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もう一人の八神

作者:リリック
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新暦76年
  memory:08 親友とその妹

-side 悠莉-

ミッドチルダ首都クラナガンでは到る所にイルミネーションが施されており、クリスマスに向けての意気込みがうかがえる。

「すまんな、朝からこんなことに付きあわせてしまって」

「いやいや、俺も明日のパーティーにお邪魔させてもらえるんだ、それに比べればどうってことない。むしろ足りないくらいだな」

「そうか? なら万が一の時のシャマル料理処理班になってくれ。こういう時のシャマルは何をしでかすかわからないから」

「……悠莉さん? あなたはこの私めに昇天しろとおっしゃるか?」

「大丈夫。ライのギャグ補正なら十二分にいけるはずだ。それにあれの餌食にあったことのある私でさえギリギリだったんだ。お前なら逝けるから心配ないさ」

うん、あれは凄まじかった。
まさかあの世とこの世の境を目にすることになるとは思わなかったし。

「いやいやいや! そんなんじゃ死んでも死にきれねえから?!」

「安心しろ。骨は拾ってやるし、両親やリオちゃんは私が幸せにするから」

「いきなり何言ってんだ!?」

「冗談だ。危険物処理班ってこと以外はな」

「oh…神は私を見放したのか……」

「残念。見放したのは私だ」

「マジで勘弁してください!」

半分は冗談だったとして、土下座までしそうな勢いで…というかもうしてたか。
そんなこと言われれば、ねぇ。
十分からかえたしこれくらいにしておくか。

「ところでさ、明日のパーティーにリオちゃんは参加するのか?」

「んや、行きたいとは言ってたんだが生憎と風邪ひいたんだよアイツ」

「ありゃま」

復活の速い奴。
それにしても残念だ。
リオちゃんのことだから楽しみにしてくれてたんじゃないのかな?

「自分の分まで楽しんで来てーだとさ」

「相変わらずいい子だね」

「当たり前だ、俺の自慢の妹だぞ?」

「あはは、そうだな。私の友の妹で私の友達だからだもんな」

こいつもシスコンとまではいかないもののリオちゃんのことを可愛がってるからこんなに自分のことのように嬉しそうなんだろうな。
私にとってのヴィヴィオ的な感じかな?

「っと、次についたな。あとはここだけだしサクッと目的の物買って帰りますか」

「そうだな」

パーティーグッズの買い出しを再開した。



時刻は正午になる少し前。
無事に買い物を終えて帰路についていた。

「ライ、昼メシどうする? 何だったらウチで食べてくか?」

「おっ、いいのか? じゃあ……っとスマン母ちゃんからだ」

ライがおばさんからの通信で少し離れた。
そしてそれを終えると少し困ったような表情になっていた。

「どうかしたのか?」

「母ちゃんに仕事が入ってきたらしいから急いで帰って来いだとさ」

「あー…風邪ひいてるリオちゃんを一人にするわけにもいかないしね」

「そういうこと。そんなわけだから今回は遠慮するわ」

「……おばさんは何か作ってあると?」

「本当に急だったらしく何にも。ま、お粥くらいだったら多分作れるだろうし、俺は俺でインスタントで十分だし」

うーん、心配だね。
あ、でも、リオちゃんのお見舞いにも行きたいと思ってたしそのついでにしたらいいか。

「それなら私も行っていいか? リオちゃんのお見舞いしたいし」

「は? でもいいのか? 準備とかで忙しんじゃ……」

「問題ないさ。料理作るだけだからほとんど当日の朝にやればいい。それよりもリオちゃんの慌てる顔が見たい」

「……お前…リオは一応病人だぞ? それに本人の兄を前にしてそれを言うか?」

呆れ顔でため息をつかれた。
別にいいじゃんかよ。

-side end-

-side リオ-

―――コンコン

部屋のドアがノックされる。
そしてあたしの返事を待たずにドアが開かれた。

「大丈夫か?」

「ケホッ、ケホッ…お兄ちゃん? 帰って来たんだ」

「リオを一人にするわけなはいかないからな」

別に気にしなくていいのに……
そう思いながらもありがとーって気持ちになる。

それをわかってかはわからないけど、お兄ちゃんは優しく目を細めながらおでこに手を乗せた。

「……冷たくて気持ちぃ」

「外はそこそこ寒かったからな。それにしても熱は…うん、朝に比べたら下がってるな」

そう言って手を離した。
なんとなく朝にお兄ちゃんが出かけたことを思い出してそれについて聞いてみた。

「ところで明日の準備、もう行かなくていいの?」

「俺の仕事は終わったし、手伝いも必要ないらしい」

そうなんだ。
それなら悠兄ぃに会いたかったなぁ。

「悠に会いたかったか?」

「おおおお兄ちゃん!?」

な、なんでわかっちゃうの!?

