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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第233話 気になる瞳

 
前書き
~一言~

……ひじょーに、遅れてしまってすみません………。りあるが、気温上昇とともに、鬼畜モードに……
更に、鬼畜なのが、PCが勝手にウインドウズ7→10になった、と言う事です……、ヤフーニュースにも上がってて驚きました……。おかげで、春風様に自動ログイン仕様にしていたのに、初期化? したのか ログイン出来なくって、メルアドとPASSもほとんど忘れてて……、あれこれ探して試して大変で……、諦める……の?? と頭に過ぎりかけたのですが、何とか!! 復活する事が出来ました!!

……ちゃんと、メモをしておきますm(__)m

そしてそして、何とか1話分できましたが、やっぱり時間はかかっちゃう……んです……。すみません……。
な、何とか頑張っていきます!!

最後に、この小説を読んでくださってありがとうございます。これからも、頑張ります。

                                 じーくw 

 


 最後の一撃。

 絶剣と剣聖、2人の渾身の一撃は、アスナとレイナのHPゲージを吹き飛ばす寸前で、ぴたりと停止していた。だが、鬼気迫ると言っていい、渾身の寸止めだったからか、衝撃波(エフェクト)は止まる事は無かった。

 それは 2つの……輝き。


【鮮やかな十字の輝き】

【天より降り注ぐ太陽の様な輝き】


 それらの輝きは、これまでの数合の打ち合いで発生したどの衝突によるエフェクトよりも強い輝きだった。戦いを見守っていた観客(ギャラリー)全員を包み込む程に。


「あ……」
「うーん……、流石アスナとレイ……。出させた(・・・・)、わね………」

 リーファは絶句し、リズは呆然としつつも、称賛を呟いていた。
 2人共が、最強と称されている渾名を持つ2人組の必殺技。それも、この辻デュエルが始まって以来、一度も出してないとされている夫々の《オリジナル・ソードスキル》を引っ張り出したのだ。
 更に言えば、これまでの戦いで、それも 2対2形式の戦いで、ここまであの絶剣と剣聖に善戦した者たちなど、それも見せ場を考えれば、追い詰めた、と言ってもよい見せ場を作れた者たちなど、誰もいないハズだった。ダメージ量を考えたら、初の快挙。


――快挙と言わしめる程の強さを持つ、絶剣と剣聖の2人には改めて脱帽だと思えるが。


 そして、リーファは一歩、踏み出した。
 あの一撃を――いや、十一連撃と十連撃を受けて、HPゲージが残っているとは考えにくい。確かに蘇生をする為には馬鹿にならない金額が発生する。
 それ以外の方法でいえば、高位の魔法使い(ハイ・マジック・ユーザー)大魔法使い(マギステル・マギ)のリタがいれば、蘇生魔法もできるのだが、生憎今は アインクラッドはシルフ領土上空ではない為、いない。

 つまり、2人を蘇生するためには、前者、アイテムによる蘇生しかなく、金額も跳ね上がるのだが、それは全くリーファは考えてなかった。

 こんな名勝負を魅せてくれた事もそうだし、何よりも 大切な仲間であるアスナとレイナの為ならば、何でもないから。……それに、自分がいかなくても、横で控えている()なら 速攻で行くだろうことも判る。
 そんな時だ。

「――いや、2人は大丈夫だ」
「えっ……??」

 まさかの一言に、思わず振り返るリーファ。
 それは、彼――リュウキからの一言だった。

 あれ程の技を、必殺技を受けて、『大丈夫』という発想そのものが無かった。リュウキの隣にいるキリトも同様に頷いている様だ。

「で、でも あんなの貰ったら―――」

 リーファがそう返すのも当然だろう。
 そう言っている内に、エフェクトで彩られた砂煙が晴れてきた。

 そこに目を凝らしてみてみる一行。

 確かに――、そこには4つのHPゲージが存在していた。間違いなく、生きているということが判ったのだ。

 そして、唖然としているのは、リズやリーファ、シリカ達だけではなく、戦っていた張本人達も驚き、両眼を見開いていた。
 
 絶剣のユウキは、立ち尽くすアスナの前に立ち。
 剣聖のランは、頭上からの攻撃故に、倒れてしまっていたレイナを左手で引き起こしていた。

 そして、対照的であり、夫々共通しているのは……、唖然としているアスナとレイナ、そして もう1つ、とても良い笑顔のユウキとランだった。
 笑顔を向けたままに、威勢の良い声が発せられた。

