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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第26話

12月5日―――――



前日の休息日でしっかりと疲れを癒したリィン達は男爵邸の前で集合していた。



~温泉郷ユミル~



「さてと……それじゃあ出発だね。今回も騎神の力を借りていくんだよね?」

「ああ、”精霊の道”を使おう。騎神の霊力もそろそろ復活しているはずだ。」

「一日たっぷり休んだし大丈夫なはずよ。アンタたちも疲れなんか残してないでしょうね?」

「ん、バッチグー。」

「はい。温泉で疲れを癒す事もできましたから、むしろ身体が軽いくらいですわ。」

「うっ…………」

セリーヌの問いかけにフィーと共に答えたセレーネの答えを聞いた瞬間休息日に男湯でセレーネとした情事を思い出したリィンは思わず表情を引き攣らせた。



「おかげさまで万全だ。って、そういえばトヴァルさんたちは?」

「確か朝早くにお出かけになっていたようですが。」

トヴァルとクレア大尉がいない事に気付いたマキアスの問いかけにルシア夫人が答えたその時

「悪い、遅刻したみたいだな。」

トヴァルとクレア大尉が2人に近づいてきた。



「二人とも、どちらへ?」

「はい、郷の守りの最終確認を。昨日の時点で通信設備も整いましたから、念の為に動作を確認していました。」

「とりあえずは問題なく使えそうだな。今後は第四機甲師団や鉄道憲兵隊方面とも連絡していけるだろう。」

「そうですか……ちょっと安心しました。」

「後はメンフィル帝国が派遣する郷の防衛部隊が到着するまでに何もなければいいのですけどね……」

「そうだな……」

クレア大尉とトヴァルの話を聞いたエリオットは安堵の表情をし、セレーネの言葉にリィンは静かな表情で頷いた。



「ですが……トヴァルさんとも話し合ったのですが。やはり、このまま全員で別の地方に向かうのは若干の不安が残ります。郷の守備のためにも、何人かはこちらに残るべきでしょう。」

