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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第130話

~根源区画・奥~



「そ……そんな……。真なる”輝く環”が……か、神の力………破壊されただと……!?馬鹿な……そんな馬鹿なああああっ……!!」

ボロボロになっているケルヴァンは叫んだ後、その場から転移した!

「!!」

それを見たケビンはどこかに向かい

「なっ!まだ転移する力が残っていたの!?」

「………追うわよ!かなり弱っていたし、転移の力もほとんど残されていなしだろうから、そう遠くない場所にいるわ!」

ケルヴァンが消えたのを見たカーリアンは驚き、ファーミシルスはケルヴァンを追おうとしたが

「必要ない。」

「リウイ様!?」

リウイに制され、ファーミシルスは驚いてリウイを見た。

「………俺達が手を下さなくても、他の者が向かったからな。」

「?………!!なるほど。フフ、皮肉なものですわね。ケルヴァンが人間に討ち取られるなど、ケルヴァンにとって最も屈辱な事でしょうね。」

「はあ?どういう事よ、それ。」

リウイの言葉を聞き周囲のメンバーを見回してある人物がいなくなっている事に気付き、不敵に笑ったファーミシルスを見たカーリアンは尋ねた。

「…………後で説明する。」

尋ねられたリウイは静かに答えた。

「よかった………みんな、無事で…………」

一方プリネは元の姿に戻った後、その場に倒れた。

「姉さん!」

「カリン!」

「マスター!」

それを見たヨシュアとレーヴェ、ツーヤは慌ててかけよった。そしてプリネにかけよったレーヴェはプリネを抱きおこした。

「………心配しなくても大丈夫です。魔力を大幅に失っているだけです。」

「ええ。命に別状はありません。1日ほどしっかりと休めば、元気になりますよ。」

そして同じようにかけよったペテレーネとティアがプリネを調べて、優しく微笑んだ。

「よかった………本当によかった……………」

「……………」

「よかったです………マスターがご無事で………!」

2人の言葉を聞いたヨシュアは涙を流しながら、レーヴェはどこか安心した表情で、ツーヤは安堵の表情でプリネを見つめた。



「………ごめんね、ヨシュア。私があの時、逝ってしまったせいであなたを凄く悲しませ、そして辛い道を歩ませて…………」

レーヴェに抱き起された状態のプリネは申し訳なさそうな表情でヨシュアを見つめて言った。

「僕の事はいいよ………!姉さんが生きてくれれば、それだけで…………!」

「フフ………男の子が泣いちゃだめよ………もう今のあなたには素敵な恋人がいるんだから…………」

「あ、あはは………それはさすがに言いすぎよ~。」

涙を流し続けているヨシュアにプリネは優しく微笑んだ。プリネの言葉を聞いたエステルは恥ずかしそうな表情で苦笑していた。そしてプリネはレーヴェを見つめた。

「レーヴェ………ありがとう…………私の代わりにヨシュアを見守ってくれて…………」

「………気にするな。それにヨシュアはもう俺達の手は必要ない。それより全ての呪縛が解けた今、本当の意味で強くなる必要があるだろう。それを支えるのは俺達ではない。」

「そうね………」

口元に笑みを浮かべたレーヴェの言葉を聞いたプリネはエステルに視線を向けた。

「エステルさん…………これからは貴女がヨシュアを………私達の弟を支えてくれませんか………?」

「えへへ……言われなくてもそうするつもりだったけど……。でも……今ここでちゃんと約束する。だから……どうか安心して。だって、私とプリネは友達だもん!友達の頼みを断るわけないでしょ?」

