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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第206話

~エルベ離宮・紋章の間~



「構わん。言ってみろ。」

「クロチルダさんは許さず、クロチルダさんと同じ”蛇の使徒”である”鋼の聖女”アリアンロードが”身喰らう蛇”の最高幹部であった事は許し、陛下とイリーナ皇妃殿下の護衛騎士にしているのは筋が通らないと思うのですが。」

「え………」

「”鋼の聖女”――――”劫炎”と並んで”結社最強”と称えられている”第七柱”の彼女がメンフィルに……!?」

「し、しかもリウイ陛下達の護衛騎士だってリィンさんは言ったよね……!?」

「ちょっとリウイ!今の話、どういう事よ!?」

真剣な表情でリウイを見つめて言ったリィンの主張を聞いたクローディア姫は呆け、ヨシュアとミントは信じられない表情で声をあげ、エステルはリウイを睨んだ。



「………………シルフィアの生まれ変わりと言えばお前達なら察する事ができると思うが。」

「ええええええええっ!?」

「あ、あんですって~!?」

「あのマーズテリアの聖騎士の生まれ変わりが結社の最高幹部だった……と言う訳ですか。」

「まさか彼女がシルフィアさんの生まれ変わりだなんて……(もしかして”影の国”の”試練”で彼女達が現れたのもそれが関係していたのか……?)」

「それもよりにもよって”蛇の使徒”だったなんて……」

リウイの口から語られた驚愕の事実にミントとエステルは驚き、フェミリンスは真剣な表情で呟き、ヨシュアとクローディア姫は信じられない表情をしていた。



「何やら深い事情がおありのようですが今はその件は置いておくとしまして。――――リウイ陛下、今の話が本当だとするのならばリィンさんの主張通り片方の”蛇の使徒”は許した上好待遇で雇用し、もう片方の”蛇の使徒”を許さず処刑するのは罪人の扱いとして余りにも不公平だと思われるのですが。」

エステル達の様子を見たアリシア女王は話を戻して真剣な表情でリウイを見つめて指摘し

「…………”鋼の聖女”アリアンロードは自身と直属の部下である”鉄機隊”の助命、並びにメンフィルに寝返る手土産として”身喰らう蛇”を率いる”盟主”と残りの”蛇の使徒”達の居場所、そして西ゼムリア大陸に存在している”身喰らう蛇”に所属している工房――――”十三工房”の所在地をメンフィルに提供し、更にアリアンロード自身俺達と共に”盟主”を討伐し、更にエレボニア侵攻時には一人で貴族連合軍の将――――”黄金の羅刹”オーレリア将軍を一人で討ち取った。アリアンロードの功績やメンフィルに対する貢献した為メンフィルは”身喰らう蛇”に所属していたアリアンロード達の罪を許し、好待遇で雇用する形となった。」

「なお”蒼の深淵”と”鋼の聖女”を除いた残りの”蛇の使徒”達は全員メンフィルとクロスベルの手によって死亡し、”十三工房”は一部を除き、全て二大国侵攻の際にメンフィルとクロスベルが制圧し、支配下に置いた。」

(”十三工房”を支配下に置いたって事は恐らく結社の技術力を利用するつもりなんだろうね。)

(戦争のどさくさに紛れて何をやってんのよ……でも”一部を除いて”って言っていたけど、その”一部”ってもしかして”あそこ”の事かしら?)

(―――”ローゼンメイデン工房”ですわね。)

(あそこはレンちゃん達が一時期お世話?になっていた所だからあそこは襲わなかったかもしれないね……)

リウイとヴァイスの説明を聞いたヨシュアは真剣な表情で推測し、ジト目でリウイとヴァイスを見つめていた後ある事に気付いたエステルの小声の続きをフェミリンスが答え、ミントは苦笑しながらリウイを見つめていた。



「ええっ!?み、”身喰らう蛇”のトップである”盟主”に加えて他の”蛇の使徒”達がメンフィルとクロスベルに討ち取られたんですか!?」

「しかもオーレリア将軍と言えば他国にもその名を轟かせているエレボニア帝国の領邦軍の”英雄”ですな……」

一方驚愕の事実にクローディア姫は驚き、アルバート大公は信じられない表情で呟いた。

「――――確かに”鋼の聖女”のメンフィルへの貢献や功績を考えれば陛下の仰る通りメンフィルに罪を許され、好待遇で雇用させて貰ってもおかしくありません。―――ならばクロチルダさんにも”鋼の聖女”同様償いの機会を与えるのが”筋”だと思います。」

