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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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外伝~幻焔計画~

――リベル=アーク崩壊より3ヶ月1週間後―――



~某所~



「やれやれ……”拠点”でこの装置を使うのは色々時間がかかって、面倒だったんだよな………”グロリアス”があれば、気軽に行けたのに……ハア。まあ、いいや。」

リベールの『異変』より数ヶ月後、カンパネルラはある場所に立って疲れた表情で溜息を吐いた後、気を取り直して呟いた。

「―――アクセス。執行者No.0”道化師”カンパネルラ。”蛇の使徒”第三柱、ゲオルグ・ワイスマンに代わり”星辰の間”への立入を申請する。」

カンパネルラが呟くと空間が歪み、カンパネルラは謎の場所に立っていた!



~星辰の間~



「………待ちかねましたよ…………」

カンパネルラが謎の空間――”星辰の間”に立っているとどこからか謎の声が聞こえてきた。

「ふふっ………皆さん、お揃いみたいだね。」

カンパネルラが呟くとカンパネルラの周りに6本の柱が突然現れた!

「しかし………まさか”白面”が滅びるとは。」

「ふふ、どうやら古巣でおいたをしすぎたみたいね。ねえ、カンパネルラ。彼はどんな死に方だったの?」

柱の内の一本――”蛇の使徒”の一人、第五柱は驚いた様子で呟き、さらにもう一本――同じく”蛇の使徒”の一人――第2柱はカンパネルラに尋ねた。

「うふふ、それが傑作でね。身体中が塩にされている最中に無数の魔槍に貫かれて、最後に魔槍が爆発して肉塊の欠片も残さず吹っ飛んじゃったんだ。」

「まあ………ゾクゾクしてしまうわね。ああ、わたくしもその場にいられればよかったわ。」

カンパネルラの話を聞いた第2柱は楽しそうな声を上げて言った。

「”塩の杭”………ノーザンブリアに出現した特異点の産物だね。魔槍も”塩の杭”とはまた違った特異点の産物だろうね。ふーむ、”塩の杭”といい、その魔槍といい、この目で実物を確かめたかったところだが………」

一方違う柱からは蛇の使徒の一人、第六柱――ノバルティスの声が聞こえてきた。

「ハハ、しかし意外だなァ。あんな抜け目のない御仁がそんな隙を見せちまうとはね。」

そしてさらに違う柱からは”蛇の使徒”の一人、第四柱の声が聞こえてきた。

「………おそらく相手は”守護騎士”の一人であろう。それも今まで不在とされていた”第五位”に違いあるまい。」

「なるほどねェ……だからこそ隙が生じたか。そいつ、なんて名前なんだ?」

第五柱の話を聞いた第四柱は頷くような声で言った後、カンパネルラに尋ねた。



「―――ケビン・グラハム。かの”紅耀石(カーネリア)”に学び、”外法狩り”を名乗っている。うふふ、色々と歪んでいて愉しそうなお兄さんだったよ。」

「”紅耀石”の………うふふ、何だかますます興味をそそられてしまうわね。」

カンパネルラの話を聞いた第二柱は妖しげな笑みを浮かべたような声を出した。

「おいおい”深淵”の。あれほど熱を上げていたレオンハルトが”結社”から離れたってのにもう次の男漁りかよ?」

第二柱――”深淵”と呼ばれる蛇の使徒の言葉を聞いた第四柱は呆れた様子の声を出した。

「あら、心外ね。これでもレオンのことはちゃんと哀しんでいるのだから。とうとう最後まで振り向いてもらえず、私以外の他の女――”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”になびいて”結社”を離れたんだから、余計に忘れられそうもないわね。」

「……そうですね。良き剣士であったのに本当に惜しい事になりました。……ですが彼は今以上の良き剣士になると思っています。彼の新しい環境は彼を剣士としてより高みへと目指させる環境でしょうしね………(フフ、奇妙な縁ですね。まさかペテレーネの娘と結ばれるなんて。………私も早く貴方達と邂逅をしたいです。

………陛下、イリーナ様。……そして……私と陛下の血を引きし子、シルヴァンと私にとって初孫のリフィア。)」

”深淵”の言葉を聞き、他の柱――”蛇の使徒”の一人である第七柱もまた、残念そうな声を出した。

「確かに執行者(レギオン)の中で貴公と剣で渡り合えたのは彼くらいであったか………」

「ええ、よく無理を言っては稽古に付き合ってもらいました。彼の新しい環境を考えるといずれは私を上回る剣士となるかもしれません。」

「フフ……確かに貴公と渡り合える実力を持つ”覇王”達の傍にいれば、そうなるかもしれないな………」

第七柱の言葉を聞いた第五柱は頷いたような声を出した。

「ふふ、別に問題はないだろう?戦力全体における損失は極めて軽微――想定の範囲内だよ。今後の影響を考えると”殲滅天使”や”グロリアス”の方が大問題さ。」

「ハハ、メンフィルがまさかあの”パテル=マテル”や”グロリアス”を強奪する事はさすがのあんたでも予想できなかったか。」

ノバルティスの言葉を聞いた第四柱は苦笑するような声で言った。

「……異世界の彼らがそこまで関わってこないと過信していた私達にも非はあるでしょう。博士、貴方が”パテル=マテル”に執着している事や私達もゴルディアス級の重要性は理解しているつもりです。……ですが今、メンフィルとまともにぶつかりあえば勝敗はどちらに傾くかは博士ならご理解していらっしゃいますでしょう?」

