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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~”裏の協力者達”~(序章終了)

~パンタグリュエル~



「………………………」

「―――何が見えるかね?」

ある人物―――ルーファスが地上を見下ろしているとクロウを伴ったカイエン公爵がルーファスに近づいてきた。



「これはカイエン公―――それに”蒼の騎士”どの。」

「どうかね、ルーファス君?遥かな高みから地上を見下ろすというのはなかなか愉快なものだろう。それが”勝利”の決まっている戦場の空ともなれば尚更に。」

「いえ、私ごとき若輩者にその余裕はとてもありません。今この時も、地上は戦火と硝煙の匂いに満ちている……それを思えば、領民たちのことが気がかりでもありますから。」

カイエン公爵に問いかけられたルーファスは苦笑した後静かな表情になった。



「ハハ、その若さでなんとも思慮深いことだ。さすがはアルバレア公自慢のご子息と言った所か。お父上も君の働きぶりに”さぞ”鼻の高い思いをしていよう。」

「フフ、勿体なきお言葉。未熟な身ではありますが、”主宰”たる閣下の期待に沿える働きをさせてもらう所存です。」

「頼りにしているよ―――貴族連合軍”総参謀”どの。混乱に喘ぐ民のためにも、我々は力を結集し、迅速に戦を終結に導かねばなるまい。今後の戦略はまとまっているだろうね?」

ルーファスに見つめられたカイエン公爵は口元に笑みを浮かべた後探るような視線でルーファスを見つめた。



「―――帝国全土の支配率は今や6割に達しています。ですがいまだ、正規軍も5割の戦力を残している上、東西のメンフィル帝国領が警戒レベルを強めている状況。残存する機甲師団を、東西でいかに分断するかとメンフィル帝国の動きが、今後の鍵となるでしょう。」

「フフ、結構。そのための君であり、”機甲兵部隊”というわけだ。オーレリア将軍にウォレス将軍……領邦軍きっての英雄たちもいる。歌姫殿や多くの協力者たちも我々に力を貸してくれている。勝利は目前――そう思わないかね。クロウ・アームブラスト君?」

「ハハ…………どうだかな。言っておくが、”騎神”だって万能じゃない。ガレリア要塞を消滅させちまったクロスベルの”神機”だったか―――あそこまでの非常識な力はさすがに持ち合わせていないしな。」

カイエン公爵に視線を向けられた黒衣の姿のクロウは真剣な表情で答えた。



「ハハ、我らが騎士殿はずいぶんと謙虚なことだ。まあ、今はクロスベル方面とわざわざ事を構える必要はない。ギリアス・オズボーン。愛おしくも忌まわしき我らが宿敵は既に斃れた―――当面は、帝国という”器”を濁らせてきた泥水を徹底的に洗い流すとしよう。”貴族による支配”という、あるべき姿を取り戻すためにもな。」

「御意に。」

「……………………」

地上を見下ろして高々と言うカイエン公爵の言葉にルーファスは静かに頷き、クロウは黙り込んでいた。



「そうそう、もう一人の”騎士”についてだが……そちらも何とか引き込めないか策を講じているところでね。知己たる君にも協力してもらうかもしれない。まあ、考えておいてくれたまえ。」

「……了解だ。」

自分の返事を聞いたてその場から去るカイエン公爵をクロウは黙って見つめ

「―――そこまで甘くはない。そう言わんばかりの顔だね?」

クロウの様子を見たルーファスは静かに問いかけた。



「………クク、まあな。鉄道憲兵隊に情報局……正規軍以外にも厄介な連中がいる。後はメンフィルの動きだな。特に”殲滅天使”あたりが自分が”臨時領主”を務めているメンフィル帝国領であるケルディック地方の近辺で正規軍と何度もドンパチをしている事を理由にメンフィル軍を率いて介入してくるかもしれねぇし、”紅き翼”も取り逃がしちまったし、それ以外にも動きがありそうだ。アンタの弟もそうだが……甘く見ないほうがいいんじゃねえか?」

「フフ、せいぜい公爵家の気骨を見せてもらうだけさ。我が弟もそれくらいは心得ているだろうしね。それに―――」

クロウの忠告に静かな笑みを浮かべたルーファスは自分達に近づいてきた”協力者”たちに視線を向けた。



「それを打ち砕くための諸君だ。……そうではないかね?」

「うふふ、そうですわね。」

「クク、大人気ねえことこの上ないって感じだが。」

ルーファスに視線を向けられたスカーレットは微笑み、ヴァルカンは不敵な笑みを浮かべ

「だが、これも戦場の常―――」

「まー、せいぜい派手に盛り上げさせてもらいますわ。」

「フン、わたくしたちはあくまで一時的に協力するだけですわ。」

「ハハ、美しき花火が存分に見られるといいのだが。」

「ふわああっ……ま、程々に手を貸してやるさ。」

他の多くの協力者たちもそれぞれ自分達が貴族連合に加勢する事を表意した。



「……確かに。この化物ども相手じゃ、万が一もありえねぇか。」

協力者達の面々を見回したクロウは苦笑しながらルーファスに視線を向け

「フフ、そういうことだ。”獅子戦役”の再現―――”裏側”の方は君達に任せた。相手は”子供達”に”紅き翼”、そして”有角の若獅子”たちに”異世界の英雄”達……それでは存分に、心行くまで盛り上げてくれたまえ……!」

ルーファスは頷いた後協力者達の前に出て宣言をした!