「うーんっ、すっごくいいね! どう? 姉ちゃんっ!」
「私も、そう思うよ。ユウ。お2人に協力を仰ぎたい、って思う」

 元気いっぱいに話すユウキと、それを訊いて微笑みながら頷くラン。
 いったい何の話をしているのか判らないアスナとレイナは、ただただ 呆然としていた。

「な………ええ……?」
「あ、あの、………え?」

 何が何やら訳が分からない、ということであり、自分でも間抜けに思う声を漏らすことしかできなかった。

「その、どういう……? それに、デュエルの決着は……?」

 アスナからの一言である。当然、今の今まで 自分でいうのも何だと思うが、それなりに白熱したバトルを展開していたハズだ。よく考えてみたら、アスナとレイナ、2人のコンビについては、いろいろと騒がれているものの、対人戦(PvP)では、そこまで経験がある訳ではなく、デュエルに関しても、1対1が常だった。

 邪神級モンスターや、あの規格外とも言えるステータスの持ち主、フロアBOSSを相手にするなら兎も角、プレイヤー同士のタッグ戦だった訳だから、やっぱり、熱はかなり入っていたのだ。

「あ……、あの時、寸前で止めたの……、気のせいじゃなかったんだ……」

 レイナは、自分自身の胸元をじっと見下ろしつつ、そうつぶやいた。
 その太刀筋の速さから、《閃光》と言われている自分達だったが、今日、本当(・・)の閃光を見た気がした。頭上から降り注ぐ閃光―――、それは閃光というより……。

 と、其々いろいろと考えていた時、陽気な声が流れ出る。

「あはは。そう、でしたね。戦いの最中でした。……何も言わずに途中で止めてしまってすみません。……でも」

 ランは、笑顔のままで、ユウキの顔を見ていた。
 ユウキも同じく弾けんばかりの笑顔をランに向けて頷き、アスナとレイナを見ていう。

「うんっ、こんだけ戦えば、ボク、満足だよっ! というより、お腹いっぱいになっちゃったくらいかな? あ……でも、お姉さんたちはやっぱり、後味悪いかな? 最後までやりたい?」

 ユウキの言葉を訊いて、アスナとレイナは同時に自分自身のHPゲージを見た。後1ドット……程度である。この程度の量なら、投擲スキルでも削られかねない程の量で、そもそも、この2人の―――絶剣と剣聖の最後の一撃、あれを止めなければ、2人そろって、仲良くリメインライトになっていた筈だ。
 そう思えば、もう2人とも横に首を振るしかない。……確かに負けてしまって、情けをかけられた感が最初はあって、悔しい思いもあったが、それでも それを忘れさせてくれる程の笑顔がそこにあったから、アスナもレイナも笑顔でいられた。

「ずーっと ぴぴっ、っと来る人を探してたんだっ! で 見つかったと思ったら、いっぺんに2人もだよっ! 正直、すーっごくびっくりだよー!」

 興奮さめやまぬ様子なのは、ユウキだった。
 何がそんなに嬉しいのか、《ぴぴっ》とはどう言う意味なのか、と判らない点が多数存在しているものの、その横で笑顔で佇むランが、ユウキの頭の上に、ひょいっ と手を置いて制した。

