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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第35話

~ラクリマ湖畔~



「…………………」

「あ、あんなにいた貴族連合軍がぜ、”全滅”するなんて……」

「あまりにも圧倒的な戦いでしたわね……」

「もはや”虐殺”と言ってもおかしくない戦いだったな……」

「ええ…………ですが、先程の部隊が全滅した事によって、第三機甲師団が立て直し、本土からの襲撃に対する対策を練る時間の猶予ができましたね……」

リザイラ達の戦いを見終えたリィンは口をパクパクして絶句し、アリサとセレーネは信じられない表情をし、ゼクス中将の言葉にクレア大尉は重々しい様子を纏って頷き

「ほえええええ~!?ミルモやリザイラ、凄すぎだよ!」

「うふふ、お嬢様も本当に良いご縁に恵まれましたわね。」

ミリアムは興奮した様子で声を上げ、シャロンは微笑んだ。



「―――よくやりました、リスレドネーの精霊達よ。後は荒れ果てたこの大地に祝福を与えますよ。」

「はいっ!」

地上に降り立ったリザイラは精霊達を見回して微笑んだ後笛を取り出し笛を吹き始めるとミルモを始めとしたその場にいる全ての精霊達が歌い始めた!

「う、歌……!?」

「心に響く不思議な歌声じゃの……」

「ええ……」

「まさか精霊様の歌を聞けるなんて、今日は本当に素晴らしい一日ですね……」

精霊達の行動にエリオットは驚き、歌に聞き惚れているグエンの言葉にラカンは頷き、ファトマは微笑み、リザイラ達を見つめて祈った。

「精霊達による”歌”……――――まさか!”初源の歌”!?」

「なっ……それは本当か、セリーヌ!?

一方考え込み、ある事に気付いたセリーヌの言葉を聞いたガイウスは血相を変えた。



「へ……」

「ガイウスとセリーヌは何か知っているのか?」

その様子に気付いたアリサは呆け、リィンは不思議そうな表情で尋ね

「ああ……”ノルドの民”達に今も伝わりし精霊達の伝承――――”初源の歌”。確か伝承では1200年前の”大崩壊”の際、”大崩壊”によって破壊されたこのノルドの地を憂いた精霊達が歌い、そのお蔭でノルドは緑溢れる大地に戻ったと伝えられている。」

「アタシが知っている伝承も似たような内容よ。精霊達が歌った”初源の歌”によって、荒れ果てた大地が緑溢れる大地に変わったそうよ。」

「ええっ!?」

「う、”歌”で荒れ果てた大地を緑溢れる大地にするのですか!?」

ガイウスとセリーヌの説明を聞いたエリオットとセレーネは信じられない表情をした。

「!みんな、見て……!戦闘によって荒れ果てたノルド高原が……!」

その時何かに気付いたアリサが指を高原を指を指すと今までの正規軍と貴族連合軍による戦闘やリザイラ達による蹂躙戦で荒れ果てた大地は貴族連合軍の死体や兵器の残骸を飲みこんで自らの栄養と化させて元の緑溢れる大地に戻り、更にラクリマ湖畔に次々と木が生えた後様々な果実や野菜が実り、ラクリマ湖畔は多くの果実や野菜が実る木に囲まれた!



「こ、これは……!」

「わ、私達、夢でも見ているのでしょうか……?」

目の前の出来事にゼクス中将とクレア大尉は信じられない表情をし

「……………………」

「”奇蹟”………」

「まさに伝承通りだ……!」

「ええ……まさか異世界の精霊達によって、”初源の歌”をこの目にする事ができるとはね……」

リィンは口をパクパクさせ、アリサは呆け、ガイウスは驚き、セリーヌは静かな表情で頷いた。



「皆、ご苦労様でした。今は”リスレドネー”でゆっくりとその身を休めて下さい。」

笛を吹き終わったリザイラが精霊達に優しげな微笑みを浮かべて微笑むと最上位精霊達とミルモを除いた精霊達はリザイラや最上位精霊達によって創られた空間の”裂け目”の中に次々と入って行き、その場から消えた。

