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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第91話

~ケルディック・大市~



「トワ会長、何をしているんですか?」

「あ、リィン君。元締めにお願いして締まったお店から使わない資材をわけてもらえることになったんだ。ジョルジュ君も今後の艦の改修の為に必要にしていたみたいだし。わたしも艦長代理としてできるだけのことをしなくちゃね。」

「(資材運び……会長だけじゃちょっと大変かもしれないな。)よかったら、半分……いや、半分以上持ちますよ。艦に運ぶのを手伝わせてください。」

トワの話を聞いて想像以上の荷物になる事を予想したリィンはトワに荷物持ちを申し出た。



「ふふっ、ありがとうリィン君。あ、その前に……もう一つ手伝ってもらっていいかなぁ?資材の中でも使いようがないものをわたしが貰おうと思ってて。」

「へっ、何に使うんですか?」

その後、リィンはトワと共に資材の仕分けを手伝ってから使える資材を艦に運び込み……街道に用事があるというトワに付き合うことにした。



~ケルディック郊外~



「よいしょっと……うん、準備できたっ!」

「もしかして、これ……射撃練習用の”的”ですか?」

箱の上に置かれた様々な物品を見て何かに気付いたリィンはトワに尋ねた。

「ふふっ、正解。今のうちにわたしも特訓しておきたくってさ。」

「特訓……?」

「えへへ、見て。」

不思議そうな表情をしているリィンにトワは腰につけているホルダーから銃を抜いてリィンに見せた。



「導力銃……?結構大型ですね。意匠を見る限り、ラインフォルト社制ではなさそうですが。これは”魔導銃”って言ってね。リベールのZCF(ツァイス中央工房)で作られたみたいなんだ。普通の銃と違って、”アーツの弾”を撃ちだす機構を備えていて。”魔導杖みたいな銃”って言ったらわかりやすいかな?」

「なるほど……ARCUSなんかと同じくかなり最新鋭の技術みたいですね。それもZCF――――”リベール王国”の導力メーカーでそんなものが作られていたなんて。しかも皇子殿下からですか?」

トワの説明を聞いたリィンは目を丸くして尋ねた。



「うん、まだちゃんと出回っていない試作タイプらしいんだけど……なんでもZCFのほうに殿下のツテがあるらしくってね。カレイジャスでの別れ際にわたしに預けてくれていたの。」

「そうだったんですか。はは、アリサが聞いたら驚きそうですね。」

トワの話を聞き、アリサの反応を瞬時に思い浮かべたリィンは苦笑した。

「えへへ、まったく新しい発明品みたいだしね。導力銃なら士官学院で使っていたけど、全然感覚が違って慣れなくって。リィン君もよかったら練習を手伝ってくれるかなあ?」

「ええ、もちろんいいですけど。………どうして急にそんな事を?会長は今でも十分、バックアップとして力になってもらっていますが……」

自分達と違い、直接戦場に出ないトワが武術の訓練を始めた事を不思議に思ったリィンはトワに尋ねた。



「私も、皇子殿下がこの銃を渡してくれた時は、どうしてって思ったんだけど……多分、見抜かれたんだろうね。わたしがもっと強くなりたいって思っている事を。」

「強く……ですか?」

「……わたしね、リィン君。カレイジャスを任された以上は今まで通りじゃいけないと思うんだ。本当の意味で強くならないと自分の身だって守れなくて……きっと、いつかリィン君達に迷惑をかけちゃう。この内戦は本物の”戦争”だから。」

「あ……」

「だから、わたしもちょっとだけでいいから強くなりたいんだ。せめて、子爵閣下に託された艦長帽に見合うくらいに……艦に乗っているⅦ組や他の乗組員のみんなをこれまで以上に支えるためにも。」

「トワ会長……わかりました。それじゃあ、さっそくお手伝いしますよ。一緒に強くなりましょう。カレイジャスのみんなと……!」

「うんっ!」

トワが魔導銃の射撃訓練を始めている中、その様子をリィンは見守っていた。

(……俺も、頑張らないとな。この小さいけど頑張り屋な会長の想いに応える為にも。)

その後しばらく街道での魔導銃の練習に付き合ってから二人でケルディックに戻り一端トワと別れたリィンは街を見て回っていると街の出入り口付近にいるツーヤとセレーネに気付いた。



「それではお姉様、お願いします!」

「……わかった。それじゃあ行こう。」

(セレーネにツーヤさん……二人でどこに行くんだ?気になるな……)

街道に向かう二人が気になったリィンは二人の後を追い、二人が立ち止まって会話をし始める所を見たリィンは物陰に隠れた。



(何で隠れているんだ、俺……?)

物陰に隠れているリィンは自分の行動に不思議そうな表情をしていた。

「……それじゃあセレーネ、竜化してみて。」

一方セレーネから離れたツーヤはセレーネに指示をし

「―――はい。ハァァァァァァ………………!グオオオオオオオオ――――――ッ!!」

指示をされたセレーネは全身に膨大な魔力を纏った。すると美しき白竜へと変化した!



「なあっ!?」

(!?理解できません……人が竜に変化するなんて……)

その様子を見ていたリィンは驚き、アルティナは困惑し

(へえ、あれがセレーネの竜化した姿なのね。)

(”白竜”とは珍しいですね。)

(ええ……美しくて綺麗です……)

(……まるでセレーネの純粋な心を現しているみたいね。)

ベルフェゴールとリザイラは興味ありげに見つめ、メサイアとアイドスは微笑みながら竜化したセレーネを見つめていた。



「次はブレスを向こうに放って見て。」

「はい!スゥゥゥ……」

ツーヤの指示を聞いたセレーネは大きく息を吸い込み

「女王惑星轟雷爆撃(クイーンプラネットサンダースパーク )――――――――ッ!!」

凄まじい魔力を纏った雷光のドラゴンブレスを解き放った!解き放たれたドラゴンブレスによってブレスが通った地面はえぐれていた!



