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英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)

作者:sorano
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第24話

庭園に仲間達と共に戻ったケビンはまず、残っていた封印石を解放した。



~隠者の庭園~



「一度見たとはいえ、不思議な光景だね………」

「あの中に私達が入っていたなんて、今でも信じられないの………」

解放されている様子を見つめていたナユタとノイはそれぞれ興味深そうな表情や信じられない表情をし

「うーん、一体どういう構造でできているんだろう?」

「あなたねえ………もっと他にも考える事があるでしょうが。」

「フフ、仕方ないですよ。それがウィルなんですから。」

考え込んで呟いたウィルの言葉を聞いたエリザスレインは呆れ、セラウィは苦笑していた。そして光の球は降りて来て、それぞれから見覚えのある人物達が現れようとした。

「あれは………!」

(フム。こんなにも速く我が同志と再び邂逅する日が来ようとはな。)

光から現れようとした人物達を見たヨシュアは驚き、プリネの身体の中にいたアムドシアスは興味深そうな様子で見つめていた。そして光からそれぞれ皇子の服装や髪形をしたオリビエとジンがお互い向かい合い、地面に膝をついた状態で現れた!

「………む…………」

「………くっ………」

現れた2人はそれぞれ唸った後、顔を上げた。

「………ジンさん?」

「皇子………あんたか。どうやら夢………というわけでも無さそうだな。」

「フッ、違いない。シェラ君ならともかく夢の逢瀬に酒呑み友達というのは些かボクの流儀に反するからね。」

「ハハ、お前さんらしいな。しかし、さすがにシェラザードは酒飲み友達にはならないか。」

オリビエの言葉を聞いたジンは笑った後、口元に笑みを浮かべて確認した。

「シェラ君には呑まれても彼女の酒には決して呑まれるな。リベールで得た教訓の一つだよ。」

「くく、そりゃまた随分と貴重な教訓だったようだな。…………さてと。」

疲れた様子で語るオリビエをジンに口元に笑みを浮かべて言った後、オリビエと共に立ち上がってケビン達を見た。

「………どういう事なのかできれば説明してもらえるか?」

「久々の逢瀬に感涙して熱いベーゼと抱擁を交わす前にね。」

「まったく………」

「はは、さすがと言うべきか。お二人ともこんな状況でまったく動じてへんですなぁ。」

オリビエの言葉を聞いたミュラーは顔に青筋を立てて溜息を吐き、ケビンは感心した。そしてケビン達は状況を説明した後、初見であるリース達とオリビエ達は自己紹介をし合った。



「………ふむ………」

「………むむむ………これはどうしたものか………」

事情を聞き終えたジンは考え込み、オリビエは唸った。

「俄かには信じられないだろうがこれが我々の置かれた状況だ。まずは受け入れたうえで対処して行くしかあるまい。」

「ああ、ミュラー。君は一つ勘違いをしているよ。すでにボクは、この状況を現実として受け入れているのだから。」

「………ならばどうしてそのようなしかめ面をする?」

オリビエの答えを聞いたミュラーは不思議そうな表情でオリビエを見つめて尋ねたが

「フッ、決まっているじゃないか。ヨシュア君、クローディア殿下、ティータ君、リフィア殿下、エヴリーヌ君、プリネ姫、リタ君、ツーヤ君、セラウィさん、エリザスレインさんにジョゼット君………そしてユリアさんと我が同士のアムドシアスに初対面のリース君達………いったい誰から、再会の抱擁とベーゼを交わそうと悩んでね。」

「…………………」

酔いしれっている様子で語るオリビエの答えを聞いて呆れた。

「あ、あはは………」

「ふふ、本当に相変わらずですね。」

(フム、相変わらずだな。)

オリビエの答えを聞いたティータとクローゼは苦笑し、またプリネの身体の中にいたアムドシアスは頷き

「ふふ、面白い人でしょ?ナベリウス。」

「ん………今まで話した………事の………ない人…………」

リタとナベリウスは仲良く会話をし

「全く……少しはマシになったと思ったのだがな。」

「………以前言ったよね?プリネやエヴリーヌにそんな事したら潰すって。」

リフィアは呆れて溜息を吐き、エヴリーヌは冷徹な視線でオリビエを睨み

「お、お姉様。抑えて下さい。この場の雰囲気をほぐすためにわざとあんな事を言っていると思いますし………」

「あ、あの………あたしは冗談に聞こえなかったんですが………」

プリネはエヴリーヌを諌め、ツーヤは冷や汗をかき

「え、えっと………私の全ては陛下に捧げているので、申し訳ないのですがそういうのはちょっと………」

オリビエの言葉を本気と受け取ったティナは戸惑いながらも優しい微笑みで断ろうとし

「なんなのね、この人!絶対、クレハ様に会わせちゃダメなの!」

「あ、あはは………」

ノイは憤り、ノイの言葉を聞いたナユタは苦笑し

「ねえヨシュア………ホントにこれが帝国の皇子殿下なわけ?」

ジョゼットは呆れた様子でヨシュアに尋ね

「はは、一応そうみたいだね。」

尋ねられたヨシュアは苦笑しながら答えた。そして仲間達の様子を気にせず、オリビエは飄々とした様子で話し始めた。



「とまあ………それは”半分”冗談として。話を聞いている限り事件の謎も少しずつではあるが明らかになっているようだ。その意味では、ボクも喜んで協力させてもらいたい所だが………」

