ユーディット、貴様、今何と言った!?」

ナーシェンは目の前の女性――――カイエン公爵の長女であるユーディットを睨んで声を上げた。

「降伏すべきだと言ったのです。援軍も期待できない状況で、しかもメンフィル軍は目の前まで迫っています。これ以上抵抗しても無駄な犠牲者が出るだけです。」

「貴様、それでもカイエン公爵家の娘か!?誇り高き”四大名門”の”カイエン公爵家”が薄汚い簒奪者どもに降伏等、死んでもできるか!」

「薄汚い簒奪者はどちらですか!?メンフィル帝国にこのような事をされる原因を作ったのはカイエン公爵家を始めとした貴族連合ではありませんか!何度もメンフィル帝国に謝罪して、誘拐したエリス嬢を返還すべきだと進言したのに、父上や兄上達は聞く耳を持っていませんでした!今回のメンフィル帝国による報復活動は父上達――――貴族連合の自業自得です!」

「ユーディット、貴様……っ!―――キュア!お前もユーディットと同じ意見か!」

自分を睨むユーディットの答えに怒りの表情になったナーシェンはユーディットの傍にいる娘―――キュアに視線を向けた。

「少なくても誘拐したエリスさんをすぐにメンフィルに返還していたら、こんな事にはならなかったよ……!」

「き、貴様ら、揃いも揃って……!」

そしてキュアの答えを聞いたナーシェンは怒り心頭の様子で二人を睨んだ。するとその時城館内から怒号や悲鳴が聞こえて来た!



「なっ!?ま、まさかもうここまで来たのか!?クッ……降伏をしたいのであれば、貴様らだけで勝手にしていろ!私には次代のエレボニア皇帝を務めるという栄光の未来が待っているんだ!こんな所で、終わってたまるか!」

「ナ、ナーシェン様!?お、お待ちください!お二人をこのままにされるのですか!?」

そしてナーシェンは兵士と共に部屋から出て行ったが

「!!奴は確か……!――――あの男はカイエン公爵家の長男のナーシェン・カイエンだ!絶対に逃がすな!ひっ捕らえろ!」

「ハッ!」

「ナーシェン様、お逃げくだ――――グアアアアアアアッ!?」

「クソ――――ッ!こんな所で終われるか――――ッ!!うわッ!?」

「メンフィル(俺達)の逆鱗に触れた時点で、お前達はもう”終わり”だよ。―――寝てな!」

「ガハッ!?ク……ソ……ッ…………」

外から兵士の悲鳴やナーシェンの呻き声が聞こえて来た。



「「…………………」」

部屋の外から聞こえて来たナーシェンの呻き声や兵士の悲鳴を聞いた姉妹はそれぞれ重々しい様子を纏って黙っていた。するとその時兵士を引き攣れたヒーニアスが部屋に突入してきた!

「!貴様らは確かカイエン公爵の息女のユーディット・カイエンとキュア・カイエンだな?」

「…………はい。これより私とキュアはメンフィル軍に降伏します。私の身はどうなっても構いませんので、せめて妹のキュアだけは助けてください……お願いします……!」

「ユ、ユーディ!?」

自分を犠牲にしてヒーニアスに嘆願するユーディットの様子を見たキュアは表情を青褪めさせた。

「――――貴様らに関しては情状酌量の余地ありと判断されている為、危害を加えるつもりはない。―――が、エレボニア帝国との外交問題に決着が付くまでこの城館に謹慎してもらう。」

「……かしこまりました。メンフィル帝国の寛大なお心に心から感謝致します。エレボニア帝国とメンフィル帝国との外交問題に決着がついた後は、私達はどうなるのでしょうか……?」

「そ、それに捕まったお兄様はどうなるのですか……?」

「カイエン公爵家の当主、長男、正妻は帝都ミルスにて”公開処刑”を行うつもりだ。更にカイエン公爵家は爵位剥奪並びに全財産の没収の予定だ。貴様らに関しては今の所未定だが、没収した財産の一部を返還し、何らかの職について貰う事を検討中だ。」

「そ、そんな!?お母様まで……!」

「…………失礼ですが、メンフィル帝国軍を率いる貴方は何者なのでしょうか?」

ヒーニアスの答えにキュアが表情を青褪めさせている中、真剣な表情で考え込んでいたユーディットはヒーニアスに問いかけた。



「―――メンフィル王公領フレスラント領主”ナクラ公爵家”の子息、ヒーニアス・ナクラ・マーシルン。ゼムリア大陸のメンフィル帝国領の守護並びにエレボニア帝国侵攻の為に本国より派遣された将の一人だ。」

