| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

幕間二 ~三国の試練~ 第152話

同日、8:20―――



ブリーフィングを始めたリィン達だったが、誰一人何の提案も思い浮かばず、重苦しい空気だけが流れていた。



~カレイジャス・会議室~



「すまない……クロウ…………ッ……!」

「兄様…………」

辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているリィンをエリスは心配そうな表情で見つめ

「内戦が終結してしまった今、わたくし達は何をすればよろしいのでしょう……?」

「そ、そんな事言われても……」

「もう僕達にできる事は何もないよ……」

「………………(みんな……)」

辛そうな表情で呟いたセレーネの言葉を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、マキアスは肩を落とし、ゲルドは悲しそうな表情で仲間達を見回した。



「それにしてもまさか、”鋼の聖女”がメンフィルに寝返っていた上”盟主”まで殺されていたなんてね……」

「”結社”のトップの”盟主”が死んだ上、最高幹部である”蛇の使徒”達もメンフィルに囚われた”蒼の深淵”とメンフィルに寝返った”鋼の聖女”を除いて全員死んだ以上、”結社”は事実上崩壊した事になるのでしょうね……」

「”槍の聖女”……洒落にならないくらいの強さだったね。正直団長でもまともに戦えるかどうかわからない。」

重々しい様子を纏って呟いたセリーヌの言葉に続くようにサラ教官は複雑そうな表情で答え、フィーは真剣な表情で推測し

「伝承以上の強さだったな……」

「そしてそんなサンドロッド卿がメンフィルに寝返ってリウイ陛下達に忠誠を誓ったのか……」

ガイウスは重々しい様子を纏い、ラウラは複雑そうな表情で呟いた。



「姉さんとクロウさんは一体どうなるのでしょう……?」

「”蒼の深淵”は”戦争回避条約”の件を考えると処刑かな~。クロウは……”通商会議”の時にオジサンを含めた各国のVIP達の命を狙ったっていう罪があるから、”聖魔皇女”達の命を脅かしたからメンフィルも許さないと思うよ~。」

「……父達のように処刑するのかもしれんな。」

不安そうな表情をしているエマの言葉を聞いたミリアムの推測に続くようにユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。



「そ、そんな!?あの時クロウ君も”列車砲”の砲撃を阻止したのに!」

「だけど、その事件を計画したのがクロウ……”首謀者”は間違いなく極刑を受ける事になるのが常識だからね……」

「………………」

ミリアムとユーシスの話を聞いたトワは悲痛そうな表情をし、ジョルジュは重々しい様子を纏って呟き、アンゼリカは目を伏せて黙り込んでいた。

「!!そんな事、絶対にさせないっ!クロウを……俺達の大切な仲間を処刑するなんて、絶対にさせるものかっ!勿論エマにとって大切な家族のクロチルダさんもだ!」

「リィンさん………」

その時怒りの表情で声を上げたリィンの様子をエマは驚きの表情で見つめ

「あのバンダナ男はともかく、よくヴィータまで助けようって気になるわね?アンタの妹とアルフィン皇女を誘拐するように仕向けた張本人よ?」

セリーヌは目を丸くしてリィンを見つめて尋ねた。



「……確かにクロチルダさんはアルティナに二人を誘拐するように命じた。でも、だからと言って命を奪う程の罪を犯したとはとても思えない……!」

「リィンさん……ありがとうございます。そのお気持ちだけで十分です……」

「エマ、貴女がそんな弱気な事を言ってどうするのよ……!」

リィンの答えを聞いて寂しげな笑みを浮かべるエマをアリサは真剣な表情で指摘し

「………エリス、殿下。すみません。二人の誘拐を指示したクロチルダさんは確かに許せませんが、だからと言って彼女の命を奪う事はどうしても俺は許せません……」

「兄様……私の事はお気になさらないで下さい。それに私もそこまでする必要はないと思っています。」

「はい。確かに彼女も罪を償うべきですが、だからと言ってそんな簡単に命を奪うべきではありません。」

「フフ……リィンは私の事を”優しい”っていうけど私より、リィンの方が優しいわ……」

リィンに謝罪されたエリスとアルフィン皇女はそれぞれ静かな表情で答え、ゲルドは微笑みながらリィンを見つめた。



「だけど実際の所、どうするつもりだい?二人は世間から見たら、立派な”犯罪者”だよ?―――それも、”極刑”が降される程の相当重い罪を犯した。まさかとは思うけど二人が拘禁されている場所を襲撃して二人を助けた後どこかへと逃がすなんて馬鹿な考えはしていないよね?もしそんな事をしたら君達も立派な”犯罪者”だし、最悪君達の家族まで責任を問われる事になる。犯罪を犯し、家族にまで迷惑をかけてまで二人を助けるつもりなら私は反対だし、もし実行するつもりならレン君達に密告して”力づく”でも君達を止めさせてもらうよ。――――君達の未来を大切に思う先輩としてね。」