「どれもおいしそう……ガイウスあんちゃん。あのリンゴ、取ってよ!」

その時近くにあった木に実っている林檎を見て目を輝かせたリリはガイウスに頼み

「リリ……精霊達の許可なく精霊達によって起こされた”奇蹟”の産物に手を出すのはダメだと思うぞ。」

リリの頼みに対し、精霊達が起こした”奇蹟”によって現れた果実を取って食していいのか判断できないガイウスは困った表情をした。



「――――取って食してもらっても構いませんよ。」

その時リザイラがミルモと最上位精霊達を引き攣れてリィン達に近づいてきた。

「……本当にいいのか?」

「ええ。―――どうぞ。甘くて美味しいですよ?」

ガイウスに尋ねられて頷いたリザイラは魔術による風の刃を発生させて林檎を落としてその手に受け止めた後優しげな微笑みを浮かべてリリに手渡し

「はむ。……とても甘くておいしい!こんな甘いリンゴ、初めて食べたよ、あんちゃん!」

「そうか……よかったな……」

手渡された林檎をかじって嬉しそうな表情をするリリの言葉にガイウスは静か笑みを浮かべ

「はい、アリサ!モグモグ……この葡萄、とっても甘くて美味しいよ♪」

「もう、ミルモったら……食べながら話すなんて行儀が悪いわよ?」

近くにある木から葡萄を一房もぎ取り、もぎ取った葡萄から数粒ほど取って食べ続けているミルモから葡萄を受け取ったアリサは苦笑した。



「リザイラ。その……お疲れ様。リザイラ達のお蔭でノルドの民達を護れたよ。」

「私達は”精霊”としての義務を果たしたまでです。――――イフリート、ネレイ、シヴァ、フローラ、アタランテ、ノーム。貴女達はこれからこの国の騒乱が収まるまで”リスレドネー”に休んでいる精霊達と共にノルドの民達を私に代わり、守護しなさい。」

「御意!我ら一同、リザイラ様の御心のままに!」

リザイラの命令に最上位精霊達はそれぞれ会釈をし

「我は火の精霊達を統べる精霊、イフリート!我が主の命により、これよりお前達を守護する!」

「水の精霊達を統べるネレイと申します。よろしくお願いします。」

「―――同じく氷の精霊を統べるシヴァ。」

「風の精霊達を統べるフローラです。いつも”風”を大切にしてくれてありがとうございます。」

「木の精霊達のお世話をしている”ニル・ユイチリ族”のアタランテです。よろしくお願いしますね。」

「私は大地の精霊達の纏め役のノーム!よろしくね♪」

ノルドの民達に自分達がノルドの民達の守護をする事を宣言した!



「ええっ!?」

「精霊達がノルドの民達――――人間達を直接守護するですって!?」

「まあ……!精霊の方達に守護してもらえるなんて、ノルドの民の方達はとても幸運ですわね……!」

一方それを聞いたエリオットは驚き、セリーヌは信じられない表情で声を上げ、セレーネは微笑み

「おお……!精霊様達による大地の実りを頂いた上精霊様に守護までしてもらえるとは、何とありがたいことじゃ……!風と女神よ……この導きに感謝いたします……!」

「我らノルドの民は貴女方を心から歓迎いたします。どうぞ気のすむままに滞在なさってください。」

「フフ、今晩は精霊様達の歓迎会ですね。」

ノルドの民達の長老は驚いた後ラカンと共に会釈をして祈りを奉げ、ファトマは微笑み

「…………本当にありがとう。オレ達は貴女達―――精霊達より受けたご恩は決して忘れません。」

静かな笑みを浮かべ、一筋の涙を流したガイウスはリザイラや最上位精霊達を見回して会釈をした。



「フフッ、私達は”精霊”として当然の義務を果たしたまでです。それより………―――わかっていると思いますがイフリート達は今までこの大自然と共存し続けた”ノルドの民”達を守る為にいます。決して貴方方の愚かな争いには手を貸しませんし、もし何らかの方法で無理矢理精霊達を従わせようとすれば、先程の愚か者達と同じ末路を辿ると思いなさい。」