「!!………………」

そしてリィンの主張に目を見開いたリウイは真剣な表情で考え込み

「―――リィン様。一つ尋ねてもよろしいですか?」

エリゼは静かな表情でリィンを見つめて尋ねた。



「エリゼ……?」

「リィン様は何故敵対関係であったお二方の為にそこまでするのですか?」

「……俺自身が二人を救いたいという気持ちもあるけど……先輩達に”約束”したからな。――――クロウを何とか学院に連れ戻し、先輩達と一緒に卒業させるって。叶えられなかった俺とクロウの”約束”の代わりにせめて先輩達とした”約束”だけは叶えたいんだ。」

「リィンさん…………」

「!……………………クロウさんについては理解しました。では”蒼の深淵”についてもクロウさん同様他に理由があるのですか?」

リィンの答えを聞いたアルフィンは辛そうな表情をし、目を見開いて驚いたエリゼは複雑そうな表情をした後気を取り直して続きを促した。



「ああ、理由があって当たり前だろう?”紅き翼”の方針は”学院の関係者を保護する”事もその一つだ。エマにとってお姉さんであるクロチルダさんも俺達にとって”関係者”だ。」

「!!……………兄様……………」

リィンの口から語られたある意味予想していた答えを聞いたエリゼは複雑そうな表情で呟いた後黙り込み

「―――お願いします!どうか二人に償いの機会を与えてください!」

リィンはリウイ達を見つめて頭を深く下げた。



~待機室~



「な、なななななななっ!?み、未熟者の分際で至高の存在であるマスターを利用するとは……!絶対に許しませんわ!」

リィンの主張を待機室に備え付けてある端末で見ていたデュバリィは怒り心頭の様子で部屋から出ようとしたが

「!アイネス!」

「ああ!」

「なっ!?エンネア、アイネス!何のつもりです!?離してください!マスターを利用したあの未熟者に裁きの鉄槌を降さなければなりません!」

デュバリィの行動に逸早く気付いたエンネアとアイネスに背後から抑えられた。



「もしここで貴女があの場に突撃して彼に斬りかかるような事をしたらメンフィルどころか、マスターにまで迷惑がかかる事がわからないのですか!?」

「グググググググッ……!貴女達はマスターが利用されている事に怒りを覚えないのかしら!?」

エンネアの正論に反論できず唇を噛みしめていたデュバリィは声を上げたが

「私は彼の度胸や優しさに驚きを通り越して感心しているくらいだぞ?敵対していた相手である”C”と”蒼の深淵”の為だけに”英雄王”に真っ向から逆らった所かマスターまで利用する事に。」

「私も同じようなものですわね。第一そのマスターが全然怒っていないのですからそこまで目くじらを立てる必要はないと思うわよ。」

「へ……………」

アイネスとエンネアの言葉を聞き、呆けた表情でリアンヌを見つめた。

「フフ、もはや勝負は決しましたね、陛下…………」

自分を利用したリィンに対して怒る所か感心しているリアンヌは微笑みながら端末に映るリウイを見つめていた。



~バリアハート・クロイツェン州統括領主城館~



「ったく、敵である俺達の為にそこまでするなんてあいつらしいな………」

「私達を助ける為に”英雄王”に真っ向から逆らった所か”鋼の聖女”すらも利用するなんて……どうしてそこまで………特に私は君の大切な妹を誘拐した元凶だって言うのに…………そんな私を君達の”関係者”扱いするなんてどこまで優しいのよ、君は…………」

それぞれの自室で端末でリィンの様子を見守っていたクロウは苦笑し、クロチルダは辛そうな表情で涙を流しながら端末に映るリィンを見つめていた。


~エルベ離宮・紋章の間~



「…………………………ハア。まさか”C”と”蒼の深淵”の”減刑”の為にこれ程の計画を練った上、この場にいる全員を味方につけるとはな…………まあ、将来のクロイツェン州の統括領主が予想外の成長を果たしたと思えばいいか。――――リフィア、お前もいいな?」

周囲の人物達が自分達に注目している中リウイは大きな溜息を吐いた後リフィアに視線を向け

「余とて退き際というものは心得ておる。――――リィン・シュバルツァー。お主の希望通り二人の”減刑”を認め、”処刑”を取り下げる。この会議が終わり次第余達の権限で二人の”処刑”の判決を取り下げておく上父シルヴァンに余やもリウイ達が取りなしておくから安心しろ。」

