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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第54話

~ユミル・転移魔法陣の間~



「っ!?こ、これは………!?」

「ちょ、ちょっと!?エマに何をしているのよ!?」

自分自身に起こった出来事にエマが驚いている中、セリーヌは慌てた後エイドスを睨んだ。



「…………術式等も全て頭に入りましたから使い方もわかりますね?」

「はい。でもどうして私に……?」

「―――私は貴女達が立ち向かう内戦や異世界の大国との外交問題に介入する”権限”はありませんし、そのつもりもありません。ですが短い間でしたけれど肩を並べて共に戦った”仲間”として、今後苦難の道を行く事になる貴女達への”私個人としての餞別”です。このくらいなら”干渉”や”介入”にもなりませんしね♪」

「…………ありがとうございます。エイドスさんに授けて頂いた”魔法(アーツ)”……必ず役立てて見せます。」

エイドスに微笑まれたエマは静かな表情で頷き

「へっ!?ア、”アーツ”!?」

「まさかエマ、エイドスさんみたいに戦術オーブメント無しに導力魔法(アーツ)を撃てるようになったの!?」

エマの言葉を聞いたエステルは驚き、アリサは信じられない表情をした。



「ええ……とは言っても一つしか授けてもらっていませんけど。」

「……………一体エマに何のアーツを授けたのよ?まさかとは思うけ”ロストオブエデン”みたいな”失伝魔法(ロストアーツ)”とかじゃないでしょうね?」

エマの答えを聞いて猛烈に嫌な予感を感じたセリーヌは表情を引き攣らせながらエイドスに尋ねた。

「―――”セプトクライシス”。私の奥の手の一つのアーツをエマさんに教えました♪」

「………………………」

「ええっ!?」

「エ、エイドスさんの”奥の手”のアーツって…………」

「オイオイオイ……!?とんでもねぇ威力があるんじゃねえのか、そのアーツは!?」

「それ以前に”セプトクライシス”という名のアーツ自体が初耳ですわね……”結社”でも聞いた事がありませんわ。」

「”結社”ですら知らない魔法(アーツ)を教えるって……ったく、うちの生徒にそんなとんでもないものを教えないでよね……外部に漏れたら滅茶苦茶厄介な事になるじゃない……」

エイドスの説明を聞いたセリーヌは石化したかのように固まり、リィンは驚き、エリオットは表情を引き攣らせ、トヴァルは信じられない表情で声を上げ、シャロンは考え込み、シャロンの言葉を聞いたサラ教官は疲れた表情で溜息を吐いた。



「まあ、普通のアーツと比べれば圧倒的に威力は高いと思いますよ?火・水・地・風・時・空・幻の全属性が込められたアーツですから。その為、属性の弱点や抵抗が存在しませんから、”無属性”アーツと言ってもおかしくありませんね。ちなみに”機甲兵”でしたか?エマさんの霊力(マナ)でもそのアーツを使えば一瞬で効果範囲にいる機甲兵全ても破壊できますし、リィンさんが乗っている”騎神”でしたか。あれも無視できない程のダメージになると思いますよ?」

「なっ!?全属性が込められた”無属性アーツ”なんて聞いた事がないぞ!?」

「更にはエマさんのような術者としてもまだ若い方でもあの機甲兵を容易に破壊する上、”騎神”も無視できない程のダメージを与える威力ですか……」

「ほえええええ~!?いいんちょ、そんな凄いアーツを使えるようになったんだ!?」

「いいんちょ、パワーアップだね。」

エイドスの話を聞いたマキアス、クレア大尉は呆け、ミリアムは目を丸くし、フィーは興味ありげな表情でエマを見つめていた。



「アハハ……膨大な霊力(マナ)が必要な為乱発はできませんから、使い所が難しいアーツでもありますけどね。」

「ア、ア、アンタねえ!?”伝説魔法(レジェンドアーツ)”をまだ一人前の”魔女”にもなっていないエマに”試練”の類すらもさせずにそんなあっさり教えるなんて何を考えているのよ!?」

エマが苦笑したその時我に返ったセリーヌが疲れた表情でエイドスを見つめて怒鳴った。



「レ、”伝説魔法(レジェンドアーツ)”!?何それ??」

「”伝説(レジェンド)”の名を冠している事からしてとてつもないアーツのように聞こえるのですが……?」

「”伝説魔法(レジェンドアーツ)”ってのは古文書に記されてある存在すらも疑われているまさに”伝説”の”魔法(アーツ)”よ。アタシやエマの一族―――”魔女の眷属(ヘクセンブリード)”でも限られた人物達―――例えばヴィータとかでないと読む事を許されない古文書に載っている”魔法(アーツ)”よ。色々仮説があるから、実際どんな効果を持っているのかわからないわ。」