ガイウスの行動を静かな笑みを浮かべて見守っていたリザイラは目を細めてゼクス中将に視線を向け

「……元より我らの事情に関係のない者達を巻き込むつもりは毛頭ないし、ましてや我ら正規軍は脅迫や人質等の卑劣な行為は絶対にせん。第三機甲師団を率いる者として………そして”ヴァンダール流”の師範代であるゼクス・ヴァンダールの名に賭けて我らの戦いに精霊達を決して利用しない事をここに誓う。」

リザイラの釘刺しにゼクス中将は真剣な表情で答え

「そうですか。ならば、これ以上私から言う事はありません。それと軍の補給の為にここにある野菜や果実は好きに使ってもらって構いません。勿論、ノルドの民達の生活に影響を及ぼさない程度が条件ですが。」

「……了解した。精霊達のご厚意、ありがたく受け取らせて頂く。」

「ご協力、感謝致します!」

リザイラの答えを聞き、副官と共にリザイラに敬礼をした。

「そりゃ、さっきの蹂躙戦を見たら絶対に精霊達に喧嘩を売るような事はしたくないよねー。もし精霊達を従えて貴族連合軍に勝てたとしても、今度は精霊達によって自分達が滅ぼされるだろうし。」

「……少しは言葉を選んでください、ミリアムちゃん。」

一方その様子を見て呟いたミリアムの言葉を聞いたクレア大尉は困った表情で指摘した。

「それとアリサ。貴女の実家が自らの”利益”や”欲”の為に自然を破壊し続けている事も精霊達がいつも見ている事を覚えておいてください。」

「………ええ、わかっているわ。”ラインフォルトグループ”をいつか必ず自然や精霊達と共存できる会社にしてみせるわ……!」

リザイラに視線を向けられたアリサは静かな表情で頷き

「”自然と共存する”か…………アリサだけでなく、”ラインフォルトグループ”にとっても難しい課題じゃな……」

「ええ…………ですが、お嬢様ならきっと達成すると思いますわ♪」

重々しい様子を纏って考え込んでいるグエンの言葉にシャロンは静かな表情で頷いた後微笑んだ。その後リィン達はラカン達に改めて見送られようとしていた。



「………あんちゃんも、行っちゃうんだよね。」

「ああ。いつ帰れるかはわからないがシーダやリリをよろしく頼む。もちろん、シャルもな。」

「あ……」

「ガイウスさん……」

「ぐすっ……やだぁ……リリ、あんちゃんといっしょがいい……」

「リ、リリ……そんなの、わたしだって……」

涙を流すリリを見たシーダは辛そうな表情で頭を項垂れた。



「お前達……」

「リリ、シーダ……だめよ、困らせては。ガイウスは自分のやるべき事の為に皆さんと行くのだから。」

「…………」

両親が妹達を諌めている中、黙り込んでいたガイウスはやがて口を開いた。



「オレは……今回の件で痛いほどよくわかった。帝国で戦が起きた以上、いつこの地が巻き込まれてもおかしくはない。もはや、ノルドがノルドだけ平和であり続けるのは難しいだろう。この故郷を護る為には―――誰かが立ち上がらなければならない。かつて”獅子戦役”で立ち上がったノルドの戦士達のように。」

「あんちゃん……」

「……かの”ドライケルス皇子”はこの地から戦乱の帝国へと旅立った。その際、ノルドの戦士達は槍をとって皇子の挙兵に協力した。友のため……ノルドを愛した兄弟を助けるために。」

(あ……)