「!”マーシルン”という事は皇家の方でしょうか?」

「分家にはなるが、私もメンフィル皇家の一員だ。」

「そうですか…………――――ヒーニアス殿下。厚かましい申し出かと思いますが、状況が落ち着いた後私にメンフィル帝国と取引をする機会を与えて頂けないでしょうか?」

「ユ、ユーディ……?」

「”取引”だと?貴様は一体何が望みだ。」

ユーディットの申し出にキュアが戸惑っている中、ヒーニアスは眉を顰めて問いかけた。


「母の助命とカイエン公爵家の存続です。」

「フン、兄と父は見捨てるのか?」

ユーディットの答えに興味を持ったヒーニアスは嘲笑して問いかけ

「―――はい。父と兄に関しては自業自得だと思っています。言い訳にしかなりませんが元々私とキュアは内戦に反対でしたし、エリス嬢誘拐の件を知った際は何度も父にエリス嬢をメンフィル帝国に返還してメンフィル帝国に謝罪すべきだと進言しました。ですが父は聞く耳を持っていなく……」

「…………それで?もしメンフィルが貴様の求めているもの――――カイエン公爵夫人の助命とカイエン公爵家の存続に応じた場合、貴様は何を”代償”にするつもりだ?」

「……カイエン公爵家が全ての元凶でありながら私と私の妹キュアは畏れ多くもラマールの民達から慕われています。私達自身、新たな祖国となるメンフィル帝国に忠誠を誓い、クロスベル帝国やメンフィル皇家の方々のお役に立つ為に働く所存であります。民達に慕われ、またラマール州の統括領主であった私達がメンフィル帝国にに忠誠を誓えば、民達は当然としラマール州の貴族達も従い、戦後の処理や領地経営がやりやすくなるかと愚考致します。また、本来なら爵位剥奪どころか一家郎党処刑されてもおかしくない立場である私達”カイエン公爵家”を救った所か配下として新たな国造りに携わらせた事で、国内の人々は当然として、諸外国に対してもメンフィル帝国の慈悲深さを知らしめることができると思われます。」

「ほう…………カイエン公爵家の長女は”才媛”であると報告にあったが、報告以上の者だな。――――だが、残念だったな。”ラマール州はメンフィル帝国領にはならない。”」

ユーディットの説明に感心した様子で聞いていたヒーニアスはユーディットにとって予想外の答えを口にした。



「え……それはどういう事でしょうか?」

「貴様の先程の弁論を評して、本来ならまだ秘匿情報である情報を教えてやる。―――オルディスを含めたラマール州は”六銃士”によって建国される”クロスベル帝国”に贈与される事になっている。」

「ええっ!?ラマールがクロスベルの!?い、一体何がどうなっているのですか!?」

「…………”通商会議”の時から予想していましたが、やはり”六銃士”とメンフィル帝国は繋がっていましたか…………―――ヒーニアス殿下。大変勝手な嘆願にして殿下にお手数をかけてしまうと思われますが、私と”六銃士”の一人―――”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダー殿との面会を手配して頂けないでしょうか?」

ヒーニアスの話にキュアが混乱している中、ユーディットは落ち着いた様子でヒーニアスを見つめて問いかけた。

「ほう……よりにもよって”黄金の戦王”を選ぶとは中々目の付け所がいいな。―――いいだろう。先程見せた貴様の見事な弁論やその才能を評して、”黄金の戦王”との面会を取り計らってやる。」

「ありがとうございます。ヒーニアス殿下の寛大なお心に心から感謝致します。それとヒーニアス殿下。先程兄の要請によって、オーレリア将軍率いるラマール領邦軍が正規軍との戦闘を中断してこちらに向かっているとの報告が入りました。」

「フン、その程度の事貴様に言われなくても予想している上、既に対策も取ってある。”黄金の羅刹”がオルディス奪還に向かっている事はこちらにとっても都合がいい……”黄金の羅刹”もついでに討ち取ってくれる。」

「…………殿下。もしよろしければ、私の考えた策を実行して頂けないでしょうか?その策ならば、オーレリア将軍達を戦う事なく降伏させる事も可能です。」

「ユ、ユーディ!?一体何を……」

「ほう……?――――言ってみろ。」

「その策とは―――――」

ユーディットの申し出を聞いたキュアが驚いている中、ユーディットの申し出に興味を持ったヒーニアスは続きを促し、ユーディットはヒーニアスに自分が考えた策を伝えた。



「―――なるほど。確かにそのやり方なら、労せずオルディス奪還の為に来る領邦軍を無力化できるな。しかし一つ疑問がある。何故貴様は故郷や家族を裏切ってまでそこまでする?」