驚いている様子のエステルと表情を引き攣らせているセレーネの疑問にセリーヌは疲れた表情で答え

「ええっ!?」

「”結社”の最高幹部クラスでようやく名前だけを知る事ができるアーツかよ……ハハ、さすがは”空の女神(エイドス)”が”奥の手”扱いしているアーツだな。」

「よかったな、委員長。」

セリーヌの説明を聞いたリィンは驚き、トヴァルは呆けた後苦笑し、ガイウスは静かな笑みを浮かべた。

「アハハ……ね、ねえ、セリーヌ。全て終わって故郷に戻った時、(ばば)様にどう説明すればいいのかしら……?」

「ハア……そんなのこっちが聞きたいくらいよ。その時の事を考えると頭痛がしてきたわ…………エマに何て事をしてくれるのよ……」

冷や汗をかいて表情を引き攣らせているエマに視線を向けられたセリーヌは疲れた表情で溜息を吐いた後エイドスをジト目で睨んだ。



「まあまあ。黙っていればわからないと思いますよ?」

「ア、アハハ……さすがに婆様に誤魔化すわけにはいきませんし、それ以前に勘付かれるかと思います。」

「というかアンタ、女神の癖に誤魔化す事を推奨する事に何とも思わないの?」

エイドスの答えにエマは苦笑し、セリーヌは呆れた表情で指摘したが

「フウ、何度も言っているように私は”ただの新妻”ですよ?」

エイドスは溜息を吐いた後不思議そうな表情で首を傾げて答えてその場にいる全員を脱力させ

「…………ああ、そうね。どうせその答えしか返ってこないとわかっていて聞いたアタシが馬鹿だったわ……ハア……もうこうなったら、全部エイドスの独断専行って事で押し通すしかないわね…………」

「お願いですから、いい加減認めて下さいよ~!」

セリーヌは遠い目で呟いて溜息を吐いた後小声でブツブツ呟き始め、アリサは疲れた表情で指摘した。



「それと―――ラウラさんにはこれを。」

そしてエイドスは異空間から膨大な聖なる霊力(マナ)を纏わせ、白銀に輝いている美しい長剣を取りだしてラウラに手渡した。

「これは……見事な剣だ。下手をすればウィルフレド殿に授けてもらったこの剣や父上が持つ”宝剣ガランシャール”より上かもしれぬ……」

手渡された剣から感じる霊圧にラウラは驚き

「――――”スウァフルラーメ”。”決して砕けぬ心”を意味する剣です。更には剣自身にも意思があり、持ち主が何者にも負けない強い心を念じれば”真の姿”を現し、”黄金の勝利”を持ち主に捧げてくれる剣です。」

驚いているラウラに説明した。



「”黄金の勝利”……」

「け、剣自身に意思があるって……」

「ひ、非常識すぎる……」

「確かに凄いが……エイドスさんならそのような剣を持っていてもおかしくないと思うが。」

「フン、確かにな。……最も本人は”ただの新妻”だと言っているが。」

「ちょ、ちょっと待って!?説明を聞く限り、その剣……かなりヤバイ代物じゃないの!?」

「どう考えても”古代遺物(アーティファクト)”に値する武器だと思うのですが……」

説明を聞いたラウラは呆け、エリオットとマキアスは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ガイウスの言葉を聞いたユーシスは呆れた表情でエイドスを見つめ、エステルは驚き、ヨシュアは疲れた表情で推測し

「ええっ!?」

「ア、”古代遺物(アーティファクト)”!?」

ヨシュアの推測を聞いたリィンとアリサは仲間達と共に驚きの表情で声を上げた。



「ア、ア、アンタねえ!?その”剣”……オーロックス峡谷で現れた”劫炎”が持っていた”この世界で存在するはずがない剣”――――”外の理”で造られた魔剣でしょう!?この際アンタがそれを持っている事はどうでもいいとしても、そんなとんでもない剣をただの士官学院生にアッサリ渡していいと思っているの!?」

「へっ!?じゃ、じゃあその剣もレーヴェの剣と同じ……!」

「あ、あのエイドスさん。さすがにそれを渡すのは不味すぎる気がするのですが……」

「どう考えても”七耀教会”の連中が黙っていないぞ……」

顔に無数の青筋を立ててエイドスを睨んで怒鳴ったセリーヌの説明を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、トヴァルは疲れた表情で指摘した。



「渡す本人である”私”がいいと言っているんですからいいんです♪それに七耀教会の反応が心配でしたら、その剣を私がラウラさんにプレゼントして、その剣はラウラさんの所有物である事を七耀教会に私の用事が終わった後で私が説明しておきますから、心置きなく使ってもらって構いませんよ?それに倉庫に眠っているくらいなら、”前の持ち主”同様平和の為にその剣の力を求めている方に使ってもらった方がその剣も嬉しいと思いますし。後、私も”在庫処分”ができますから大助かりです♪」