ラカンの話を聞いたリィンはノルド高原で見つけた遺跡の奥地で見せられた謎の光景を思い出した。



「ガイウス―――お前もまた、そうありたいと願うのだな?」

「ああ……だがそれだけじゃない。――――トールズ士官学院、”Ⅶ組”に所属する者として。オレ自身の”第二の故郷”である帝国の地を護る為にだ。」

「ガイウス……」

「……ありがとう。」

「リリ、シーダ、トーマも。必ず無事に帰ると約束する。オレも自分自身の道を見出して一回り大きくなって帰ってくる。だから―――どうか待っていてくれ。」

「お兄ちゃん……」

「あんちゃあん……」

「……わかったよ、あんちゃん。あんちゃんがいない間は僕達が頑張ってみせるから!」

妹達が辛そうな表情をしている中、トーマは決意の表情でガイウスを見つめ

「ぐすっ……わ、わたしも頑張る……!お兄ちゃんの無事をずっとお祈りしてるからっ……!」

「うわあああああんん、あんちゃあああん……!!リリも……リリも頑張るから!!」

トーマに続くように妹達もそれぞれガイウスに応援の言葉を送った。



「ふふ……お前達に風と女神の加護を。それでは行って来る―――!」

こうして……リィン達はノルド高原を後にし、ユミルに戻って行った。


~ユミル渓谷道~



「はあ~、戻ってきた~………!」

「ああ、今回も無事に帰ってこれたみたいだ。」

「はい……それにはぐれた仲間の方達とも全員無事合流できましたわね。」

渓谷道に到着するとエリオットやリィン、セレーネは安堵の表情をした。



「ここって、前にデッカイ魔獣と戦ったところだよね?はー、ホントに一瞬で飛んできたんだー。」

「これが”精霊の道”……とんでもないわね。」

「まさか、鉄道や飛行船よりも早く移動できる手段があるとは……」

「ま、本来はその名の通り”精霊の通り道”だからね。アンタたちが使える事自体裏技みたいなものだし。」

”精霊の道”に驚いているミリアム達にセリーヌは冷静な様子で説明した。



「ふふ、ヴァリマール様には感謝しなくてはなりませんね。監視塔でも危ない所を助けられてしまいましたし。」

「ええ、本当に。」

シャロンの言葉に頷いたリィンは仲間達と共にヴァリマールを見つめた。

「―――ありがとう、ヴァリマール。おかげで今回もみんなと合流できた。しばらくゆっくりと休んでいてくれ。」

「承知シタ―――休眠状態ニ移行スル。マタ必要ナ時ハ呼ブガイイ―――我ガ”起動者”ト仲間タチヨ―――」

リィンの言葉に答えたヴァリマールは休眠し始めた。



「ヴァリマールさん、眠り始めたみたいですわね。」

「そろそろユミルの方に帰還いたしましょう。留守番をしていた方々に皆さんの無事を知らせてあげないと。」

「うんうん、早くみんなに会いたいよー!」

「ああ、そうしよう。そろそろ夜になりそうだ。急いで山を降りないとな。」

その後リィン達は郷へと降りて行った。



~温泉郷ユミル~



「とうちゃーく!!」

「ふふ、すっかり暗くなってしまいましたわね。」

「ユミルの郷……懐かしいわね。」

「ああ、たったの2ヶ月ぶりだが………前に小旅行に来たのが何年も前のことのようだな。それだけ、オレたちにとっても印象深い場所ということだろう。」

「はは、ありがとう。でも、なんだか変な雰囲気だな。妙に慌しいというか……」

郷の民達がそれぞれ慌しい様子で会話をしている事にリィンは不思議そうな表情をした。



「―――リィンたちか!?」

その時待機組のメンバーがリィン達にかけよった。

「よかった……無事だったか!」

「みんな、おかえり。」

「ただいま戻りました、マキアスさん、フィーさん。」

「うん、さっき帰ってきたところだよ。

マキアスとフィーの言葉にセレーネとエリオットは笑顔で答えた。



「どうやらノルド方面の仲間とも巡り合えたみたいだな。」

「はい、おかげさまで。」

「久しぶりだ、トヴァルさん。」

「ふふ、ご無沙汰しています。」

「えへへ、そっちも元気そうだねー。」

ガイウス達はトヴァルにそれぞれ再会の挨拶をした。



「ああ、ボチボチってところだ。お前さん達も変わりないようで何よりだぜ。」

「それにしても……これは何の騒ぎですか?妙に郷が慌しいみたいですが……」

「そ、そうだった!リィン、男爵閣下が―――」

クレア大尉の質問に血相を変えたマキアスの言葉を聞いたリィン達も血相を変えた



「ちょっと、まさか……!?」

