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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~黄金の羅刹の最後~

同日、13:45――――



~帝都近郊~



「ば、化物か奴は……!?」

「こ、これが”黄金の羅刹”の”力”……!」

「フッ、我が首はそう簡単に取らせんぞ?”英雄王”や”空の覇者”はまだ出てこないのか!?貴様ら雑魚では時間の無駄だ!これ以上被害を出したくないのならばさっさと”英雄王”達を出せ!」

「クッ……こうなったら一旦撤退して戦艦や”歪竜”の空からによる空爆に切り替えるべきでしょうか……!?」

オーレリア将軍の強さにそれぞれの兵達が驚いたり恐怖を感じている中、シュピーゲルからは不敵な笑みを浮かべているオーレリア将軍の声が聞こえ、ミレイユ三尉は唇を噛みしめてクロスベル帝国軍を率いる立場であるリセルに視線を向け

「……後々の事を考えるとこちらもあまり被害は出したくない為、そちらの方がいいと思います。――――ただ、貴女達メンフィルはその策についてはどう思われますか、ファーミシルス大将軍閣下。」

ミレイユ三尉に判断を促されたリセルは厳しい表情でオーレリア将軍が操縦するシュピーゲルを睨んだ後メンフィル帝国軍を率いる立場であるファーミシルスに視線を向けて尋ねた。



「フフッ、さすがに貴女達では荷が重いでしょうから奴は私自ら討ち取ってあげるから撤退は必要ないわ。”黄金の羅刹”……メンフィル帝国の大将軍たる私にとって”猟兵王”以来の久しぶりの相応しい獲物を逃す訳にはいかないわ。」

リセルの問いかけに対してファーミシルスは好戦的な笑みを浮かべてシュピーゲルと対峙しようとしたが

「―――いえ、彼女の相手は私にさせてください。」

「あら……貴女自ら武勲を求めて申し出るなんて一体どういう風の吹き回しかしら?シル―――いえ、リアンヌ。」

レグラムにある”槍の聖女”像に瓜二つな姿をしている女性騎士に制止され、意外そうな表情で尋ねた。



「例え生まれ変わった身であろうと一時は陛下達に剣を向けていた身。せめてもの罪滅ぼしをしたいのです。」

「……………なるほど。貴女らしいと言えばらしい理由ね。仕方ないわね……今回だけ特別に獲物を譲ってあげるわ。」

女性騎士の説明を聞いて納得して溜息を吐いたファーミシルスは気を取り直して女性騎士を見つめてオーレリア将軍との勝負を譲る事を口にし

「―――ありがとうございます。」

女性騎士はその場で会釈をした。



「マスター、どうかご武運を……!」

「フフ、例え”黄金の羅刹”とは言え、マスターならば短時間で討ち取れると思いますわ。」

その時デュバリィと同じ”鉄機隊”の騎士装束を身に纏った娘達はそれぞれ女性騎士に応援の言葉をかけ

「……アイネス、エンネア。以前にも説明しましたがリウイ陛下とイリーナ皇妃に剣を捧げた私は貴女達の知る”私”ではないのですから、”マスター”と呼び慕う必要もありませんし、私に従う必要もないのですよ?」

女性騎士は静かな表情で娘達に指摘した。



「マスター、私達もその際に申し上げたはずです。マスターが何者であろうと、私達のマスターは”鋼の聖女”アリアン―――いえ、”槍の聖女”サンドロッド卿である貴女であると!それに私達としても、”結社”をも越える強者揃いのメンフィルで互いの武を競い合い、自らの腕を鍛え上げる事ができるのならば、本望です!」

「まあ、マスターが”シルフィア”という名のメンフィルの将の生まれ変わりでメンフィルに降った事を知ったデュバリィは面白いくらいに混乱するでしょうけど私達と同じ答えを出すと思いますわ。それにこうも申し上げたはずですよ?―――マスターの記憶を持っているのならば責任を取って”鋼の聖女”直属の部下である”鉄機隊”たる私達が死ぬその時まで貴女に仕える事を許してください、と。」

「……ありがとうございます。」

デュバリィと同じ”鉄機隊”所属である騎士装束を纏った娘達―――”剛毅”のアイネスと”魔弓”のエンネアの言葉に静かな笑みを浮かべた女性騎士はオーレリア将軍が操縦するシュピーゲルへと近づいた。



「な――――――私は夢でも見ているのか……?そなた、名は何という!?」

オーレリア将軍は自分に近づいて来る女性騎士を見て呆けたオーレリア将軍は信じられない表情をして女性騎士に名を問いかけ

「―――我が名はリアンヌ・ルーハンス・サンドロッド。メンフィル前皇帝にして現メンフィル大使リウイ・マーシルンとその妻イリーナ・マーシルンの刃にして盾。それが”今の私”です。」

「!!」

女性騎士――――リアンヌが名乗るとオーレリア将軍は目を見開いた。



「”黄金の羅刹”オーレリア・ルグィン……貴女は何故内戦を引き起こして民達を傷つけ続けるカイエン公に協力し、そして本来なら守るべき民達の為に振るうべきその絶佳(ぜっか)の剣を今は何の為に振るっているのですか?」

