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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第14話

ケルディック内を見て回っていたリィン達は元締めに挨拶をする為に元締めの家に入った。



~ケルディック・元締めの家~



「オットー元締め……!お久しぶりです。」

「おお、君は士官学院のシュバルツァー君!そうか……レーグニッツ君と無事に合流できたようじゃな。うむうむ、本当に元気そうでなによりじゃ。」

リィンに話しかけられたオットー元締めは振り向いて明るい表情でリィンを見つめた。



「元締めのほうこそ……前回の実習以来ですね。マキアス達の潜伏を手伝っていただいたそうで。」

「元締めや町の皆さんのおかげでこうしてリィンと僕達の仲間の一人―――セレーネとも会えました。改めてお礼を言わせて下さい。」

「はは、わしらは何もしとらんよ。お前さん達が諦めずに頑張ってきた結果じゃろう。しかしトヴァル殿も一緒とは……さすがに驚いたぞい。」

「ハハ、俺は少し前に依頼(しごと)で訪れて以来ですかね。いい機会ですし、これまでのことを話させていただきますよ。」

その後リィン達はソファーに座ってオットー元締めと向かい合い、今までの出来事を説明した。



「プリネ姫達からメンフィル帝国領が襲撃された話は聞いていたが、まさかユミルでそんな事があったとはのう……ケルディックも色々な問題に見舞われてはいるが、エレボニア帝国領と比べると平和な方じゃな。」

事情を聞き終えたオットー元締めは重々しい様子を纏って呟いた。

「領邦軍自体はまだメンフィル帝国領に戦いを仕掛けていないみたいですし、現在のこの辺りの主戦場はガレリア方面に移動したそうですからね。それだけあちらは熾烈な事になっていそうですが……」

「うむ、貴族連合が優勢と言われておるが正規軍の抵抗も激しいようじゃ。双龍橋の機甲兵部隊が幾度となく繰り出しておるがいまだ攻めあぐねているという。」

「あの”機甲兵”の部隊を相手に優勢に戦っているのですか……」

「ふむ、さすがは”最強”って所か。その辺りも詳しくわかるといいんだが……定時連絡に期待しておくか。」

「そうですね……まだ時間がありそうですが。」

オットー元締めの話を聞いたセレーネは目を丸くし、トヴァルは真剣な表情で考え込み、トヴァルの言葉にリィンは静かな表情で頷いた。



「えっと、元締めさん。ケルディックは内戦の影響でエレボニア帝国領から多くの難民の方達が避難してきている影響で様々な問題が起こっているとお聞きしましたが……実際はどうなのでしょうか?」

「うむ……町の住人達との諍いもそうじゃが、避難民の中には商人もおってな。商売をする場所等で揉める事もある。しかも”大市”での商いを巡って喧嘩沙汰に発展する事も頻繁にあるのじゃ。」

セレーネに尋ねられたオットー元締めは重々しい様子を纏って頷いた後話を続け

「えっ!?な、何故ですか……!?」

「許可証の発行がずさんだった”大市”の件についてはメンフィル帝国領になったお蔭で解決したんじゃねえのか?」

オットー元締めの口から出た意外な話を聞いたリィンは驚き、トヴァルは目を丸くして尋ねた。



「無論以前と違い、”臨時領主”を務めておられるプリネ姫達は”大市”の許可証の発行や管理等を徹底してくれておるから、”大市”で店を開いている商人達には当然正当性がある。」

「では、一体何故……」

オットー元締めの説明を聞いたマキアスは戸惑いの表情でオットー元締めを見つめた。



「エレボニア帝国領から避難して来た商人達が内戦が関係していないメンフィル帝国領で平和に商いをしている儂らには蓄えがあるじゃろうから、難民である自分達に譲るべきだと主張しているのじゃよ。」

「なっ!?」

「それは幾ら何でも図々しい主張だと思うのですが……」

「ああ………領主であるプリネさん達が寛容な性格でなければ正直、メンフィル帝国領―――ケルディックから追放される処分を受けてもおかしくないと思う。」

「というか、難民の立場でよく商売をしようなんて考えられるわね?」

「ったく、商魂逞しいにもほどがあるだろう。」

オットー元締めの口から出た信じられない話にマキアスは驚き、セレーネとリィンは眉を顰め、セリーヌは呆れ、トヴァルは疲れた表情で溜息を吐いた。



「難民の商人達は儂らに蓄えがあるというが、内戦の影響で物価が急上昇しておるから、ケルディックの商人達も正直それほど余裕はないと何度も説明しておるのじゃがな……」

「…………元締め。売上税についてはどうなったのですか?ケルディックがメンフィル帝国領になってからの大市での売上税は以前と比べると低くした話はプリネさん達から聞いていますが……」