「……その必要はないわ。もしそんな事をしようとするなら、さすがにあたしも反対するし、力づくでも止めてみせるわ。この子達の担任教官としてね。」

「ッ!!」

「アンちゃん……サラ教官…………」

アンゼリカとサラ教官の言葉を聞いたリィンは辛そうな表情で唇を噛みしめ、トワは悲痛そうな表情をし

「一応言っておくけど、バリアハートで不当な理由で拘束されたマキアスの時と違って、二人はそれぞれ拘束されて当然の”重罪”を犯した”犯罪者”よ。あんた達もそのくらいの事はわかっているでしょう?さっき、アンゼリカが言ったようなあの二人を助ける為に暴走して馬鹿な真似をするつもりならあたし―――いえ、”トールズ士官学院の教官全員”が力づくでもあんた達を止めると思いなさい!それにもしあんた達がそんな馬鹿な真似をしたらあんた達だけでなく、あんた達の家族までも責任を問われる可能性がある事も頭に入れておきなさい!いいわね!?」

「………………」

サラ教官の念押しにⅦ組のメンバーは辛そうな表情で黙り込んでいた。



「それじゃあクロウ達が処刑されるのを受け入れろって言うんですか!?」

「そこまでは言ってないわ。クロウ達の救出は諦めて処刑は免れる方法―――”減刑”の方法を考えるのが”最善の方法”よ。」

悲痛そうな表情をしているリィンの反論に対してサラ教官は静かな表情で答え

「”減刑”ですか……クロウさん達がエレボニア帝国に拘束されていれば、お父様や私達―――――”皇族”の権限でできると思うのですが……お二人はメンフィル帝国に拘束されてしまったのですから、”減刑”ができるとすればメンフィルの皇族の方達ですわね……」

「……アンはレン姫の秘書兼護衛だよね。レン姫に何とか二人の減刑は頼めないのかい?」

「それにレン姫が無理ならプリネがいるんだから、プリネに何とか減刑できるように頼める事もできるかもしれないよ……!」

辛そうな表情をしているアルフィン皇女の推測を聞いたジョルジュは真剣な表情でアンゼリカを見つめて尋ね、エリオットは明るい表情で提案した。



「……難しいと思うよ。君達も既に気付いていると思うけどレン君は可憐な見た目の上普段は子供らしい一面を見せているけど、仕事になると”一人前の皇族としての態度”で私情は持ち込まなく着実にこなすタイプだし、例え彼女を説得できたとしてもそもそもレン君の権限ではあの二人の減刑はできないと思うよ。」

ジョルジュの問いかけに対し、アンゼリカは重々しい様子を纏って答え

「ええっ!?皇族なのに、恩赦とかで犯罪者の減刑もできないんですか……!?」

アリサは驚きの表情で尋ねた。

「……確かにレン君は皇族だけど、養子の身の為皇位継承権すらない彼女では犯罪者―――それも極刑が降される程の重罪を犯した犯罪者の判決について口を出せるような権限は幾ら何でも持っていないと思うよ。―――それと皇位継承権の順位が下から数えた方が早いプリネ君も無理だと思った方がいい。」

「そうなると、当然わたくしやツーヤお姉様にもそのような権限はないのでしょうね……」

「そ、そんな……それなら一体誰なら可能なんですか!?」

アンゼリカの答えを聞いたセレーネは辛そうな表情をし、マキアスは必死の表情で尋ねた。



「―――確実に可能だと思えるのはやはりリフィア殿下だね。彼女はなんといっても現メンフィル皇帝シルヴァン陛下直系の一人娘にして、シルヴァン陛下の跡継ぎ――――メンフィル皇帝になる事が既に決まっている皇位継承権第一位を持つ皇族だ。そんな彼女ならば重犯罪者の判決についても介入ができると思うよ。」

「やっぱそうなるよね。」

「後は現メンフィル皇帝のシルヴァン皇帝もそうだけど、前のメンフィル皇帝だった”英雄王”も当然口を出せるだろうね~。」

アンゼリカの説明を聞いたフィーは納得し、ミリアムは静かな表情で推測し

「リフィア殿下ですか………エリスさんの件でアルティナさんを処刑したくらいですから、正直難しいですね……」

「誘拐を実行したアルティナを許さなかったのだから、当然それを命令したクロチルダさんの事も許していないのだろうな……」

エマとガイウスは複雑そうな表情で考え込んでいた。

「それ以前に殿下達が俺達に面会して話を聞いてくれるかどうかが問題だぞ。」

「……アンタ達が”守護の剣聖”に頼んで、”聖魔皇女”に口利きしてもらう事は無理かしら?」

重々しい様子を纏って呟いたユーシスの言葉に続くようにセリーヌはリィンとエリスを見つめて尋ねた。



「……正直わからない……メンフィルがエレボニアとの開戦を決定してから以降俺達にもメンフィル帝国の情報を話さなかったエリゼの様子を考えると、仕事に私情や縁故を持ち込まないタイプに思えるからな……」

