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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第84話

12月14日―――



リィン達がオリヴァルト皇子より託された”カレイジャス”を使っての帝国東部を回る事を決めてから二日後、ケルディック市の傍に設置されてある仮説空港に降り立ったカレイジャスの中にいるリィン達はそれぞれの行動の為にカレイジャスから降りる面々を見送っていた。



~カレイジャス・格納庫~



「―――そなたにはカレイジャスの運用全般を任せる。”艦長代理”として皆をしかと導いてやるがよい。」

「は、はい……謹んでお受けしますっ!」

アルゼイド子爵から艦長の帽子を受け取ったトワは帽子を被ってリィン達を見回した。



「ど、どうかなぁ?」

「驚いた……結構似合っていますね。」

「ええ、サイズもピッタリみたいだし。」

「まるでトワ会長の為にあるようにも見えますわ。」

トワに尋ねられたリィンとアリサ、セレーネはそれぞれ賛辞の言葉を送った。



「フフ、1サイズ小さいものがちょうど予備にあってな。」

「なるほど……」

「なんか”一日艦長”っぽいけど。」

「実際は”一日”どころではありませんけどね……」

フィーの言葉を聞いたエリスは苦笑しながらトワを見つめた。



「ハッハッハッ、クロスベルの”みっしぃ”のようにグッズ化してもいいかもしれないねっ。」

「ふふっ、ナイスアイデアですわね♪」

「ううっ……お二人ともヒドイですっ!」

オリヴァルト皇子とアルフィン皇女の言葉を聞いたトワは頬を膨らませて二人を睨み

「?トワ、”グッズ化”というのはどういう意味かしら?」

「え、えっと……ゲルドちゃんは知らなくていい言葉だよっ!」

ある言葉が気になったゲルドに尋ねられたトワは言葉を濁した後必死の表情でゲルドを見つめて追及しないように言った。



「いや、でもホントに似合ってるよ。」

「うんうん、形からってのは重要かもしれないわね。」

ジョルジュの言葉にサラ教官は頷いた。

「ふふ……ですがこの分なら心配はいらなさそうですね。」

「ああ、ようやく俺達もお役御免ってところだろう。」

クレア大尉とトヴァルの言葉を聞いたリィン達は今まで力を貸してくれた”協力者”であるトヴァル、クレア大尉、シャロンを見つめた。



「トヴァルさん、クレア大尉……それにシャロンさんも。」

「やはり、父上と共に艦を降りてしまうのですね?」

「ああ、お前さん達が揃った今、俺の手助けも不要だし、俺より遥かに頼りになる”協力者”がいる事だし、お前達の方は大丈夫だろう。」

残念そうな表情をしているラウラの言葉に頷いたトヴァルはシグルーンを見つめた。



「フフ……さすがに私一人で3人分の働きができるかどうかはわかりませんが、期間限定とはいえ協力するからには相馬のルチアと共に全力で力をお貸ししますのでご安心下さい。」

「”協力”するからにはあたし達の邪魔や足をひっぱたりせず、ちゃんと”協力”してよね。」

微笑みながら答えるシグルーンをジト目で見つめるサラ教官の言葉を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかき

「サ、サラさん……せっかく協力してくださるのに、早々に協力関係に罅を入れるような事を言わないで下さいよ……」

「リフィア殿下の親衛隊の副長という誇りある大任を任されている方がそのような事をするとはとても思えないのですが……」

セレーネとエリスは疲れた表情で指摘し

「?サラさんはどうしてシグルーンさんの事をそこまで疑うのかしら?」

「え、えっと……」

ゲルドに尋ねられたエマは言い辛そうな表情で答えを濁した。

「フフ、お二人ともお気遣いありがとうございます。サラ殿のお気持ちやサラ殿が私を疑う理由は十分に理解していますので、私は気にしていませんよ。」

「へ、へぇ?あんたと仲良くなった覚えはないんだけどどうしてわかるのかしら?」

そして微笑みを浮かべるシグルーンの言葉を聞いて顔に青筋を立てて口元をピクピクとさせながらシグルーンを睨むサラ教官の様子を見たその場にいる全員は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「ったく、いい加減喧嘩を売るのは止めろっての……―――話を戻すが俺は西部は相当ヤバそうだし、そっちを手伝わさせてもらうさ。」

