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英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)

作者:sorano
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第55話

~ベルゼビュート宮殿~



「……………っつ……ハッ!?」

気を失っていたセオビットは意識を取り戻し、起き上がった。

「あ………よかった………目覚めて………」

「…………シルフィエッタ………」

そして背後から声が聞こえ、振り向くとそこには安堵の表情を浮かべたシルフィエッタがいた。

「グッ…………」

その時、背中の痛みを感じ、セオビットは呻いた。

「無理をしないで。治癒魔術はかけたけど、まだ完全には治りきっていないわ。今は身体を休めなさい。」

「…………そう。確か水面に落ちたはずだけど………貴女が運んだの?」

「ええ。ずっと水につかっていると風邪を引くでしょう?」

「………………」

シルフィエッタの説明を聞いたセオビットは黙り込み、近くにあった壁に背もたれた。

「「…………………」」

そして少しの間、2人は黙り込み、その場に静寂が訪れたが

「………いくつか貴女に尋ねたい事があるのだけど………いいかしら?」

何かを決意した表情のシルフィエッタが静寂を破り、静かな声でセオビットに尋ねた。

「………私が答える事ができる事なら答えてあげるわ。」

「わかったわ。じゃあ………」

そしてシルフィエッタはセオビットに何故行方不明になったか、その後どのような生活をしているのか、そしてリウイを何故”父”と呼んでいるのかを尋ね、セオビットはシルフィエッタから視線を外しながら静かに答えて言った。

「……………そんな事が…………でも……その事が切っ掛けで今の貴女は親しい人もできて充実な日々を送っているようね…………それにあの半魔神の方――――リウイ陛下は貴女の事を娘として可愛がってくれているのね………」

「……ええ。私にとって父様―――リウイ様は私を受け入れてくれた恩人で憧れの人よ。…………イグナートと違ってね。」

「………………」

セオビットの話を聞いたシルフィエッタは驚いて黙り込み考え込んだ後、やがて決意の表情でセオビットを見つめた。



「………イグナートで思い出したけど………先程のリウイ陛下の話―――私に償いをしたいというのはどういう事?」

「っつ………!…………」

シルフィエッタに尋ねられたセオビットは辛そうな表情で黙り込んだ後、静かに答え始めた。

「だって………貴女は違ったから…………」

「え?」

「貴女は………シルフィエッタはイグナートと違って、私に親として何度も接しようとしてくれた!………貴女にとって私は憎んでいる男に無理やり孕まされ、仕方なく産んだ娘なのに………」

「………………」

セオビットの話を聞いたシルフィエッタは驚きの表情でセオビットを見つめた。

「私はその事に気づかず、貴女をいつも愚か者の母と蔑んでいた!………フフッ………本当に愚かなのは私ね……………求めていた親のぬくもりがちゃんとあったのに全てを失った後新しい生活をし始めて、その事に気付くなんて……………」

「………………………」

皮肉気な笑みを浮かべたセオビットをシルフィエッタは驚きの表情で見つめ続けた後

「……………」

「ちょ、ちょっと!?」

なんとセオビットを優しく抱き締め、セオビットはシルフィエッタの行動に戸惑った。

「……ごめんね………貴女の本当の気持ちに気付けなくて…………」

「そんなっ………謝るのは私の方よ!………貴女は私に親として接しようとしてくれたのに………私はそれに気づかなく、いつも酷い事をっ………!ごめんなさい………!本当にごめんなさい………!!ううっ………ああ………うああああ…………!」

シルフィエッタの言葉を聞いたセオビットは驚いた後、涙を流しながら謝り、泣き続けた。

「セオビット………………」

そしてシルフィエッタは泣き続けるセオビットの背中を泣き続ける赤ん坊をあやすかのように撫でながら、目を閉じて微笑みを浮かべて涙を流し続けた。その後、セオビットは泣き終えた。



