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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第四話 スカウト

試験の終了、なのはとの再会。

そして現れた超大物。アスカは選択を迫られる事になる。

魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





アスカside

OK、オレ。まず落ち着こう。まだ慌てる時間じゃない。

とりあえず状況整理だ。

試験終わりました。高町一尉と再会しました。

んで待機場所で待っているようにって言われて、じゃあシャワーでも浴びてから待ち合わせようってスバルとティアナと一旦別れて……

シャワー終わってから外にで出たら、すんごい形相したティアナに首根っこ掴まれて引きずられて今に至る。

うん、全然わからない。今の状況が。

それも当然だろう。

何故なら、八神はやて二等陸佐に、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官が目の前にいるのだ。

オレでなくても分からないだろう。

隣に座るスバルとティアナも、なぜ呼ばれたのか分からなくて不安そうな顔をしている。

テーブルを挟んで、対面に八神二佐とハラオウン執務官。二佐の肩にちょこんと腰を掛けているのは、試験官でもあったリインフォース・ツヴァイ空曹長だ。

よく見ると、曹長と二佐の髪留めに使っているバッテンがお揃いのように見える。

……もしかして、家族か?

という事は、リイン空曹長は八神二佐のユニゾン・デバイスなんだろうな。

まあ、それはそれとして、コッチ側にオレ、スバル、ティアナの順番で座っている。

オレ達が緊張しているのを見てか、ハラオウン執務官がにこやかに話しかけてきた。

「そんなに固くならなくていいよ。ちょっと聞いてもらいたい事があるだけだから」

なんか、聞いてると安心する声だ。

さすが、犯罪者が希望する捕まりたい執務官No.1。

「君達は、今の管理局の体系に疑問を持った事はないかな?」

おっと、いきなり大きな事を言ってきたな。さすが執務官。

要約するとこうだ。

今から四年前にミッドチルダで起きた航空火災事故。

実習中だった八神二佐とリイン曹長が臨時に現場指揮をとって事態の収集に動いていたが、連絡のやりとりとか、命令系統がメチャクチャで思うように動けなかったらしい。

当時、八神二佐の元に遊びにきていた高町一尉とハラオウン執務官が現場を手伝って、やっとまともな救助活動に移れたとの事だが、一歩間違っていれば、沢山の犠牲者を出していたかもしれなかった。

その時に、高町一尉に救出されたのがスバルだったとの事。

スバルは高町一尉に憧れて入局したって言っていたが、それはまた別の話とティアナに窘められていた。

まあ、それはそれとして、その時感じた時空管理局の対応の遅さ。

組織が大きい分、フットワークの無さを、八神二佐は感じたらしい。

確かに、組織が細分化し過ぎている上に役割が被っている部署もある。

まあ色々しがらみがあるから、そう簡単に組織改革なんできないよね。

そこで、八神二佐は自分の部隊を作ろうと決心したらしい。

四年掛かったが、何とかそれを現実の物にできる所まできた。

熱く語る八神二佐は……何というか、まっすぐで綺麗だった。

八神二佐が設立する部隊名、それが……

「「「時空管理局本局遺失物管理部機動六課」」」

オレ達三人の声がそろう。

その内容は、レリックと呼ばれるロストロギアの捜索と対策を専門に行うらしい。

レリックって初めて聞いたけど、厄介な事が多そうな仕事だな。

そこで、一つの疑問が浮かび上がる。

何でそんな話を、オレ達に?

「で、スバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士、アスカ・ザイオン二等陸士」

一通りの説明を終えた八神二佐がオレ達を見る。

「「「はい」」」

どうやら、何でそんな話を聞かせたのかの答えを教えてくれるらしい。

「私は、三人を機動六課のフォワードとして迎え入れたいと考えている」

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

…………驚いたってレベルじゃないぞ。

突然の事に、スバルとティアナも戸惑っている。そりゃそうだろう。

さっきまで試験してたのに、その結果も出ない内にスカウトなんてどうかしている。

いや、さっきの試験をどこかで見ていて、それで引っ張ろうと判断したと考えるのが普通か?