「私も―――鉄道憲兵隊の指揮に戻ろうと思います。皆さんとは違う立場ですが……この内戦に終止符を打つために。」

「……はい。」

トヴァルとクレア大尉の言葉を聞いたリィンは心配そうな表情で二人を見つめて頷いた。



「それじゃーね、クレア。どっかでレクターに会ったらヨロシク言っといてよ。」

「ふふ、わかりました。」

「私もイリーナ会長から各地で様々な”調べ物”を頼まれています。お嬢様がたとはしばしのお別れですわね。」

「ふう、どうせ怪しげな調べ物ばかりなんでしょうけど。……その、無事でいなさいよね。”結社”だろうが何だろうが貴女がウチのメイドであるのは変わらないんだから。」

シャロンに見つめられたアリサは溜息を吐いた後心配そうな表情でシャロンを見つめた。



「お嬢様……ふふっ、何よりのお言葉ですわ。どうかお体にお気をつけください。」

「ま、今後もできるかぎり連絡を取り合っていこうぜ。俺も、ギルドのネットワークで情報を集めてみるつもりだ。帝国だけじゃなく、外でも色々起きているみたいだしな。」

「そうね、一番気になるのはクロスベル方面だし……そっちは任せたわ。ベルモンにもよろしくね。」

「ああ、了解だ。」

「皆さん―――今までありがとうございました。」

「ここまで来れたのは皆さんのおかげだと思います。」

リィンとエリオットはⅦ組を代表して協力者の面々にお礼を言った。



「はは……水臭いことを言うなって。」

「立場こそ違いますが……私も協力は惜しみません。」

「ふふ、皆様もどうかお元気で。」

「――リィン様、よろしければこちらを。わたくしの私物で失礼ですがどうか役立ててくださいませ。」

シャロンはアクセサリーをリィンに手渡した。



「ありがとうございます。シャロンさん……何から何までお世話になりました。もっと色々とお話を聞かせてもらいたかったです。」

「ふふ、わたくしの方こそもっとご奉仕させていただきたかったですわ。……どうか、これからも皆様と光照らす道を歩いてくださいませ。リィン様にも、相応しい場所がきっと見つかるはずですから。」

「はい、肝に銘じさせてもらいます。」

「ふふ、それと”ラインフォルトグループ”の為に……そしてお嬢様の未来の幸せの為にもお嬢様ともこれからも恋仲の関係でいらし続けてください♪」

「ちょ、ちょっとシャロン!?」

「ハハ……」

シャロンの言葉を聞いたアリサは顔を真っ赤にし、リィンは冷や汗をかいて苦笑した。



「それでは諸君―――しばしのお別れだ!アルフィンも元気で!後の事はよろしく頼んだ!」

「ええ、お兄様もどうかお気をつけて―――!」

「それと勿論リィン君ともエレボニアや”アルフィン自身の将来”の為にもどんどん仲良くなってくれよ♪」

「はい、勿論そのつもりですわ♪」

「で、殿下!?」

「「………………」」

「ア、アハハ………」

「フウ……お願いですから、節度ある交際に留めてください……」

オリヴァルト皇子の言葉に嬉しそうな表情で頷いたアルフィン皇女の言葉を聞いたリィンは慌て、エリスとアリサはジト目で二人を見つめ、セレーネは苦笑し、クレア大尉は疲れた表情で溜息を吐いた。



