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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第3話

同日、20:30――――





~カレイジャス・会議室~



「………………そうか。カイエン公はただでさえエレボニア帝国に対して怒りの炎が燃え上がっているメンフィルに更に油を注いだのか……そしてルーファス君は既に”処刑”された上、エリス君とリィン君を助けると同時に貴族連合――――エレボニア帝国に対しての”報復”としてヘイムダル襲撃、バリアハートとオルディス制圧を同時に行う事に加えてバルヘイム宮の爆撃とパンダグリュエルの制圧、貴族連合に加担している貴族の当主達の処刑か…………ハハ、敵に対して全く容赦しないメンフィルならではのとんでもない戦術だね……普通ならありえない話だろうが、”リベールの異変”でグロリアスを制圧する際”結社”の”猟兵”達を皆殺しにした事に加えて”執行者”―――”痩せ狼”を騙し討ちする形で殺害した件を考えるとメンフィルなら冗談抜きで実行するだろうね……」

事情を全て聞き終えたオリヴァルト皇子は疲れた表情で肩を落とし

「そ、そんな……確かにエレボニア帝国に全面的に非があるけど、幾ら何でもやり過ぎだよ……!」

「そこまでする程メンフィルはエレボニアに対して怒っているという証拠だね……」

トワは悲痛そうな表情をし、ジョルジュは重々しい様子を纏って呟いた。

「…………殿下。今からでも遅くありません。リウイ陛下達に接触して、今まで謝罪や説明ができなかった事やエレボニア帝国の非を陛下達に謝罪して何とか”報復”を思い留まってもらうように交渉するべきです。」

目を伏せて考え込んでいたアルゼイド子爵は真剣な表情でオリヴァルト皇子に提案した。



「そうしたいのは山々だけど、先程話に出た作戦の内容を変更させて二人を救出できる”代案”や”代償”をこちらは用意する事はできないから、絶対に聞き入れてくれないよ。」

「それは………………ですがまだ交渉の余地はあると思います。彼らの話によると二人の救出後にレン姫がエレボニアがメンフィルとの戦争を回避する条件を開示する為に殿下に接触する事を考えると、少なくてもまだ本格的なエレボニア侵攻はしないと考えられます。」

疲れた表情をしているオリヴァルト皇子の正論に反論できないアルゼイド子爵は辛そうな表情をしたがすぐに気を取り直して、提案した。

「フム…………―――リグレ侯爵、だったか。彼の話によるとメンフィルはリィン君の救出と同時に確保する予定であるアルフィンに直接危害を加えるつもりはないんだね?」

「は、はい。レン姫が殿下に接触した際にアルフィン殿下の”今後”をお伝えすると仰っていました。」

オリヴァルト皇子の質問にセレーネは真剣な表情で答えた。



「アルフィン殿下の”今後”を伝えるという言い方が気になるよね……その言い方から推測するとメンフィルはアルフィン殿下自身に今回の戦争の責任を取らせるような気がするよね……?」

「ああ……アルフィン殿下にとって辛い内容じゃないといいんだけど……」

トワとジョルジュはそれぞれ不安そうな表情で考え込み

「申し訳ございません、殿下!父の……アルバレア公爵家の暴走によって、エレボニアどころかアルフィン殿下までもが窮地の身に陥ってしまいました……!俺がもっと早くバリアハートに戻って、父の暴走を知った時にこの手で父を殺してでも止めていればこんな事には……!」

「ユーシスさん……」

頭を深く下げて謝罪するユーシスをエマは心配そうな表情で見つめていた。



「頭を上げてくれ、ユーシス君。君の責任ではないよ。責任があるとすれば、ユミル襲撃の件を知ってすぐにリウイ陛下達に謝罪しに行かなかった私だ。ルーファス君達の事は本当に残念だったが……せめて君だけはメンフィルに処罰されないようにリウイ陛下達に頼み込むつもりだよ。」

