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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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最終話(終章終了。閃Ⅰ篇完結。閃Ⅱ篇に続く)

10月31日――――



~ケルディック~



「ここがケルディックか……」

「街の様子を見た感じ、特に問題なさそうだね。」

ケルディックに到着したマキアスとフィーは周囲を見回し

「えっと……これからどうしよう?プリネ達に会おうにも、兵士の人達が僕達に皇族のプリネ達に会わせてくれるかな……?」

「た、確かに言われてみれば……しかも今のプリネは臨時領主も兼ねている事に加えてエレボニア帝国内で内戦が始まった今の状況だと兵士達も警戒しているだろうし……って、フィー。何をしているんだ?」

エリオットの意見を聞いたマキアスは表情を引き攣らせた後ARCUSに耳を当てているフィーに気付いて不思議そうな表情で尋ねた。



「プリネのARCUSに繋がるか試している。プリネがまだARCUSを持っていたらプリネと直接連絡ができるはずだし。」

「あ……っ!その手があったね……!」

「何でこんな単純な方法に気付かなかったんだ……?」

フィーの説明を聞いたエリオットは目を丸くし、マキアスは疲れた表情をした。その後プリネと連絡がついたエリオット達はメンフィル帝国によって建造された領主用の立派な屋敷の一室に通された。



~領主の館~



「い、一体いつの間にこんな豪華な館を作ったんだろ……?前に特別実習で来た時は無かったのに……」

「ケルディックは都でもないのに、豪華すぎだよね。」

「まあ、臨時とはいえ皇族が領主を務めるのだから体裁を整える為にも建造したんだろうな。」

館の一室に通されたエリオットは戸惑い、フィーは周囲を興味ありげな表情で見回し、マキアスは静かな表情で推測した。



「―――お待たせしました、皆さん。」

「サフィナ義母さんから皆さんがトリスタから脱出した事は聞いていましたが、こうして無事な姿を見れて本当によかったです……」

「あ……!プリネ、ツーヤ……!」

「久しぶり。そっちは元気そうだね。」

プリネとツーヤが部屋に入ってくるとエリオットとフィーは明るい表情をし

「……サフィナ元帥とレン姫を援軍に送ってくれた事……改めてお礼を言わせてくれ。―――ありがとう。サフィナ元帥達とベルフェゴール達の助太刀が無かったら、僕達はあのまま果てていたかもしれないし……」

マキアスは真剣な表情で二人を見つめて頭を下げた。



「いえ、私達自身肝心な時に皆さんの御力になれず申し訳ありません。」

「そ、そんな!プリネが頼んでくれたお蔭でレオンハルト教官やレン姫達が僕達を助けてくれたじゃない!」

謝罪するプリネを見たエリオットは慌て

「その……ツーヤ。セレーネの事だけど……」

マキアスは言い辛そうな表情をしてツーヤを見つめた。



「―――既にトリスタから戻ってきた義母さん達から皆さんが撤退した後の状況は聞いています。あの後ベルフェゴールさんがあの娘を連れて転移魔術でどこかへと去ったそうですから、恐らく今はリィンさんの元にいるでしょうね。」

「そうなの!?」

「そうか……!セレーネはリィンの傍にいるのか……!」

ツーヤの話を聞いたエリオットは驚き、マキアスは安堵の表情をしたが

「……プリネ。士官学院は今、どうなっているの?」

「あ…………」

「…………」

フィーの疑問を聞いた二人はそれぞれ顔色を変えた。



「…………トールズ士官学院―――いえ、トリスタは”貴族派”によって、制圧されました。現在はヴァンダイク学院長達を含めた一部の教官達、そして士官学院生達は軟禁の身だそうです。」

「そんな……!」

「クッ……!」

「………………」

プリネの説明を聞いた3人はそれぞれ悔しがったり辛そうな表情をし

「ですがレーヴェさんの話では教官や先輩の方々が協力して多くの士官学院生達を逃した後それぞれ散り散りになって脱出したそうです。このケルディック市にもレーヴェさんの先導で数名の学院生達が避難してきています。勿論サラ教官やシャロンさんも士官学院を脱出したそうですよ。」

「よ、よかった~……サラ教官やシャロンさんも逃げれたんだ……」

「まああの二人の事は全然心配していなかったけど。」

ツーヤの説明を聞いたエリオットは安堵の溜息を吐き、フィーは静かに呟いた。



「それともう一つ。―――どうやら”貴族派”は逃亡した士官学院生―――いえ、私を含めた”Ⅶ組”のメンバー全員の指名手配をしたそうです。」

「ええっ!?ぼ、僕達を!?」

「まあ今まで散々”帝国解放戦線”の企みを潰してきたからな……多分、警戒されているんだろうな。」

「それと士官学院の生徒達を誘導した後領邦軍の様子を伺いに斥候に向かったレーヴェさんの話ですとガレリア要塞付近にて”第四機甲師団”が既に領邦軍と激しい戦闘を何度もしているそうです。」