「先程も口にしたように、母の助命とカイエン公爵家の存続、妹の未来の為……そしてこれ以上父の野望に巻き込まれた者達が血を流さない為です。その為ならば、私は心を鬼にします。」

「ユーディ…………」

「我らメンフィルやクロスベルに媚を売って、自身の望みを叶える為か…………フッ、貴様程の逸材をメンフィルが手に入れられない事は少々残念だな。――――いいだろう。貴様のその策、有効に活用させてもらう。その代わり先程の話通り奴等が現れた際、貴様に説得してもらうぞ。」

ユーディットの答えにキュアが呆けている中、ヒーニアスは静かな笑みを浮かべた後すぐの表情を戻して話を続けた。

「かしこまりました。ですがその前に妹を自室まで送ってもよろしいでしょうか?妹を自室に送り次第、すぐに戻りますので。」

ヒーニアスの答えに安堵の表情をしたユーディットはヒーニアスに会釈をした。

「そのくらいなら構わん。そこのお前とお前は二人を護衛しろ。」

「「ハッ!!」」

その後二人はメンフィル兵達に護衛されながら移動を始め

(何とかメンフィルにカイエン公爵家の存続を許す余地ありと判断してもらえる切っ掛けを作れた上、”黄金の戦王”と面会できる機会を作れたわね…………この身を捧げてでも絶対に彼との交渉を成功させないと……!)

キュアと護衛のメンフィル兵達と共に移動し始めたユーディットは決意の表情をした。



~同時刻・アルバレア公爵城館~



「ほ、報告!メンフィル軍の別働隊が屋敷内に突入して来ました!」

「な、何ぃっ!?」

同じ頃アルバレア公爵は兵士からの驚愕の報告に血相を変えて声をあげ

「ほ、報告!貴族街を陣取り、戦闘を開始したメンフィル軍が貴族の方々の家に突入し、貴族の当主の方々を次々と殺害しているとの事です!」

「何だとっ!?おのれ、薄汚い簒奪者どもが……っ!オーロックス砦からの援軍はまだ到着しないのか!?」

更なる驚愕の事実に驚いたアルバレア公爵は怒りの表情で怒鳴った。



「残念ながらオーロックス砦からの援軍は来ない。」

するとその時青年の声が聞こえると同時にエフラム率いるメンフィル兵達が部屋に突入してきた!

「!!!」

「メ、メンフィル軍……!」

「公爵閣下!お逃げ下さい!」

「うおおおおおっ!!」

エフラム達の登場にアルバレア公爵が目を見開いたその時、領邦軍の兵士達はエフラム達に襲い掛かったが

「甘い!!」

「グアアアアアアアッ!?」

「ギャアアアアアアッ!?」

「む、無念…………」

エフラムが槍で薙ぎ払うと、一撃で全員絶命した!



「…………あ………………」

兵士達の絶命にアルバレア公爵は呆然とし

「”アルバレア公爵家”現当主ヘルムート・アルバレア。メンフィル帝国領ユミルの破壊、放火、騒乱並びに領民虐待、ユミル領主シュバルツァー男爵夫妻傷害の疑いにより貴様を拘束する。―――拘束しろ。」

「「ハッ!!」」

「なっ!?やめろ!私を誰だと思っている!?誇り高き”四大名門”の”アルバレア公爵家”の当主にこのような真似をして許されると思っているのか!?辺境の愚民共や貴族の恥晒しに裁きを与えた私を裁いていいと思っているのか――――――ッ!!」

エフラムの指示によって兵士達が近づいてくると喚き始めた。

「自らの欲の為に他国の領地を猟兵達に襲撃させた愚か者がまだそのようなふざけた事を口にするとは、どこまでも腐っている男だな!」

「へぶっ!?……………」

しかしエフラムに殴り飛ばされると鼻血を出しながら身体をピクピクさせた後気絶した!

「制圧し終えた領邦軍の詰め所の地下牢にアルバレア公爵夫人共々放り込んでおけ!」

「「御意!!」」

そしてエフラムの指示によって気絶したアルバレア公爵は既に制圧された領邦軍の詰め所の地下牢に別のメンフィル兵達によって拘束されたアルバレア公爵夫人と共に放り込まれた。



こうして……エレボニア帝国の”五大都市”であり、”四大名門”の本拠地にしてそれぞれが納める広大な州の首都である”海都”オルディスと”翡翠の公都”バリアハートはメンフィル軍によって制圧された! 
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