プリネの言葉を聞いたエステルは恥ずかしそうな表情で笑って答えた。

「ありがとう、エステルさん…………」

エステルの答えを聞いたプリネは優しい微笑みを向けた。そしてプリネは再び、レーヴェを見つめた。

「……………………」

「?どうした、カリ………」

プリネに見つめられたレーヴェは尋ねようとしたその時、レーヴェは突然のプリネの口付けによって尋ねるのを中断された。

「なっ!?」

「えっ!」

「まあ…………」

「ほう…………」

「プ、プリネ!?」

それを見たリウイとペテレーネ、イリーナとリフィアは驚いた。そしてエヴリーヌは信じられない表情で叫んだ。また、周囲の人物たちも信じられない表情をしていた。



「うわ~………プリネも結構大胆ね~。」

「…………わかってはいた事なんだけど、それでも複雑だよ…………」

エステルは顔を赤らめて言い、ヨシュアは複雑そうな表情で溜息を吐いた。

「フフ、ヨシュアを見守ってくれたお礼よ。」

一方プリネはレーヴェに恥ずかしそうな表情で微笑んで答えた。

「カリン……」

プリネに微笑まれたレーヴェは苦笑した。しかし

「!殺気………!?」

背後からすざましい殺気を感じたレーヴェは振り返った!すると

「……………どうやらお前もイリーナやエステルのように誰かが転生した人物のようだったが………その男の事は勿論後で、詳細な説明をしてもらうぞ、プリネ。」

「エヴリーヌは絶対認めない。認めない、認めないんだからっ………!!」

すざましい殺気と闘気を纏ったリウイとエヴリーヌが今にも攻撃をしそうな雰囲気でレーヴェを睨んでいた!

「あ、あわわ………リ、リウイ様………!」

「もう、あなたったら………それにエヴリーヌさんも過保護すぎですよ。」

その様子を見たペテレーネは慌て、イリーナは呆れた表情で溜息を吐いた。

「………マスターに好きな人が現れたのは嬉しいけど………よりにもよって、あの人だなんて、少し複雑だよ………」

「あ、あはは………その気持ち、ミントにもわかるよ。だって、孤児院を焼いた人達を指揮していた人だもんね………」

複雑そうな表情をしているツーヤを見たミントは苦笑していた。

「お、お父様………エヴリーヌお姉様…………えっと、その………これはなんと説明したらいいのか………」

一方プリネが狼狽えたその時、周りが揺れだした!



「な、何!?この揺れ………!」

「……”輝く環”は、浮遊都市を維持してきたエネルギー源でもある。それを破壊してしまった……じきにこの都市は崩壊するじゃろう。」

周りを見て驚いているエステルに博士は説明した。

「そ、それでは……!」

「急いで”アルセイユ”に戻った方がよさそうですな……」

「うむ……。すぐに導力が尽きることはないが急いだ方がいいじゃろう。おまえさんたちの船はどうじゃ?」

ユリアとミュラーに見られた博士は頷いてジョゼット達やシェラ、ルースを見た。

「ああ、今ごろ完全に修理が終わっているはずだ。」

「戻ったらすぐに飛べるだろうぜ。」

「………モルテニアは特に損傷を負っている訳でもありませんのでいつでも飛行可能です。」

「グロリアスも可能です!」

博士の疑問にキール、ドルン、シェラ、ルースは答えた。

「よし……それでは皆、これより撤退を開始する!エレベーター近くに転位用のゲートがあった。順次、それを使って”中枢塔”より脱出するぞ!」

そしてユリアの号令の元、使い魔達はそれぞれの主の身体に戻り、そして仲間達は次々と撤退をし始めた。

「……………」

立ち上がる力もないプリネはレーヴェが抱き上げて、立ち上がった!