「あ……」

「確かに言えてるかも。」

「以前の”魔煌兵”の時のように、わたくし達が郷を離れている隙に再び襲撃があるかもしれませんわね……」

「騎神で向かうにしても大所帯だと目立ちますしね。少なくとも、トヴァルさんかクレア大尉のどちらかには残ってもらうべきかもしれません。」

クレア大尉の説明を聞いたリィン達はそれぞれ真剣な表情で考え込んだ。



「ああ、俺達も同じ考えだ。どうわけるかは考える必要がありそうだが……」

「ま、とりあえず渓谷の最奥地点までは一緒にいきましょ。それまでにメンバーの分け方を考えときなさい。」

「そうだな、さっそく出発しよう。それでは行ってきます、母さん。」

「ええ、いってらっしゃい。皆さんもどうかお気をつけて。無事に帰ってきてくれるのをここでお待ちしていますから。」

「はい……!」

「それじゃ、出発だね。」

その後リィン達は渓谷道のヴァリマールが待機している場所まで向かった。



~ユミル渓谷道~



「さてと、騎神の元に辿り着いたわけだが。」

「……まだ寝てる?」

「ああ、そうみたいだな。―――ヴァリマール!俺の声が聞こえるか!?」

「休眠状態ヨリ復帰―――再起動(リプート)完了。―――”起動者”及ビ”準契約者”タチノ波形ヲ感知。」

リィンの呼びかけに応えるかのように休眠していたヴァリマールは目覚めて報告した。



「ん、霊力は十分に戻っているみたいだわ。」

「はあ、やっぱりすごいなあ……」

「ハハ、さすがに俺は少しだけ慣れてきたが。さて、それじゃあ今回はどこに向かうんだ?」

「まず、プリネさん達以外のみんなの居場所をもう一度確認しておきましょう。ヴァリマール、ケルディック以外のみんなの現在の居場所はわかるか?」

「再建策スル―――”けるでぃっく”を除イタ残ル”準契約者”ハ北東”のるど”方面ニ3名――――南南東”れぐらむ”方面ニ3名―――イズレモ生体反応ニ異常ナシ。」

リィンの問いかけにヴァリマールは淡々と答えた。



「そうか……」

「………なんとかまだ無事みたいね。」

「あはは……僕が無事だったくらいだし。」

「とりあえず一安心。」

「はい……早く皆さんと合流したいですわね。」

「ああ、そうと決まれば急いで向かいたいところだな。どちらもここからはそれなりに距離があるが……」

「距離的にはノルド高原のほうがいくらか近かったはずだ。今回はこちらに行ってみないか?」

マキアスが行き先に考え込んでいるとリィンが提案した。



「ガイウスの故郷か……いいかもしれないね。」

「ああ、異論はないぞ。メンフィル帝国領と同様外国だから、ある意味内戦とは無縁かもしれないしな。」

「もしかしたらケルディックの時のように、案外早く合流できるかもしれませんわね。」

「どうだろ……大尉は何か情報を掴んでたりしない?」

行き先について仲間達が明かるい表情をしている中、フィーは真剣な表情でクレア大尉に尋ねた。



「いえ、鉄道憲兵隊もさすがに手が回っていない場所です。ただ、あちらには帝国軍の精鋭である”第三機甲師団”が駐屯していました。ノルティア領邦軍との間で戦闘が起こっている可能性は高いかもしれません。」

「確かに……警戒は怠れないだろうな。どうする、それでも行くか?」

「はい、どちらにしろ危険を避けては通れません。何より、そこに”Ⅶ組”の仲間がいる――――躊躇う理由はないでしょう。」

「リィン……そうだな。」

「うん、他のみんなにもリィンの無事を伝えてあげたいしね。」

「リスクを負うには十分の理由。」

「お兄様が行く所は例え火の中、水の中であろうとついていく所存です。」

「じゃ、行き先はノルド方面で決まりね。いつでも”精霊の道”を開く準備はできてるわ。とっとと同行者を選んでちょうだい。」

そしてリィンは同行者にセレーネ、エリオット、クレア大尉を選んだ。



「―――それじゃあ、行って来る。郷のことはよろしく頼んだぞ。」

「ああ、こっちのことは僕達に任せてくれ。」

「ん。何かあっても、わたし達が絶対に何とかする。」

「遊撃士の名に賭けて郷の守りは万全に固めさせてもらうさ。そっちも気を付けてな。」

「はい……!なんとかみんなと合流して絶対に無事に帰ってきます!」

「わたくし達のことはどうか心配なさらずに、マキアスさん達は郷の防衛に集中してください。」

郷に残る仲間達に声をかけられたエリオットとセレーネはそれぞれ決意の表情で答えて仲間達を見つめた。



「では、出発しましょう。ノルド高原は広大です。気を引き締めていきましょう。」

「それじゃあよろしく頼む、セリーヌ。」

「了解したわ。―――ヴァリマール、準備はいい?”精霊の道”を開くわよ!行き先は北東―――ノルド高原!」

「承知した―――残存スル霊力ヲ展開―――”精霊の道”ヲ起動スル―――」

そしてリィン達はトヴァル達に見送られ、ヴァリマールの”精霊の道”によって”ノルド高原”に向かった。


”精霊の道”によってノルド高原へと転移したリィン達はかつてミリアムと出会い、戦った場所である石柱群に到着した。



~ノルド高原~



「う……ここは………?」

「あれは石柱……でしょうか?」

ノルド高原に到着したエリオットとセレーネは初めて見る光景に興味深そうに見回していた。

「どうやら……着いたみたいだな。高原南部にある石柱群――――以前、ミリアムと初めて会った場所に出て来たか。」

「あ、そうなんだ。」

「確か……会って早々戦闘になったとお聞きしましたが……」

リィンの説明を聞いたエリオットとセレーネは目を丸くし

「ふふ、ミリアムちゃんから話は聞いています。」

クレア大尉は苦笑しながら言った。



「けっこう高い場所だから外からは死角になってそうね。ヴァリマールが見つかる心配はそこまでないはずよ。」

「ええ、大丈夫でしょう。ふふっ、それにしてもこの光景は素敵ですね。私も仕事柄、帝国内の色々な場所を見ていますが……」

「まさしく絶景ですわね……こんな素敵な光景、初めて見回したわ……」

「前に、リィン達はこんな場所に来てたんだね……」

初めて来るノルド高原の光景にクレア大尉やセレーネ、エリオットはそれぞれノルド高原の絶景に見惚れた。



「よし―――そろそろ行こう。とにかく、Ⅶ組のみんなの手かがりを探さなきゃならない。北にあるノルドの集落か南にある”ゼンダー門”のどちらかに行ってみよう。」

「ノルドの集落―――ガイウスの故郷だね。」

「それとゼンダー門……第三機甲師団が駐屯している拠点ですね。」

「ええ、どちらも徒歩だと相当ありますが何とか行ってみましょう。」

「それじゃあ早速出発するわよ。」

その後リザイラの力でヴァリマールの霊力を回復した後、丘を降りて高原を歩いていると何かの音が聞こえて来た。



「こ、この音は……!?」

「まさか、砲撃音か!?」

音を聞いたセレーネは不安そうな表情をし、リィンは真剣な表情をした。

「―――見て、あれ!!」

そしてエリオットの視線につられるように視線を向けると第三機甲師団が機甲兵の部隊に追われていた!



