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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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幕間~メンフィルの大反撃~ 外伝~メンフィルの怒り~

~パンダグリュエル~



(……ラマール州のカイエン公爵。帝国西部を支配する大貴族にして貴族連合の実質的なリーダー……直接、顔を合わせるのはレグラムでの実習以来だけど……)

「リィン。シュバルツァー君。素直に言って、これ以上事を荒立てたくはないのだよ。」

リィンがカイエン公爵の背中を見つめているとカイエン公爵はリィンに背を向けたまま呟いた。



「え。」

カイエン公爵の言葉を聞いたリィンが呆けたその時カイエン公爵は振り向いた。

「元々、我々が事を起こしたのは”宰相閣下”のやり方があまりに理不尽だったからだ。陛下からの信任をいいことに伝統と慣習を軽んじ、帝国の全てを意のままに造り変えんとする傲慢さ―――君達も感じていたのではないかね?」

「それは……(確かに各地の実習でもそういった話は聞いていた……あまりに剛腕かつ強引……敵を作っても顧みないやり方………それが、帝国解放戦線のようなテロ活動にも結びついて……)」

カイエン公爵の問いかけを聞いたリィンは複雑そうな表情をし、クロウに視線を向けるとクロウは苦笑しながらリィンを見つめた。



「だが、諸悪の根源は消えた。時計の針を少し戻るだけでエレボニアは旧き善き伝統を取り戻すことができる。後は残った者同士がわだかまりを捨てて手を取り合うだけ―――そうは思わないかね?」

「……とても思えません。あれだけの事をしておいてこのまま済むとでも……!?帝都占領に、皇族の方々の幽閉―――市民全員を人質に取っているも同然だ。その上、ガレリア要塞を消滅させた”敵国”と背後で密約を結んでいる………そして何よりメンフィル帝国領を襲撃し、エリスを……メンフィルの民を誘拐した。少なくとも、残った帝国正規軍どころかメンフィル帝国自体が黙っているはずがないでしょう……!」

「フフ、皇族の方々は丁重に”保護”しているだけなのだが。しかし―――だからこそ”君”にも力を貸してもらいたいのだよ。」

リィンの問いかけに対し、カイエン公爵は口元に笑みを浮かべて答えた。



「え……」

「蒼の騎神に、灰の騎神。―――帝国に伝わる”巨いなる騎士”。この2騎が揃えば貴族連合は機甲兵部隊と合わせて正規軍の機甲師団を圧倒できよう。それにこちらにはメンフィル帝国軍を丸ごと滅ぼせる”切り札”もある。このまま徒に戦を長引かせ、”切り札”を持つ我らとメンフィル帝国軍が戦争をするより余程いいとは思わないかね?」

「そ、そんな単純に行くわけ―――」

(だからメンフィル帝国相手にも強気でいられたのですか……)

(”切り札”ねぇ……”魔神”相手には無駄だと思うけど。)

カイエン公爵の答えを聞いたリィンが反論しかける中、メサイアは真剣な表情で考え込み、ベルフェゴールは不思議そうな表情をしていた。



「いや、”機甲兵”という存在が戦場に登場した意味は絶大だぜ。火力と装甲は主力戦車に劣るもののそれを補えるだけの機動力と汎用性……そして、それ以上に重要なのは多くの連中に与える心理的な衝撃(インパクト)だ。」

「それは……」

クロウの指摘を聞いたリィンは今までの出来事を思い出し、複雑そうな表情をした。

「フフ、我々が人である以上、人型の巨大な”何か”には惹かれ―――あるいは畏れずにはいられない。ならばその機甲兵の元になった”伝説の存在”なら……クロウの”蒼の騎神”や君の”灰の騎神”なら尚更でしょうね。」

「ま、否定はしないぜ。」

「………………」

クロチルダとクロウの話を聞いたリィンは複雑そうな表情で黙り込んだ。



「今一度言おう―――”諸悪の根源(ギリアス・オズボーン)は去った。後は速やかに内戦を終結させ、あるべき秩序を取り戻すだけなのだ。そうすれば全てが戻ってくる。君達の学院生活も、妹御や皇女殿下の平穏な日々もね。」

「……!あ、貴方達は……!」

(その為にエリスさん達を攫ったのですね……!)

(”人質”、ですか。)

(――なるほどね。あの男だけは絶対に許さないわ……!)

