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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜

作者:波羅月
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GW編
  第17話『合宿』

 
前書き
現実では既に過ぎ去ったGW。皆さんはいかがお過ごしでしたか?
自分は熊本震災の影響を受け、学校が休校してました(笑)。つまり暇でした。
だったら勉強してろ、って話なんですけど生憎勉強が嫌いなんで、こうして小説を書いている日々です。
読んで下さる方には、毎度頭が上がりません。

…とまぁ長過ぎる前置きは置いといて、今回の話はまた魔術部シリーズをやります。新キャラが出てきます。そろそろ「多い!」とか言われそうですね。杞憂でしょうか。 

 
5月に入って数日。いよいよ明日からGWに入る。
人々は連休とあって、遊びだとか旅行だとかで盛り上がっているが、生憎俺は去年までと変わらずどこにも行くことはないだろう。それでも、割と楽しい日々は送れていた。

きっと今年もそんな連休になるだろうと、俺はそう思っていた。だが・・・


「着いたぞ!」

「「……」」


黒木部長の快活な声と共に、俺たちの沈黙が積もる。

ここはどこだ。今俺は見知らぬどこかの山に来ている。
周りには魔術部のメンバーが全員居た。

なんでも、今回のGWの一部は、ここで皆と過ごすということらしい。つまり“強化合宿”を行うというのだ。


「なぁ黒木。どうして私たちまでついて来なきゃいけない訳? この新入り2人とあんたで行きなさいよ」


不意に毒舌な言葉が部長を襲った。
それを言ったのは、俺よりも背が小さくて声も子供らしい、まるで小学生の様な少女だった。

だがその正体は・・・


「そう言うなよ。お前は魔術部副部長の身なんだから、部活の合宿は全員参加ってわかるだろ?」

「いや関係ない」


なんとこの人こそが、魔術部の中で魔術を使える数少ない人、副部長こと3年生の(つじ) 緋翼(ひよく)さんなのである。
さっき道中のバスの中で、初めて知ったんだけど…。


・・・と、それよりもこんな事態になったのは、2日前に遡る──







「合宿…ですか?」

「おう! お前らが魔術をいち早く使えるようにするためにな!」


部長が軽々しく言う。そんな部長を俺は怪訝な顔で見つめる。
俺らのため、という主旨はわかったが、そんな易々と合宿なんかして色々大丈夫なのかな? 予算とか…。


「それにお前らともっと仲良くなりたいし。部員全員で行くから、他の奴ともスキンシップが取れるって寸法よ」


そう補足の説明をする部長。
まぁ確かにまだ会って1ヶ月も経ってないし、そういう機会は必要だけど。
ただ、今この場には俺と暁君、部長以外の人はいない。なので、勝手に決めちゃってないかと少し心配である。


「決まったものは決まったんだ! 明後日からだから準備しとけよ!」

「え、GWじゃないっすか!?」

「だからだよ。こんな休暇は使わなきゃ損だろ。2泊3日だから楽なもんだって」


部長の“自己中”とも呼べる計画に、俺たちは唖然とする他なかった。







──とまぁ、そんなこんなで学校からバスで2時間ほどもかかる距離にある山に来ていた。
ちなみに今の時刻は8時だ。いや、出発早すぎ…。


「大体あんたは勝手に決めすぎなの」

「じゃあ部活に出ろよ」

「そういう問題?」

「そういう問題」


未だに部長と副部長の言い争いが続く。
これに関してはたぶん、部長が正しいと思う。これを聞く限り、今までも副部長はあまり部室に顔も見せなかったようだ。部活動紹介の時ですら、その姿は見ていない訳だし。


「先輩。争ってても時間の無駄ですよ。今日泊まる所とか決まってるんですよね?」


さすがに長引くと思ったのか、2年生の先輩が間に入った。

泊まる場所、か。全然考えてなかった。こんな山だけど、ちゃんとあるよね? まさか野宿とか言わない? 大丈夫?