「………その前に幾つか確認しておきたいことがある。そんなところか。」

「フッ、さすがはジンさん。話を聞いていてボクと同じような疑問を抱いたようだね。」

「………同じような疑問?」

「何か気付いたことでも?」

オリビエとジンの会話を聞いたケビンは不思議そうな表情をし、ヨシュアは真剣な表情で尋ねた。

「そうだな………幾つかあるんだが。まずは、何度か現れたという女の霊という存在についてだ。」

「………『彼女』ですか。」

「たしか………偽のグランセル城の女王宮で最初に現れたんですよね?」

そしてジンの言葉を聞いたユリアはある人物の事を思い出し、クローゼはユリアに確認した。

「ええ…………殿下の元に至るための鍵を我々に託してくれました。しかし………最初に現れたという意味ではそれより以前のようですね。」

「………確かに。オレとリース、リタちゃんが最初にこの場所に飛ばされた時に聞こえてきた声………どうやらあれも『彼女』だったみたいです。」

「………そうですね。」

「よく考えたら、私達を導くための事ばかり言っていたですものね。」

ユリアの言葉にケビン、リース、リタはそれぞれ頷いた。

「最初は声だけだった存在が姿を見せ始めている………あの黒いお兄さんが言った事を裏付けているかもしれませんね。」

「ああ、”王”に力を奪われた”隠者”という呼ばれ方………そして”庭園の主”という表現か。」

「そして、そこの石碑には『隠者の庭園』という言葉が刻まれているという。それらの話から推測すると………」

「………この”拠点”そのものが『彼女』に関係している何らかの場所だということか。」

そしてティータの言葉の続くをケビン、ジンが続けた後、ミュラーが最後に答えた。

「あ………」

「なるほど、ちょっと納得かも。ここってワケがわからないけど他と違って妙に居心地がいいし。」

「うーん………”テラ”で言えば、クレハ達が眠っていた場所に似た場所かもしれないね。」

「た、確かにそうかもなの………ここから最初の”星層”へつながっている事といい、結構似ているの………」

ミュラーの答えを聞いたクローゼは呆けた声を出し、ジョゼットは納得した様子で答え、ナユタは考え込んだ後、ある場所と比較し、その言葉を聞いたノイは頷いた。



「ふむ………少し見えてきましたな。どうやら『彼女』は元々この場所にいた存在らしい。しかし”影の王”のせいで力を奪われてあんな姿になった。そんな状態にも関わらずオレらの手助けをしてくれている。」