「…………………」

そして今まで今まで黙っていた柱――”蛇の使徒”の一人、第一柱に尋ねられた博士は黙り込んだ。



「うふふ……教授の漆黒の坊やへの執着は少々度が過ぎていた気がするけど。」

「そう、そしてそれが彼を滅ぼすきっかけとなったのも事実……そうでしょう、カンパネルラ?」

深淵の言葉に頷いた第一柱はカンパネルラに問いかけた。

「うふふ、確かにヨシュアに拘りすぎたのは敗因の一つかもね。あのケビン君にもそのあたりを狙われたみたいだし。」

「………はいはい、わかったよ。でもまあ、私だって”十三工房”を預かる身だからね。早急に新たなゴルディアス級の開発に移らさせてもらうよ。そちらの開発を最優先事項にさせてもらうからね。」

「ええ、それはお任せします。それより皆さん――そろそろ降臨なされますよ。」

ノバルティスの言葉に頷いた第一柱は全員に言った。

「む……そうか。」

「うふふ……ドキドキしてしまうわね。」

第一柱の言葉を聞いた第五柱と第四柱はそれぞれ頷き、カンパネルラは跪き、その場は静寂が訪れた。すると一際大きい柱が降りて来た!



「皆……揃っているようですね。」

「は……”第三柱”を除きまして全員、揃いましてございます。」

一際大きい柱―――”盟主”に第一柱は答えた。

「……ご苦労。カンパネルラも……我が代理としての見届け役、大儀でありました。」

「……恐れ入ります。すでに『福音計画』の顛末はご存知かと思いますが……もっとも重要な事を説明させてもらいます。」

盟主に名前を呼ばれたカンパネルラは跪いた状態で”輝く環”がワイスマン――ワイスマンに転生したケルヴァンに利用された挙句、エステルとリウイによって破壊された事を説明した。

「何ですって!?」

「まさか”至宝”が……」

「”覇王”もそうだが、”剣聖”の娘……いや、”ブレイサーロード”か。とんでもない事をしやがったな……」

「……………………(お見事です、陛下。………それにしても”ファラ・サウリン”は気になる名前ね…………まさか私やイリーナ様のように奇跡の転生を果たしたのですか?………ラピス姫、リン姫。)」

カンパネルラの報告を聞いた”深淵”は驚き、第五柱、第四柱は信じられない様子で呟き、第七柱は一人黙って考え込んでいた。

「………そうですか。”空の至宝”の件といい、『福音計画』ではあまりにも多くの犠牲を払ってしまった……ワイスマン……ヴァルター……いえ、それだけでなく計画にまつわる全ての犠牲も………全ての責はこの私にあります。」

「め、滅相もありませぬ!」

「……どうかご自分をお責めにならないでください。”白面”殿の死は自業自得というものでしょう。」

「もし責められるならば彼を諌めもせずに看過してきた我々”使徒”全員のはずですわ。」

後悔した様子で語る盟主に第五、七、四柱はそれぞれ自分達の意見を言った。



「いいえ、”空の至宝”の件を除いてこの事態を私はなかば想定していたのです。それでも私は………全ての決定を彼に委ねました。それがこの世界にとって必要と判断したがゆえに………ですから全ての責は……私にあるのです。」

「”盟主”よ……」

「なぜ御身はそこまで……」

「…………………この後しかるべき揺れ戻しが起きることが予想されますが……恐らく、その件に関しては七耀教会が動くことになりましょう。彼らに任せておきなさい。」

使徒たちの問いに何も答えず盟主は静かな口調で言った。

「……承知しました。」

「ふふ……少し気になりますが御心のままにいたしますよ。」

「して、我々はこの後、どう動くといたしましょうか?

「…………………」

第四柱に尋ねられた盟主はしばらく黙っていたがやがて口を開いた。

「西方の鐘は鳴らされ、第一の盟約は解かれました。今、この時をもって『オルフェウス計画』がー、『福音計画』の完了と―――そして次なる段階――『幻焔(げんえん)計画』の始動を宣言します。」

「おお……!」

「うふふ……承知しましたわ。」

「はは、どうかお任せあれ。」

「我等”蛇の使徒”一同……」

「大いなる”盟主”の御心に沿うべく……(『幻焔計画』により私が赴く地は”今”のイリーナ様の故郷、光と闇が混在する魔都――クロスベル。……陛下達と邂逅する時が近いかもしれないわね。………”盟主”よ……私が真に忠誠を誓うのは陛下のみ。仕える者を鞍替えする事は義には反しますがせめて”もう一人の私”としての義理だけは果たしましょう。)」

「これより全身全霊を持って計画遂行に着手いたします。」

盟主の言葉を聞いた蛇の使徒達はそれぞれ答えた。そしてカンパネルラは”星辰の間”から元の場所に戻った。



~某所~



「『幻焔計画』……いよいよ始動というわけか。仕込みは十分……規模と完成度は『福音計画』の比じゃないはずだ。……今度は『福音計画』のようにメンフィルは関わってこないはずだから、大丈夫だろう。うふふ……面白くなりそうだね。」



カンパネルラは不敵な笑みを浮かべた後、どこかへ去って行った……………


 
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