こっちが驚いているのを余所に、八神二佐が話を続ける。

「厳しい仕事にはなるだろうけど、濃い経験は積めると思うし、昇進機会も多くなる。どないやろ?」

どない言われましてもね。オレは昇進に興味無いし。

と思って隣を見ると、スバルもティアナも何て言ったら良いのか困った顔をしていた。

唐突すぎるから無理もない。

すると、今度はハラオウン執務官が話してきた。

「スバルは高町教導官に魔法戦を直接教われるし、執務官志望のティアナには、私で良ければアドバイスとかできると思うんだ」

その言葉に、スバルとティアナは顔を見合わせる。

まあ、スバルは高町一尉に強い憧れを持ってるから、この話を受けるのに問題はないわな。

ティアナも執務官志望なら、現役から直接指導してもらえるチャンスだから断る事もないだろう。

オレも別にいいんだけど、一つ気になる事がある。

「アスカも攻撃魔法が苦手みたいだけど、防御魔法を生かした魔法戦技を覚える事ができると思う……」

「ちょっと待ってもらえますか?」

オレはハラオウン執務官の言葉を遮った。普段ならこんな事しないよ?

はっきり言って相手は格上。その話を途中で切るなんて失礼でしかない。

だけど、この大物二人がどの程度の認識をしているのかを見極めなきゃならない。

「スカウトと言えば聞こえはいいですが、八神二佐のやっている事は引き抜きです。

どの部隊でも、引き抜きがあったとなればメンツの問題になります。要らぬ恨みをかう事になるのでは?」

そう。

スカウトを受けると言うのは、今いる部隊から抜ける事だ。

総じて、以前の部隊は待遇が悪いと周りからは見られる。

そうなれば、その部隊はいい恥さらしだ。隊員に逃げられた部隊として汚名を被る可能性もある。

「ちょっ!」「なに言い出すのよ!」

最初に反応したのはスバルとティアナだった。っていうか、おまえ等考えてなかったのかよ。

「黙ってろ」

オレは二人を制して、八神二佐の目を見た。





はやてside

「ちょっ!」「なに言い出すのよ!」

隣に座っていたスバルとティアナが慌ててアスカ君を止めようとしたけど

「黙ってろ」

二人を軽く制して、私の目を見つめてきた。

この子、結構やるなあ。

このくらいの年頃なら、部隊のメンツ云々って気にかけない子が多いのに。

しかも、それを本気で言っていない。どれだけの覚悟があるのか、私に揺さぶりを掛けてきたんや。

私は、アスカ君の視線をしっかりと受け止めた。

「その恨みは私が受け止めるよ。私には、その責任と義務がある」

目を逸らさずに、私は答えた。

さあ、どうやろ?





outside

「その恨みは私が受け止めるよ。私には、その責任と義務がある」

はやてがアスカの目を見て答えた。

「……」

その目は、淀みも動揺もない、まっすぐな目だった。

そこまでの覚悟はできていると言う事だろう。

「おみそれしました」

アスカは両手を上げた。

「ふふ、面白い子やなあ」

はやては、臆面なく上官を試す行動に出たアスカを頼もしく感じた。

普通なら常識知らずと叱責する所だろうが、それを受け入れる懐の深さを、はやては持っていた。

「えーと、取り込み中かな?」

そこに、試験結果を持ってきたなのはがやってきた。

「平気やよ」

はやては席を詰めて、なのはの座るスペースを確保する。

「とりあえず、試験の結果ね」

はやての隣に腰を下ろしたなのはが、三人を見る。

「まずは、アスカ君」

「え?あ、は、はい!」

(まずは?オレと二人の結果は違うのか?)

一抹の不安を覚え、緊張がぶり返すアスカ。

そんなアスカを見て、なのはは安心させるように微笑む。

「前回、前々回の資料から見ても、今回は積極的に攻撃に行ってるね。
攻撃力は難ありだけど、それを補うだけの防御力と機動力。
状況判断も及第点に入っている。
特に評価されるのは、大型スフィアのバリアを対消滅させた事だね。
よくあんな手を思いついたね」

スラスラと試験内容の結果を読み上げるなのは。

(今のところは好感触……でも)

まだ油断はならないと身構えるアスカ。さすが二回も落ちていると、合格発表でぬか喜びをしないように用心する。

「最後の危険行為は、ゴール後のチームメイトを助ける為の行動だけど、これは減点対象です。
仲間を助けに行って、自分が怪我をしては意味が無いからね」

「はい……」

(やっぱり素直には行かないか……何かしら足を引っ張るな)

苦い表情になるアスカ。

最後の暴走の当事者であるスバルとティアナも、バツの悪そうに俯く。

「でも、あのまま二人を見捨てていたら、個人的にはどうかな?って思ってたけどね」

二コッと笑うなのは。

「え?」

(どういう事?)