「父さんの部隊が!?」

「ちなみに戦況はどうなっているの?」

プリネと共に説明したツーヤの話を聞いたエリオットは驚き、フィーは真剣な表情で尋ねた。



「今の所は”第四機甲師団”が優勢で何度も機甲兵の部隊を撃退しているそうです。」

「そうか……!」

「さすが帝国軍きっての”猛将”だね。」

「えへへ……」

ツーヤの話を聞いたマキアスは明るい表情をし、フィーの言葉を聞いたエリオットは照れた。



「それで皆さんはこれからどうするおつもりですか?」

「それは…………」

プリネに問いかけられたマキアスは答えを濁した後エリオットとフィーと顔を見合わせて同時に頷いた後プリネを見つめた。

「……この状況を僕達でも打開できる方法を何とか探ってみるつもりさ。勿論飛び去ったリィンの行方やリザイラが僕達にかけた撤退用の魔術によって離れ離れになった仲間達との合流とかもね。」

「そうですか…………――――わかりました。”メンフィル帝国”としては皆さんに協力する事はできませんが、”個人”として私はできるだけ協力します。……エレボニア帝国の状況が落ち着くまで私は”臨時領主”としてツーヤ達と共にケルディックを守らねばならない為、皆さんと一緒に行動する事はできませんが、出来る限りの事は協力します。」

「勿論あたしも同じ気持ちです。」

「プリネ……ツーヤ……」

「ありがとう……!」

プリネとツーヤの説明を聞いたエリオットとマキアスは明るい表情をした。



「それじゃあ早速で悪いんだけど、この辺でわたし達が潜伏するちょうどいい拠点はないかな?幾らメンフィル領とは言っても貴族派が送り込んだスパイや”帝国解放戦線”のメンバーがいないとは限らないから、できるだけ人目を避けたいし。後、できれば長期間分の保存食も欲しい。」

「ちょっと、フィー……拠点の確保を頼むだけでも図々しいのに、保存食を要求するのはさすがにどうかと思うよ……?」

フィーの要求を聞いたエリオットは冷や汗をかき

「フフ、気にしないで下さい。皆さんの潜伏先についてはオットー元締めに事情を説明して皆さんに協力するように頼んでおきますので、後で元締めを訪ねて下さい。それととりあえず1ヵ月分の保存食を今用意させますのでそれも持って行って下さい。保存食が足りなくなったり、何か必要な物資があったら私かツーヤのARCUSに連絡してください。その時にフィーさん達が必要と思った物資を用意しますので。」

「わかった。何から何まですまない。」

フィーの要求に答えたプリネの話を聞いたマキアスはプリネに頭を下げたその時、お腹の鳴る音が聞こえて来た。



「え、えっと……もしかして皆さん、昨日の襲撃以降何も食べていないんですか?」

お腹の鳴る音を聞いて何かを察したツーヤは苦笑しながらフィーたちを見つめて尋ね

「今朝、フィーが取ってきた食べても大丈夫な木の実は食べたんだけど……」

「育ち盛りの僕達にとっては全然腹の足しにならなかったよ……」

「二人とも贅沢を言いすぎ。今からそんな事を言ってたら、この先、生きていけないよ?というかわたし達は他のみんなと比べれば滅茶苦茶恵まれているよ?食料や物資の補給の心配はないし、貴族派に指名手配されているけど、ここはメンフィル領だから最低限の警戒程度で街の中を堂々と歩けるし。」

エリオットとマキアスの話を聞いたフィーはジト目で指摘し、フィーの指摘を聞いたプリネとツーヤは冷や汗をかいた。



「ア、アハハ……そういう事でしたら食事も用意させますので、この館を出る前にそれも食べて行って下さい。勿論、栄養満点の食事を出すように言っておきます。」

「あ、ありがとう……!」

「感謝。」

「ううっ……しばらく食事は保存食続きになるだろうから、今の内にしっかりとまともな食事の味を味わっておかないとな……」

「え、えっと……保存食とは言ってもそれなりに味付けはしてありますから、そんなに不味くはありませんよ?」

プリネの申し出を聞いて疲れた表情で呟いたマキアスの言葉を聞いたツーヤは苦笑しながら指摘した。その後プリネの好意によって栄養満点の食事をご馳走になった3人はプリネが手配した長期間分の保存食を受け取った後領主の館を出て今後に備えて行動を開始した。





~アイゼンガルド連峰・峡谷地帯~



「それでは皆様、お兄様が目覚めるまでの間、よろしくお願いします……!」

「ええ、任せて♪恋する純情可憐な乙女の味方である私が鍛えてあげるんだから、ご主人様が目覚める頃にはご主人様もビックリするくらい強くなっているわよ♪」

「リィンの為にもできる限り、私も協力するわ……」

「ふふふ、”七大罪”の一柱、”精霊王女”、そして”古神”直々に鍛えられる人物は貴女が歴史上初でしょうね。」

「アハハ……確かにそうですよね。普通の人ならその中の一人にすら、一生の中で会えるかどうかわからないんですから。」

セレーネに真剣な表情で見つめられたベルフェゴールはウインクし、アイドスは微笑み、静かな笑みを浮かべるリザイラの言葉にメサイアは苦笑し

「改めて思ったけど異種族だけでなく”魔王”に”精霊王”どころか、”女神”や”竜”にまで愛されているこの子の女運は一体どうなっているのよ…………まあ、”あの女”や”結社”の連中との戦闘になった時に対抗できるから、こっちとしてもありがたいけど。」

その様子を見ていたセリーヌは呆れた表情で眠り続けているリィンを見つめていた。





~同時刻・ノルドの集落~



「リィン………………」

(アリサ…………)

ノルドの集落の中で空を見上げて想い人を心配するアリサの様子をミルモは心配そうな表情で見守っていた。



そして―――――クロウ達”帝国解放戦線”によるトリスタ襲撃から1ヵ月近く経った………………






 
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