「殿下…………ッ……!」

「というか普通に疑問なんだけど、そっちは1度目のユミル襲撃をいつ知って、知った後に何でカレイジャスがあるのに今までメンフィルに謝罪しに行かなかったの~?」

「ミ、ミリアムちゃん。」

「君な………いい加減オブラートに包む言い方を覚えるべきだぞ。」

オリヴァルト皇子に対するミリアムの質問にクレア大尉は冷や汗をかき、マキアスは呆れた表情で指摘した。



「……でも、ミリアムの言っている事も強ち間違っていないかも。エレボニアの皇族がユミル襲撃の件に関してもっと早くメンフィルに謝罪していれば、状況は変わっていたかもしれないし。」

「フィー、それは……」

「しかも昨日にユミルに到着していたら”英雄王”達と親しい間柄である”ブレイサーロード”達もユミルにいたから、彼女達に仲裁してもらって状況を少しでも変えられた可能性はそれなりにあったでしょうね。」

「セリーヌ……」

ミリアムに続くように指摘したフィーとセリーヌの正論にラウラとエマは複雑そうな表情をした。

「……情けない事に1度目のユミル襲撃の件を知ったのは1度目のユミル襲撃が起こって10日後あたりだ。本当ならすぐにでもロレントのメンフィル大使館に向かうべきだと思ったのだが、ちょうどその頃はトワ君達と合流する直前だったんでね……彼女達の為に合流地点を変える訳にはいかなかったんだよ。ユミルに君達がいる情報と貴族連合が君達の身柄の確保に向けて本格的に動き出している情報を知って、トワ君達や君達と合流してからすぐにでも向かうつもりだったのだが……」

「ごめんね、みんな……!わたし達がもっと早く殿下達と合流していたら、こんな事にはならなかったかもしれないし……!う、ううっ……」

「トワ会長……」

「会長達の責任ではありませんから、会長が責任に思う事はありませんよ……」

オリヴァルト皇子の話の後に辛そうな表情で語り、涙を流し始めたトワをエリオットとアリサは辛そうな表情で見つめていた。



「失礼ながら意見をさせて頂きますが今はそれぞれの不手際を嘆く事よりも、わたくし達が今の状況で”何をするべき”かを考えるべきですわ。」

「……そうだな。悔しいが俺達じゃあメンフィルの報復行動は止められねぇな。ルーファス卿をもう処刑した事を考えると恐らく明日にでもエレボニアに対する報復行動やリィンとエリス嬢ちゃんの救出作戦を実行するだろうな。」

シャロンの意見にトヴァルは複雑そうな表情で頷き

「オレ達が今の状況で”何をするべき”、か……できるとすれば、リィンの救出に向かう事しか思い浮かばないが……」

「アタシ達が勝手に動いたせいで綿密に計画してある救出作戦を台無しにされたら、メンフィルが更に怒るかもしれないから、それは止めたほうがいいと思うわよ。」

ガイウスの言葉を聞いたセリーヌは静かな表情で指摘した。



「……リィンとエリスが救出される事は確実なんだから、いっそメンフィルの作戦に便乗してユーゲント陛下達を救出できないかしら?」

「え……ユ、ユーゲント陛下達の救出、ですか?」

「……ユーゲント陛下達を救出できれば”貴族連合”の大義名分を失わせる事はでき、内戦の状況は大きく変わるでしょうし、貴族連合に加担している貴族達が貴族連合からの脱退をする可能性も出てきますね。」

サラ教官の提案を聞いたセレーネは戸惑い、クレア大尉は真剣な表情で考え込んだ。

「フム……確かに現状を考えるとそれしかないし、それが最善の方法だな。…………私は皇族として……アルフィンの兄として失格だな。多くの犠牲者が出る上アルフィンがメンフィルに拘束されると理解していながら、内戦の終結の為に彼らや妹を見捨てる事を決めたのだから……」

「殿下…………」

重々しい様子を纏ったオリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は辛そうな表情で見つめ、その場にいる全員も辛い思いを抱え込み、その場は重苦しい空気に包みこまれた。

「……さてと。そうと決まればメンフィルの皇族達に接触すべきだね。子爵閣下、ユミルに向かってくれ。ユミルの防衛部隊の指揮を取っているマーシルン家の方々に接触する。」