「………その意味では各地に点在している石碑も『彼女』ゆかりかもしれませんね。まるで僕たちを導くかのように置かれていますから。」

「そうね。あの石碑がなければ、探索はもっと難航していたかもしれないわ。」

「確かに………な。でなければ毎回エヴリーヌの転移に頼っていたかもしれないな。」

「ん。その石碑のお蔭でエヴリーヌ、めんどくさい事をする必要がないしね。」

「まあ、それ以前に転移魔術ができるエヴリーヌさんの事を考えていない事を前提にしていると思いますし………」

そしてケビンの言葉にヨシュアは推測し、ヨシュアの推測をプリネ、リフィア、エヴリーヌ、ツーヤは頷いた。

「そう、そして同じ事がある重要な品についても言える。ケビン神父………君が持っているその”方石”だ。」

「あ………」

「その”方石”の正体は今の所定かではないが………少なくとも、彼女ゆかりの品である可能性は高いと思う。どうだろう、この読みは?」

「………いや、大したモンですわ。正直、この混沌とした状況でかなり情報が整理できた感じです。」

オリビエの推測を聞いたケビンは感心し

「シュリ姉様~、もしかしてこれが”人は見かけによらない”というんですか~?」

「サ、サリア!そんな失礼な事を言ったら駄目よ!」

「ふむ、しかしサリアの言う通りだとわらわも思うぞ?わらわも最初はこんな奴が仲間にいて大丈夫かと思っていたぐらいだしの。」

「あんたも、口を慎みなさいよ………相手は仮にも一国の皇子よ?」

サリアはある事をシュリに尋ね、尋ねられたシュリは慌て、サリアの言葉に同意していたレシェンテをマリーニャは溜息を吐きながら注意した。



「はは………しかしそうなると………ただ前に進む以外にも目的が一つ増えましたな。」

サリア達の会話を苦笑しながら聞いていたケビンはある事を言い

「『彼女』の力を取り戻して詳しい話を聞かせていただく……つまり、そういう事ですね?」

クローゼが続きを答えて、確認した。

「ええ、その通りですわ。多分そうでもしないと………あの”影の王”たちにはとても対抗できへんでしょう。」

「………確かに。」

そしてケビンの言葉にユリアは頷いた。

「そうかのう?わらわ達が本気を出せば、その”影の王”とやらも大した事ないと思うがの。」

「いや、あんたを基準とかどれだけ無茶な話よ………」

一方レシェンテは首を傾げ、レシェンテの言葉を聞いたマリーニャは呆れていた。

「フッ………それはそれでいいとして。もう一つだけ、確認したいことがあるんだ。」

「へ………まだあるんですか?」

「ああ………その”影の王”についてさ。単刀直入に聞くが………君、心当たりはないのかい?」

「…………っ……………」

「………どうしてオレに?」

オリビエの疑問の言葉を聞いたリースは辛そうな表情をし、ケビンは静かな笑みを浮かべて尋ねた。



「いやなに、話を聞いていると君にご執心のようだからね。亡くなられたというリース君の姉上についても知っていたようだし………さらに”悪魔”などという君達の聖典ゆかりの存在すら召喚して使役するくらいだ。」

「ふむ………そう言われると確かに。………ただ残念ですけど特に心当たりは無いですわ。どちらかというとオレより、”星杯騎士団”に敵対してる連中なのかもしれません。」

「……………………………………」

オリビエの答えを聞いたケビンは納得した後、首を横に振って答え、その様子をリースは黙って見つめていた。

「ふむ、こう言ってはなんだが敵が多そうな組織のようだからそれもあり得る話か………まあ、かくいうボクも敵が多いという意味では似たような立場にあるけどね。」

「まったく………何を他人事みたいに。」

ケビンの答えを聞いたオリビエは頷き、オリビエの言葉を聞いたミュラーは呆れ

「…………ま、それを言えば我等メンフィルも他人事とはいえないがな。」

「ええ………」

「その中でも特に軍神(マーズテリア)や嵐の(バリハルト)みたいな光の神殿の奴らはエヴリーヌ達を目の敵にしているしね。」

「他にはメンフィルに過去、敗北した国……等ですね。」

「………………………」

リフィアとプリネは真剣な表情で呟き、エヴリーヌとツーヤの言葉を聞いたティナは辛そうな表情で黙り

「むむ~………まさか”影の王”とやらはあのラプシィアなのか?セリカの事も知っていたというし………奴はあの時、滅したはすだが………しかし、今の状況だと生き返っている事が”あり得る”かもしれんな。」

「ちょっ!冗談でもそんなやばい推測、やめてよ!また、あいつと戦うなんてもうこりごりよ!」

「う~、あの人のせいでエクリア母様、とっても酷い事をされた上悲しみました~。」

「ええ………………」

その一方レシェンテはある推測をし、それを聞いたマリーニャは慌て、サリアは悲しそうな表情で呟き、それを聞いたシュリも悲しそうな表情で頷いた。

「敵対と言えば、連合の方は今のユイドラの事を内心かなり危険視していたり、面白くないと思っているんじゃないかしら?」

「…………そうじゃない………と言いたいところなんだけど、否定できないんだよね…………」

「ええ………ディスナフロディやアヴァタール地方最大の勢力であるレウィニアをも超えるあのメンフィルとユイドラのみが同盟関係になった事を知った他の都市が抗議や苦言の文章を送ってきていますからね………」

それぞれの会話を聞いていたエリザスレインはある事を思い出してウィルに尋ね、尋ねられたウィルはセラウィと共に表情をわずかに暗くして答えた。



「……敵の正体に関しては引き続き保留になりそうですね。もう少し相手から情報を引き出せるといいんですが………」

そして会話が終わったのを見計らったヨシュアが真剣な表情で提案した。

「ああ、今度現れたら何とか聞き出してみるとしよう。………そんじゃあ、例によって準備を整えたらさっそく出発するとしますか。目的地は”第四星層”―――合流地点にある転位陣の先やね。」

ヨシュアの言葉に頷いたケビンは仲間達を促したその時

「………ケビン。」

リースが静かな口調で口を開いた。

「ん………なんや?なんか他に言っとく事でもあったか?」

「………いえ。少し体調が優れないので私は遠慮させて頂こうかと。」

「へ………」

リースの言葉を聞いたケビンは驚いてリースを見つめた。そしてリース達は仲間達に振り向いて申し訳なさそうな表情で言った。

「申し訳ありませんが………ケビンをよろしくお願いします。無茶はしないと思いますが詰めが甘い所がありますので。」

そしてリースは最初に自分達が飛ばされた場所―――巨大な本棚がある場所に向かって行った。



「リ、リースさん?」

「え、ちょっと………」

「あ、あの。体調が悪いのでしたら私に言って頂ければ身体の状態を診て差し上げますよ?」

リースの行動にティータとジョゼットは戸惑い、ティナは心配そうな表情で言ったが、リースは振り返りもせず、去って行った。

「………………………」

「……いいのか?追いかけなくて。」

リースの行動を呆けて見つめているケビンにジンは真剣な表情で尋ねた。

「あ………えっと………すんません。ちょっと行ってきますわ。」



そしてジンの言葉に我に返ったケビンはリースを追って行った……………


 
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