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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第189話

学院祭が終わり、来場客達が次々と帰り、生徒達が後片付けをしている中、リィン達は教室に集まり、それぞれ燃え尽きたかのようにジッと椅子に座っていた。



~1年Ⅶ組~



「…………はあ…………」

「……疲れました……」

「……はい……でも成功して本当によかったです……」

「……おなか減った……」

「さすがにガス欠かも……」

「あたしもこれ以上はもう無理です……」

「……眠い……」

「エヴリーヌお姉様……気持ちはわかりますが……今は寝ないように頑張ってください……」

「ステージ……”成功”でいいのよね……?」

仲間達がそれぞれ疲れた表情をしている中、アリサは不安そうな表情で問いかけ

「一応、盛り上がっていたのは確かのようだが……」

「フン……観客席のことまで気にしてる余裕などあるものか……」

「フフ……それがプロの役者や演奏家との違いであろうな……」

アリサの問いかけを聞いたガイウスはコンサートの状況を思い返し、ユーシスの言葉を聞いたラウラは苦笑した。



「あはは……心配しなくてもちゃんとやり切れたと思うよ……?」

「おお、4曲目と5曲目もバッチリ狙った以上の反応だったしな……」

「はは……それに関してはクロウの戦略勝ちか……」

エリオットとクロウの話を聞いたリィンは苦笑しながらクロウを見つめた。



「フン、だらしないな。」

するとその時パトリックが教室に入ってきた。

「パトリック……」

「……なんだ、君か……」

「まったく、これだから”Ⅶ組”の連中は……いくら疲れたとはいえ、あまりにダラけすぎだろう。」

Ⅶ組の面々の様子を見まわしたパトリックは呆れた表情で呟いた。



「フン……余計な世話だ。」

「ふふ、ステージの熱が引くまではしばし容赦してもらいたい。」

「それより……Ⅰ組の舞台も凄かったな。」

「はい……わたくし、感動しましたわ……」

「うんうん……まさかあそこまで本格的だとは思わなかったよ……」

「ふふっ、フェリスもまさにハマリ役って感じだったし……」

「とても楽しませてもらった。」

「ええ、Ⅰ組の劇も間違いなく大成功だと思いますよ。」

「そ、そうか……まあ僕達の実力をもってすれば当然と言えば当然の反応だが……

リィン達の感想を聞いたパトリックは嬉しそうな表情をしたが、リィン達のコンサートの状況を思い出して我に返って突っ込んだ。



「―――って、嫌味か!と、とにかく!君達がそんな調子でいたら僕達の立場がないだろう!とにかくシャキッとしたまえ!」

「えー、めんどくさい。何でエヴリーヌ達がお前なんかの言う事を聞かないと駄目なの?」

「……?」