「フフ、知れた事。求めるは”史上最強”――――リアンヌ・サンドロッド!”槍の聖女”たるそなたを超える武勲!」

「……………………」

自身の問いかけに対し、高々と声を上げて答えたオーレリア将軍の答えを聞いたリアンヌは目を細めてシュピーゲルを見つめた。



「な……そんな事の為に内戦を引き起こした貴族連合側についたの!?」

「武勲を求めるあまり”軍人”としての”本質”を見誤るとは愚かとしか言いようがないですね。」

「フフッ、確かに私が相手するより、リアンヌが相手するべきだったわね。」

一方オーレリア将軍の答えを聞いたミレイユ三尉は信じられない表情をし、リセルは厳しい表情をし、ファーミシルスは苦笑しながらシュピーゲルを見つめ

「……なるほど。”獅子戦役”と状況が類似しているこの内戦を利用しようとしていたのか。」

「今回の内戦で活躍した所でマスターが為した偉業を超えられる訳がありませんわ。まさか領邦軍きっての”英雄”がそのような無謀な事を考えていたとは……」

アイネスは真剣な表情で推測し、エンネアは侮蔑の視線をシュピーゲルに視線を向けていた。



「そのために私はアルゼイドとヴァンダールの二大流派を修めた…………本来なら師たる”隻眼”と”光の剣匠”を手始めに倒す事を目標としていたが……気が変わった!―――”槍の聖女”!250年前の人物であるそなたが何故今の時代に存在し、メンフィルに降っているかは知らぬがそのような些細な事はどうでもいい!私が求める”史上最強”であるそなたを超える為にも今ここでそなたを討つ!!」

そしてシュピーゲルの操縦席にいるオーレリア将軍は操縦でシュピーゲルが持つ剣をリアンヌに向けて闘志を燃やしたが

「―――それが貴族連合に加担した貴女の”理由”ですか。力に酔いしれ、そのような愚かな理想の為だけに民達を苦しめ続けたばかりか多くの犠牲者も出す事になってしまった内戦を引き起こした愚か者達についた事、師であるお二方が知ればさぞ嘆く事でしょうね。」

「何……?」

リアンヌが静かな表情で呟いた言葉を聞き、眉を顰めた。



「貴女を歪ませる事となってしまった”原因”である私が責任を持って、今ここで貴女を討ちます。覚悟はよろしいですね?」

リアンヌは全身から膨大な闘気を溢れだして騎兵槍(ランス)を構え

「クク、望む所だ!()くぞ、”槍の聖女”―――――ッ!!」

シュピーゲルはリアンヌに一気に詰め寄って剣を振り下ろした!



「遅い――――」

しかしリアンヌは最小限の動きで攻撃を回避した後跳躍して超高速の連続突きを放った!

「な―――――クッ……!?」

放たれた連続突きに対し、シュピーゲルは即座に剣で防御し続けたが

「セイッ!!」

「しまった!?」

連続突きの最後の一撃を受け、剣は真っ二つに折れた!



「この聖技にて全てを決します!ハァァァァァァァァ………!!陛下達の道は私が切り開く!」

「グゥゥゥゥッ!?何という闘気……!これが”槍の聖女”の”力”か……!」

槍を天へと掲げて膨大な闘気や聖気が籠った竜巻を発生させたリアンヌは竜巻をシュピーゲルに叩きこんでシュピーゲルを怯ませ

「これで………終わりです!」

シュピーゲルを怯ませたリアンヌは突撃の構えをし、そして!

「聖技――――グランドクロス!!」

一気にシュピーゲルに詰め寄ってシュピーゲルの背後へと駆け抜けた!するとシュピーゲルに膨大な聖気や闘気が込められた十字架が刻まれると共にシュピーゲルは十字架に斬り裂かれ、斬り裂かれたシュピーゲルから大量の血を噴出させるオーレリア将軍が現れた!

「カハッ!?ハハ…………これが……”槍の聖女”か…………”史上最強”に…………こんな鉄屑で挑む方が……どうか………してた…………な…………叶う事なら………我が身で…………斬り合い……た……かった………」

リアンヌのSクラフト―――聖技・グランドクロスによって十字に斬り裂かれたオーレリア将軍は静かな笑みを浮かべて口から血を流しながら絶命した!



「お、”黄金の羅刹”をこんな短時間で……!」

「フフッ、さすがはシルフィア殿と言った所ですか。」

「お見事です、マスター!」

「そもそもその身に収めた帝国の二大流派の剣技を存分に生かせる生身ではなく、機甲兵で挑んだ時点で敗北は決まったようなものですわ。」

リアンヌの勝利にミレイユ三尉は信じられない表情をし、リセルは微笑み、アイネスは口元に笑みを浮かべ、エンネアは侮蔑の視線をシュピーゲルの残骸の傍にあるオーレリア将軍の死体に向けていた。



「……生まれ変わっても腕は衰えてな―――いえ、むしろかつてより腕は上がっているわね。――――帝都を阻む障害は排除した!全軍、帝都を速やかに制圧するわよ!」

ファーミシルスは口元に笑みを浮かべてリアンヌを見つめた後号令をかけ

「オォォォォォォオオオ――――ッ!!」

ファーミシルスの号令に応えるかのように連合軍は雄たけびを上げた後帝都に進撃した!



「―――ファーミシルス殿、私達は最後の一人に”結社”の”鉄機隊”が解散した事を伝える為に一端失礼させて頂きます。」

「最後の一人……ああ、”神速”ね。わかったわ。カイエンがセドリック皇子を確保する為に”蒼の深淵”達と共にカレル離宮に向かったとの情報がさっき入ったから”神速”は多分そちらにいると思うわ。」

リアンヌに戦線離脱を告げられたファーミシルスは目を丸くした後すぐに納得した表情で自分の知る情報を教え

「そうですか。貴重な情報を教えて頂きありがとうございます。アイネス、エンネア。行きますよ。」

「「はい、マスター!!」」

リアンヌはファーミシルスに会釈をした後アイネス達と共に転移術を発動してその場から消えた。 
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