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μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜

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第二章 μ's 降臨
  第7話 Past Memory1

物心がついたときにはすでに俺の隣には高坂穂乃果がいた。
いつも元気で一直線に行動し、バカを絵にしたようなそんな子だった。

幼稚園の時はどうだったなんて今となっては全然覚えてない。
だから語れと言われても難しい

小学生になっても俺と穂乃果の関係は何も変わらない。
学校では共に行動して友達巻き込んで鬼ごっことかサッカーとかして遊び
家に帰ると俺んちでおやつを食べてすぐに近くの公園でまた遊ぶ。時間を忘れて遊ぶことが多かったので暗くなっても帰らないことを心配した俺の母さんがいつも迎えに来て一緒に怒られたっけなぁ....

穂乃果の家は和菓子屋を経営していているためずっと俺が穂乃果を預かっている。

和菓子屋が大体7時前に閉まるので、夕飯の始まる頃に穂乃果の母が迎えに来て別れる。そんな日々がずっと続いた。
穂乃果といると毎日が楽しかった。何事にも縛られず自由気ままにあそびまくる穂乃果といて飽きることが全くなかった。


「だいくんだいくんみてみて〜!」

「なぁにほのちゃん....ってうわぁっ!!」

小4の夏休み。いつもと違う公園にやってきていた。
穂乃果が俺に見せていたのはカブトムシの幼虫、それを素手で持っていたので少し引き気味になったけどあの穂乃果の笑顔を見ているとどうでもいいやと思ってしまう。

「このかぶとむしさんのようちゅうそだてたいな〜!だいくんいっしょにそだてようよ!!」

「ええ〜っ!なんでおれも!?」

俺自身虫が苦手で穂乃果がいつも捕まえてくる虫を見ると少し離れてしまうのはいつものこと。1番驚いたのはミミズを両手にわんさか持っていた時とかセミを両手に捕まえていた時かな?
とにかく、虫に対してなにも抵抗がない彼女に少し苦労した。

「かぶとむしさんっておとなになるとすっごくつよいんだよ!!」

「それはわかるけど....ようちゅうじゃなくておとなのかぶとむしつかまえればいいじゃん〜。こんなくねくねしたようちゅうこわいよー」

「やだ〜っ!!ほのかはようちゅうからそだてたいの〜!!」

「おれはいやだ!」

「ぜったいかう!!かうったらかうの!!」


穂乃果は自分でやると決めたことは決して曲げない。だからよくこんな感じのやりとりが多かった。

「まったく....わかったよ、ただしだいじにそだてるんだぞ?」

「いいの!やった〜!!ありがとだいくん!!」

穂乃果はそう言って持ってきていた虫かごに幼虫が埋まっていた土をたくさん入れてその中に幼虫を入れた。


その時捕まえた幼虫は成虫まで見事に育ち、やがて死を迎えた。
穂乃果はカブトムシが死んでしまったときは俺の側でずっと泣いていた。
やんちゃだったけど命を大切にするすごく優しい女の子だった。



そういえばこんなこともあったな


小4の11月。学校の木々の枯葉がはらりはらりと落ちていた。教室から見るその様子はとても趣のある景色で今でもよく印象に残っている。

担任の先生....確か太田先生だったかな?太田先生から出された1つの宿題。それは『詩を1つ作ってくること』だった。
小学4年で作れる詩なんてたかが知れている。
俺はどんな詩を書こうか考えているところを
穂乃果に攻め寄られてしまった。

「だいくんだいくん!たすけて〜!!」

机をバンバンと叩いて助けを求める穂乃果。

「しなんててきとうでいいんだよてきとうで〜」

考えているところを邪魔されたので若干不機嫌気味に返答する。

「そんなこといわれてもほのかはばかだからわからないよ〜」

そう...穂乃果は行動力はあっても頭が残念な感じなのだ。
なんせ、小学2年生で習った掛け算を未だに理解していないくらいなのだ。

「ほのかちゃん、だいちくんこまってるよ〜」

穂乃果の後ろであたふたしている少女がいた。
メッシュ色の髪にトサカみたいな髪型で甘い感じの声だった。


「あぁ〜ことりちゃ〜ん。だいくんがねーほのかのしゅくだいたすけてくれないんだよー!ひどいよね〜」

そう言って”ことりちゃん”と呼ばれる少女の元に抱きつきに行った。

「だめだよほのかちゃん、しゅくだいはじぶんでするものだってせんせーいってたよ?」

「でも〜」

俺を置いてけぼりにして2人は仲良く話し込む

「あ、ごめんね。わたしのなまえはみなみことりっていいます」

突如自己紹介されてびっくりする俺。

「え?あ、はい、おれはささくらだいちっていうよ。よろしくねことりちゃん」

「うん!よろしくねだいちくん」

これが初めて南ことりと出会った瞬間である

「だいく〜ん、ほのか、しなんてかけないよぅ〜」

「なにいってるんだよ、ほのちゃんがおもったことをそのままかけばいいんだよ」

「そんなこといわれてもむずかしいよ〜」

「じゃあほのちゃんちのおまんじゅうについてどうおもうかいたら?」

「ほのかのおまんじゅう?ん〜と、わかった!」





一週間後、授業でそれぞれが書いた詩を発表する時間があった。

穂乃果は何を書いたのだろうか。
穂乃果の出番になったので耳をすませて聞く。




「おまんじゅう うぐいすだんご もうあきた」




やっぱり穂乃果は穂乃果だった。






何度も言うけど、穂乃果とそして新しくできた友達ことりと一緒にいて
毎日がすごく充実していた。穂乃果とことりがいたら俺にはなにもいらない。そう思っていた。






だけど.........