「…………恥ずかしい所を見せてしまったわね………」

泣き終わったセオビットはシルフィエッタから離れ、顔を明後日の方に向けて呟いた。

「ふふ………気にしないで。貴女は私の血の繋がった娘なんだから。どれだけ成長しようと母に涙を見られるのは恥ずかしい事ではないわ。」

「…………………」

自分の言葉を聞いて微笑んでいるシルフィエッタをセオビットは驚きの表情で見つめた後

「………私の事………まだ娘として接してくれるの?………昔は貴女を蔑み、貴女が心底から嫌い、憎んでいる男に無理やり孕まされた娘なのに………」

言い辛そうな表情でシルフィエッタに尋ねた。

「………確かに貴女の言う通り………貴女は私が望んで産んだ娘ではないわ。………だけど貴女が私の娘である事は変わらない。それに今の貴女は昔の貴女と違って………優しさや明るさがあるわ。それだけで十分よ。それに私は信じていた………貴女とならいつか分かり合えるって………」

尋ねられたシルフィエッタは静かに答えた後、優しい微笑みを浮かべた。

「シルフィエッタ…………」

「フフ………貴女こそ私の事、さっき助けてくれたみたいに”母様”と呼んでくれないのかしら?」

嬉しそうな表情で自分を見つめるセオビットにシルフィエッタは上品に笑いながら尋ねた。

「え………いいの………?」

「いいも何も、私は貴女の”母”なんだから。」

「母様………!」

シルフィエッタの言葉を聞いたセオビットは嬉しそうな表情でシルフィエッタを自分が呼びたかった名で呼んだ。

「フフ………よければ貴女の今の生活の事、もっと詳しく教えてくれないかしら?」

「ふふっ、いいわよ♪…………」

そしてセオビットはシルフィエッタにメンフィルでの充実した日々や生活を詳しく話し、シルフィエッタは微笑ましそうに聞いていた。



「…………そう。話を聞くところ、貴女の心変わりの切っ掛けとなったのはリウイ陛下が元のようね………」

話を聞き終えたシルフィエッタは静かな表情で呟いた。

「ええ。父様は優しく、気高く、そして誇り高い”王”よ。母様も父様はイグナートとは違う事ぐらいはわかるでしょう?」

「………ええ。まだあまり接していないから全てはわからないけど、あの方はイグナートを含めた私の知る”魔族”とは余りにも違う方という事はわかったわ。………それに………何より違うのはまぞ………いえ、異種族であるあの方をイリーナ皇妃や他の側室の方達が心からあの方を愛している事ね………」

「ふふっ。なんなら父様に抱かれてみれば?父様なら優しく抱いてくれるわよ?私の時はそうだし♪」

「セ、セオビット!?貴女、まさか…………!」

魅惑な笑みを浮かべたセオビットの言葉を聞いたシルフィエッタは顔を赤らめて驚きの表情でセオビットを見つめた。

「ええ♪使い魔になる証として私の処女を捧げたわ♪それに時々私から望んで抱いてもらっているわ♪」

「もう………この娘ったら………」

セオビットの話を聞いたシルフィエッタは呆れた表情で溜息を吐いた。するとその時

「ねえ、リウイ!2人はまだ見つからない!?」

「待て。……………!!いたぞ。このまま降下して行け。」

「了解!!カファルー、お願い!」

「グオ。」

カファルーに乗ったエステルとリウイが2人の傍に降りて来た。



「父様!それにエステルも。」

カファルーから降りた2人を見たセオビットは嬉しそうな表情で見つめた。

「………2人とも無事だったか。」

「ごめんね~、助けに来るのが遅くなって。あの後、魔物や悪魔達が次々と現れて、倒してもすぐに次のが現れたし、全部倒すのに時間がかかったのよ~。」

2人の無事な様子を見たリウイは静かに呟き、エステルは苦笑しながら説明した。

「そんな事があったのですか………他の方達はどうしていますか?」

「えっと………セリカの使い魔―――リ・クアルー?だったかしら。その人が結界を貼ってくれたから、あたし達が戦った場所は今、安全地帯でみんなには一休みしてもらっているわ。」