「もちろん! そこまでバカじゃねぇからな」

「逆にそこまでバカだったら、もう私帰るわよ」


はは…副部長さん、言葉にかなり毒があるなぁ…。


「とりあえずそこまで歩くぞ」

「はーい・・・え?」


え、歩くの!? この山道を!?
もうちょいバスで行けなかったの?! まだバスが通れる位の幅の道だよ?!


「今回の合宿は体力を付ける目的もある。だから運動はできるだけやっていくぞ!」

「えぇ…」


体力をつけるため…。
もしかしてこの理由は、俺たち以外の部員を納得させるためのものだろうか。だって部員さん達はこの強化合宿には全く関係ないもん。魔術使えないから。


「つべこべ言わずに歩くぞ! 大体30分で着く!」

「絶対言うわよ!」


部長と副部長の言い争いはまだまだ続いた。







「着いたぞ~」

「「はぁ…はぁ…」」

「ちょっと、全員バテ過ぎじゃない?」

「ホントホント。運動しないからだぞ」


部長と副部長らの言葉に反応も出来ないほど、疲れ切って地面に座り込んでいる俺ら。そりゃあんだけ山の中歩いてきたんだから疲れるのも当然である。しかも休息無しで。ここ大事。
てか、逆に部長たちがすごい。運動してるとこ見たことないけど、意外と体力あるんだな…。全くバテてない…。


「とりあえず宿に着いたから、早く入るぞ」


部長の言葉に顔を上げると、なんと温泉宿のようなものが目の前にあった。こんな山奥に、旅行雑誌に載りそうなほどの立派な宿が。


「マジっすかこれ…」

「マジマジ」


暁君の感想にも軽く答える部長。あの暁君も目の前の光景には目を疑っていたようだった。


「んじゃ入るぞ」

「早く来なよ」

「「……」」


宿に入っていく部長たちを、座り込みながら見据える俺たち。なんだあのハイペースかつマイペースぶりは。あの2人について行くのは、さぞ大変なことだろう。

宿についてようやく一段落・・・と思いたいところだが、それでもまだまだ変なことが起きるのでは、と勝手に想像する俺だった。







「ったく、何でこの部活は男ばっかなのよ。女子は私だけじゃん」

「そう思ってお前1人のためだけに、わざわざ2部屋とってるんだ。ありがたく思え」

「はいはいありがとうごさいます〜」


宿の中の廊下で俺らの前を歩きながら、言葉の応酬を続ける部長と副部長。よく飽きないなぁ。


「俺らはこっち。お前はそっちな」

「廊下挟んでるだけじゃん。絶対来ないでよ」

「言われなくても行かねぇよ」


副部長はその後、自分の部屋へと入っていった。

それにしても、部長の意外な一面が見れた。普段は優しそうな部長だったが、副部長相手だと口が悪い、ということ。もしかしたらこっちが素なのかな? なんか秘密が知れて得した気分。

と、思いながら部屋の襖を開けた俺は刹那、感嘆の声を上げた。


「「うわっ! すげぇ!」」


俺と暁君は同時に叫んだ。
なんと目の前には、和室ながらも清廉とした雰囲気が漂う、高級感溢れる部屋が現れたからだ。普通の和室とは比べ物にならない。


「凄いだろ? この宿は隠れスポットみたいなもんなんだ」


部長が簡潔に説明する。
街中にあったら、絶対に有名になるだろうと思われるこの宿。でも山奥にあるからこそ、この凄さがある!という訳か。

てか『一般人が知らないことを知っている』って、何か魔術部っぽい!
俺はそんなことも考え、一人ワクワクしていた。


「これ、畳の上で直に寝ても良さそう」

「この綺麗さだったら確かに・・・」

「何甘いこと言ってんだ。荷物置いたら部活開始するぞ。まだ9時だからな? 特に三浦と暁、お前らは特にしっかりみっちりやるぞ」

「「あ、はい……」」


高揚していた気分が一転、不安がそれとなく募る俺たち。部長、もうちょい楽しくしましょうよ~。







「はぁっ!」

「おらっ!」


唐突だが、俺は何をしているんだ。
右腕を後ろに引きつけ、左足を前に踏み込むのと同時に右の掌を突き出す。いわゆる正拳突きみたいな動きだ。
これを左右交互に繰り返す。もうかれこれ1時間はやっただろう。