そんな日常はあっという間に壊されてしまった















事のきっかけは小4の終わり頃。もう少しで5年生になる時期だった。



この日は俺と穂乃果とことりの他に3人の友達とことりの家に近い公園で鬼ごっこをしていた。いつも鬼ごっこをすると足の遅くてのろいことりが鬼になってしまう。今日は男の子が鬼でスタートし、開始早々ことりにタッチして...まぁそんな感じで夕方まで鬼ごっこを繰り返していた。
いつもと違うのは木の陰で誰かがちらっちらっと見ていることだった。
俺以外にも気づいている子はいないらしく、声をかけようか迷っていた。


「や〜い!またことりちゃんがおにだ〜!!」

「やーん!くやしいぃ〜!」

またことりが鬼になってしまい地団太を踏む。そしてすぐに追いかけ回す
走り回ってる穂乃果がふと木の陰に人がいることに気づき、彼女もまた声をかけようか迷っていた。穂乃果と視線が合った子はまた木の陰に隠れてしまい。一向に出てくる気配はない。
一緒にあそびたいのかな?と思った。

穂乃果がそっちに視線を向けていて後ろからことりがゆっくりゆっくり近づいていることに気づいていない。そして

「たっち!やったぁ〜!ほのかちゃんがおに〜」

「あぁ!ことりちゃんよくも〜!」

とか言いつつ、ことりを追いかける様子がない。
直後いいことでも思いついたのか。穂乃果はそのまま隠れている子のところに行った。俺も少し気になるので近寄って様子を見る。

「あ!み〜つけた!」

「ひゃぁっ!!」

なるほど.....もとからその子も一緒に遊んでましたよみたいな展開をつくったのか。さすが穂乃果......

木の陰に隠れていたのは髪を腰あたりまで伸ばし、おとなしくて引っ込み思案な少女が涙目にしながら怯えていた。
というかこの子.....クラスメートだよな。

「えへへ.....」

「あ....あぁ...」

穂乃果の笑顔に対してその子はすぐにでも泣き出しそうな雰囲気。

そんな彼女に穂乃果はこう言った。


「つぎ!あなたがおにね!!」

「えっ!?」

「えへへ...いっしょにあそぼ?」

穂乃果はそう言って手を差し延べる。少女は涙目から少しずつ喜びのかおになり、「うんっ!!」と穂乃果の手を取って仲間に混ざっていった。

俺は終始その様子をずっと見ていた。

「ほのちゃん......」

「ほのかちゃんすごいね」

「うわぁっ!!!」

すぐ後ろで声がしてびっくりした。

「こ、ことりちゃんか...びっくりさせないでよね」

「えへへ...ごめんね」

ことりはぺろっと舌を出して謝る

「ところでだいちくん。どうして...そんなにおかおが赤いの?」

「.....え?」


ことりに指摘されて初めて気づいた。

何故かわからない。でも穂乃果が彼女を誘っている様子を見て心が熱くなり気がついたら鼓動が早くなっていた。あの太陽のような笑顔を見てるとなぜかドキドキしてもっと見たいと思った。
それは何故かそう思ったのかはいくら考えてもわからなかった。









辺りは薄暗くなり、みんなそれぞれ帰路についていった

今日仲良くなった少女、園田海未はことりと同じ方角なので一緒に帰っていった。残った俺と穂乃果は俺の方から距離を置きながらおしゃべりをしながや歩き始めた。
穂乃果も俺が距離を置いていることに違和感を感じ少しずつ近づいてくる。俺は気恥ずかしくなりまた穂乃果から離れる。
そして穂乃果はまた近づく。

「.........」

「ねぇだいくん、なんではなれるの?おはなしできないでしょ?」

「そ、そうかな?おはなしはできるよ」

「む〜.....」

穂乃果は頬を膨らましてそれでも諦めず俺のそばに寄ってくる。

「.....っ!!///」

俺はあまりにも恥ずかしくなってしまい一目散に駆け出した。

「ちょっとまってよ〜だいく〜ん!!」

穂乃果はそんな俺をみて追いかけてくる。




丁度曲がり角を曲がったあたりだろうか。後ろで「きゃっ!!」という小さな悲鳴が聞こえたので振り向いてみると、穂乃果が男子高校生と思われる4,5人の人とぶつかっていた

ただそれだけならまだいい。
その男子高校生は皆髪を茶髪に染め、耳とかにピアスをつけていた。
俗に言う『ヤンキー』だった。
当時の俺はまだ小学生だったけどこれはヤバイと判断し、穂乃果の元に駆け寄った。