自分の説明を聞き、尋ねたシルフィエッタにエステルはさらに詳細な説明をした。

「そう……………私も十分休んだわ。母様は大丈夫?」

「ええ。行きましょうか、セオビット。」

「あれ?今、セオビット………シルフィエッタさんの事、”母様”って呼ばなかった??」

セオビットとシルフィエッタの会話を聞いたエステルは首を傾げて尋ね

「………どうやら和解できたようだな………」

リウイは静かな笑みを浮かべて2人を見つめていた。

「はい………!」

「???よくわからないけど、ま、嬉しい事みたいだしいっか………それよりみんなが待っているから、早く行こう!」

リウイの言葉に嬉しそうに頷いているセオビットを見たエステルは首を傾げていたが、気にせず提案した。

「そうですね。でも、その前に…………」

エステルの提案に頷いたシルフィエッタはリウイを見つめた。

「何だ?」

「この娘に……セオビットに光の世界で生活をさせてくれてありがとうございます。………貴方のお蔭で娘と和解できました………」

「………俺がしたのはそいつを使い魔にし、我が国に受け入れたに過ぎん。生活に関しては俺は特別何もせず、自分から勝手に出てレン達と関わってきままに生活していたしな………」

「………それでも………貴方のお蔭である事は違いありません。……短い間ですが、貴方の今までの行動や貴方を信じる方達を見て………まだ全てを信じる訳ではありませんが………貴方個人は信じたくなりました…………機会があれば、貴方の事や何故”共存”を目指すか尋ねても構いませんか?」

静かに答えたリウイにシルフィエッタは静かに言った後、頬をわずかに赤く染めて尋ねた。

「………お前が望むのなら、いつでも答えてやろう。………行くぞ。」

一方シルフィエッタの言葉を聞いたリウイは一瞬驚き、すぐに気を取り直して静かな笑みを浮かべて呟いた後、外套を翻してカファルーに近づいて行った。

「………………………」

自分に背を向けて歩くリウイをシルフィエッタは頬を赤く染めながら見つめていた。

(ん~………?シルフィエッタさんのあの目………まるでクローゼやジョゼットがヨシュアを見る目と同じじゃない。って事は。…………あ、あの男は~!?イリーナさんがいる癖に”また”なの!?)

(ふふっ。母様が父様に抱かれる日も近いかもしれないわね♪母様が父様に身体を許したら………いつか一緒に父様に可愛がってもらいましょうね♪)

一方シルフィエッタの様子に気付いたエステルはジト目でシルフィエッタを見つめて考え込んだ後、怒りの表情でリウイを見つめ、セオビットは小悪魔な笑みを浮かべていた。その後リース達と合流したエステル達は先を進み、ついに終点に到着した。



~ベルゼビュート宮殿・最奥~



「あれは……次の”星層”へ行く為の転位陣………!」

「………気を付けて下さい。今までの事を考えると恐らくここにも………」

広間の最奥に見えた転位陣に気付いたアドルは声を上げ、リースは周囲を警戒しながら呟いたその時

「!!この気配は………!」

「フン、やはりか。滅したはずのかつての敵達が次々と蘇っているという話だったからな。今更貴様が蘇った所で驚きはせん…………姿を見せるがいい、ブレアード!!」

エクリアは何かに気付いて驚き、リウイは眉を顰めてある人物の名前を叫んだ!

「へ!?ちょっ、その名前って………!」

リウイが呟いた言葉を聞いたエステルが驚いたその時!

「ククク………ようやく来たな。”神殺し”とフェミリンスの娘よ。それに生意気にも創造主たるこの我にたてついた小僧が。」

なんとリース達の目の前に巨大な身体で両肩に竜の頭を宿らせ、さらに足の部分は尻尾になっている魔術師の姿をした人物が現れた!

「ブレアード・カッサレ………!!」

「………カッサレ………だと?」

(貴様か!………全く我等は”カッサレ”と因縁が深いだの………!)