「何のことだ……?」

パトリックの注意にエヴリーヌは嫌そうな表情をし、フィーとマキアスは不思議そうな表情をし

「おっと、ひょっとして貰っちまったか……?」

「も、貰ったって、まさか……!」

ある事を察したクロウの言葉を聞いたツーヤは目を見開いた。



「グッ……―――フン。あの4曲目以降は卑怯だろう。僕もつい一緒に歌ってしまったしその意味でも今回の勝負は無効だ!それじゃあな!」

クロウの言葉を聞いて唸り声を上げたパトリックは言い訳をした後教室から出て行った。

「なにあれ……?」

「意味わかんない。」

パトリックが出て行った後ミリアムとエヴリーヌはジト目になり

「うーん……嫌味を言いに来ただけじゃなさそうだが……」

リィンは考え込んでいた。



「君達、やったわね!」

するとその時サラ教官とレーヴェはトワ達と共に教室に入ってきた。

「教官、先輩達も……」

「どうかしたんですか……?」

「アンタたちねぇ……すっかり忘れてるんじゃない?」

「フッ、結果を確かめない所がまだまだ未熟だな。」

リィンとアリサの質問にサラ教官は呆れ、レーヴェは静かな笑みを浮かべ

「来場者のアンケートによる学院祭の各出し物への投票……事前に聞いているはずだろう?」

ジョルジュがリィン達に問いかけるとリィン達は顔色を変えた。



「あ……」

「……それがあったか……」

「すっかり忘れてましたね……」

「まあ、あれだけ忙しかったのですから無理、ないですよ……」

「ええ………」

エマの言葉にプリネとツーヤは苦笑しながら頷き

「でも、ひょっとして……?」

ある事を察したエリオットは興味津々な様子でサラ教官達を見つめた。



「在学生、一般来場者からの投票を集計し終わったよ。どこもかなり健闘していたが最終的にはⅠ組とⅦ組に絞れてね。」

「得票数1700票!Ⅶ組のステージがⅠ組のステージに200票の差を付けて見事一位に輝きましたー!」

「あ……」

「……そうか……」

「フッ……」

「当然の結果だね……」

トワが嬉しそうに報告するとエマとリィン、ユーシス、エヴリーヌは静かな笑みを浮かべた。



(フフ、やったわね♪)

(まあ、私達も力を貸したのですから当然の結果ですね。)

(クスクス……でも、私達もリィン様達のお手伝いができてよかったですね。)

(とても楽しい時間だったわ……)

ベルフェゴールとリザイラの念話を聞いていたメサイアは微笑み、ステージでの出来事を思い返したアイドスは静かな笑みを浮かべ

(わーい!わたしたちの勝ちだ!)

(フフン、中々楽しませてもらったワ♪)

ミルモは無邪気な笑顔を浮かべ、ヴァレフォルは得意げになり

(うむ!当然の結果だな!)

(ま、精霊女王たるこの私に魅了されたのですから、当然の結果ですわね。)

(う、う~ん……多分、アイドスに魅了されたからだと思うんだけど……)

