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おぢばにおかえり

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第二十九話 お墓地でその十一

「まあとにかくですね」
「ええ」
「今から教祖殿ですよね」
 どうも都合よく話をスルーされたような気がします。確かに今から参拝させてもらうつもりですけれど。もう目の前にはかなり奥の深い教祖殿の中が見えています。ここも礼拝場と同じで畳です。結界の向こう側にはおつとめ着を着られたおつとめの先生達が左右に一人ずつ正座をして座っておられます。
「じゃあ。ここでね」
「はい」
「参拝させてもらうから」
「わかりました」
 何だかんだと話している間に教祖殿での参拝を終えてすぐに祖霊殿です。けれどここに行く途中でも阿波野君は阿波野君でした。変な言葉ですけれど。
「一人は寂しいですよ」
「寂しいって!?」
「だから。一人でするよりは二人でいさんだ方が」
「いいっていうのね」
「駄目ですか?」
 私の顔を覗き込むようにして尋ねてきました。
「それは」
「だから。私はね」
 どうにもバツが悪くなってしまった顔で言いました。
「あまり。そういうのは」
「好きじゃないんですか」
「そうなのよ。回廊は一人で」
 またそのことを言いました。
「するから」
「わかりました。それじゃあそういうことで」
「阿波野君には悪いけれど」
 自分でも今どうしてこの言葉を言ったのかわかりませんでした。謝る必要なんかないのに。けれどこんなことを言いながら祖霊殿に行ってそこでまた二人で参拝しました。二人でそのまま神殿の回廊を一周して北の礼拝堂から降りて帰りました。ところが話はまだ続きました。
「後はどうするんですか?」
「後はって?」
「ですから。まだ行くんですか?」
 こう私に尋ねてきました。
「何処かに」
「もうないけれど」
 お見舞いも行ったしお墓地もお参りしたし神殿にも。とりあえず今日はこれで終わりです。
「これでね」
「じゃあもう帰られるんですか」
「東寮にね」
「それじゃあですね」
 私の今の言葉を聞いてまた言ってきました。
「送りますよ」
「送るって?」
「ですから。お供させてもらいます」
 にこりと笑って私に言ってきました。
「東寮まで。何かあるといけませんし」
「何かあるわけないじゃない」
 神殿から東寮まで歩いて少しですしここはおぢばです。悪いことなんか滅多にできない場所です。それで何かあったらいけないって。
「そんなこと」
「油断大敵じゃないですか。それに僕が一緒で先輩に何かあったら」
「阿波野君が困るっていうの?」
「詰所の人に何言われるかわかりませんから」
 そうらしいです。阿波野君の言葉によると。
「ですから」
「一緒に来るのね」
「こうなったら最後までってことで」
 今度はこんな勝手な理屈を出してきます。
「いいですよね」
「言っても聞かないわよね」
 そういう子だっていうことはもうわかってきていましたので問い返しました。
「東寮まで。ついて来るのね」
「ボディガードですよ」
「そんなの別にいらないわよ」
「じゃあ姫様の為のナイトってことで」
「却下よ」
 冗談抜きでふざけるにも程があります。
「何がナイトなのよ」
「駄目ですか?格好いいじゃないですか」
「私はお姫様じゃないし」
 これでも神戸の下町の女の子です。地元じゃぼっかけカレーを食べていました。筋肉のカレーでこれが結構以上に美味しいんです。
「だから。それは」
「じゃあただのお付きってことで」
「それもあれよね」
 話が変な方向に行ってしまって戻りません。
「時代劇の大奥じゃない」
「僕男ですから執事ですか?」
「いきなりイギリスになるし」
 とりあえず執事といえばそのイメージがあります。
「だからそういうのじゃないのよ」
「それじゃあどういうのがいいんですか?」
「先輩と後輩」
 これしかありません。 
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