| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第7話

~隠者の庭園~



「………ケビン………ケビン………聞いているの?」

「!!あ~………スマンスマン。ちょっとボーッとしてたわ。」

リースに声をかけられ、何かを思い出していたケビンは驚いた後苦笑しながら謝罪した。

「………大丈夫?」

「無理もない………ここに来てから、あまりにも色々な出来事があったからな。」

「す、少し休んだ方がいいんじゃないですか………?」

「ティータちゃんの言う通り、探索は私達に任せて少し休んでもらっても構いませんよ?特にマリーニャちゃんはこの中で一番探索にむいているんですから。」

(ハ~………あたしだって少し休んで考えたいのに、連れて行く気満々なようね、リタ………)

リース達はケビンを心配し、リタの話を聞いたマリーニャは疲れた様子で溜息を吐いた。

「はは、心配いらへんって。とりあえず………ここらで一旦、情報の整理をしとこうって話やったな。」

「うん………そうだけど。」

「あの”黒騎士”という男、思っていた以上に多くの情報を我々にもたらしてくれた。まずは、我々がいるこの異空間の名前だが………」

「”影の(ファンタズマ)”………あの黒いお兄さん、そんな風に言ってましたね。」

「ああ………なかなか思わせぶりな名前や。ただ、七耀教会の伝承から取ったわけでは無さそうやな。」

「………うん。聞いたことのない言葉かも。それから”王”という存在。」

ティータの話を聞いたケビンが意見を言い、リースも頷いた後ある人物の事を口にした。

「ああ、察するにそいつが今回の一件を仕掛けた黒幕ってことなんやろう。ずいぶんオレ達の事を嗅ぎまわっているみたいやけど………」

「………そういえばあの男、気になることを言ってたな。リース殿の姉や”神殺し”がどうとか………」

「…………っ……………」

「「…………………」」

ユリアが口にした言葉を聞いたリースとケビン、そしてリタとマリーニャはそれぞれ暗い表情や真剣な表情で黙り込んだ。



「すまない、立ち入るつもりは無かったんだが…………」

「………いや。」

「………確かに私には姉が一人いました。ルフィナ・アルジェント。私達と同じく………星杯騎士だった人間です。」

「リース…………」

リースの説明を聞いたケビンは真剣な表情でリースを見つめた。

「過去形ということは既に………?」

「ええ、騎士団の任務中に殉職しました。5年ほど前の事です。」

「……………………」

ユリアに説明しているリースをケビンは真剣な表情で黙って見つめていた。

「そうだったのか……しかしどうしてあの男がルフィナ殿の事を………?」

「………わかりません。姉がどんな仕事をしていたのか私は知りませんでしたから………ケビンはどう?」

ユリアに尋ねられたリースは暗い表情で答えた後、ケビンに尋ねた。

「……………………すまん。オレにも見当が付かへん。ただ、ルフィナ姉さんはとんでもなく優秀な騎士やった。腕前もそうやけど……その判断力、交渉力を買われて幾つもの事件に関わったはずや。あの男もそういった事件で姉さんと知り合ったのかもしれん。」

「そう………」

「そうか………”神殺し”殿に関しても同じなのか?マリーニャ殿、リタ君。」

「そういえばあの黒いお兄さん、”神殺し”さんが愛する人をどうとか言ってましたけど………」

「………ご主人様の過去は断片的なら知っているけど、詳しいことは知らないわ。あたしが使徒になったのはたかだが数十年前ぐらいだし。”第一使徒”であたしが御主人様に出会うずっと前から一緒にいるエクリアならもしかしたら知っているかもしれないけど………リタはどう?確かあんたはご主人様とエクリアが出会う前から使い魔をしていたって言ってたわね?」

「…………私も詳しい事は知らない。少なくとも私が主に仕えていた間はあんな男、一度も会わなかったよ。ただ………主は今まで生きていた中で2人の女性を心から愛していたことは知っているよ。………そしてその内の一人が主を愛してしまった為に非業の死を遂げた事も。」

マリーニャに尋ねられたリタは静かな表情で答えた後、わずかに表情を暗くした。

「………その人って誰?」

「………元”マーズテリア聖女”ルナ=クリア。”神の墓場”に主が落とされた際、クリアさんも一緒に落ちてしまって、主と共に行動をしている中、主を愛するようになったみたい。」

「マーズテリアの!?しかもクリアって言ったら、歴代のマーズテリア聖女の中で最も有名な人じゃない!あたしでも知っている人よ!?正直、信じられないわ………」

リタの説明を聞いたマリーニャは驚いた後、信じられない表情をした。

「………あの。できれば私達にも説明をしてほしいのですが。」

「……”神の墓場”とか物騒な単語が出て来たけど、一体なんなん?」

2人の会話を聞いていたリースとケビンはリタとマリーニャに尋ねた。そしてマリーニャは”マーズテリア”の事を説明し、リタは”神の墓場”、そして”マーズテリア聖女”ルナ=クリアの事を説明した。