「御意。」

その後”カレイジャス”は再びユミルへと向かった。


同日、21:30―――――





~メンフィル帝国軍・ユミル地方防衛部隊~



「え?オリヴァルト皇子が私との面会を求めている、ですか?」

1時間後ユミル郊外に展開されてある陣の天幕の中でゼトからの報告を聞いたエイリークは不思議そうな表情で首を傾げた。

「ハッ。エリス嬢の救出作戦に自分達も関わらせて欲しく、ユミルに駐屯しているメンフィル皇族との面会を求めていると仰っています。いかがなさいますか?」

「エリスさんの?…………わかりました。ただし、同行者は二人までで面会する間は自分達の武装を私達に預けて頂く事を伝えてください。」

「御意。」

その後オリヴァルト皇子がアルゼイド子爵とセレーネを同行者にして、ゼトを始めとしたメンフィル兵達を背後に控えさせたエイリークとの面会を始めた。



「夜分遅くでありながら、急な面会に応じて頂き誠にありがとうございます、エイリーク皇女殿下。」

「―――こうして顔を合わせるのはリウイ祖父上とイリーナ様の結婚式以来ですね、オリヴァルト皇子。メンフィルとエレボニアの関係がここまでこじれてしまっての再会は個人的には非常に残念に思っています。」

「いえ……これも全て私達の不手際ですので、皇女殿下がお気になさる必要はありません。謝罪が遅くなりましたが、今この場を借りてエレボニア皇家を代表させて謝罪の言葉を申し上げさせて下さい。我々エレボニア皇家の不甲斐なさによって、貴国まで内戦に巻き込んでしまい、誠に申し訳ありませんでした…………」

エイリークの言葉に対し、オリヴァルト皇子は静かな表情で答えた後頭を深く下げ

「………………セレーネさんに関しましては一応”初めまして”になりますね。ユミルでは満足な挨拶ができずに去ってしまい、申し訳ありません。」

オリヴァルト皇子の謝罪を目を伏せて黙って聞いていたエイリークは重苦しい空気を変える為にセレーネに視線を向けた。

「い、いえ。エイリーク様達がご多忙の身である事は理解しておりますので、どうかお気になさらないで下さい。」

エイリークに視線を向けられたセレーネは緊張した様子で答えた。



「それで……私に何の御用でしょうか?何でもエリスさんの救出作戦に関わらせて欲しいとの事ですが……」

「はい。リグレ候の話によるとメンフィル軍は近日中にヘイムダル、バリアハート、オルディスに襲撃し、それらの襲撃によって貴族連合軍が混乱している間にカレル離宮にいるエリス嬢を救出するとの事。その際に私達を同行させて頂きたいのです。」

「……一体何の為でしょうか?」

「エリス嬢と共にカレル離宮に幽閉されている父上――――ユーゲント三世を始めとしたエレボニア皇家の者達とレーグニッツ知事を救出する為です。皇帝であるユーゲント三世を救出する事ができれば、貴族連合軍に”大義名分”を失わせる事ができ、内戦の終結を早める事ができると判断しました。」

「勿論同行させて頂くからには私達もリフィア殿下達と共にカレル離宮にいる近衛軍と剣を交え、彼らを無力化する所存であります。」

「フゥ……申し訳ありませんが”無力化”では話になりません。カレル離宮を襲撃する部隊―――――リフィア殿下が率いる部隊は離宮を守る近衛兵達を”皆殺し”――――つまり命を奪う予定になっています。殿下の部隊に同行するからには自国の兵達を殺す覚悟は持ってもらわないと困ります。当然同行する者達が皇族や貴族もそうですが、士官学院生達にも最低でも”その程度”の覚悟を持ってもらう必要があります。」

オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵の話を聞いたエイリークは溜息を吐いた後真剣な表情で答えた。



「つまりリフィア殿下の部隊に同行する為にはわたくし達もカレル離宮にいる近衛兵達を殺さないとダメという事でしょうか……?」

「ええ。エレボニア帝国に対する”報復”の一部としてカレル離宮にいる近衛兵達を”皆殺し”にするという内容ですから。というかセレーネさんのその口ぶりからすると、ユーゲント三世達を救出するメンバーは”Ⅶ組”なのですか?」