リフィアは静かな表情で答えた後全身に覇気を纏ってリィンを見つめて言った。



「あ……ありがとうございます……!」

「ただし、わかっているとは思うが奴等の罪は重い。特に先程”C”を学院に連れ戻すような事を言っていたが、内戦を引き起こした元凶の一人が平穏な学院生活に戻れる事に内戦に巻き込まれたエレボニアの民達が許すと思っているのか?」

「それは………………」

クロウ達の助命ができた事に喜んだリィンだったがリウイからある事を指摘されると暗い表情で答えを濁した。

「………………オリヴァルト皇子並びにアルフィン皇女。条件次第では”帝国解放戦線”のリーダーである”C”並びに幹部”S”の身柄を状況が落ち着いた後エレボニアに引き渡しても構わん。”帝国解放戦線”による被害が一番大きいのはエレボニアだからな。エレボニアとしても奴等にエレボニアで罪を償って欲しいのが本音なのだろう?」

「え………」

「……どのような条件でしょうか。」

リウイの口から出た予想外の提案にアルフィンは呆け、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。



「”C”―――いや、クロウ・アームブラストを今年度のトールズ士官学院の卒業式に出席させる事。またエレボニアに引き渡した二人に科す処罰で”処刑”並びに直接身体に危害を加える判決は絶対に出さない事。―――それだけで構わん。」

「あ…………」

「あなた………」

「本当にそのような容易な条件でよろしいのでしょうか?」

リウイの答えを聞いたリィンは呆け、イリーナは微笑み、クレア大尉は驚きの表情で尋ねた。



「ああ。―――それで返答は否か是、どちらだ?」

「勿論”是”ですわ!」

「リウイ陛下の寛大なお心遣いに心から感謝致します。」

リウイに答えを促されたアルフィンは微笑みながら力強く答え、オリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて会釈をし

「……礼は不要だ。俺はトールズ士官学院の”常任理事”としての義理を果たしたまでだ。それと”蒼の深淵”は監視は付けるがある程度の自由を許し、自身の罪を償う機会を与える。―――それでいいな?」

リウイは静かな表情で答えた後リィンに問いかけ

「はい……!―――ありがとうございます……!」

リィンは明るい表情で頷いた後頭を下げた。



「フフ…………――――リィンさん。テロリストのリーダーや国際犯罪組織の最高幹部であるお二人の”減刑嘆願”、見事でした。リィンさんの慈悲深さを評して、私もゼムリア大陸に崇められ続けて来た”空の女神”としての慈悲を見せて差し上げましょう。」

「え………」

「エイドス様?」

エイドスの口から出た予想外の言葉にリィンは呆け、セルナート総長は不思議そうな表情をした。



「以前ユミルで私が口にしたこの会議に出席する条件の一つ――――”ハーメルの悲劇”を公表した際に”空の女神”である私がリベールをフォローする発言をしても、エレボニアはフォローしない事を受け入れる事を条件の一つとしましたが……気が変わりました。エレボニアが望むのならばエレボニアをフォローする発言をしても構いませんよ。」

「ええっ!?」

「それは真でしょうか?」

エイドスの言葉を聞いたアルフィンは驚き、オリヴァルト皇子は信じられない表情で尋ねた。

「女神に二言はありませんよ♪」

「クク……」

(そんな諺はありませんわよ……)

(お願いしますからこの場では”本性”を隠してください……)

笑顔で答えたエイドスにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中、セルナート総長は笑いを噛み殺し、フェミリンスとヨシュアは疲れた表情で心の中で指摘した。



「あ、あの……エイドス様。先程”ハーメルの悲劇”を公表した際にリベールをフォローするような発言をエイドス様がすると仰いましたが……」

その時我に返ったクローディア姫が戸惑いの表情でエイドスを見つめて尋ねた。

「フフ、その件については後で私にその依頼をしたリウイ陛下達に確認してください。」

「ええっ!?」

「――――リウイ陛下。この会議が終わり次第誠に申し訳ありませんが先程エイドス様が仰っていた件についての詳細な説明をメンフィル帝国にして頂きたい為、説明の時間を頂いても構わないでしょうか?」