「いや、顔に出てたし。つか、熱上がってねえか? 顔真っ赤だぞ」

「お兄ちゃんのせいでしょ!」

そう言うといじわるそうに喉を鳴らして笑った。
布団から顔を半分だしてジト目で睨んでみても笑ったまんまだ。

「それはそうとリオ、腹減ってねえか? お粥作ったんだが」

「……別にいらないよ」

「本当に?」

「ホントに!」

ちょっと意地になって返すとわざとらしくため息を吐かれた。

「そうか、それは残念だ。じゃあ仕方ないな」

その言葉に眉間にしわを寄せると部屋の外から足音が聞こえた。
それは次第に大きくなって部屋の前で止まると、部屋のドアがノックされた。
お兄ちゃんは「あいよ」と返事を変えしドアを開いた。
そして部屋の外にを見てベットから飛び起きてしまった。

え、え? ……えええぇっ!?

「な、なななんで悠兄ぃが!?」

「準備もある程度済んだからお前のお見舞いに来てくれたんだよ。お前が心配だからって」

「悠兄ぃ……」

やっぱり悠兄ぃはやさしいなー。

「驚いてくれてなにより。ところで食欲ある? お粥作ったんだけど」

「あっ、あr「スマン悠、リオは食べないらしい」……え…?」

お兄…ちゃん……?

食べたいって言おうとしたらお兄ちゃんに遮られた。

「え? そうなの? おばさんが何にも用意してないって聞いたからもしかしてって思ったんだけど……何かごめんね?」

「だ、だってそれはぁ……」

悠兄ぃが来る前に言ったことの原因のお兄ちゃんを見る。

「一言も俺が作ったなんて言ってないぞ」

それを聞いた途端涙で視界が滲む。
でも悠兄ぃがいるから涙を見せないようにって袖で拭いて俯く。

≪ライ、これは一体どういうことなのかな?≫

≪……オーケー、少し落ち着こう。頼むからリオには見えない角度でシューターを放とうとしないでくれ。……まだ怒るなよ? ちょっと調子に乗ってからかってみたんだが……見ての通りやりすぎた≫

≪バカかお前は……。私言ったよね、何もしなくても私が突然来たら驚くだろうって。それにお前自身がリオちゃんが病人だぞ、とも言ったよな?≫

≪うっ、確かにそう言ったが……ま、これは一旦置いといて≫

≪そうだね。あの時驚かしたいと言った私にも責任はあるから…今するべきは―――≫

≪≪リオ(ちゃん)に謝らないとな≫≫

-side end-

-side 悠莉-

結論だけ言えば私もライも許してもらえた。
ただ、ライの場合は何というか…微妙な所だ。
リオちゃんはライの言葉には反応せずに無言を返すだけ。
流石のこれには私も苦笑して仕方ないかで片づけた。
で、現在はというと、

「悠兄ぃはやく~」

「はいはい」

泣き顔は何処に行ったのかと思わせるくらいの笑顔で私の膝の上に乗り、口を開けて次を待っている。
急かすリオちゃんに返事をしながらスプーンにお粥を乗せて口に運ぶ。
そしてライなんだが……

「リ、リオさん? いつまでこの体勢をとらなければならないんでしょうか……? そろそろ限界が…っ」

なぜか部屋の隅で大腿四等筋をプルプルとさせながら空気椅子をさせられている。

「ダーメ、あたしが食べ終わるまでそのままだから。悠兄ぃあ~ん」

ここまでの流れを簡単に思い返そうと思う。

私、許される。ライ、許されず。

ライ、なんでも言うことを聞くからと懇願。

リオちゃん、「……悠兄ぃお腹減ったから抱っこして食べさせて。お兄ちゃんは……思いつかないから空気椅子してて」

私とライ、それを実行。

で、現在に至るんだが……もういいや、考えるのを止めよう。
ま、ライは自業自得ってことで放置して、今はリオちゃんの相手をつとめるかな。
リオちゃんの体に障らない程度に。

「リオちゃん、あーん」

「あーん」

-side end- 
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