「フフッ…………ラウラも―――次に会える時を楽しみにしているぞ。」

その様子を微笑ましそうに見守っていたアルゼイド子爵はラウラを見つめ

「はい、父上―――!」

ラウラは力強く頷いた。



その後カレイジャスを降りたオリヴァルト皇子達は飛び去って行くカレイジャスを見守っていた。



~ケルディック市・仮説空港~



「やれやれ、行っちまったか。あいつら……上手くやれますかね?」

「女神のみぞ知る、であろう。”獅子戦役”の再現とも言われているこの内戦に加えて西ゼムリアの国家間の関係が大きく変わろうとするこの時代……願わくば、若き彼らには何とか乗り越えてもらいたいものだ。」

トヴァルの言葉を聞いたアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って呟いた。

「ふふ、トールズの皆様ならきっと心配はいりませんわ。伊達に”有角の獅子紋”を背負ってはいませんでしょう。」

「……ええ、そうですね。士官学院の先輩として私もしっかりしないと……」

シャロンの言葉に頷いたクレア大尉は疲れた表情をした。



「フフ、それを言うなら私も同じOBなんだが。まあ私は、この後彼らと話す機会はありそうだが――……そう言えば宰相殿もトールズの出身だったかな。」

「………はい。」

「はは、それを聞くととんでもないというか……」

「オズボーン宰相閣下、ですか……レン姫―――メンフィルからもたらされた情報は正直な所夢物語のようにも感じましたが、あの方ならそんな夢物語のような内容すらも現実と化させるのでしょうね……」

「はい………………」

シャロンの言葉を聞いたクレア大尉は複雑そうな表情で頷いた。



「……彼とは色々あったが惜しい人物を亡くしたというのは偽らざる気持ちだ。遅まきながら、君にはお悔やみを言わせてもらうよ。」

「私は殆ど、面識はなかったが……時代が生んだ傑物であったのは間違いないだろう。」

「……ありがとうございます。……エレボニアの内戦終結の為に助力して頂く所か、個人的にも恩があるリィンさんに対して、危うく仇で返す所でしたから、メンフィルの行動にはある意味助けられました……」

オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵の言葉に静かな表情で答えたクレア大尉は複雑そうな表情をした。

「オズボーン宰相閣下のご子息でもあるリィン様ですか…………」

「正直彼に血が繋がった息子がいた事には驚いたね。一体何故幼いリィン君をユミルに捨てたのか理解できないが……――まあ、そのお蔭で我々エレボニアは生き残る機会をメンフィルに与えられた訳だから、そういう意味では宰相殿には感謝しているよ。」

シャロンが複雑そうな表情で考えている中、オリヴァルト皇子は静かな表情でクレア大尉を見つめ

「……勿体ないお言葉です。」

クレア大尉は静かな表情で会釈した。



「しかし……帝都が占領された状況じゃ、アンタも辛いだろうな。どこに弔われたのかとか情報は入ってるのかい?」

「……それが……………………」

「大尉……?」

「ふむ……いかがした?」

突如黙り込んだクレア大尉の様子を見たオリヴァルト皇子とアルゼイド子爵は不思議そうな表情をした。



「実は……奇妙な報告が入ってきていまして。あの日、帝都が貴族連合に占領された折――――近衛軍が閣下の遺体を確保したそうなのですが……突如遺体から閣下の姿が現れた後、すぐに消えたそうなのです。近衛軍は閣下の”亡霊”と騒いでいたそうですが…………」

「な……!?」

「その、見間違いという可能性は……?」

クレア大尉の言葉を聞いたトヴァルは驚き、シャロンは真剣な表情で尋ねた。



「……わかりません。本当に見間違いだったかもしれませんし……」

「ふむ……”亡霊”か。異世界が現れるまではそのような存在はないと思われていましたが……」

「―――実際の所私の異世界の知り合いの中にも本物の”幽霊”がいるから、もしかしたらその”亡霊”とやらが宰相殿自身の”幽霊”の可能性がある事は否めないね。やれやれ……どこまでも厄介と言うか大した御仁だ。死してなお、周囲を翻弄してやまないとはね―――」

クレア大尉の言葉を聞いて考え込む動作のアルゼイド子爵に視線を向けられたオリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐いた後重々しい様子を纏って呟いた。 
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