困惑するアスカに、なのはは試験結果を言い渡した。

「アスカ・ザイオン二等陸士。合格です、おめでとう」

一瞬ポカンとしたアスカだったが、ハッとなって立ち上がり、敬礼する。

「ありがとうございます」

意外と落ち着いた声だ。それ程喜んでいるようには見えない。

『ねぇ、ティア。アスカ、あんまり嬉しそうじゃないよね?』

スバルが念話でティアナに話しかける。

『すぐに理由は分かるわよ、たぶんね』

試験だけのチームメイトだったが、その僅かな時間でティアナはアスカと言う少年がどういう人物か分かったような気がした。

(基本的に優しいのね。気をつかっている)

恐らく自分達は不合格だろう。アスカもそれを察している。

だから喜べないのだ、とティアナは思った。

「はい、じゃあ座って。それで、スバルとティアナだけど…」

なのはが、スバルとティアナに向き直る。

アスカはその二人の隣に静かに座った。

「二人とも技術はほぼ問題無し。でも、危険行為や報告不良は見過ごせるレベルを超えています」

なのはは厳しい表情で二人に伝えた。

スバルとティアナは見るからに沈んで行ってる。

「自分やチームメイトの安全だとか、試験のルールを守れない魔導師が人を守るなんて、できないよね?」

「はい……」

ティアナが落ち込んだように答える。

厳しい言葉だが事実だ。何も反論できない。

「だから残念ながら、二人とも不合格……」

「待ってください!」

アスカが唐突に割り込んできた。

「な、何かな?アスカ君」

突然の事に驚くなのは。他のみんなも目を丸くしている。

「今回、自分が合格できたのは、スバルとティアナがいたからです。高町一尉の仰っている事はわかりますが、それでは納得できません!」

「ちょっと、アスカ!」「なに言ってるのよ!」

スバルとティアナが慌ててアスカを抑えようとする。

「なに考えてんのよ!やっと合格したんでしょ!アンタはそのまま合格しときなさい!」

「そうだよ、アスカ!私たちは半年後にまた頑張るから!それに、ルール違反したのは私なんだからさ!」

ティアナが叱りつけるように言い、スバルがアスカをなだめる。

「だけどさ!オレは二人の力を借りて合格したようなもんだろ!なのに、スバルとティアナが落ちて、オレ一人だけのうのうと合格なんかできるか!」

そう言って、アスカはなのはに目を向ける。

「二人がいなければ、自分の合格はありえません!」

「ちょっ、落ち着いてね、アスカ君」

なんとか宥めようとするなのはだったが、アスカは止まらない。

「不合格を合格にしろとは言いません……自分の合格を取り消してください!」

「「「「「「んな!」」」」」」

とんでもないアスカの言葉に、スバル、ティアナは勿論、はやて、フェイト、リイン、そしてなのはが絶句する。

一呼吸おいて、

「何バカな事言ってんのよ!アタシ達に同情でも掛けてるつもりなの!?」

ティアナが立ち上がってアスカを怒鳴りつける。

「そんなんじゃねぇよ!オレはチーム力で合格したって言ってんの!一人でも不合格なら、チーム全体が不合格だろ!」

アスカも立ち上がって応戦する。

「格好つけてんじゃないわよ!三回目でやっと合格したくせに!アタシとスバルなら、次で合格できるから、余計な気を使わなくてもいいわよ!」

「お前らが不合格で素直に喜べるか!」

ドンドンヒートアップしていく二人。周りが完全に見えなくなっている。

そのアスカとティアナに挟まれたスバルはアワアワとしていた。

「や、やめなよ~、なのはさん達の前だよ?」

スバルの言葉に、アスカとティアナはハッとして顔を見合わせて赤くなった。

「も、申し訳ありません!」

「失礼しました!」

二人はサッと敬礼して謝罪する。

「あはは、落ち着いたかな?とにかく座ってね?」

「「はい…」」

真っ赤な顔をして、アスカとティアナは腰を下ろした。

「試験結果の変更はあり得ません。スバルとティアナは不合格です……が」

なのはが言葉に含みを持たせる。

「二人の魔力値や能力を考えると、次の試験まで半年間もCランク扱いのしておくのはかえって危ないかも、と言うのが、私と試験官の共通見解」

そう言ってなのはは、スバルとティアナに封筒と書類を差し出した。

「と言う訳で、これ。特別講習に参加する為の申請用紙と推薦状ね」

「「?」」

ポカンとしてなのはを見るスバルとティアナ。

「これを持って、本局武装隊の特別講習を三日間受ければ、四日目に再試験を受けられるから」