疲れた表情で溜息を吐いているオットー元締めの様子を見てある事が気になったリィンは真剣な表情で尋ねた。



「その件に関しては心配無用じゃ。このケルディックがメンフィル帝国になった直後売上税は増税される前の状態の売上税よりも低く設定してもらえたどころか、内戦の影響で物価が高くなった事を知ったプリネ姫達が儂らが陳情もしてないのに、メンフィル帝国領になってから低く設定した売上税を更に『エレボニア帝国の内戦が終結するまで』という条件によって半減してくれたお蔭で、何とか商いを続けられている状況じゃ。」

「なるほど………後は急遽決まった”検問”の件ですが、元締め達―――ケルディックの市民達は”検問”についてどう思っているのですか?」

「”検問”に関しても儂を含めた市民達も納得しておる。確かに色々と不便になり、不都合も出てくるじゃろうが……儂ら市民を守る為じゃと言うのは重々承知しておるし、色々と便宜を図ってくれている領主の方達にそのくらいの事で意見を口にして、迷惑をかけるべきではないというのが儂らケルディックの市民達の総意じゃ。」

「そうですか……それを聞けて安心しました。」

「お兄様……」

「へえ?不満がありながらも領主に遠慮して何も言わないなんて、驚いたわ。……まあ、民達に気を使わせる程彼女達が善政を敷いているという証拠ね。」

そしてオットー元締めの話を聞いたリィンは安堵の表情をし、リィンの様子をセレーネは静かな表情で見つめ、セリーヌは目を丸くした後静かな表情で窓の外から見える領主の館に視線を向けた。

「ちなみに喧嘩沙汰とか起こった時はメンフィル兵達が収めているのか?」

「うむ、メンフィル兵達の手が回らない時には遊撃士達が駆け付けて収めてくれておるから、その件に関しても今の所は大きな問題は出ておらん。」

トヴァルの質問にオットー元締めは静かに頷いて説明を続けた。



「……あの、元締め。元締めや町の皆さんは日々数を増やしているエレボニア帝国領の難民についてどう思っているのですか?実際、彼らがこちらに避難してきている影響で、ようやく平和を取り戻したこのケルディックに再び様々な問題が起こっているとの事ですし。」

「マキアス……」

辛そうな表情でオットー元締めに質問するマキアスをリィンは心配そうな表情で見つめた。

「確かに彼らがいる事によって、様々な問題が起こっている事は事実じゃが……君達も知っての通り儂らも半年前まではエレボニア帝国民だった立場。このケルディックが今もクロイツェン州―――エレボニア帝国領ならば、儂らも彼らと同じ立場であり、苦しい生活を強いられていたじゃろう。じゃから内戦が続いている現在の状況でありながらも未だ平穏が保たれているこの地に避難してくる彼らの気持ちも理解しておるから、彼らの事を疎ましく思っておらんよ。」

「元締めさん………」

「…………ありがとうございます。」

オットー元締めの答えを聞いたセレーネは微笑み、マキアスは静かな表情で頭を下げた。



「そうだ元締め、何か手伝える事はありませんか?お世話になった町の皆さんのために少しでもお返しができれば。」

「ええ、ぜひ僕達にお手伝いさせてください。」

「できる限り、御力になりますわ。」

「ふむ、確かに手を借りたい事はあるが……では話だけでも聞いてもらってよいかね?」

リィン達の申し出を聞いたオットー元締めは考え込んだ後リィン達に依頼する事を決めた。

「ええ、ぜひ。」

そしてリィンはオットー元締めから依頼書を受け取り、内容を仲間達と共に確認した。



「なるほど……これなら僕達で何とかできそうだな。」

「ああ、この状況で困っている人を放っておけない。できるだけ対応しよう!」

「ふふっ、久しぶりの”特別実習”ですわね♪」

「やれやれ、面倒事を背負い込んじゃって。」

「はは、なら俺もサポートさせてもらうか。」

依頼書を受け取ったリィン達はそれぞれの顔を見合わせて依頼を請ける事を決めた。

「すまんな、君達も大変だろうに。メンフィル領じゃからそれ程危険はないと思うが、くれぐれも気をつけるのじゃぞ。」

その後元締めの家を出たリィン達は依頼の消化をした後、定時連絡を待つ為に風車小屋に向かった。 
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