「ほーら、落ち着きなさい。ユウ。ちゃんと説明しなきゃお姉さん達、困ってるよ?」
「あー、そうだったねぇ」

 ウインクをしながら、ぺろりっ と舌を出すユウキを見て、本当に愛らしいと感じる。それに、《ボク》という一人称も非常によく似合うというものだった。

 そんな時だ。


『おー……、すごかったなぁ……、こんなデュエル、今までお目にかかった顔とないかも……』
『やべぇって、そりゃ、オレたちが束になっても敵わない訳だわ』
『バーサク姉妹でも、無理となったら……ん~~……』


 当初こそ、デュエルの結果がよく判らず、声援を忘れて首を傾げていた観客(ギャラリー)達だったが、次第に、戦闘終了を大体察した様で、其々が口に出していた。無論、アスナとレイナの負け、と言う決着を。


 次第に、その話の内容は、『――誰だったら、あの2人を倒せるんだ?』という点に集中される。それもそうだろう。今日だけでも何人も挑戦した。……倒されるシーンは大体同じ感じであり、最終的には降参(リザイン)して終わり。
 次第に、その愛くるしい容姿、美少女だといっていい姿に人気が出てきて、2人を見るために、直に接する為に、決闘(デュエル)を挑む者も少なくなかった。

 だからだろう、忘れていたのだ。当初の目的そのものを。
 つまり……。

《初心者のくせに生意気だ》
《新参者をいっちょ凹ませてやろうっ!》

 と思っていたことを。
 だが、正直なところ、もう、ここまでの強さを見せつけられてしまえば、凹ますもなにもないが、それでもやっぱり、ALOにおいては、初心者である彼女たちに、ベテランプレイヤー達が次々と敗れられていくのは……、やはり どこか ちくり、と来るものがある。ユウキやランの様な美少女だったから、半減どころか、全損しかけていたけれど、ALO内きっての美人姉妹であり、最強姉妹とも言われていた、アスナとレイナまでもが倒されてしまった為、その感情が少なからず湧いて出た様だ。


『ん~……バーサク姉妹のアスナちゃんとレイナちゃんが負けちゃって、シルフの剣士、リーファちゃんも……だし』
『主だった奴らは、全滅って感じだよなー。……やっぱ衝撃なんわ、キリト(ブラッキー)先生だろ?? 後目ぼしいのって、領主クラスの人らだけど、あの人たち、辻デュエルになんか参加しないし……』

 
 観客(ギャラリー)達は、考え続けた。
 もう、誰もいないのだろうか? あの2人を倒せないまでも、戦える相手はいないのだろうか? と。


 そして、色々考えている雰囲気は、口に出しているからこそ、周囲にバレバレな訳で、一人の鍛冶屋兼マスターメイサーである、少女……、まぁ リズだが。リズが 妙な笑顔を見せたかと思えば、すぐに行動に出た。

「にっひひ~~。ほーーれっ!!」
「っっ!?」

 背後からこっそりと、1人の男を押して前に出した。
 その男は、先ほどの勝負の光景を食い入るように見つめていた為、背後に忍び込まれたのが読めなかった様だ。普段は『後ろにも目があるんじゃね?』と思われる程、感覚鋭い癖に、と思われたのは、また別の話。

 STR型パワーでも全開にさせていたのだろうか? 結構な力だった。元々の()の種族は、重量級ではないの+リズ自身のパワー(これがほんとの鍛冶(・・)場の馬鹿力??)もあって、丁度 観客(ギャラリー)達の視線に止まる位置にまで、押し出されてしまい……。

「…………」
『………ああっ!!』

 目が合ってしまった。
 そそくさ、と久しぶりにフードを被ろうと、ウインドウを出そうとしたのだが、最早手遅れである。

「おおおおおおお!!!!! まだいたじゃねぇかあ!! ってか、なんで今の今まで思いつかなかったんだよっ!! オレらの最後の砦!」
「リューキがいるじゃねぇか!! 我らが最終兵器(リーサルウェポン)! リュウキがよぉぉ!」