「いってぇな....おいガキ!ちゃんと前向いて歩けよ!!!」

「ひぃ...ごめんなさい...」

「ったくよ....おかげで制服汚れたじゃねぇかよ...汚ぇクソガキが」

「ひゃはっ!それ言えてるわ!!」

穂乃果は高校生に罵倒され涙目になっていた。
なんで彼女が泣かなきゃいけないんだよ。
ふつふつと頭に血が上った俺は後ろから高校生の足を蹴り飛ばした。

「いてぇっ!!!おい貴様!なにすんだよ!」

そんなことは無視して穂乃果の手を引っ張り全力で逃げ出した。

「だいくん?」

「いいから!だまってはしるんだ!」

「てめぇ!ただじゃおかねぇぞコラァ!!」

俺たちは高校生が見えなくなるまで走り続けた。
穂乃果は「まって..ほのかもうはしれない」と言うがそれで追いつかれたらまずい。穂乃果を無視して急いで穂乃果の家に向けて走りまくった。





ガラガラガラガラ


「あらおかえり穂乃果...ってどうしたの?そんなに息切れして」

「はぁ...はぁ....な、なんでも...ない......よ?はぁ....はぁ」

「はぁ....はぁ...こんなに...はぁ..走ったの..初めて....だぞ」






こうして今日の一日は幕を閉じた。園田海未っていう子と友達になれて嬉しかった。けど最後みたいなハプニングはやめて欲しいな...はは
当時の俺はそんな風にしかあのハプニングのことを捉えていなかった。










たったそれだけのハプニングで俺と穂乃果の人生が狂ってしまうなんて、その時の俺は夢にも思わなかった.....

















無事初ライブが終わって一安心。最初誰もいなかったときは本当にショックだった。でも大くんをはじめとして小泉さんやその友達、西木野さんと反対側にツインテールの1年生も来てくれてすごく嬉しかった。
やってよかったって思ったよ。
やっぱり生徒会長には怒られちゃったけど、それでも穂乃果はスクールアイドル続けたい。そのためにはちゃんと部員を集めて正式な部活にしなくっちゃ!

次の目標は『部員を集めて正式な部活動にすること』


そう心に決め、自分のベットに倒れ込む。

「はぁ.......」

穂乃果は大くんがすごく心配だ。

「もし...大くんが本当に記憶無くしちゃったのならやっぱり....あの事件だよね.......」

あの事件.....小学生の時に大くんが穂乃果を守ろうとして発生した前代未聞の大事件。
あの時、穂乃果がしっかりしていれば大くんがあんな目に合わなくて済んだのかもしれない。だから謝りたかった。謝りたかったのに大くんはすぐ穂乃果の前からいなくなった。
だから始業式の時に会ったとき嬉しくてそれと同時に罪悪感も生まれて....

そういえば当時はすでにことりちゃんも海未ちゃんも大くんと仲良くしてたはずだよね?
何か知ってることないかな?

思い立ったが吉日。穂乃果はスマホを取り出し『ココア』という2人以上でも電話で会話できるアプリを起動させ、2人を呼ぶ。

しばらくコール音が鳴り響くとことりちゃんが出てきた。

『もしもし?どうしたの穂乃果ちゃん』

「やっほ〜ことりちゃん!今日はお疲れ!」

『うんお疲れ様。海未ちゃんも呼んだの?』

「うん、どうしても2人に聞きたいことがあってね」

と、すぐに海未ちゃんとも繋がった

『はい、園田です。』

「やっほ〜海未ちゃん。」

『海未ちゃん今日はお疲れ様〜』

『お疲れ様です。で、どうしたのですか?』

「んとね、2人に聞きたいことがあるんだよ」

『なんでしょうか』

「あのね.....穂乃果達が小学生の時にいた1人の男の子覚えてる?」

『ん〜....確かに男の子いたね。穂乃果ちゃんと仲良しだったもんね』

『私もよく覚えていますですね。確か......』

『なに?海未ちゃん』

『あのいつも穂乃果と一緒にいた茶色の目をした男の子のことですか?』

「そうだよ!名前は?」

『えっとぉ...笹倉......大地くん?あれ?でも...』

『穂乃果、まさかとは思いますが...』

「海未ちゃんの考えている通りだよ?」

『やっぱりそうですか。初めてあった時目が似てると思ったんですよ。』

『久しぶりだからちょっと忘れちゃってたよぉ~』

「でも多分、大くんも穂乃果たちの事を忘れてると思う。」

『私もことりもそうだったのですから彼だって———』



「そうじゃないの!!」


思わず海未ちゃんの言葉を遮る。

「いくらなんでもおかしい。あんなに仲良かった大くんが穂乃果のこと忘れるなんて」

頭の中に大くんとの思い出が浮かぶ。どの思い出を探っても忘れる要素なんてない



「ま、まさか......」

考えたくないこと、あって欲しくないこと、一度は考えた事









「......ほんとうに、記憶喪失?」

 
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