(……慈悲すらも必要のない愚かな人間ね……)

カイエン公爵の言葉を聞いたリィンが怒りの表情をしている中、リィンの使い魔達もそれぞれ怒りの表情でカイエン公爵を睨みつけていた。



「……二人の安全は保証するわ。君がどんな選択をしても。閣下、それに関してだけは、以前にも言った通り、この場で確約を頂きますよ?」

「…………もちろんだとも。」

クロチルダに視線を向けられたカイエン公爵は一瞬表情を歪めたがすぐに気を取り直して静かな表情で頷き

「クロチルダさん……」

その様子を見ていたリィンはクロチルダを見つめ

「フフ、学院祭で”いいもの”を見せてくれたお礼よ。ま、今は冷静に状況を見極めることね。そして答えを出す事ね。この先、君が”何のため”に剣と力を振るうのかを。」

クロチルダはリィンにウインクをした後カイエン公爵達と共に退出した。



「……………………」

「―――どうぞこちらへ。リィン・シュバルツァー殿。」

「”客室”へご案内します。お食事などもそちらで―――」

そしてリィンは領邦軍の兵士達に客室へと連れられた。



一方その頃、メンフィルの帝都ミルスで多くの民達が帝城近くに集まったり帝都のあちこちに設定されている巨大なスクリーンに映るリフィアや帝城のバルコニーにいるリフィアに注目していた。


~メンフィル帝国・帝城マルーダ城・バルコニー~



「―――親愛なる我が民達よ!此度は突然の呼びかけに集まって頂き、心から感謝する!今回お主達を呼び集めたのはエレボニア帝国の件についてだ!」

「エレボニア帝国……!」

「メンフィル帝国領を襲撃し、リフィア殿下の専属侍女長の妹御を攫った卑劣な国……!」

「殿下!エレボニア帝国に裁きを!」

「粛清を!」

スピーカー越しに聞こえるリフィアの発言を聞いた民達を顔を見合わせた後それぞれ怒りの表情で声を上げた。



「―――静まれ!」

しかしリフィアが覇気を纏って声を上げるとその場に静寂が訪れた。



「そのエレボニア帝国だが……我らメンフィル帝国政府は再三に渡って誘拐された民の返還や下手人共の身柄を渡す事を要求したが……奴等はそれに応じるどころか、卑劣にも先日一度襲撃したメンフィル帝国領であるユミルに再び襲撃し、脅迫によって領主の息子であり、我が家臣エリゼの兄でもあるリィン・シュバルツァーを自分達の許に行くように誘導し、彼は仲間達の為……そして故郷や家族を守る為に仕方なくそれに従った!―――民達よ!今一度問う!エレボニアのメンフィルに対する狼藉を見逃していいと思うか!?」

そしてリフィアが怒りの表情で片手に持つ杖を無造作に振るって民達を見下ろして叫んだ!

「否!否!否!」

「卑劣にして愚かなるエレボニア帝国にメンフィル帝国の怒りの鉄槌を!」

「裁きを!」

「滅びを!」

「粛清を!」

「同胞達に手を出した愚か者達に報復を!!」

すると民達はそれぞれ怒りの表情で次々と手を挙げて怒鳴った!



「よく言った、我が民達よ!余達―――メンフィル皇家である”マーシルン家”もできれば”戦争”という手段は取りたくなかったが、今回はさすがの余達も堪忍袋の緒が切れた!



―――今こそ皆に伝える!メンフィル皇族である余達”マーシルン家”並びにメンフィル帝国政府は”エレボニア帝国との開戦”を決定した!これは我が父、現メンフィル皇帝シルヴァン・マーシルン並びに前メンフィル皇帝にしてメンフィル帝国を建国した偉大なる我らの皇――――”闇王”リウイ・マーシルンの意思でもある!



民達よ!卑劣にして愚かなるエレボニア帝国に我らメンフィルの”怒り”を思い知らせる為……エレボニア帝国の魔の手の中にある二人を助ける為にも今こそお主達の力を貸してくれ!義勇兵……後方からの支援……戦争に必要な資金の寄付……どのような形でも構わん!



今こそ異世界の大国に我らメンフィルの逆鱗に触れた者達がどのような末路になるのか、思い知らせてやるぞ!」

「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」

演説を終えたリフィアが怒りの表情で杖を掲げるとリフィアの叱咤激励に応じるかのように、メンフィルの民達はそれぞれの手を空へと掲げて辺りを轟かせる勇ましい雄たけびを上げた!