 と、盛大に湧きに湧く。

 非常に頭が痛い思いだ。確かに勝負には魅入ってしまっていて、久しぶりにゲーマーとしての血が騒ぐ思いだったのは否めなく、油断してしまったのもそうだ。
 が、それとこれとは話が別であり、今度リズの所で取引するの、辞めようか、とも思ってしまっているのは、そう、リュウキである。

「きゃーーっ、リューキくん、来てたんだーーっ!」
「たまには、レイちゃんだけじゃなくって、あたしらも相手してよー♪」
「今度、付き合って~♬ 何なら、リアルででも良いよ――♡」
「あ、私も~♬」

 今度は黄色い声援も湧いてしまう。

 場にいたのは、当然ながら、男性プレイヤーだけではない。絶剣と剣聖の魅力は、その愛くるしい容姿だけではなく、寧ろ、それ以上だといっていいのが、先ほど披露したばかりの、オリジナル・ソードスキルにあった。
 必殺技級のスキルだから、男女問わずに人気が出てくるのも仕方がないのである。

 勿論、その声援を訊いて 頬を膨らませたり、冷ややかな視線――射殺しかねない視線を向けたりする者達だっているのだが、当の本人には、その視線には 何も感じてない。仮に、その視線に気づいたとしても、『――なぜ怒っている?』と直接聞きに来るだろう。つまり、判らないということだ。

 当の本人は、この状況を、ただただ、面倒な場面に遭遇、程度にしか思っていない。
 ……決してうれしくはないのだが、ここでも、積み重ねがある。つまり、最早慣れっこだといっていいから。


「ん?」
「なんだろ??」

 そして、場が突然騒がしくなったのに勿論ユウキとランは気付いた。
 その騒動の中心に注目する。銀髪のプレイヤー、NPCではないだろうプレイヤーが1人……出てきているのに気付く。 
 当然だと言えばそうだろう。背中を押された為、円を描く様に観戦していたグループから1人だけ、前に来ているのだから。

「…………」
『…………』

 ここで、目があったのは、ランだった。銀髪の彼と目があった。

 その瞬間、ランにある事(・・・)が起こった。

 何が起きたのかを、説明しろ、と言われれば、説明などできない、と返す。

 理由は説明できない、……ただ、彼と()があった瞬間に、魅入られたのだ。


―――まるで、偉大な画家が描いた絵画に、直面した時、自然に魅入られる様に。
―――まるで、美しい大自然が作り出す現象、オーロラを初めて見たかの様に。
 

 理由は説明できない。だけど、本当に魅入られてしまった。――その瞳に。

 そして、それと同時に 自分にとって必要(・・)だと言う事も、直感した。

「ん? 姉ちゃん??」

 ユウキの目には、突然固まってしまった様にしか見えなかった為、少々戸惑っていた様だ。本当の目的を果たした今、その事に対する喜びしか無い筈だったから。
 ランは、数秒……返事をする事はなく、ユウキがランの前に出て、視界を遮られて初めて、呼ばれている事に気づいた様だ。

「ねーちゃんっ!!」
「っっ!? ど、どうしたの??」
「どーしたの、って。それはこっちのセリフだよー。どしたの? ぼーっとしててさ?」

 ユウキは、首を傾げながら聞いた。
 その隣にいた、アスナも何処となく心配をした様子で、自然と視線をランの方に向けていた。云わば身内絡みだから。だけど、同じく身内であるレイナは、騒動があったその理由、それを見て聞いて、ただただ、()の方を見て笑っていた。(勿論、黄色い声援が飛んだ辺りでは、頬を膨らませていた本人だが)