「……父さんに何かあったのか!?」

「マキアス、言い方が紛らわしすぎ。」

物事を悪い方向に考えているセリーヌとリィンの言葉を聞いたフィーはジト目で指摘した。



「違う、そうじゃない!リィンの父さんが―――ようやく目を覚ましたんだ!!」

「まあ……!」

「ほ、本当に!?」

「ああ、間違いない。まだ万全じゃなさそうだが……とにかく、すぐにでも屋敷のほうに向かおう。」

そしてリィン達が男爵邸に戻り、男爵が眠り続けている部屋に向かうとベッドの中にいるシュバルツァー男爵と看病しているルシア夫人がリィン達を迎えた。



~シュバルツァー男爵邸~



「―――よく戻ったな、リィン。他の者達も……よくぞ再びこの郷を訪れてくれた。ロクなもてなしもできずにすまないがあらためて歓迎させてもらおう。」

「父さん……」

「あはは、こちらこそお世話になっています。」

「大怪我をされていたみたいで……こういてご挨拶ができて本当に良かったです。」

「ふふ……気遣い痛み入る。トヴァル君とそちらの女性―――クレア大尉と言ったか。君達には郷の守りを引き受けてもらっているそうだな。ユミルの領主として礼を言わせていただこう。」

エリオットとアリサの謙遜に苦笑したシュバルツァー男爵はトヴァルやクレア大尉に視線を向けた。



「ハハ、まあ受けた依頼のついでみたいなものですから。」

「私達―――エレボニア帝国の内戦に男爵閣下達やメンフィル帝国を巻き込んだ以上、当然の責務かと。郷をこれ以上内戦に巻き込ませないため……そしてユミルを我々―――エレボニア帝国の内戦に巻き込んだ”罪”を償う為にも最善を尽くさせていただきます。」

「ありがとう……それと……リィンとルシア、この場にはいないエリゼには本当に心配をかけてしまったな。エリスと皇女殿下まで貴族連合に奪われてしま、更にはその事によってメンフィル帝国とエレボニア帝国が緊張状態に陥ってしまった……そんな大事に床に伏していた不甲斐ない父を許してほしい。」

「あなた……」

「父さんの責任ではありません。むしろ、あの危険な状態からよく持ちこたえてくれました。あとは俺達に任せて下さい。二人は必ず取り戻してみせます……!」

「リィン……そうだな。」

「無論、オレたちも力を貸すつもりだ。」

「うんうん、何とかなるって!」

「ええ、私達”Ⅶ組”が揃いさえすれば……!」

「必ずお二人を助け出せますわ……!」

リィンの言葉に続くように仲間達もそれぞれ心強い言葉を男爵に送った。



「ふふ、そうですわね。皆様ならばきっと成し遂げられるはずですわ。」

「やれやれ、ちょっとお気楽すぎると思うけどね。でも……Ⅶ組の残りもメンフィルの皇女達を除けばいよいよ3人になったわね。多分、エマもその中に―――」

「ああ、レグラム方面にきっといるはずだ。必ず無事に再会しよう……!」

「うむ……私もそれを祈っている。どちらにせよ、明日はゆっくり休むがいい。話を聞く限りでは、すぐに出発できるわけがないのだろう?」

リィンの言葉を聞いたシュバルツァー男爵はリィン達に尋ねた。



「ヴァリマールの回復を待たないといけないんだよね。」

「ああ、多分回復するまでまた1日はかかってしまうだろう。すぐにでも出発したいけど……明日は休息を取るしかないな。」

「ええ、それがいいでしょう。」

「郷の守りについても改めて確かめておくか。」

「父様ッ!」

今後について話し合っていると、エリゼが慌てた様子で部屋に入って来た。



「エリゼ……!?どうしてここに……」

「先程母様から父様が目覚めた件を知らされたリウイ陛下から知らされた際、リフィアの許可を取って急遽帰省したんです。それより無事で何よりです、父様……!」

驚いているリィンに説明したエリゼは安堵の表情でシュバルツァー男爵に話しかけた。

「エリゼ……お前にも心配をかけてすまなかったな。それにリフィア殿下にも気を遣わせてしまったな…………」

エリゼに話しかけられたシュバルツァー男爵が苦笑したその時

「フフ、リフィア殿下は民だけでなく家臣達にもとてもお優しい方ですから、どうかお気になさらないで下さい。」

一房に纏めたエメラルドグリーンの髪を腰までなびかせ、白銀の鎧を身にまとった誰もが見惚れるような美しい容姿を持つ可憐な女性騎士が部屋に入って来た。 
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