「え?」

スバルが書類となのはを交互に見る。

「あ……」

ようやく合点が要ったのか、ティアナがハッとしてなのはを見た。

「来週から本局の厳しい先輩達にしっかり揉まれて、安全とルールをよく学んでこよう?そうしたら、Bランクなんてきっと楽勝だよ、ね!」

優しく微笑むなのは。

スバルとティアナの顔に元気が戻ってくる。

「「「ありがとうございます!」」」

スバルとティアナ、それになぜかアスカまで頭を下げた。

はやてがその様子を見て言葉を挟む。

「ま、アスカ君は別として、二人は合格までは試験に集中したいやろ?私への返事は試験が済んでから、って事にしとこうか?」

「「すみません!恐れ入ります!」」

二人は立ち上がって敬礼する。

(どうやら、良い方向へ話は転んだようだ)

アスカは安堵の表情を浮かべた。





アスカside。

スバルとティアナが席を立ち、ドサマギで離脱しようとした所を八神二佐に腕を掴まれて、

「君はまだ話があるんよ?」

と着席させられてしまったオレ。

高町一尉と、ハラオウン執務官、リインフォース・ツヴァイ空曹長も残っている。

なんだ、この状況。

冷や汗をかきつつ、オレは上官軍団を見る。

いや~、美人さんばっかだ。

こんだけの美人に囲まれてるなら、保険の勧誘なら余裕でハンコ押してるね。

などと下らない事を考えているオレに、八神二佐が遠慮がちに話しかけてくる。

「アスカ君にも考えて欲しいんよ。今すぐと言う事ではないんやけど」

一応、気は使ってくれているらしい。

二佐クラスが直々にスカウトにくるって事は、即答を求められているのが普通だ。

でも八神二佐は、どうやら考える時間をくれるらしい。

「……できるだけ早く、の方がいいんですよね?」

「まあ……できれば、なんやけどね」

たかが二等陸士に気なんか使わなくていいのに、八神二佐はコッチの事情に配慮してくれているようだ。

こんな人が上にいてくれるなら、オレの答えは決まっている。






はやてside

「まあ……できれば、なんやけどね」

私の答えを聞いて、アスカ君は腕を組んで考え始めた。

まあ、無理もないやろ。

どんなに言葉を並べてみた所で、私のやっているのは引き抜き。

これをやられて気分の良い部隊は……まあ、ないわな。

スバルとティアナに関しては事前に話が出来ていたし、先方が理解ある方だったので問題なくスカウトできるけど、099部隊は正直分からない。

スカウトが原因で、099部隊とアスカ君との間に溝ができる事を心配してるのかもしれへんな?

「スカウトに関してはアスカ君に迷惑がかからないようにするし、一年の期間限定やから希望があれば元の部隊にも戻れるようにします。何か心配事があるなら、できるかぎり対処するから言うてくれへんかな?」

上に立つ者として、下に来てくれる人の不安を払拭できないなら上に立つべきではない。

アスカ君のスカウトを成功させるのは、言わば私自身に対する試金石みたいなものや。

「あ……恐縮です。自分では、もう答えは出てます」






アスカside

「あ……恐縮です。自分では、もう答えは出てます」

オレは立ち上がって八神二佐に敬礼する。

「アスカ・ザイオン二等陸士。このスカウト、受けさせていただきます」

下っ端のオレにここまで気を使ってくれる人なら、ついて行っても嫌な事はないだろう。

勿論、部隊になったら別って事もあるけど……なんとなく、八神二佐は信じて大丈夫と思った。

オレがOKを出すと、八神二佐も立ち上がって敬礼を返してきた。

「ありがとう、アスカ君。感謝します」

嬉しそうに笑う八神二佐。あ、カワイイ……っと、見とれてちゃいけないな。

「あー、ただ、うちの部隊長を説得しなくてはいけないのですが……」

当然、スカウトを受けましたーって言って素直に認める訳がない。

メンツどーだのこーだの言うのが目に見えている。

このお三方の協力があれば楽勝なんだけど……怒られるかな?

「説得は私の仕事や。まかしてや」

意気込む姿もカワイイ八神二佐。

「それにはおよびません。説得するのは簡単なんですが……その……」

さすがにお願いし辛い。

上官だし、間違いなく新設部隊では上司に当たる人たちに、あのお願いは……

「?」

オレが言辛そうにしていると、八神二佐、高町一尉、ハラオウン執務官が首を傾げた。

このままって訳にもいかないし……えぇい!腹をくくってお願いするか!