「逃がすものか……!」

「”第三機甲師団”―――今度こそ息の根を止めてくれる!」

機甲兵は着々と戦車に追いつき、追い詰められた第三機甲師団の戦車部隊は迎撃の態勢を取った。



「くっ……”貴族連合”のカラクリどもが!」

「全部隊、弾幕を張れ!絶対に近づけさせるな!」

戦車部隊は怒涛の砲撃を放ったが機甲兵達は銃撃を回避しながら戦車に詰め寄って武器を構えた!



「これで終わりだ―――!!」

そして機甲兵が戦車に向けて武器を突き刺そうとしたその時砲撃が機甲兵に命中した!

「ぐおおおおっ!?っ―――何だ!?」

「死角から!?」

突然の奇襲に驚いた機甲兵達が振り向くとそこには第三機甲師団の別働隊の戦車達が砲口を機甲兵達に向けていた!



「伏兵だと!?」

「おのれ―――いつの間に!?」

「足元に狙いを定めよ!!―――全軍、集中攻撃!!」

「イエス・コマンダー!!」

そしてゼクス中将が指示をした瞬間、機甲兵の近くにいた戦車達は退避し、機甲兵は伏兵の戦車部隊による集中砲火を受けた!



「チィッ……!」

「”隻眼のゼクス”――――小賢しいマネを!」

「……フン、まあいい。監視塔方面に退却だ!いったん体勢を立て直す!」

「ハッ!」

自分達の不利を悟った機甲兵の部隊は監視塔方面へと撤退して行った。



機甲兵(パンツァーゾルダ)部隊、撤退して行きます!」

「こちらの被害も最小限……旧式戦車の運用もまずまずですね。このまま追撃しますか?」

「いや、深追いはすまい。地の利はこちらにあるが、敵も余力を残している。下手に懐に飛び込めば彼等(きゃつら)の思う壺だろう。―――全軍、ゼンダー門に帰還する!負傷者を回収し、次の戦闘に備えよ!」

「ハッ!!」

そしてゼクス中将の指示を受けた第三機甲師団はゼンダー門へと帰還して行った。



「……よ、ようやく収まったみたいだね。」

「ああ……これが内戦火の”戦場”か。」

「………………」

一方その様子を見守っていたエリオットは安堵の溜息を吐き、リィンは重々しい様子を纏い、セレーネは辛そうな表情で黙り込んだ。



(…………人間達が精霊達や自然と共存している数少ないこの地で争いをするとはどちらも愚かな者達ですね………………)

(リザイラ様?)

(ま、リザイラなら怒って当然よ。彼女もこの大自然は気に行っているようだし。)

(一体どうしたら世界から争いをなくせるのかしら…………?)

静かな怒りを纏って怒りの表情で呟いたリザイラの念話を聞いたメサイアは首を傾げ、ベルフェゴールは真剣な表情で戦場を見回し、アイドスは悲しそうな表情で考え込んでいた。



「騎神の模造品相手とはいえわりと健闘してたみたいね。」

「機甲兵の圧倒的な機動力を削ぐ”対機甲兵戦術”の一つですね。勝機を逃さぬ確かな戦術と綿密に組み立てられた戦略……さすがはヴァンダール中将率いる第三機甲師団というところでしょう。」

「父さんたち第四機甲師団にも匹敵するって話だもんね。」

「正規軍の皆さんは凄いですわね……既に機甲兵に対する戦術を編み出しているのですから……」

「……とにかく、ゼクス中将が無事でいてくれてよかった。でも、少し気になるな。機甲兵が去った方角には正規軍の拠点、”監視塔”があったはずだが………」

機甲兵達が去って行った方向にある施設を思い出したリィンは考え込んでいた。



「何かあったのかもしれないわね。だったら、さっきの軍人に直接聞くのが早いんじゃない?」

「いいかもしれませんね。戦闘が一段落した今ならコンタクトも取れるでしょう。」

「ええ―――そうと決まればゼンダー門に向かいましょう。」

セリーヌの提案とクレア大尉の話を聞いたリィンは最初の目的地を決め、仲間達と共に最初の目的地であるゼンダー門に向かった。 
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