「…………………」

セレーネのドラゴンブレスの威力を見たリィンは口をパクパクさせ

「フウ……どうでしたか、お姉様?」

ドラゴンブレスを解き放ったセレーネは人の姿に戻り、ツーヤに尋ねた。



「……セレーネ。今手を抜いたよね?貴女の魔力を考えると全力を出さなくてももっと威力が出せるはずだよ。」

「そ、それは……」

ツーヤに指摘されたセレーネは言葉を濁し

「ユミルの時にも言ったはずだよ。”力”を使うのを躊躇っていては、いつか大切な人達を失ってしまうって。」

「…………………」

ツーヤの忠告を黙って聞き続けていた。



「フウ……貴女の性格を考えると、”人を殺す覚悟”はやっぱり難しいか。それより……―――”パートナー”なら、陰で見守らず傍で見てあげてくれませんか、リィンさん!」

「え…………」

自分を見つめたまま突如声を上げたツーヤの行動にセレーネが呆けたその時

「ハハ……気付かれていたか。」

「お、お兄様!?」

リィンが苦笑しながら物陰から現れ、二人に近づいてきた。



「お疲れ様、セレーネ。今のを見て改めてセレーネが本物の”竜”である事に気付かされたよ。」

「フフッ、そう言えばわたくしはお兄様達の前で竜化した姿を見せた事はありませんでしたわね。竜化したわたくし、どうだったでしょうか?やはり恐ろしいでしょうか……?」

竜化した自分の姿を思い浮かべたセレーネは不安そうな表情でリィンを見つめ

「―――いや。むしろ”綺麗”だと思ったよ。純粋で優しい性格をしているセレーネらしい竜だな。」

「お、お兄様……」

リィンの答えを聞くと顔を赤らめて嬉しそうな表情をした。

(……何故マスターはこうも女性が求めている言葉をすぐに思いついて、口にできるのでしょうか。)

(アハハ……それは私も常に思っています。)

その様子を見ていたアルティナはジト目になり、メサイアは苦笑し

(うふふ、それはご主人様だからに決まっているじゃない♪)

(ふふふ、全く持ってその通りですね。)

(そしてそこがリィンの良い所であり、悪い所でもあるのよね……)

ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべ、アイドスは微笑みながら答えた。



「コホン。―――二人とも、できれば”そう言う事”はあたしの見ていない所でやって下さい。」

その時ツーヤは咳払いをして呆れた表情で指摘し

「す、すみません。」

「ハハ……えっと……訓練をしているようにも見えたけど、もしかして竜化した際に備えての訓練だったのか?」

セレーネが謝罪している中、苦笑したリィンは気を取り直して尋ねた。



「はい。今まで竜化せずに戦ってきましたが……今後戦いが激しくなると竜化しなければならない状況になります。その時に備えてツーヤお姉様に見てもらっていたのですわ。」

「セレーネ…………――――ありがとう。俺達の為に竜化するという”覚悟”を持ってくれて。これからも一緒に頑張ろうな。」

「はいっ!」

「フフッ、さすがはセレーネの”パートナー”のリィンさんですね。あたしが指摘するよりもずっと効果がありますね。まあそれはそれとして……――――リィンさん。少しだけ時間を貰いますよ。」

リィンとセレーネの様子を微笑ましそうに見守っていたツーヤは全身に膨大な威圧を纏ってリィンを見つめた。



「ツ、ツーヤさん……?俺、ツーヤさんに何かしたか……?」

ツーヤの様子を見た瞬間猛烈に嫌な予感を感じたリィンは大量の冷や汗をかいて尋ね

「――――セレーネから聞きましたよ。クレア大尉とも将来結婚する関係になり、更には貴族連合の協力者の幽霊と化した少女―――アルティナさんと”契約”し、挙句の果てにはアルフィン皇女とエリスさんがユミルで誘拐されるよりも先にアルフィン皇女とも肉体関係の間柄になった事を。そういう所も”相変わらず”ですね?内戦の状況になっても、そんな事をする暇があるとは呆れや怒りを通り越してもはや感心しますよ。」

「う”……そ、その、これにはブレアード迷宮よりも深い理由が……」

顔に青筋を立てて怒気を纏って微笑むツーヤの指摘に表情を引き攣らせて何とか言い訳をしようとした。



「ちょうどいい機会です。皆さんに協力できないあたしの代わりにセレーネや皆さんを守ってもらう為にもリィンさん自身にはもっと強くなって頂く必要があるので、これから”稽古”をつけてあげますよ。」

「え”。あ、あの……できれば遠慮したいのだけど……?」

抜刀の構えをしたツーヤの様子を見て表情を引き攣らせたリィンは後ずさりをしながら恐る恐る尋ねたが

「形式上はプリネさんの護衛の任務についているリィンさんが、留学中のプリネさんの護衛隊長―――つまりリィンさんにとっては直属の”上官”に当たるあたしの”命令”を拒否できる権利があると思っているのですか?」

「そ、そうだよな……ハ、ハハ…………」

笑顔を浮かべるツーヤの答えを聞いて肩を落とし

「そ、その……頑張ってください、お兄様。怪我をしたらわたくしが跡形もなく治療しますので。」

その様子をセレーネは苦笑しながら見守り、リィンに慰めの言葉を送った。



その後”本気”のツーヤによる”稽古”を終えた後、傷つき疲労していたリィンはセレーネに膝枕をされながら治療され、その後二人と共に街に戻って二人と別れた後街を徘徊していると宿酒場の片隅で膝を抱えて眠っているフィーを見つけ、フィーに近づいた。 
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