「な、な、なっ…………!」

「…………俺達の目の前でよくそんな事をする度胸があるな……!」

それを見たエヴリーヌは口をパクパクさせ、リウイはレーヴェを睨んでいた。

「レ、レーヴェっ!お父様達の目の前でなんて、恥ずかしいわ………!」

そしてプリネは顔を赤らめてレーヴェを見て言った。

「………別に隠す必要はあるまい。それに”剣皇”達の目の前で俺に口付けをしたお前が言える立場ではないだろう。」

「そ、それは………で、でも…………」

レーヴェに指摘されたプリネは戸惑った。

「ヨシュア。レーヴェ…………多分というか絶対だけど………あの様子だとプリネと結婚するには大分苦労するわね~。」

「……まあ、今の姉さんは”大陸最強”と名高いメンフィル帝国の姫君であり、あの”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”なんだ。以前ナイアルさんが教えてくれたように、姉さん達が幸せになるには大分壁があるだろうね。………けどまあ、レーヴェなら多分大丈夫じゃないかな。」

一方苦笑しながら言ったエステルの言葉にヨシュアも苦笑しつつ答えた。

「…………あなた。今は優先すべき事があるでしょう?」

「…………わかっている。エヴリーヌ、気持ちはわかるが今は脱出するのが先決だ。行くぞ。」

イリーナに諭されたリウイは静かに頷いて、エヴリーヌを促した。

「………わかった。けど、エヴリーヌは絶対にお前なんかをプリネの恋人として認めていないんだからねっ!」

リウイの言葉を聞いたエヴリーヌは頷いた後、レーヴェを睨み、そして撤退を始めた。

「………今は我が娘の身をお前に任せておく。俺達にしっかりついて来い。………だが、俺達がお前をプリネの伴侶として認めたと思うなよ?」

「………重々承知しております、”剣皇”リウイ陛下。カリンの………”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”の結婚条件も勿論承知しております。」

リウイの忠告にレーヴェは静かに頷いた。そしてエステルやリウイ達は撤退を始めた!



「……馬鹿な……そんな馬鹿な……。こんな事態……ありえない……。……ま……待てよ……。た、試されたのは……この身体の持ち主も同じだったということか……。くっ……”盟主”とやらめ………!人間の分際でこの私を試すなど……戻ったら、八つ裂きにしてくれる………!」

一方その頃、ボロボロの状態のケルヴァンが弱った身体で進んでいたが

「悪いけど、それは無理やね。」

ケルヴァンの行く手を遮るようにケビンが前から来た!

「ケビン・グラハム……。いつの間にこんな所に……。どけ……貴様のような雑魚に関わっている場合ではない……」

それを見たケルヴァンはクラフト――真・魔眼を放ったが、ケビンは星杯の紋章を掲げ、自分自身に結界をはって魔眼を無効化した!

「……貴様……”魔眼”が効かないのか!?いくら教会の騎士とはいえ新米ごときに防げるわけが……」

「あー、スマン。ちょいと三味線弾いてたわ。オレは騎士団の第五位。それなりに修羅場は潜っとる。ま、それでも本調子のあんたに勝つのは難しかったけど……。予定外の事があったとはいえ、今なら付け入る隙があるからな。」

「なに………」

ケビンの言葉にケルヴァンが驚いたその時、ケビンがボウガンの矢をケルヴァンに放った!

「くっ……」

弱っていたケルヴァンは身体もろくに動かせず、矢に当たり、呻いた!

「……オレの本当の任務は”輝く環”の調査やない。最悪の破戒僧、ゲオルグ・ワイスマン―――あんたの始末というわけや。………まあ、あんたが”覇王”達の関係者だったのは驚いたけど………”覇王”達もあんたを敵対視していたし、あんたを滅しても問題ないやろ。」

「クク……なるほどな……。だが、この程度の攻撃でこの”闇軍師”を滅するなど……」

ケビンの冷たい視線を見たケルヴァンは凶悪な笑みを浮かべていたその時!

「な……なんだ……」

瞬く間にケルヴァンの身体が白く固まり始めた!

「し、『塩の杭』……。かつてノーザンブリア北部を塩の海に変えた禁断の呪具……。私一人を始末するためにこんなものまで持ち出したのか!」

「あんたは少々やりすぎた。いくら教会が中立でも、もはや見過ごすわけにはいかん。大人しく滅びとき。」

信じられない表情で叫んでいるケルヴァンにケビンは冷たい視線を向けたまま、淡々と言った。

「おのれっ……この”闇軍師”を舐めるなああああああっ!!」

しかしケルヴァンは叫んだ後、自分自身に魔術を放って、塩化を止めようとした!