・・・いや、空手か。

おかしくない? 俺らって魔術部じゃないの? 何で空手部みたいなことやってるの?
もしかして、魔術部という名の空手部だったということか。魔術も使えて空手もできるなんて、それは結構強そうだな。

いや、やっぱりおかしい。


・・・と思ってさっき部長に抗議した訳だが、

『こういうのは形から入るんだよ!』

と、強く言われてしまった。否定はできないので、大人しく従うしかなかったのが悔しい。


まぁ並の練習で会得できるとは考えてないし、それなりに練習を積まなきゃならないってのはわかる。部長が1年かかった『魔力の源宿し』という段階は。

部長曰く、『大事な所だけをかいつまんで行い、1秒でも早くお前らが魔術を使えるようにするための練習だ』ということらしい。
部長は一度会得の道を歩んでいるから、その言葉を疑っている訳ではない。しかし、もし仮にこの練習が関係ないものであったならば、その時は今しがた鍛えた渾身の掌底で部長の顔面をぶん殴ることにしよう。うん、決めた。


「もうちょいコツとかないんですか、部長?」

「言ってしまえば、勘と運だな」

「つまりないんですね…」


俺の希望の質問を見事に打ち砕いてくる部長。あまりの雑さに暁君が苦い顔をしているよ。


「まぁ今のは冗談だ。三浦には前も言ったが、魔術には“信じる心”が大切なんだ。宇宙人や幽霊なんて信じてたら見えるとかあるだろ。つまりその心さえ有れば、会得にグッと近づけるんだ」

「あー…よくわかりましたけど、幽霊は見たくないです…」


部長の返答に率直な言葉を返す俺。そう言えば、最初にそんなことを言われた気がする。
でも"信じる心"ってよくわかんないなぁ。


「よし、そろそろ昼食の時間だから一旦休憩! 宿に戻るぞ~」

「「はい…」」


もうあの畳の上で寝たい…。







「で、2人ともまだ何も変化の兆しはないと」

「そうなんだよ。やっぱ時間かかるかな~」

「あんたが教えるからダメなんじゃないの? 次は私が教えようかな~?」

「断る」


広間でご飯や味噌汁といった和食の昼食を食べる中、隣から部長と副部長の対談が聞こえてきた。やっぱり喧嘩腰な気がするけど、真面目に俺らについて考えてくれてはいるようだ。


「先輩、また次もランニングですか~?」

「ん、あぁ。お前らは引き続き体力作りをやってくれ」

「「うぇ~…」」


怠そうに声を上げる2年生方を見て、俺は申し訳ない気持ちになる。自分はたまたま魔術の素質があったからいいけど、先輩方にはそれがないので、この合宿はほぼ無意味なものなのだ。

・・てか、俺達の練習の間ずっとランニングしてたのか。つくづく可哀想だな。


「とりあえず飯食ったなら一度部屋に戻れ。今の内に休んでおいた方が良いぞ~」

「「へぇ~い」」


部長が一声掛けた途端、猛スピードで先輩方が部屋に戻っていった。そんなに休みたかったのかな。まぁ俺もあの畳が恋しいけど。





「部長、ちょっといいすか?」

「何だ、暁?」


今広間に残っているのは、俺と暁君と部長と副部長。
その中で暁君が部長に声を掛けた。


「魔術って別のやり方で会得はできるんすか?」

「そりゃもちろん。教え方も覚え方も人それぞれ。魔力の源を得てから練習する者や、源と魔術を同時に得る者も居る。それが魔術さ」


今度は暁君が質問していた。でもそれにも部長は淡々と答える。そして部長の答えはつまり、あの練習は部長なりのやり方、ということらしい。もうちょい練習っぽいことしてほしいとは思うが…。