辛そうな表情をしているセレーネの疑問に答えたエイリークは眉を顰めてオリヴァルト皇子を見つめて問いかけた。

「はい。お恥ずかしい話になりますが”カレイジャス”にいる乗員で戦える者は私と子爵閣下を除けば士官学院生達と彼らに協力する者達のみですので。」

「……ですが彼らは学生とは言え、内戦勃発前に各地で起こっていた”帝国解放戦線”や”貴族派”による事件を解決に導いた実績があります。ですので決して足手纏いにはならないので、どうか同行を許可して頂けないでしょうか?勿論その際は私や”鉄道憲兵隊”のクレア大尉も同行し、率先してリフィア殿下達と共に近衛兵達を討ち取る所存であります。」

「…………申し訳ありませんが私の権限では皆さんの同行の許可を出す事はできませんので、今からリウイ祖父上に相談し、指示を仰ぎます。」

「あ、ありがとうございます……!」

二人の話を黙って聞いていたエイリークは立ち上がり、天幕から退出し、そして数分後に戻って来た。



「――――お待たせしました。結論から申し上げますと同行の許可は出さないとの事です。」

「そ、そんな………っ!」

「………それはやはり、”敵国”と認定した私達の事が信用できず、私達がメンフィル帝国の救出作戦や報復行動の妨害をするとお思いなのでしょうか?」

エイリークの口から出た非情な答えにセレーネは悲痛そうな表情をし、オリヴァルト皇子は複雑そうな表情で問いかけた。

「それも理由の一つですが、トールズ士官学院の”常任理事”として極一部の生徒を除けば”人の命を奪い合う本物の戦場”を経験した事もない生徒達に自分達の命を賭けて大勢の近衛兵達の命を奪う戦いに参加させられないとの事です。」

「それは………………」

「………………彼らも”士官学院生”―――つまりは”兵の見習い”です。いつかは経験する事ゆえ、”社会勉強”として”経験”させて頂けないでしょうか?」

エイリークの正論にオリヴァルト皇子が反論できない中、アルゼイド子爵が真剣な表情で問いかけた。



「……例え人を殺す覚悟があったとしてもいざ実際に殺せば、ショックを受け、”足手纏い”になる可能性が十分に考えられます。参加する士官学院生全員が近衛兵達を殺しても平気でいられると保証できるのですか?」

「……それに関してはこちらが厳密に選び、その者達を同行させますし、学生達を参加させる事が不可能ならば私とオリヴァルト皇子、クレア大尉が同行してリフィア殿下達と協力して近衛兵達を討ち取る所存ですのでご心配には及びません。」

ゼトの問いかけに対し、アルゼイド子爵は静かな表情で答えたが

「幾ら言葉を並べた所でエレボニア帝国との戦争の総指揮官を務めているリウイ祖父上が判断した以上、同行の許可は出せません。」

「そ、そんな……」

エイリークは不許可の言葉を口にし、その言葉を聞いたセレーネは悲痛そうな表情をした。



「―――ですが、エリスさんを救出した後ならばそちらの好きにして構わないと仰っていました。」

「え…………それはどういう事でしょうか?」

しかしエイリークの口から出た意外な答えにセレーネは呆けた表情をして問いかけ

「……もしかしてエリス君を救出した後ならば、我々が独自にカレル離宮に突入して、父上達を救出しても構わないという事でしょうか?」

「あ……っ!」

オリヴァルト皇子の推測を聞いたセレーネは明るい表情をした。

「ええ。エリスさんの救出後、そちらにエリスさんの救出成功を伝えるとの事です。―――明日の12:00。その時刻が作戦開始の時刻です。作戦開始後帝都近郊を警備している貴族連合の飛行艇を全て撃墜しますので、その際にそちらに連絡を差し上げますのでそちらで何とか自力でカレル離宮の上空まで向かって下さい。エリスさんを救出した際、エリゼからそちらに連絡を差し上げるように手配するとの事です。」

「……了解しました。メンフィル帝国の寛大なお心に心から感謝いたします……それでは私達はこれで失礼させて頂きます。」

その後メンフィル兵に預けていた自分達の武装を返却してもらったオリヴァルト皇子達は”カレイジャス”に戻って事情を説明し、ユーゲント三世達を救出する明日に備えてそれぞれ休み始めた。



そして翌日。メンフィル帝国軍はエリスの救出とエレボニア帝国に対する”報復”をする為に帝都ヘイムダル、翡翠の公都バリアハート、海都オルディスを同時に襲撃していた……! 
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