「ねぇ、ユウ」
「ん?」

 ランは、今一度、彼の方を見た後、再度ユウキを見て言った。

「本当の目的、果たせちゃったけど、いいかな? もうひとつ、だけ……」

 ユウキは、ランの言葉を訊きいた後に、周囲が煽っている内容に改めて耳を傾けた。

 曰く、『最後の砦』曰く『最終兵器(リーサル・ウェポン)』――つまり、この上なく強い相手だという事。

 更に、女の子たちからの声援が倍増しで増えている事から、男女問わずの大人気プレイヤーなのだという事も同時に理解した。

「うんっ。おっけーだよ。でも、珍しいね。姉ちゃんからそう言うなんてさ」

 ユウキは大体察した所で、にかっ と笑いながら そう言っていた。ランは、軽く手を振って、何かを誤魔化す様に笑う。
 その後、ユウキは アスナとレイナの方を向いて。

「ごめんねー。お姉さんたち。その――……、姉ちゃん。あの人と戦ってみたい様だからさ。その……、それが終わったら、ちょっとお話、いいかな?」

 ふいっ……と、少なからず俯き、どこかはにかむ様に、唇をもごもごさせてそう言うユウキ。さっきまでは、姉……つまり、ランとおもしろおかしく話していたと言うのに。

――確かに、話し易さ、と言うものはあるだろうけれど、この目の前の天真爛漫な少女に、人見知りをする様な事などあるのだろうか? 

 と、アスナは思いつつも、上目遣いをしつつ、懇願する様に訊くユウキに対し、『いいえ』などと言う選択肢を取る筈も無い。少々遅れて状況を察したレイナも、以下同文である。
 寧ろ、レイナの場合は ちょっぴり願ってもない展開だ、ともいえる。何せ、この戦いが始まる前に、彼に、……リュウキに。

『私たちの仇討ちをしてよー』

 と言っていたから。
 その後に、苦笑いをされながら、活を入れられたが、断られた訳ではないから。



 そして、その後色々とあって――。


 結局、目立つのが非常に好ましくないリュウキではあるのだが、逃げられない状況に立たされてしまった。


 周りの煽りもそうだが、何より自他共に認めている《最愛の人が敗れた》という状況(あまり良い表情をしない者も勿論いるが)、というのが何よりも拍車をかける、と言うものだろう。

 そして、よくよく考えれば、《リズ》と《シリカ》が敗れ、《リーファ》も。本日、《アスナ》と《レイナ》が敗れて――何よりも、これまた 勝手に? 相棒だ、と言う噂が広まってしまっている《キリト》も敗れている。
 話は上がっていないが、恐らく 《クライン》も挑んでいる可能性が高い。元々仲間内のギルド長であり、この手の情報には 精通している所もあるのだから。
 戦っていない《シノン》と《エギル》だろう。エギルに関しては 現実世界(リアル)仮想世界(ALO)での店関係が少々忙しい時期、と言う事もあって、知ってはいても参加していない可能性がクラインと違って高いから。 

 つまり、いつものメンバーの7割が敗れてしまっている、と言う事になるのだ。レイナの事やキリトの事の方が大きいと思うが、それが要因の1つに上がっていても、決して不思議ではない。

「ふぅ………」

 リュウキは、軽く首を回しつつ、ゆっくりと歩を進めた。


 それは、覚悟を決めた男の顔―――とは違った。


 ランも、リュウキと同じ速度で歩み寄ると、ある程度近づいた所で双方ともに、足を止めた。 


「……あはは、お兄さんはとても人気があるみたいですね?」
「オレとしては、あまり、好ましくは無いんだがな」

 ランの言葉に、苦笑いをしつつ返すのはリュウキ。
 その顔は、苦笑いをしている顔、ではない。本当に、心から楽しそうな、目の奥が輝いているかの様な、そんな顔だった。

 彼とパーティーを組んだり、よく行動を共にしている者じゃないと、お目にかかれない様な、そんな顔だった。

 そう、つまり リュウキの中のゲーマーとしての喜び、気概、そして、プライド。様々な感情が入り交じり、今の表情が出来上がっている様だ。

 目の前にいるのは、《剣聖》とまで謳われている程のプレイヤー。状況的に、ALO自体は初心者である筈だというのに、相方の《絶剣》と共に、ALOの熟練者(ベテラン)達を立て続けに屠り、更には 達人(マスター)クラスのプレイヤー達まで倒してのけた程の実力者。

