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Blue Rose

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第十一話 嵐の中でその四

「絶対によ」
「完成させないといけないですね」
「それは作っている人間の義務よ」
「先生いつもそうも言われてますね」
「そう、途中で放り出してはいけないの」
 それは決して、というのだ。言葉の調子にもそれが出ている。
「何があってもね」
「だからですね」
「作品は完成させないといけないの」
「最後の最後まで」
「一塗りまでね」
「この絵もですね」
「ええ、それが作る人の義務だから」
 言葉の強さはそのままだった、今も。
「この絵もそうしてね」
「わかりました」
 優花は先生のその言葉にも頷いて描いていった、ここで筆に付けた色は白だった。
 部活の後は買いものをしてから夕食を作って帰って来た優子と一緒に食べた、その時にはこうしたことを尋ねた。
「気になったことは」
「身体のことね」
「うん、こうした時ってもっと悩むよね」
 今優子に問うたのはこのことだった。
「そうだよね」
「そうね、本当はね」
「こんなに落ち着いたりしていないね」
「私もそう思うわ」
「確かに驚いたし落ち込んだし」
 優花もそうなった、実際に。まるで世界が崩壊してしまうかの様に。
 しかしだ、それでもというのだ。
「信じられなかったよ」
「それでもなのね」
「もっと驚いて落ち込んでどうしようもなくなる筈なのに」
「そこまでいっていないのは」
「やっぱりね」
 言いながら気付いてだ、優子に言った。
「姉さんがいてくれるからだね」
「私がいて、そして」
「傍にいてくれるって言ってくれたからだね」
「私がいるからなのね」
「そう、だからよね」
 それでというのだ。
「僕はとことんまで落ち込まなかったんだね」
「一人でいるとね」
「うん、とてもね」
「それこそね」
「僕壊れてたよ」
 その時の自分のことを思っての言葉だ、若し一人だったなら。
「どうしていいかわからずに」
「現実にね」
「けれどそうならなかったのは」
「私がいたから」
「姉さんがいて抱き締めてくれて」
 そして、というのだ。
「実際に傍にいてくれているから」
「まだ、なのね」
「とことんまで落ち込んでいなくて」
「今はね」
「少しずつでも」
 それでもというのだ。
「僕立ち直って向かっていけてるのかな」
「女の子になることね」
「姉さんはそんな人じゃないけれど」
 この仮定からまた言った優花だった。
「僕から逃げていたらね」
「あなたはそれで終わっていたかもね」
「そうなっていた可能性が高いよ」
 また自分で言った優花だった。
「本当にね」
「一人だとね」
「そうなっていて」
 そして、というのだ。 
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