「………やれやれ。そのまま大人しく滅びとけば、苦しまずに逝けたものを。………ええやろ。あんたを最高クラスの”外法”と認定し、オレ自身が徹底的に狩ったるわ。………おおおおおおおっ…………ハアッ!!」

そしてケビンは自分の背中に何かの紋章を現せた!

「な………!?」

それを見たケルヴァンは驚いた!

「クク………まさかオレにコイツを使わせることになるとはな…………祈りも悔悟(かいご)も果たせぬまま!千の棘をもってその身に絶望を刻み!塵となって無明の闇に消えるがいい!!」

そしてケビンは凶悪な笑みを浮かべた後、ボウガンを構え詠唱を始めた!すると、異空間から無数の魔槍がケビンの周りに現れ、そしてケビンのボウガンにも魔槍が装着された!そしてケビンは装着された魔槍を放つと、ケビンの周りに浮かんでいた無数の魔槍達もケルヴァンを襲った!

「砕け………時の魔槍!!」

「おのれえええええ――――!狗があああっ―――――――!!」

聖痕の力を解放し、アーティファクト、”ロアの魔槍”を放つケビンのSクラフト――魔槍ロアを受けたケルヴァンは最後の叫びを上げながら、身体は塩化し、さらにまだ塩化していない部分は魔槍に貫かれ、さらにケルヴァンの周りに刺さった魔槍達は大爆発を起こして、ケルヴァンを肉塊の一欠けらもなく滅した!

「狗か……。ま、その通りなんやけどね。………………………………。ヨシュア君、君は運がいいで。オレなんかと違ってまだまだやり直せるんやから。」

「ウフフ……それってジェラシー?」

ケルヴァンが消滅した後を見つめてケビンが呟いたその時、カンパネルラが現れた!



「”守護騎士(ドミニオン)”第五位―――”外法狩り”ケビン・グラハム。うふふ……噂に違わぬ冷酷ぶりじゃない。」

「君は……たしか”道化師”やったな。悪いけど……彼の方は手遅れやで。」

「フフ……聞いてるかもしれないけど僕の役目は『見届け役』なんだ。計画の全プロセスを把握し、一片の例外もなく”盟主”に報告する。教授の自滅も単なる結果であって防ぐべき事態じゃないんだ。」

ケビンの言葉を聞いたカンパネルラは不敵に笑った。

「なるほどな……。”身喰らう蛇”―――まだまだ謎が多そうや。」

「フフ、君たち騎士団だってそれは同じだと思うけどねぇ。さてと……これで僕の役目も終了だ。ホント、教授の正体には驚いたけど、余計で大迷惑な事をしてくれたよ………”グロリアス”や”パテル=マテル”は強奪されたし、落し物も回収どころか、完全に破壊されちゃったしねぇ………」

「なに……!?」

カンパネルラの言葉にケビンが驚いたその時、カンパネルラは指を鳴らした!するとカンパネルラは消えようとした!

「あはは!それではどうもご機嫌よう!次に滅するのは君達にとって最高の罰当りと言ってもおかしくない行為をした少女か覇王かな?また次の機会に会えることを祈っているよ!」

そしてカンパネルラは消えた!

「落し物って……まさか……。………………………………。まあいい……これ以上はオレの権限外や。急いでエステルちゃん達と合流せんとな……」

カンパネルラの言葉を聞いたケビンは信じられない表情で呟いた後、エステル達と合流するため急いで引き返していった。



……こうしてエステルたちは断続的に発生する揺れの中、”中枢塔”から脱出した。 急激な導力低下のためか”レールハイロゥ”は完全に使用不可能となっており……さらに何故か空間も不安定で転移もできなくなっており……エステル達は地下道を通ってそれぞれの場所に停泊する飛行艇や飛行戦艦を目指すことにした……




 
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