アムドシアスと共に自慢げに胸を張っているフィニリィの念話を聞いたペルルは苦笑した。



「オイオイ、反応薄いじゃねーか。もっとヒャッホウとか小躍りしてもいいんだぜ?」

「正直、騒ぐほどの元気ももう残っていませんので……」

「はは……終わってみればどのクラスも凄くレベルが高かったしな。」

クロウの指摘にツーヤとリィンは苦笑しながら答えた。

「弟たちも随分と楽しんで回っていたようだ。」

「みっしぃパニックとかけっこう楽しかったし……」

「その意味で、僕たちだけが誇るのも違う気がするな……」

「あえて言うなら学院生全員の勝利と言うべきか……」

「ふふっ……まさにそんな感じね。」

「何それ。じゃあ、エヴリーヌ達が勝った事は無駄だったの?」

「フフ、そんな事はありませんよ、エヴリーヌお姉様。」

ガイウス達がそれぞれ感想を言い合っているとサラ教官が手を叩いて自分に注目させた。



「さあ、ちょっとは復活しなさい。これから”後夜祭”があるのを忘れたわけじゃないでしょうね?」

「そ、そうだった。」

「素で忘れてたかも。」

「”士官学院祭”を締めくくる学院生と関係者の打ち上げ……」

「たしか篝火をたいて……ダンスとかもあるんだっけ?」

「えへへ、みんなの家族や知り合いも待ってるよー。」

「篝火の準備も完了してるからボチボチ向かうといい。」

後夜祭の事について興味津々な様子でいるリィン達にトワとジョルジュがそれぞれ説明した。

「よし―――これで今日は終わりだ。何とか気力を振り絞ってグラウンドに向かおう……!」

「ええ……!」

「あはは、打ち上げだー!」

その後リィン達はグラウンドに向かい、グラウンドに到着するとすっかり日も暮れ、篝火がグラウンドを照らしていた。



~夜・グラウンド~



「あ……お祖父様たち。」

「父さんも残っているのか……」

「兄上も……まったく物好きなことだ。」

「フフッ、それを言ったらお父様達もですよ。」

「というか”神殺し”達やエステル達もいるね。」

「ふふっ、そうですね。」

「エリオット、クロウ。」

それぞれの家族に挨拶をする為にⅦ組のメンバーが向かっている中、リィンがエリオットとクロウを呼び止めた。



「ありがとう――――本当にお疲れ様だったな。」

「あはは……ステージのこと?」

「なんだなんだ。どういう風の吹き回しだ?」

リィンにお礼を言われたエリオットは苦笑し、クロウは目を丸くして尋ねた。



「いや、今回のステージは2人とアムドシアスさんの努力があってこそだからな。改めてお礼を言いたくなったんだ。アムドシアスさんにも後で改めてお礼を言うつもりだ。」

「か~、ムズ痒いこと言いだすんじゃねーっての。」

「あはは……何よりもみんなの頑張りがあったからだよ。リィンにだって色々と相談に乗ってもらったしね。それに……お礼を言うのは僕の方かな。」

「え……」

エリオットの口から出た予想外の言葉を聞いたリィンは目を丸くしてエリオットを見つめた。



「みんなのおかげで音楽の大切さを改めて認識できた……単に自分の演奏だけじゃなくて……みんなで共に高め合い、良くしていくとの大切さを。……だからありがとう。この学院に来て本当に良かった。」

「エリオット……」

「ったく、恥ずかしい台詞を揃って連発しやがって……」

「おお、エリオット!こっちだぞ~!」

エリオットの言葉にクロウが呆れていると聞き覚えのある男性の大声が聞こえて来た。



「も、もう……あんな大声で。ごめん、先に行くね。」

「ああ、また後でな。」

そしてエリオットはクレイグ中将とフィオナの元へと走って向かった。



「はは……ここまで盛り上がったからにはまた来年もやりたいな。2年に上がったら”Ⅶ組”がどうなるかは聞いてないけど……」

「……………………」

「クロウ?」

自分の話を目を閉じて黙って聞いていたクロウに気付いたリィンは不思議そうな表情でクロウを見つめた。



「ん、ああ……基本、クラス分けは1年からの持ち上がりだが……”Ⅶ組”はわからんなぁ。何せとことん規格外だからよ。」

「それもそうか……それに……来年はクロウもいなくなってるんだよな。」

クロウが来年卒業する事を思い出したリィンは複雑そうな表情をした。

「無事、卒業できたらな。”Ⅶ組”に所属するのも予定通りなら今月いっぱい……お前らと同じクラスなのもそろそろ終わりってことだ。」

「そういえば……そういう話だったな。……しかしそうか……だったら今月末くらいには送別会をやりたい所だな。」

「ああ、いらんいらん。どうせこれからも学院内でしょっちゅう顔を合わせんだろ。寮は一応引き上げるつもりだがシャロンんさんのメシ目当てに週一でたかりに行くつもりだしな。