笑顔を浮かべるエイドスの説明を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「本音が最後に出たわね。」

「ざ、”在庫処分”って………(エステルの先祖でしかも”女神”だけあって、自由奔放な性格や滅茶苦茶な所ですらエステルでも比べ物にならないよ……)」

「ア、アハハ……”外の理”で造られた武具ですらもエイドスさんにとっては”その程度の価値”と言う訳ですか……」

「というかその言い方だと他にもたくさん凄い効果が秘められている武具を持っていそうですよね……?」

エイドスの口から出たあんまりな答えにエステルはジト目になり、ヨシュアは疲れた表情をし、エマとセレーネは苦笑した。

「ね~ね~!他にもいっぱいあるんなら、ボク達にくれないかな?処分したいと思っているんなら、ボク達が全部もらって有効活用するからさ~。」

「止めなさい!その女だと本当に実行しそうだから、洒落になっていないでしょう!?というかアンタもこれ以上頭痛の種を増やさないでよ!」

「ミ、ミリアムちゃん……確かに魅力的な話ですが、さすがにそれは色々不味すぎますよ……」

興味ありげな表情でエイドスを見つめて言ったミリアムの提案を聞いたサラ教官は疲れた表情でエイドスを睨み、クレア大尉は疲れた表情でミリアムに指摘した。



「残念です……これを機会に倉庫にある他の”私にとっては不要の武具や装飾品等”も皆さんにあげて処分しようと思っていたのですよ?どれも無駄に凄まじい力を秘めているせいで売ったり捨てたりする事もできませんからどうやって処分するべきか悩んでいたのですが…………まあ、一本処分できましたからそれで良しとしましょう♪」

そして心底残念そうな表情で呟いた後笑顔を浮かべるエイドスの発言を聞いたその場にいる全員は再び大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「フフ……――――そう言う事ならありがたく頂戴致す。エイドス殿より承ったこの剣…………”宝剣ガランシャール”とウィルフレド殿より頂いた”聖剣アロンダイト”と共に我が家の家宝として、アルゼイド家の子孫達に受け継がせて頂く。」

我に返ったラウラは苦笑した後エイドスからもらった剣――――”神剣スウァフルラーメ”を持ってエイドスに会釈をした。



「さてと…………―――エステル、エイドスさん。そろそろ行きましょう。」

「うん。それじゃあね!みんなの事、応援しているわよ!」

「大変な状況だけど、君達ならきっと何らかの”道”を見つけられると思う。だから諦めないで頑張って。」

そしてエステルとヨシュアはそれぞれリィン達に応援の言葉をかけて転移魔法陣の中に入って消え

「―――混迷に満ちたゼムリア大陸の平和を目指す皆さんにイースの加護を。……あ、ゼムリア大陸の人々である皆さんは”空の女神”を崇めているのですから大変不本意ですが、”人々から空の女神と呼ばれている私”が『皆さん、頑張ってください♪』……と言った方が御利益があって嬉しいのですかね♪―――それではまた会える日が来る事を楽しみにして待っています♪」

エイドスは神々しい雰囲気を纏って祈りを捧げたがすぐにいつも浮かべているような微笑みを浮かべてリィン達を見回してリィン達を脱力させた後転移魔法陣の中に入って消えた。



「さ、最後の最後にようやく自分が”空の女神”だって言ったわよね……しかも『大変不本意』って、何でそこまで”空の女神”扱いされる事を嫌がるのよ…………」

「うふふ、”空の女神”様御自身から応援の言葉を頂いたのですから、御利益はきっとあるでしょうね♪」

エイドスが消えるとアリサはジト目になった後疲れた表情で呟き、シャロンはからかいの表情で答え

「御利益ねえ……本当に効果があるのかどうか怪しすぎね。」

「同感だ。むしろ逆効果の気がするぞ。」

「ま、まあまあ。あまり悪口を言っていたら、エイドス様による本物の”天罰”を降されるかもしれませんよ?」

「そ、そうですね……エイドスさんなら本当に実行するかもしれませんよ?」

呆れた表情をしているサラ教官とユーシスの言葉を諌めているセレーネの意見を聞いたエマは冷や汗をかいて苦笑した。

「フフッ、いつかまた本当にユミルに再び訪れてくれる時が来るとよいのですけどね……」

「ああ……その時には”家族全員”総出で歓迎して差し上げたいな……」

「父さん……ええ、その時まで絶対にエリスを取り戻して見せます。」

ルシア夫人の言葉に続いたシュバルツァー男爵の言葉を聞いたリィンは決意の表情で力強く言った。



その後リィン達は午後に鳳翼館の食堂に集まる事にし、それまでは自由行動とし、一端解散してそれぞれの短い休息日を満喫し始めた。 
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