――ここまで、気が昂ったのは久方ぶりだ。

 自然と《目》に力が入ってしまうのも無理はなかった。



 相対するランは、そんなリュウキの目をじっ……と見つめた。
 数秒――見つめた所で、ランは目を瞑った。

『――本当に楽しそうな目をしてるんです。仕草は、クールっ(笑)っぽいんですけど、その目だけは、どうしても誤魔化しきれないみたいなんですよー』

 頭に過ぎる彼女(・・)言葉。
 なぜ、今その言葉が頭の中に過ぎるのか。なぜ、彼女(・・)の顔が瞼に浮かび上がるのか。ランにはそれが判らなかった。
 ただ、判るのは――彼の目を見た時から、だという事。

「……お兄さんは、ルールはどうしますか?」

 ランは、目を閉じたまま、そう聞き ゆっくりと目を開けた。
 判らない事を考え続けても、意味はないから。まずする事は1つ。――ぶつかってみて、判る事だってあるから、思いっきり、ぶつかるだけだと言う事。

「ん――。魔法もアイテムも制限しなくていい。どれだけ使っても良い。――だが」

 リュウキは、軽く笑った後、はっきりとランの目を見て答えた。

「オレが使うのも、(これ)だけだ」

 そのリュウキの言葉は、意趣返しの様に思える。―――いや、少々物騒な気もするが、その言葉が当てはまる気がした。如何に双方納得のいく決闘(デュエル)だとはいえ、仲間が負けているのだから。

 だが、《絶剣》や《剣聖》の実力を目の当たりにした上で、はっきりとそう返せるその絶対的な自信。その内を垣間見た気がした。

 当然ながら、場は更に湧くのは言うまでもない。

『流石ぁーーっ!!』
『よっ! 超勇者(マスタ-ブレイブ)!』
『良いぞーーっ! よく言ったぁぁ!』

 と、大半はリュウキに対する物。
 勿論、人気に火がついてきている2人組の片割、ランに対しての声援も混じっているが、今回に限っては リュウキ関係の方が大きかった。

「ますたー、ぶれいぶ……」
「……軽く聞き流してくれ」

 リュウキが呼ばれている名、それを呟いたラン。
 リュウキにとっては、《銀髪の勇者》やら《白銀》やらの延長上だから、はっきり言ってしまえば、頭痛の種だって言える。知った身内であれば『それヤメロ』と言うのだが、生憎現在のその歓声を上げているひとりひとりに言い続けるのは、流石に面倒すぎるから、スルーしているのだ。だから、それをランにも求めていた。

「ふふふ。……とても、とても楽しみです」
「!」

 ランは、にこっ と笑った。
 その笑顔の奥、……目の奥に宿っているもの、それをリュウキは はっきりと見た。

――彼女もまた、心底楽しみにしているんだと言う事。炎が宿っているんだという事を。

 その笑顔には、同じ質の笑顔で返すリュウキ。
 その後に更に続けた。

「地上戦と空中戦。どちら側でも良い。……どちらかと言えば、君たちが得意な方が好ましいな。全力で、楽しみたい」
「そう、ですか」

 ランは、そう返してくる事は容易に想像がついていた為、口元に指を充てつつ、直ぐに答えた。

「制限無し。それでお願いします」
「……つまり、空中でも、地上でも どちらでも使う。と言う事か?」
「はい。私も剣しか使わないので、基本超接近戦闘になります。……お兄さんに一撃は、とても重たそうですから。その反動を軽減するのに、翅を使いたいので」
「ああ。成る程。ん、問題ないよ。それに今までは君たちが、挑戦者(チャレンジャー)達の要望を受け続けたんだからな。こう言う趣向があっても、面白そうだろう?」
「ふふふ。そうですね」

 淀みなく、そして受け答えが続いていく。
 1つの言葉を返す度に、何処か緊張感が増していく様な感覚に見舞われる。辻デュエルだというのに、月例大会、いや 統一デュエル大会の決勝戦の様な、そんな緊迫感が場に生まれつつあった。