リィンの提案を聞いたクロウは呆れた表情で答えた後静かな笑みを浮かべた。



「はは、そっか。その……できれば呼び方はこのままでいいか?今更”先輩”付けに戻すのもちょっと寂しいっていうか……」

「はは……当たり前のことをわざわざ確認してんじゃねぇよ。―――そうだ、いい機会だからこいつを返しておくぜ。」

ある事を思い出したクロウは懐からコインを取り出してリィンへとトスした。



「これは………」

トスされたコイン―――50ミラを見たリィンはクロウに貸していた50ミラを思い出した。

「すっかり忘れてたよ。あれから、一緒にエリスを助けてステージも手助けしてくれて……そんなのじゃ足りない程色々してもらったと思うんだが……」

「そりゃ、お互い様ってやつだ。こう言っちゃなんだが俺が借りたミラを返すのは相当珍しいんだからな?ま、素直に受け取っておきな。」

リィンに見つめられたクロウは答えた後ウインクをしてリィンを見つめた後背を向けて去り始めた。



「あ……」

その様子にリィンは呆けた後考え込み、そしてジト目で去って行くクロウを見つめて口を開いた。

「―――そういえば。貸して半年くらい経つけど利子の方はどうなってるんだ?」

「……やれやれ。守銭奴になったじゃねーか。」

リィンの話を聞いて立ち止まって振り向いたクロウは苦笑しながらリィンを見つめた。



「悪い先輩がいたからな。すっきり清算されるのもちょっと寂しい感じだし……どうかな?」

「ったく、甘ったれめ。わーった、そのうちにな。」

リィンに見つめられたクロウは苦笑しながら頷いた。

その後ダンスが始まり、生徒、来場客達がダンスを始めている中、オリヴァルト皇子はアルフィン皇女に近づいた。



「フッ、それでは我々も参加させてもらうとしよう。アルフィン、まずは景気づけと行こうか?」

「ふふっ、大変申し訳ありませんがわたくしには最優先で一緒に踊りたい方がいらっしゃいますので、お断りいたしますわ♪」

「おや……フフッ、なるほどね♪しかし困ったな……そうなると誰と踊るべきか……」

アルフィン皇女に断られたオリヴァルト皇子は目を丸くした後すぐに察して笑顔になった後困った表情をした。

「うふふ、それならレンがお相手を務めましょうか?ちょうどレンも相手を探していた所だし、今夜だけ特別にオリビエお兄さんのお相手をしてあげてもいいわよ?」

その時レンがオリヴァルト皇子に近づいてきた。



「フフ、レン君なら大歓迎さ。――――可憐なるリトルレディ、どうか私と踊って頂けますか?」

レンの申し出に静かな笑みを浮かべたオリヴァルト皇子は恭しく一礼をしてレンに手を差し出し

「――私でよろしければ、喜んで。」

対するレンも恭しくスカートを両手で摘み上げて上品に会釈をしてオリヴァルト皇子に手を取って、オリヴァルト皇子と共にダンスを始めた。



「さあ、見ていないで諸君も参加したまえ!」

「ふふっ、無礼講だから一緒に楽しみましょう♪」

ダンスをしているオリヴァルト皇子とレンはダンスをしながらリィン達を見つめて言った。

「それじゃあシャロンちゃん。お願いしてもよいかのー?」

「ふふっ、光栄ですわ。」

グエンに誘われたシャロンはスカートを両手で摘み上げて上品に会釈をして答えた。



「イリーナ会長。お相手をお願いできますか?」

「ふふっ、喜んで。お互いパートナーのいない身。気楽なもですね。」

「はは、確かに。」

イリーナ会長を誘ったレーグニッツ知事はイリーナ会長の言葉に苦笑した。



「―――サラ教官。娘が世話になっている。よろしければお相手願えないだろうか?」

「わわっ、いいんですか!?……うーん、つくづく渋くて好みなオジサマだわ……」

「ふむ……?」

「いえいえ、こちらの事です。」

アルゼイド艦長に誘われたサラ教官は驚いた後嬉しそうな表情で独り言を呟いていた。



「さて、小猫ちゃんたちの相手をする前に……まずは君に付き合ってもらおうかな?」

「それはいいけど……そのドレス姿はさすがにちょっと気後れするなぁ。」

アンゼリカに誘われたジョルジュは苦笑しながらアンゼリカを見つめた。



「あなた、私達も。」

「ああ。」

「フィオーラ。」

「はい、エリウッド様。」

「フフ、頑張ってくださいね、お父様、お母様♪」

イリーナの言葉に頷いたリウイはイリーナと手を取り合ってダンスを始め、エリウッド公爵夫妻もクラリスが見守る中ダンスを始め

「それじゃあ、あたし達もみんなと一緒に踊ろう、ヨシュア!」

「ハハ、了解。」

「エヴリーヌ!余達も続くぞ!」

「わかった……!わかったから、引っ張らないで……!自分で歩くから……!」

エステル、ヨシュア、リフィア、エヴリーヌも続くようにダンスを始めた。



「ミントちゃん、あたし達も一緒に踊ろうか。」

「うん!……でも、ミント、ダンスなんてできないよ?」

「フフ、あたしがリードするから安心して。」

「レーヴェ、私達も皆さんに続きましょう。」

「ああ。」

更にツーヤ、ミント、プリネ、レーヴェもダンスを始め

「……………………」

「セリカ様?」

(ほう?お主にしては珍しく気が利いているだの。)