エイドスの答えにクローディア姫が驚いている中、アリシア女王は真剣な表情でリウイを見つめて尋ね

「……ああ、別に構わん。」

リウイは疲れた表情で答えた。



「それで話を戻しますけどエレボニアは私のフォローが必要でしょうか?」

「はい、是非お願いしますわ!」

「御身の慈悲に心から感謝致します。」

(フフ、”空の女神”の意志を変えさせるなんてリィンさんは本当に凄い方ですね……)

エイドスの問いかけにアルフィンとオリヴァルト皇子がそれぞれ明るい表情で答えている中、クレア大尉は静かな笑みを浮かべてリィンを見つめていた。



~待機室~



「あ…………」

「お兄様、お二人の”減刑”に成功しただけでなくクロウさんをトワ先輩達と共に卒業させる事に成功しましたわ……!」

「うむ………!」

「カレイジャスに戻ったら会長達に真っ先に知らせないとね。」

「フフ、しかも”空の女神”の意志も変えさせるなんて、リィンには驚かされっぱなしね」

待機室で会議の様子を見守っていたアリサは呆け、明るい表情をしているセレーネの言葉にラウラは力強く頷き、フィーとサラ教官は静かな笑みを浮かべた。



「やったぁぁぁぁっ!」

「ぐすっ……姉さんを救ってくれて本当にありがとうございます、リィンさん…………」

「後はヴィータも今回の件を切っ掛けに心を入れ替えれば言う事無しなんだけどね。」

エリオットは嬉しそうな表情で声をあげ、エマは涙を流してリィンに感謝し、セリーヌは苦笑しながら呟き

「な、何だかここまで都合よく事が運ぶと後で何かとんでもない事が起こりそうでちょっと怖いよな………?」

「ちょっとマキアス~。それって”フラグ”になるから言わないでよ~!」

「フン、もしそのような事が起こっても今までのように乗り越えるだけだ。」

「ああ……普通なら不可能と思える事をやり遂げたオレ達なら絶対に乗り越えられる……!」

マキアスの言葉にミリアムが疲れた表情で指摘した後に静かな笑みを浮かべて答えたユーシスの言葉にガイウスは力強く頷いた。



「………そ………んな…………う……て……この世界に………ラウ……波が……」

「ゲルドさん?顔色が悪いようですけど、どこか具合が悪いのですか?」

その場にいる全員が喜んでいる中表情を青褪めさせているゲルドに気付いたエリスは心配そうな表情でゲルドを見つめて問いかけ

「……………みんな、喜んでいる所悪いけど”本当の戦い”はまだ残っているわ。」

ゲルドは決意の表情で答えた。



「へ……ほ、”本当の戦い”ってどういう事よ??」

「…………ゼムリアとディル=リフィーナを守る決戦。―――それが私達の”本当の戦い”よ。そしてその戦いを引き起こす元凶――――”リィンの本当の父親”があの場にもうすぐ出てくるわ。」

アリサの疑問に対し、ゲルドは重々しい口調で語った後厳しい表情で端末を見つめた。

「え……………」

「ゼ、ゼムリアと異世界を守る決戦って……!」

ゲルドの言葉にエリスは呆け、エリオットは驚き

「そ、それよりお兄様の本当の父親がその戦いを引き起こすってゲルドさん、仰いましたよね!?」

「リィンの本当の父親という事は……!」

「まさか……”あの男”が生きていたというのか!?奴の遺体も確認されているのだぞ!?」

「そ、それにどうしてあの人がそんな事をするんだ!?」

「アハハ~、元々ラスボスみたいな風格を出していたけど本当にラスボスになったんだ~。」

「一体何がどうなっているのよ……!」

かつてない戦いを引き起こそうとする元凶の正体を察したセレーネやラウラは血相を変え、ユーシスとマキアスは信じられない表情で声をあげ、ミリアムは口元に笑みを浮かべながらも表情を真剣にし、サラ教官は厳しい表情で声を上げた。



!この気配は……!―――エステル、ヨシュア、ミント!構えなさい!―――凄まじい”負”の霊圧を持つ”亡霊”が来ますわよ!



へっ!?



一体どこから来るんだ……!?



見て!あそこから”何か”が現れるよ!



ふふっ、会議がめでたく収まったようで何よりだが、まだ”遊戯”は終わっていませんぞ?



するとその時フェミリンスの警告を聞いたエステル達が周囲を警戒している中ありえない人物の声が端末から聞こえた後端末の画面にはデスクの囲いの中心地に突如現れたオズボーン宰相が映った! 
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