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無慈悲

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1部分:第一章


第一章

                          無慈悲
 正義の戦士と言われている。一応は。
 ドイツ軍、それも戦前のそれから何故か自衛隊に入っているハルトマン大佐はサイボーグである。軍服は当時のドイツ軍のものだ。
 そのジャーマングレーの軍服で自衛隊の基地で教育隊の教官をしている。その彼はというと。
 常にだ。規律を乱す隊員達に対して。
「ファイエル!」 
 手を外すとそこからミサイルだ。それで吹き飛ばし燃やしてしまう。
 他には指から高圧電流、足からもミサイル、目から冷凍ビーム、腕を回転させるとそこから新体操のリボンを思わせる形のビームが出る。
 空を飛び手足が伸びる。その彼はだ。
 規律に厳しく正義感が強い。人格的には問題はないように思えた。
 しかしだ。些細なことでだ。
 いきなり飛んで来てだ。右手を外し」
 火炎放射でだ。新入りの隊員達を燃やしお仕置きにする。まさに鬼教官だった。
「ここ、自衛隊だよな」
「ドイツ軍じゃねえぞ」
「大体何で自衛隊に戦前のドイツ人がいるんだよ」
「しかもサイボーグなんてよ」
 このこと自体がだ。謎だった。
 しかし彼はいてだ。それでだ。
 新入りの隊員達をしごきにしごいている。あまりにも厳しい。 
 そしてそれはだ。基地の外でもだった。
 街でだ。女の子が絡まれているとだ。
 例え百キロ程離れててもだ。それでもだ。
 百キロ先の針の落ちる音すら聞こえる耳で察知してだ。そのうえで。
 ワープしてだ。一気に女の子に絡んでいる不良達の前まで来てだ。
「止めろ」
「何だ手前は」
「何者だ?」
「只の軍服マニアか?」
「馬鹿かこいつ」
「馬鹿と言う奴は許しはしない」
 その言葉に即座に反応してだ。彼は。
 腕を伸ばして。目の前の不良を一人殴り飛ばしてしまった。
 そしてだ。さらにだ。
 高圧電流にだ。ミサイルでだ。不良達を一掃してしまった。それが終わってからだ。空を飛び基地へと颯爽と戻っていったのである。
 それを聞いてだ。基地司令はだ。
 そのハルトマンを自室に呼んでだ。困った顔で言うのだった。
「あの、ハルトマン一佐」
 自衛隊の階級では彼はこうなる。尚陸自所属だ。
「またですか」
「何かありますか」
「あります。街の不良達をですね」
「懲らしめてやりました」
 まさにだ。彼にとってはそれだけだった。
「悪事を働こうとしていましたので」
「それはいいのですが」
「なら問題はありませんね」
「あります」
 司令は困った顔で彼に言う。青い目に金髪、高い鼻、堅苦しい表情のだ。如何にもドイツ軍人のだ。彼に対して言ったのである。
「全く。何といいますか」
「不良はゴミです」
 ハルトマンは言い切る。
「ゴミを掃除しただけです、それに」
「それに?」
「殺してはいません」
 それはしていないというのだ。
「ただ懲らしめただけです」
「全員全治六ヶ月ですが」
「大したことはありません。戦場では死ぬことは普通ですから」
「今日本は戦争中ではありませんが」
 それを言う司令だった。司令にしてみれば当然のことだ。
「ですから。確かに女の子を助けたのはいいですが」
「少なくとも間違ったことはしていません」
「やり過ぎです」
 司令の言いたいことはまさにそれだった。
 
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