「だったら俺は“イメトレ”してていいですか?」

「「えっ?」」


すると不意に放たれた暁君の言葉に俺と部長は驚く。
“イメトレ”とはすなわち『イメージトレーニング』のことで、つまり“想像で行うトレーニング”である。


「それまたどうして?」

「部長のやり方が俺に合ってないと思ったからっす。それに自分でやった方が何か掴めそうな気がするんで…」


部長は首をかしげ、少し悩んだ様子を見せた後、言った。


「わかった、そういうことなら仕方ない。今日はもう部屋に戻れ。成果を期待してるぞ」

「ありがとうございます」


暁君はそれを聞いた後すぐさま立ち上がり、部屋へと帰っていった。
暁君は頭が良いから、そこら辺の見極めをキチンと行うのだろう。マイペースというか何というか、掴みにくい人だな。


そして暁君が完全に見えなくなった時、部長は机に突っ伏した。


「うぅっ…俺の教え方が悪かったのか…」

「えっ…!?」


なんとさっきの言動とは裏腹に、今はすごく悲しそうな顔をしていた。そんなに暁君から言われたことがショックだったのかな…?


「ぶ、部長。そんな悲しまなくても・・・」


俺は悲しみに暮れる部長を励まそうとした。
すると、その様子を隣から黙って見ていた副部長が口を挟んだ。


「三浦、それ放っといて大丈夫。ただの『構ってアピール』だから」

「え、そうなんですか!?」


その言葉にはたまらず驚く。
だって凄く悲しそうなんだよ! あと10秒後には泣きそうだよ!


「副部長、いくら何でも・・・」

「いやホント。こいつは構ってほしいだけなの。だから放っとけばいずれ戻ってくる。よし、午後は私が稽古をつけよう!」

「それはさせねぇ!」


「「………」」


「ほらね」

「ホントだ…」


部長の(悪気はないと思うが)構ってアピールに騙された俺は、何とも言えない悲しさを感じた。本気で心配したのに…。


「おい(つじ)! 三浦の特訓は俺が手伝うんだ! お前の出番はねぇ!」

「私が教えた方が100倍は早く会得できるよ。どっかのダメ部長とは違って・・・」


あれ? 何か一気に険悪ムードになったぞ? 原因って俺になるの、これ?


「聞き捨てならねぇな! こうなったら勝負(バトル)だ!」

「良いよ、あんたなんかボッコボコにしてやるから!」


宣戦布告!?
ちょっと待って、これってガチでヤバくね!?


「俺が勝ったら、俺の方針でやらせてもらう」

「じゃあ私が勝ったら、私の方針でやっていいってことね」

「負けねぇよ?」

「こっちのセリフよ」


あぁ…何か止められそうにない…。
この場に俺以外の誰かが居れば止められたかもしれないのに、運の悪いことに誰もいない。無念…。







──という訳で、俺が原因であろう戦闘が今始まろうとしていた。
場所は、宿の近くの森の中にある少々開けた所。観客は俺以外にも、さっき部屋で休もうとした先輩方や、イメトレをすると言った暁君までもが集まった。
ちなみに、事の発端については説明済みである。


「覚悟は良いな?」

「そっちこそ」


指を鳴らしながら訊く部長と、伸びをしながら余裕の様子で答える副部長。2人の実力は知らないから、勝敗の予想が全く立たない。


「軽く捻り潰してやるよ、チビ副部長」

「二度とそんな口叩かせないわよ、低脳部長」


完全にスイッチが入ってしまっている2人。
互いを見据え合い、互いを倒そうと熱意を滾らせている。


そしてその戦いの火蓋が今──落とされた。

 
 

 
後書き
今回は『入れたいことをとりあえず詰め込んで書いた』というような話になりました。
よって理解に苦しむでしょうが、読者の方々は自分の言いたい事を察しながら読んで頂けると幸いです。

さて、GWに何するかという事で始めた合宿編。思いつきで書いているので、かなり行き当たりばったりです。
ですが、目的は一貫していますので、そこは大丈夫です!!(そこ以外は…?)

次回はようやくの戦闘です。腕がなります。
皆さんに臨場感を持って楽しめるよう、全力を尽くして書きますのでお楽しみに!! 
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