「うちのオヤジ……いえ、部隊長を説得するのに、あるアイテムが必要なんですよ」

「「「アイテム?」」」

お三方の声が綺麗にハモる。

「はい。それには、八神二佐、高町一尉、ハラオウン執務官に協力していただかなくてはいけないのです」

「私たちの……」

「協力?」

オレの言葉に、高町一尉とハラオウン執務官が顔を見合わせる。

ああー、美人同士が顔を見合わせるって色々妄想が……ゲフンゲフン!

「私らでできる事なら協力するで。言うてみてや」

ドン、と八神二佐が胸を叩く。

む、意外と大き……ゲフンゲフン!

と、とにかく、オレは怒られるかもしれないお願いを炸裂させた!

「では遠慮なく……みなさんのスリーショットを撮らせてください!」

………

「「はい?」」

少しの間をおいて、八神二佐とハラオウン執務官が聞き返してきた。

ただ、高町一尉だけはオヤジと面識があるから「あー」って言っている。

「その写真があれば、間違いなくスンナリといきますので、ぜひ!」

深々と頭を下げる。

……さすがにドン引きしているみたいだな。特にハラオウン執務官が。

「まあ、写真くらい良いよね、はやてちゃん」

おっと、高町一尉が助け船を出してくれた。

エッと驚く執務官。

「えーと、それで本当に円満に行くん?」

半信半疑で八神二佐が聞いてきた。

「間違いなく了承を得られます!」

ここはもう一押し。その為に自信満々に答えるオレ。

ちょっと額を押さえて悩んでいる二佐。

悩みますよねぇ……オレならふざけてるのかって怒る所だし。

でも、覚悟を決めたように、八神二佐はウンと頷いた。

「分かった。ええよね、なのはちゃん、フェイトちゃん?」

……頼んでおきながら何だけど、この人、器でかいな。

「いいよ」

即答アザース、高町一尉。

「まあ、それで上手くいくのなら……」

執務官はまだ釈然としない感じだったけど、了承してくれた。

「では、早速」

オレは懐からスマホを取り出して、カメラを起動する。

「えー、八神二佐を真ん中に、高町一尉は右、ハラオウン執務官は左でお願いします」

撮るとなったら即行動!オレはテキパキとポジションを決めて指示を出す。

「アスカ君、あんまり管理局員然としてない方がいいよね?」

さすが高町一尉。事情を知ってるだけによく分かってらっしゃる。

「はい、あのオヤジですから」

苦笑しつつオレは答えた。まあ、事実だしね。

何の事だかわからない八神二佐とハラオウン執務官は戸惑っているみたいだけど、観念してフレームに収まってくれた。

「高町一尉、ハラオウン執務官、もう少し八神二佐に寄ってください……そうそう……ハラオウン執務官、もうちょっと自然な感じで笑ってもらえますか?あ、そうそう!じゃあ、行きます。はい、チーズ!」

パシャリ!

決まった……いい手応えだ。

オレは今撮ったばかりの写真を確認する。

いい……実にいい!管理局三大美女のスリーショット、間違いなくお宝写真だ!

「はい、綺麗に撮れました」

オレはそれをお三方に見せる。

「ほう……中々ええ腕してるね、アスカ君」

やった、誉められた。

「ありがとうございます!では、これより099部隊隊長に連絡をとり、了承を得たいと思います!」






outside

「え?今すぐ??」

フェイトが驚いて声を上げるが、すでにアスカはスマホで連絡をとっていた。

「おう、オヤジ。は?バカ言えよ!今回はオレの勝ちだ!わっはっはっ!」

突然笑い出したアスカに、ビクッとなるなのはとはやて。フェイトなど、一歩後ずさっている。

「あぁ、分かった分かった、買って帰るよ。それより大事な話がある。今度新設される部隊の事は知ってるか?……噂程度?そう、それ。そこの部隊長さんにスカウトされてな、受けようと思って……」

そこまで言ってアスカはスマホを耳から離した。

「なんだと!馬鹿野郎!てめえ何考えてやがる!ホイホイ引き抜かれるたぁどういう事だ!」

大音量の怒声がスマホから流れる。これを予想してスマホを離したのだ。慣れたものである。

「わー、ハンズフリーだね」

「「あ、あはは」」

フェイトのズレた感想に、なのはとはやてはただ笑うばかりだ。

そんな三人のやりとりに気づかず、アスカはスマホとやりあっている。

「うるせえ!今から上司になる人の写真送るから見やがれ!」

ピッと写真を送信するアスカ。

(大丈夫だったのかな?写真なんか撮らせて…)