「…………………」

「…………まさかそのような世界まであるなんて……」

”神の墓場”の事を聞いたケビンは口をパクパクさせ、リースは驚きの表情で呟いた。

「……”神の墓場”の事も驚いたが、クリア殿の最後はまさに無念としか言いようがないな………愛する者と出来た新たなる命を授かっていたというのに………」

「同じ神様を信じているのにどうしてそんな酷い事ができるんでしょう……?」

一方ユリアはクリアの最後に怒りを覚え、ティータは不安げな表情で呟いた。

「………ご主人様――”神殺し”を殺す為なら教会の連中はどんな非道な方法でも使うわ。(………ま、中にはロカみたいな例外もいるけど………)」

「「……………」」

マリーニャの説明を聞いたケビンとリースはそれぞれ複雑そうな表情をした。

「………こんな時、エステルがいたら、もしかしたら何かわかったのかもしれないのにな………」

「ふえっ!?」

「へ?何でそこでエステルちゃんが出て来るん??」

リタが呟いた言葉を聞いたティータは驚き、ケビンは不思議そうな表情でリタに尋ねた。

「エステルが持っている神剣――”誓いの神剣(リブラクルース)”からやけに主の強い魔力や神気を感じるから、前にエステルに聞いてみたら、エステル………主の魔力や神気が籠った神剣によって主の過去を見たらしいんです。」

「ご主人様の!?それでどんな過去だったの!?」

「さあ………私も聞いてみたんだけど、詳しい事はあんまり話せないと言って話してくれなかったんだ。………ただ、過去の主にはクリアさん以外に愛した人がいたって、エステル、言ってたよ?」

「名前とかは聞いたの?」

リタの説明を聞いたマリーニャは真剣な表情で尋ねた。

「うん、名前だけは教えてくれたよ。………―――サティア・セイルーン。それがその人の名前。(………エステルに最初この名前を聞いた時、聞き覚えがある感じがしたんだけど………まさか、私が思い出せない女性なのかな?)」

「…………そう。(こりゃ、大変な事になったわ………!まさかご主人様の過去を知っている人がいるなんて………!)」

リタの話を聞いたマリーニャは心の中で驚きながら真剣な表情で頷いた。



「エステル………”ブレイサーロード”ですか。ただでさえ大問題となる事をしてしまったのに、そのようなアーティファクトまで個人で所有しているなんて………」

「ふえっ!?エステルお姉ちゃん、何か悪い事をしたんですか!?」

リースが呟いた言葉を聞いたティータは驚いて尋ねた。

(リ、リース!それを口にしたらアカンやろ!それにエステルちゃんが持っているアーティファクトクラスの神剣は異世界で作られた物やから、オレらは何も言えんねんから、そう怒るな。)

一方ケビンは慌ててリースに耳打ちをした。

「(あ…………ごめん、軽率すぎた。)すみません、ティータさん。私の人違いでした。」

「そ、そうですか………よかった~。」

「…………………(やはり”あの件”は今でも問題視されているのか………)」

リースの謝罪を聞いたティータは安堵の溜息を吐き、一方事情を察したユリアは真剣な表情で黙っていた。

「まあ、そんな事より2人ともあの黒騎士っちゅう奴やあの黒騎士が言ってた事はわからないねんな?」

「そうね。」

「ええ。」

そして話を逸らす為にケビンはマリーニャとリタを見て尋ね、尋ねられた2人は頷いた。

「いずれにせよ、現時点でははっきりしないという事か………すまない。結果的に立ち入った事を聞いてしまったようだ。」

「別にいいわよ。ご主人様の過去の事はあたし達もあまり知らないし。」

「オレらの方も気にせんとって下さい。………いずれにせよ、『敵』がオレたちの出方を伺っているのは確かみたいや。この先は、これまで以上に注意する必要があるでしょうな。」

「ああ、そうだな…………よし、それでは、そろそろ探索を再開しようか。」

「あ、その前にこの中に入っているこの娘を解放しましょう。」

ユリアの言葉を聞いたリタはある事を思い出して、黒騎士が消えた後現れた封印石を取り出して言った。

「せやな………って、まるでリタちゃん、次に解放されるのが誰かわかっているみたいな言い方やけど………」

「もしかして心当たりがあるのですか?」

「ええ。」

ケビンとリースに尋ねられたリタは封印石を解放した。すると今までのように光の球が降りて来て、そこから独特の衣装を着て、頭に蝙蝠のような小さな羽がある女の子――ソロモン72柱の一柱にして、”冥き途”の門番――ナベリウスが眠っている状態で現れた!