「――――ルーファス・アルバレアを処刑台に連行せよ!」

「「御意!」」

リフィアが背後に控えているシグルーンとエリゼに指示をすると二人はそれぞれ通信で誰かと連絡を取り合った。そして少しすると帝城の前に予め設置されてある処刑台にゼルギウスが現れ、更に両手両足を拘束されたルーファス・アルバレアがメンフィル兵達にゼルギウスの前に連行されて座らされた。



「民達よ!今から処刑する者はユミル襲撃を企てた主犯の長男であり、エレボニア帝国の内戦を起こした主犯の一人でもある!エレボニア帝国への”見せしめ”としてまずはその者を処刑するゆえ、その目でしかと焼きつけろ!」

「オォォォオオオオ――――ッ!!」

「殺せ!殺せ!殺せ!」

「メンフィルの怒りを思い知れ――――ッ!」

リフィアの言葉を聞いた民達は処刑台に座らされているルーファスを睨みつけて怒鳴り

「最後に言い残す事はあるか?」

大剣を鞘から抜いたゼルギウスは大剣を振り下ろす構えでルーファスに問いかけた。



「―――例え私がここで倒れようと、我が信念と誇りは決して滅びぬ!」

そしてルーファスはゼルギウスを睨んで叫んだその時!

「―――さらばだ。」

ゼルギウスは大剣を振り下ろしてルーファスの首を刈り取り、首が処刑台に落ちたルーファスの死体は処刑台に倒れた!



「―――”ユミル襲撃”を企てたヘルムート・アルバレアの長男にして貴族連合軍の”総参謀”――――”翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)”ルーファス・アルバレアにはこのゼルギウスが皆の怒りを背負い、裁きを与えた!」

「オォォォォォォォオ――――――ッ!!」

ゼルギウスが刈り取ったルーファスの首を掴んで民達に見えるように掲げると民達はそれぞれの手を空へと掲げて辺りを轟かせる勇ましい雄たけびを上げた!



「フフ、見事な演説でしたわ。さすがリフィア殿下ですわ。」

「―――お疲れ様。立派な演説だったわ。」

演説を終え、部屋に戻ってきたリフィアをシグルーンとエリゼが迎え、労いの言葉をかけた。



「………………――――次の”作戦”に向けて、準備は整っているな?」

労いの言葉をかけられたリフィアは少しの間目を閉じて黙り込んだ後目を見開いて真剣な表情で二人を見回して問いかけた。

「はい、問題ありませんわ。諜報部隊の者達が暗殺して、死体を処理した領邦軍の兵士や整備員等に変装して”パンダグリュエル”に潜入している兵達もいつでも動ける状態です。」

「リーシャ様が仕掛けて来た監視ビデオの様子を見る限りエリスもどこかに移動させられていないわ。」

「うむ!……エリゼよ、お主の大切な家族を救出するのが遅くなってすまぬな。」

二人の報告を聞いて力強く頷いたリフィアは静かな表情でエリゼを見つめて頭を下げた。



「フフ、どうして謝るの?私はルーファス様の遺体の件も含めた私の多くの望みを叶えてもらった上、兄様とエリスの救出の為に動いてくれるリフィア達にお礼を言うべき立場なのに。私――エリゼ・シュバルツァーはリフィア皇女殿下を含めた多くのメンフィル帝国の人々より受けた恩を決して忘れません。だから顔を上げて、リフィア。」

「フフ……」

頭を下げられたエリゼは苦笑した後優しげな微笑みを浮かべ、その様子をシグルーンは微笑ましそうに見守り

「ああ!それにしてもエリゼ……お主は平気か?ペテレーネ特製の自白剤によってルーファス・アルバレアが吐いたリィンの”本当の父親”を知って。」

リフィアは力強く頷いた後ある事を思い出して真剣な表情で尋ね

「”鉄血宰相”ギリアス・オズボーン……まさか彼が”リィンさんの本当の父親”だったとは驚きましたね。そして結社の『幻焔計画』とやらを利用した上、息子であるリィンさんをも利用しようとしていたとは、最低最悪の父親ですわね。子を持つ親として許し難い行為ですわ。」

シグルーンは静かな表情で呟いた後不愉快そうな表情をした。



「―――平気よ。確かに最初は驚いたけど……兄様は兄様。今更”本当の父親”が誰であろうと、今の兄様はシュバルツァー家の跡取りであり……そして私達が心から愛する兄様に変わりないもの。」

「そうか……―――――ゆくぞ、未来のメンフィルを支える我が戦友達よ!エレボニア帝国に余達メンフィル帝国の”力”と”怒り”、思い知らせてやるぞ!」

「ええ!」

「御意!」

そしてリフィアの号令にエリゼは力強く頷き、シグルーンは敬礼をした後リフィアと共に部屋を去って行った。



一方その頃、エフラム達の話が終わり、エフラム達が男爵邸を後にするとアリサ達はシュバルツァー男爵に話を聞くと驚くべき事実が判明した。 
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