静かにセリカに手を差し出されたエクリアは不思議そうな表情をし、ハイシェラは興味ありげな表情をした。



「あ……はい、私でよろしければ喜んで……!」

ハイシェラの念話を聞いてセリカが自分をダンスに誘っている事を察したエクリアは嬉しそうな表情で微笑みながらセリカの手を取り

「……俺はダンスはやったことはないから、お前に任せる。」

「はい、承りました。」

「それじゃあ余り者同士、私達も一緒に踊りましょう、レシェンテちゃん♪」

「わ、わかった!わかったから離れるのじゃ……!」

セリカ達に続くようにエオリアとレシェンテもダンスを始め

「ペテレーネ神官長。もしよろしければ、一曲お願いできますか?」

「え……わ、私ですか?」

「はい。かの”闇の聖女”殿と踊れる機会はそうそうないと思いますので。」

「ア、アハハ……―――わかりました。私でよろしければお願いします。」

そしてルーファスに誘われたペテレーネもダンスを始めた。



「す、素早いな……」

「お祖父様とシャロンはともかく母様まで……」

「フフ、我らよりも若々しいかもしれぬな。」

「最初の相手を既婚者……それも俺のクラスメイトの母親を選ぶとは何を考えているんですか、兄上……」

「フフッ、後でツーヤお姉様と一緒に踊ってもらいますわ♪」

その様子を見守っていたマキアスとアリサ、ラウラは苦笑し、ユーシスは疲れた表情でペテレーネと踊っているルーファスを見つめ、セレーネは嬉しそうな表情でツーヤを見つめた。



「はは……盛り上がってるな。せっかくだから俺達も少し踊るか?」

一方妹達と共に見守っていたリィンはエリゼとエリスを順番に見回し

「今日は十分すぎるほど付き合っていただきました。あんなに凄いステージをやり遂げてお疲れでしょうし……」

「それに――――こんな時ですからアリサさんを誘ってみてはいかがですか?」

「へっ!?な、何でそこでアリサが出てくるんだ!?」

エリスの話に続いたエリゼの言葉を聞いたリィンが驚いたその時

「ふふっ、何やら興味深い話が聞こえてきましたわね♪」

聞き覚えのある少女の声が聞こえて来た。



「で、殿下!?」

「ひ、姫様!?」

「一体何故こちらに?」

声の持ち主―――アルフィン皇女がリィン達に近づき、アルフィン皇女の登場にリィンとエリスは驚き、エリゼは目を丸くして尋ねた。



「それは勿論、リィンさんをわたくしのダンスのお相手をしてもらう為ですわ♪」

「え”。」

「ええっ!?」

「…………」

笑顔で答えたアルフィン皇女の話を聞いたリィンは表情を引き攣らせ、エリスは驚き、エリゼはジト目でアルフィン皇女を見つめた。



「リィンさん、突然で申し訳ないのですがどうかわたくしのダンスパートナーを再び務めて頂けませんか?」

「そ、そんな!俺よりもっと相応しい相手がいると思うのですが……!」

アルフィン皇女に誘われたリィンは謙遜した様子で答えたが

「わたくしにとって最も相応しい相手はリィンさん以外いませんわ。大変厚かましいと思われるでしょうがどうかわたくしの我がままを聞いていただけないでしょうか?リィンさんと一緒に踊る為に兄様にもわたくしと一緒に踊っている事を我慢していただきましたし……」

「う”……」

アルフィン皇女の話を聞いて断り辛くなり、表情を引き攣らせた。



「――――兄様。女性がダンスを誘っているのに、断るなんて失礼ですよ。」

「そうですね。姫様は兄様と踊る事を楽しみにしていたのですから、姫様の希望に可能な限り応えてあげるのも、例え他国の貴族だとしても”貴族”として当然の務めですよ?」

「う”……わ、わかった。――――殿下、俺でよろしければ一曲、お願いします。」

そして妹達に言われたリィンは恭しく会釈をしてアルフィン皇女に手を差し出し

「ふふっ、喜んで♪(ありがとう、エリス、エリゼさん♪)」

アルフィン皇女はスカートを両手で摘み上げて上品に会釈をした後嬉しそうな表情でリィンの手を握ってエリス達にウインクをし

(”貸し”一つですからね、姫様……)

(アリサさん達より、アルフィン皇女が一番油断できない相手かもしれないわね……)

アルフィン皇女に見つめられたエリスとエリゼは疲れた表情をした。その後アルフィン皇女とダンスをしたリィンはある程度ダンスをするとアルフィン皇女と共に斜面になっている場所に座って後夜祭の様子を見守っていた。






 
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