 観客(ギャラリー)達も、気付いたらしく、徐々に声援は小さくなっていっているが、その空気をいち早く 気付いたのは リュウキの事やランを知っているメンバー達だった。

「…………」

 最初こそ、いつもとは違ったランを見れた、と言う事もあって、何処かのんびりと笑っていたユウキだったが、始まる前から こんなに緊張したのは、いつ以来だったかわからない。いつも、楽しい事が多かったから。

――初めてデュエルをした、あの世界(・・・・)以来かも………。

 とユウキの中では過ぎっていた。
 ユウキが、初めて仮想世界に来て、そして初めて戦った。強い想いを込めて戦った時以来だと思えたんだ。

「ふぅ、やっぱり気になってたみたいだね」
「あはっ、うんっ!」

 アスナは、リュウキの姿を見て、軽くため息を吐きつつも、笑顔だった。勿論、レイナも同様だ。そんな2人を見てユウキは 訊いた。

「あのお兄さん……強いでしょ?」
「え?」

 ユウキの最も近くにいたのはレイナである。その言葉を訊いて、ゆっくりと頷いた。そして、笑顔をユウキに向けた。

「勿論っ!」
「……そっか」

 レイナの笑顔を見て、ユウキも思わず笑顔になった。そして笑顔を向けたまま、ユウキは視線をランへと向けた。

「でも、姉ちゃんだって負けないよっ。すっごく強いんだから」
「あはは……。それは知ってるよー。だって、今体感したばかりなんだからさ?」

 半分程HPを削った。今までの戦績を考えれば、タッグ戦では2人合わせても1割程しかHPを削れなかったらしく、文句なしの新記録、なのだが…… 如何にリュウキに『仇討ちを~』とレイナは言っていたとしても、やっぱり 悔しさはある様子だった。

「でも、リュウキくんも負けないよ」
「そうだね。ちょっと、ボク、楽しみになってきた。自分の事みたいにさ」

 それ以上は言葉はなく、目を輝かせながら、ユウキはリュウキとランの2人に集中したのだった。

 固唾を呑んで見守る周囲を他所に、リュウキとランは 笑顔で形式、ルールの再確認をしていた。

「翅はあり、空中も地上もOK。エリアはこの広場。上空の制限は限界高度まで。これで良かったですか?」
「ああ。問題ないよ」
「ふふ…… では」
「ああ。そうだな」

 ランは、システムウインドウを操作した。
 そして、アスナとレイナの時同様にデュエル申し込みが、リュウキ側にも表示される。その後に表示される決闘形式。選ぶのは勿論《全損決着モード》だった。
 リュウキは迷う事なく、OKボタンをタッチ。目の前の少女のカーソルに、《Ran》の名前が出現。ランの方にも、《RYUKI》の名が記されている事だろう。それを互いに確認した後、同じく互いに背を向けた。大分傍にまで近づいていたから、それとなく距離を取る為だった。

――それは、互いに示し合わせた訳ではない。ただ、自然とそうなった。

 10秒のカウントダウン、それが物凄く遅く感じる。
 互いに武器を取り出し、構えているというのに、数字を見たら――まだ 0にはならなかった。たった10秒だというのに。

 ランは、ゆっくりと目を閉じた。限りなく圧縮された時の中で、また――頭の中で()が聞こえてきた。

『――凛とした中でも、時折笑顔を見せる。見せてくれる。その素顔が本当に素敵でした』

 笑顔の彼女(・・)が、瞼の中にはいた。
 目の前の彼と相対して……、何だか増えた気がするんだ。


――この人は……………もしかしたら…………。

 
 ランの頭の中に、一瞬だけ、何か(・・)が過ぎった。
 だが、その思考は長くは続かない。考察する暇もなかった。

 限りなく長く感じた時も、決して無限ではないという事だ。


【DUEL】


 その文字と共に、それを知らせるブザー音が鳴り響いたのだから。

 そして、始まるは――――。


 剣聖 VS 白銀


 
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