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おぢばにおかえり

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第二十九話 お墓地でその十三

「赤外線だってあるし」
「スパイ映画みたいですね」
「それだけ厳重にしてるのよ」
「けれど痴漢対策でそこまでですか?」
「女の子ばかりなのよ」
 ここがかなり重要です。私達ばかりということなので。それでそこまで警護が厳重になっているんです。流石に最初赤外線まであるって聞いた時はびっくりしましたけれど。
「それはね。やっぱり」
「しかも洗濯物も北寮みたいに干していませんね」
「干したら大変なことになるじゃない」
 まさに干し肉を吊るしてそれで狼を招き寄せるようなものです。
「そんなことしたら」
「そういえばそうですか」
「男の子と違うのよ」
 とにかく全く違います。何もかもが。
「当たり前でしょ」
「だからこんな風な外観なんですね」
「そうよ。入ったら駄目だからね」
「別に入りませんし」
 今度は随分と呆気なく返してきました。
「スパイじゃないですし」
「ならいいけれど」
「しかし。本当に凄い場所ですね」
 阿波野君はあらためて東寮を見上げながら言うのでした。
「下手したら要塞ですね」
「中も凄いんだから」
「上下関係がですか?」
「ええ、それよ」
 昔に比べてかなり緩やかになったって言われていますけれどやっぱり厳しいことは厳しいのです。私の場合は一緒の部屋の三年の人が長池先輩で助かりましたけれど。
「厳しいのよ、女の子の世界は」
「宝塚みたいですね」 
 随分とみらびやかな世界を出してきました。
「それか帝国海軍か」
「またかなりかけ離れたもの出してくるわね」
 宝塚と帝国海軍っていったらもう別世界みたいに違うんじゃないでしょうか。御年輩の方々に海軍のお話はよく聞きますが壮絶なものがあります。
「その二つって」
「海軍兵学校ですけれどね。凄かったんですよね」
「話には少しだけ聞いてるわ」
 私もこう阿波野君に返しました。 
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