「姉様は皇族の……それもメンフィル帝国を統べる皇帝の跡継ぎの専属侍女長という大任を務めているのですから、例え私や兄様の頼みでも、聞いて頂けない可能性が高いと思います。」

セリーヌの問いかけに対し、リィンとエリスは複雑そうな表情で答えた。

「あ、あの……イリーナ皇妃はどうでしょうか?夏至祭の時もあの方の意見でリウイ陛下もわたくし達を許す事を決めたのですし……」

その時ある事を思い出したアルフィン皇女が提案した。



「”聖皇妃”ですか……確かに”英雄王”の愛妻の彼女なら”英雄王”達を説得できるかもしれませんし、彼女の慈悲深い性格も考えるとあたし達の頼みにも応じてくれるかもしれませんが……それ以前にイリーナ皇妃に面会できるかが問題ですね……」

「下手をすれば、リフィア殿下に面会するよりも至難の技かもしれぬな……」

「そうなると……メンフィルの皇族達に頼る方面は難しいかもしれないね……」

「で、でも二人の判決に介入できて減刑できるとすれば、その方達だけだと思うよ?」

サラ教官とラウラは複雑そうな表情で答え、ジョルジュの言葉を聞いたトワは不安そうな表情をした。



「………ごめんなさい。」

「ゲルド?」

「えっと……どうしていきなり謝るのかしら?」

その時辛そうな表情で顔を俯かせているゲルドに気付いたリィンは不思議そうな表情をし、アリサは戸惑いの表情で尋ねた。

「だって……私は”こうなる事がみんなが士官学院を奪還する作戦が始まる少し前に見えていたけど、学院を取り戻したばかりのみんなに辛い思いをして欲しくなくて今まで黙っていた”の……!ううっ……」

「ええっ!?そ、それって……!」

「……”予知能力”か。」

「ま、歴史に残ってもおかしくない凄まじい的中率を誇る”予知能力”を持つアンタなら”今の未来”が”見えて”もおかしくないわね。」

「ゲルドさん……」

涙を流して声を上げたゲルドの言葉を聞いたエリオットは驚き、ガイウスは複雑そうな表情をし、セリーヌは静かな表情で呟き、エマは辛そうな表情で泣き続けるゲルドを見つめた。



「…………―――――すまない、ゲルド。」

「え……?」

泣き続けていたゲルドだったがリィンに声を掛けられると泣き止んで呆けた表情でリィンを見つめた。

「俺達はゲルドがどれ程辛い思いをしているか知らずに、悲願を果たした事を喜んでいたんだ。あの時俺達が士官学院の奪還の報告を聞いたクレア大尉達の様子がおかしいと思っていた時に、俺達を気遣ってわざと嘘の推測を口にしたシグルーン中将の言葉に頷いたのも俺達に辛い現実を知らせない為だろう?」





……色々と疑問に思う事はあるかもしれませんが、クレア大尉が仰ったように明日になればわかるのですから、今は悲願を果たした事を素直に喜ぶべきだと思いますわよ。



うん……それにもしかしたらみんなの為に、難しい話は明日にしてくれたのかもしれないよ……?





「あ…………」

「あの時悲願を果たした兄様達を何故辛そうな表情で見つめていたのか、ようやくわかりました……」

昨日のカレイジャスのブリッジでの出来事を思い出したアリサは呆け、エリスは辛そうな表情でゲルドを見つめた。

「だから謝らせてくれ。――――すまない。ゲルドは俺達の為に黙っていたのに、俺達は目の前の勝利に喜んでいてゲルドの気持ちに気付かなかったのだから……そしてお礼を言わせてくれ。―――ありがとう、俺達の為に今まで辛い思いを必死に隠して黙っていてくれて。」

「リィン……………ううん、お礼を言いたいのは私の方よ……それに、まだ”希望の未来”は残っているわ……!」

リィンの心遣いに心を打たれたゲルドは涙を流した後涙を拭い、決意の表情で答え

「何?」

「”希望の未来”ってどういう事?」

ゲルドの答えを聞いたユーシスは眉を顰め、アリサは不思議そうな表情で尋ねた。

「フッ、ゲルド君の言う通り、まだ私達にはエレボニアが”国”として生き延びる”希望の未来”の可能性が残されているよ。」

するとその時オリヴァルト皇子、トヴァル、クレア大尉、レクター少尉が会議室に入って来た! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