「すー…………すー…………」

「ふ、ふえっ!?わ、わたしと同じくらいのこ、子供…………??」

眠っているナベリウスを見たティータは驚き

「………いや…………どうやらただの子供ではなさそうだ。(なんだこの威圧感は………!見た目は少女なのに、彼女にまるで歯が立たないと感じてしまう………!)」

ユリアは静かな表情で答えた後、ナベリウスが無意識にさらけ出している威圧に驚き

「……………っ………この感覚………まさか………悪魔!?」

「………落ち着け、リース。封印石から解放する前からわかっていた所を見るとリタちゃんの知り合いや。」

リースはナベリウスを睨んで法剣を構え、それを見たケビンが制した。

「フフ、まさかこんな所で会えるとは思わなかったわ。………起きて、ナベリウス。」

「へ………」

「え…………」

一方リタは微笑んだ後、ナベリウスを優しく揺すった。一方リタがナベリウスの名前を呼んだ時、ケビンとリースは呆けた声を出した。

「ん………リタ……………?…………おはよう………そして………久し………ぶり…………?」

「うん。おはよう、ナベリウス。」

そしてリタはナベリウスに現状を説明し、ケビン達にナベリウスを紹介した。



「こ、こんな女の子がソロモン72柱の一柱にしてかの”冥門候”……………(”一角候”や”色欲”の大罪のソロモンの悪魔達はまあ納得できる姿やったけど、さすがにこれはないやろ…………!)」

「…………先程戦った七十七の悪魔の一匹――ベヌウと役割は似ているけど、こっちの方が断然いい。」

ナベリウスの正体を知ったケビンは信じられない様子で溜息を吐いた後頭痛を感じ、リースは口元に笑みを浮かべてナベリウスを見つめた。

「ソロモンの魔神といえば、プリネ姫とウィル殿が召喚した魔神達を思い出すが………ソロモンの魔神達は普通の”魔神”とはどこか逸脱した存在なのだろうか?」

「ま~この娘を見たら、そう思うのも仕方ないわよ。」

ユリアの言葉を聞いたマリーニャは苦笑していた。

「それでナベリウス。元の場所に帰る為にも力を貸してくれる?」

「ん………早く………帰って……お仕事………しなきゃ………それに………セリカに………会えるかも………しれないし……………リタと……マリーニャと………一緒………嬉しい。」

「フフ、私も勿論嬉しいよ。…………という訳でナベリウスもこれからの探索に加わってくれます。見た目は普通の女の子ですけど、ナベリウス、凄く強いですよ?」

ナベリウスの返事を聞いたリタは微笑んだ後、ケビン達に言った。

「よろしくお願いします。………それにしても”星杯騎士”の私がまさかソロモンの悪魔と共に戦う日が来るとは思いませんでした。」

「(まあ、”守護騎士”のオレが既にソロモンの悪魔達と共闘してんねんけどな………)ハハ……こらとんでもない娘が味方になったな。こちらこそよろしくな、ナベリウスちゃん。」

リタの言葉を聞いたリースは頷き、ケビンは苦笑しながらナベリウスに言った。

「よろ……しく…………それと……この子とも仲良くして………ね………来て………」

ケビンの言葉に頷いたナベリウスは巨大な犬の姿をした魔獣――ケルベロスを召喚した!

「グルルルル………」

「ふ、ふえええ~!?大きな犬さん!?」

「フフ、この子はケルベロス。私達の友達で一緒に”冥き途”を守っている仲間だよ。」

自分達を見て唸っているケルベロスにティータは驚き、リタは微笑みながら説明した。

「ブッ!ケ、ケルベロスって言ったら………!」

「”地獄の番犬”と恐れられる冥界の魔獣………!」

一方ケルベロスの名を聞いたケビンは噴き出して驚き、リースは警戒した様子でケルベロスを見つめた。

「フフ、久しぶりだね、ケルベロス。」

そしてリタはケルベロスに親しげに話しかけてケルベロスの毛皮を撫でた。

「………………」

リタに撫でられたケルベロスは無言で撫でられた。

「リ、リタちゃん。怖くないの………?」

「うん。よかったらティータちゃんも一緒にどう?」

「ふ、ふええええ~!?興味はあるけど、ちょっと怖いよ………」

「そうかな?賢くてとってもいい子だよ?」

「いや、そんな事を言えるのはあんた達ぐらいだから………」

ティータの様子に首を傾げたリタを見たマリーニャは呆れた様子で溜息を吐いた。

「この子は………私の友達…………だから………呼べば………一緒に………戦ってくれる………」

「ケルベロスはナベリウスと契約していますから、エステル達が使い魔――パズモやアムドシアス達を呼ぶようにナベリウスはいつでもケルベロスを召喚できます。ですからこの子も戦力の一部として数えてもらって構いません。」

「ハ、ハハ………それは心強い味方やな………(”神”の力によって”人間”から離れた存在に魔槍を扱う死者とソロモン72柱の一柱、そして止めは地獄の番犬って………オイオイ………メンバーがなんだか人外魔境化して来たな………)」

ナベリウスの言葉をわかりやすく説明したリタの言葉を聞いたケビンは心の中で疲れた溜息を吐き、引き攣った笑みを浮かべて頷いた。



その後ナベリウスを加えたケビン達はベヌウを倒した先に現れた転移陣の近くの石碑まで方石で移動し、そして転移陣の中に入って、新たなる場所に転移した………


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