今更ながら、不安になるフェイト。

次の瞬間、あれ程うるさかったスマホがピタリと静かになった。

いや、よーく耳を澄ますと小さく”神…神…神…”とスマホの向こうから微かに聞こえてくる。ちょっと怖い。

再びスマホを耳に当て、話を進めるアスカ。

「おう、見たな?納得したか?」

何を納得したのかとフェイトは思う。

「そう、高町一尉は一ヶ月前にお会いしてるよな。うん?ああ、いるけどさぁ……ちょっと待て」

何やら話していたアスカがスマホを離してはやてに向き直る。

「申し訳ないのですが、うちのオヤジ……いえ、部隊長が皆さんに挨拶したいと言っていて、一言もらえませんか?」

アスカの申し出に、ギョっとするはやてとフェイト。

その様子を見て、なのはが苦笑する。

「大丈夫だよ。あの部隊長さん、女の子には優しいから。私から行くね?」

なのはがアスカからケイタイを受け取る。

何やら楽しげに話し、フェイトに回す。

緊張した面もちで話すフェイトだったが、すぐににこやかになる。

「アスカ君、キミの所の部隊長さんは、大変わかりやすい人物のようやね?」

「はい。恥ずかしいくらいにわかりやすいです」

ヤレヤレ、と肩をすくめるアスカ。

最後にはやてが話をして、円満にスカウトの了承を得た。

「これで一安心や」

ホッとした様子で、はやてはアスカにスマホを返す。

「美人さんと話す機会が少ないから、挨拶に格好つけて皆さんと話したかっただけです。申し訳ありませんでした」

何ともいえない微妙な表情でアスカが謝る。

「キミも上手やな、アスカ君。でも、これで晴れてアスカ君は機動六課のメンバーや。よろしくな」

はやてが右手を差し出す。一瞬戸惑ったアスカだったが、すぐに自分も右手を出してはやての手を取る。

「はい!よろしくお願いします!」





アスカのスカウトが上手く終わり、はやてとフェイトはなのはと別れて廊下を歩いていた。

「でも、ちょっとビックリしたかな?アスカの部隊って」

フェイトが先ほどの騒ぎを思い出す。

「あはは、まあ男所帯って事やから、私らの常識外の事もあるんよ、きっと」

はやては笑いながら、窓際から眼下の芝生に目をやる。

見ると、そこにはスカウトをしたスバルとティアナが、仲良くじゃれていた。

……ティアナがスバルの頬を引っ張っているように見えるのは、気のせい……じゃないだろう。

「あの二人も、入隊確定だね。これから忙しくなるね」

フェイトがじゃれ合っているスバルとティアナを見てそう言う。

「そうやね。あとの二人も近々合流予定やし、色々にぎやかになっていくなあ」

どこかノンビリとした感じのはやて。だが、頭の中は部隊設立に向けた段取りで一杯になっている。

「でも……なのはは、アスカのどこを見てスカウトしようって思ったんだろ?」

フェイトが疑問を口にする。

アスカの攻撃力は、スバルやティアナと比べても格段に劣る。

「ん~、まあ、何か考えがあっての事や。案外、突拍子のない事をしでかす子かもしれへんし、何より度胸がいい。私は結構気に入ったよ」

自分を試した少年に、はやては何か強いエネルギーみたいな物を感じていた。





一言余計なスバルを散々ひっぱたいた後に、ティアナは上着のポケットに何か入っているのに気づいた。

「あ……しまったぁ」

それは、黄色いバンダナだった。試験の時、アスカが捻挫の応急処置で巻いてくれたものだ。

「返すの忘れてたの?」

「うん、どうしよう……」

ティアナが困った顔をした。

「大丈夫だよ、ティア。六課で返せばいいよ」

「六課って、アイツがくるかも分からないのに?」

「くるよ、絶対に」

やけに自身のあるスバル。

「……聞くだけ無駄だろうけど、その根拠は?」

「無い!」

「即答するな!」

ペシンとまた頭をひっぱたくティアナ。

「いたた……でも、きっとくるよ、アスカは。だから、私たちも」

スバルが拳を握る。

「そうね、必ず合格して、アイツの前に立ってやるわ」

コツン、と拳を合わせる二人。

後日、二人は最高得点で試験を合格した。 
 

 
後書き
以前のを手直ししながらのアップなのに、3時間くらいかかります。

アスカのバンダナはフラグですね。何のフラグかな~(棒) 
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