~2時間後・メンフィル大使館・執務室~



「―――何?ユミル―――それもリィン・シュバルツァーから緊急報告の通信が来ているだと?―――ああ、こちらに回して構わん。…………久しいな、シュバルツァー。緊急報告と聞いているが何があった?………………――――何?ユミルが襲撃されただと…………?――――どういうことだ。」

2時間後執務室で書類を片付けていたリウイは誰かと通信をし始めたが、通信相手―――ユミルにいるリィンから内容を聞くとみるみる表情を厳しくし

「…………そうか。…………それで本当に復興の為の人材は必要ないのだな?………ああ……ああ………わかった、ならせめて支援物資をできるだけ早くユミルに届けるように手配しておく………それと誘拐された二人に関してだが、他国―――エレボニア帝国皇女であるアルフィン皇女に関しては無理だが、メンフィル帝国の貴族の子女であるエリス・シュバルツァーについてはグランセルのエレボニア帝国の大使館に厳重に抗議し、エリス・シュバルツァーの返還の要求をするつもりだ……………後はユミル防衛の為の兵達の派遣だが、3―――いや、2週間以内に派遣できるように手配しておく。はぐれた仲間達と無事合流出来る事を”常任理事”の一人として、祈っている。………………………………」

「あなた、リィンさんから通信が来たようですが何があったのですか?何やら尋常ではない事が起こったようですが………」

「まさか”貴族連合”がメンフィル帝国領に何か仕掛けてきたのですか?」

通信を終えて厳しい表情で黙って考え込んでいるリウイが気になったイリーナは不安そうな表情で尋ね、会話の内容から推測したエクリアは真剣な表情で尋ねた。



「……ああ、実は――――――」

そしてリウイはその場にいる二人―――イリーナとエクリアにリィンから知らされた貴族連合によるユミル襲撃の詳細な説明をした。

「何と愚かな事を…………!」

「………………貴族連合は一体何を考えているのでしょう?そのような事をすれば、メンフィル帝国に宣戦布告をされて当然だと思うのですが。」

ユミルで起こった出来事を聞いたイリーナは怒りの表情をし、真剣な表情で考え込んでいたエクリアはリウイに問いかけた。



「”蒼の深淵”が口にした話を聞く限り、”貴族連合”も一枚岩ではないのだろう。―――――だが、そのような下らない事は我らメンフィルにとっては”一切関係ない”。重要なのはエレボニア帝国の大貴族が雇った猟兵達がメンフィル帝国領に襲撃を仕掛けた上、男爵夫婦に危害を加えた挙句、メンフィル帝国の貴族の子女を誘拐した事だ。」

「………………………………」

「…………ヴァイスハイト様達によるクロスベル解放並びに建国もまだですが、開戦をなさるのですか?」

厳しい表情で呟いたリウイの言葉を聞き、メンフィル帝国がエレボニア帝国との戦争を開戦する事を察したイリーナは辛そうな表情で黙り込み、エクリアは真剣な表情で尋ねた。



「―――まず、グランセルのエレボニア帝国大使館に今回の件を厳重に抗議し、エリスの返還並びにユミル襲撃に対する慰謝料と賠償金、後はエリスの誘拐を実行した下手人の身柄の引き渡しを要求し、同時に諜報部隊を動員して監禁されているエリスの居場所を探らせるつもりだが…………こちらの要求に応えるつもりがないのならば、エリスの監禁場所がわかり次第エリスの”救出作戦”を行うつもりだ。―――エクリア、至急シルヴァン達やエリゼに今の件の報告をし、すぐに動ける諜報部隊の者達を招集するように伝えろ。それとリフィアにはエリゼが望むなら、緊急の帰省を許可してやれと言っておいてくれ。」

「承知しました!」

リウイに指示をされたエクリアは会釈をしてその場から退出し

「もはやクロスベルとメンフィルの連合によるエレボニア帝国侵攻は止められませんね…………せめてエレボニア帝国が素直に誘拐したエリスさんを返還してくれれば、エレボニア帝国制圧後のエレボニア帝国に対する”処分”を緩和できる可能性はあるのですが………………」

エクリアが退出するとイリーナは悲しそうな表情で呟いた。

「――――ユミルの件を”ハーメル”のように誤魔化せると思うなよ?メンフィルはリベールとは違う。メンフィルの民達に手を出した”報い”は必ず受けさせてやるから、全員纏めて首を洗って待っているがいい。貴族連合―――いや、”エレボニア帝国”………!」

そして全身に覇気を纏ったリウイは怒りの表情で窓の外を睨みつけた!



後にリウイ達の訪問により、ユミル襲撃の件等を聞かされたエレボニア帝国の大使―――ダヴィル大使は今にも倒れそうなほど表情を青褪めさせた後、リウイ達―――メンフィル帝国の要求―――『ユミル襲撃に対する慰謝料、賠償金の支払い、エリスの返還、エリスを誘拐した下手人である黒衣の少女の身柄の引き渡し』に必ず全て応えるとその場で確約したが、貴族連合側は慰謝料と賠償金だけ支払い、肝心のエリス返還と下手人引き渡しを色々と理由をつけて行わず、その事に業を煮やしたメンフィル帝国が貴族連合に対する”報復”をする為に普通なら信じられないやり方で内戦に介入し、それぞれの”計画”が完全に崩壊する事になるとは、クロチルダや貴族連合の”総参謀”を務めているルーファスすら予想していなかった。



また…………ユミル襲撃と後にアルバレア公爵が”北の猟兵”達に指示をした事によって襲撃されたメンフィル帝国領のある街の襲撃に対する”報復”をする為にメンフィル帝国は後に”北の猟兵”達の祖国である”ノーザンブリア自治州”に戦争を仕掛け、”北の猟兵”達を一人残らず”処刑”し、”ノーザンブリア自治州”が滅亡する事になるとはこの時、誰も想像していなかった……………… 
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