敵――――かつて”姫神”フェミリンスを滅ぼす為にカファルーやエヴリーヌ達―――”深凌の楔魔”を召喚し、使役し、さらに広大な迷宮を気付いた主―――大魔術師ブレアード・カッサレの登場にエクリアはブレアードを睨みながら叫び、セリカは覚えのある名前に首を傾げ、ハイシェラは驚いた後、敵を睨みながら溜息を吐いた。

「ククク………”影の国”………非常に興味深い世界だ!我が蘇り…………そして憎きフェミリンスすらも存在しているのだからな!」

「何!?」

「なっ!?」

「あ、あんですって~!?」

不気味に笑いながら高々と言ったブレアードの言葉を聞いたリウイとエクリア、エステルは驚いた!



「奴を取り込む前に今度こそ貴様を取り込む!”神殺し”よ!そしてフェミリンスの娘!今度こそ貴様を性奴にし、我自ら調教し慰み者して、フェミリンス共々魔物共の苗床としれくよう………カカッ!!」

「!!」

「…………貴様の事は忘れたが………敵である事には違いはない。そして俺の”使徒”に手を出すなら殺す。それだけだ。」

ブレアードの言葉を聞いたエクリアは身を震わせ、セリカは睨み

「そして”破戒の魔人”の贄よ………貴様もフェミリンスの娘と共に性奴にしてやろう。カカッ!貴様も良い苗床になりそうだ!」

「………っつ………!!」

「………ようやくイグナートから解放された母様をこれ以上犯しはさせない!!」

同じくブレアードに視線を向けられたシルフィエッタはかつての事を思い出して表情を青褪めさせ、セオビットはシルフィエッタの前に出て怒りの表情でブレアードを睨み

「そして黒翼の小娘よ。貴様も興味深い!貴様が手に入れた”叡智”………我が有効に活用してやろう。」

「………っつ……………!!」

「何で翼もついていないティオちゃんの事をそんな風に呼ぶかわからないけど…………あんたみたいな奴は絶対ブッ飛ばすわっ!!」

さらに同じように自分も視線を向けられたティオは表情を青褪めさせ、エステルは眉を顰めた後敵を睨んだ!

「フン、小娘が。貴様たちはこの大魔術師ブレアード・カッサレの前に必ず屈する!貴様の発言がどれだけ愚かか………貴様を性奴にした後、たっぷりと調教してくれる!出でよ!!」

一方ブレアードは嘲笑した後、大勢の魔物や悪魔達を召喚した!

「なっ………!なんて数だっ………!!」

敵の数を見たヨシュアは驚いた!

「………フェミリンス自身が存在しているという貴様の言葉は気になるが………それはいずれわかる事。今度こそ滅せよ!………来い、マーリオン!!」

リウイは静かに呟いた後、全身にすざましい闘気を纏って武器を構え、マーリオンを召喚し

「リ・クアルー!リリエム!!」

セリカは再びリ・クアルーとそして睡魔族の娘の使い魔―――リリエムを召喚し

「………お前もだ!ハイシェラ!!」

さらに剣を掲げてハイシェラの名を叫んだ!

「ハハハハハハハッ!!アストライ………いや、サティアには感謝しないとな!お前があの娘と性魔術をしたお蔭で、膨大な魔力を得、こうして我が再び現れる事ができるからな!!さあ………”地の魔神”の恐ろしさ………たっぷりと刻み込んでやるだの!!」

すると剣から光た出て、光はなんとハイシェラの姿になり、ハイシェラは高笑いをした後、剣を構えて凶悪な笑みを浮かべた!

「お願いします、ラグタス!!貴女もです、ラテンニール!!」

「うむ!あのような者…………天使として見過ごせん!!」

「蹂躙してヤロウッ!!」

ティオはラグタスとラテンニールを召喚し、召喚されたラグタスは敵を睨み、ラテンニールは意気揚々と武器を構え

「みんな、力を貸して!!」

エステルも自分が契約している者達全員を召喚した!

「グオオオオオオオオオオオ――――――――――――――ッ!!」

召喚された者達の中でカファルーが雄たけびをあげ、全身にすざましい炎や怒気を纏って敵を睨んでいた!

「”星杯騎士”として………貴方を滅します………外法!!」

「行くぞ、みんな!!」

リースは法剣を構えて敵を睨み、アドルは全員に呼びかけた!



そしてリース達は大魔術師ブレアード達との戦闘を開始した…………!
 
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