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お好み焼き

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2部分:第二章


第二章

「ええで」
「受けて立つ」
 毅然としたそれぞれの言葉だった。
「それで大阪の素晴らしさを味合わせたるわ」
「広島は負けんけえの」
「それを気が済むまでやれ」
 先生はまた二人に対して言った。
「それでわかったな」
「わかりました。そやったら」
「やる時は」
「ああ、それだな」
 実はまだそこまでは考えていなかった先生だった。話を振られてあらためて考える顔になり暫く時間を置いてから二人に答えるのだった。
「そうだな。それで御前等」
「はい」
 二人は同時に先生に答えてきた。
「何時でもいいんだな」
「うちの腕は何時でも万全でっせ」
「伊達に毎日やってるわけじゃないんじゃけえの」
 こうそれぞれ返事を返してきた。
「そやから何やったら今すぐにでも」
「やったるけえな」
「そこまで言うのならだ。まず道具を揃えて」
「家から持って来ますで」
「うちもじゃ」
 二人はこれについてはすぐに答えてきた。
「もうそれやったら屋台でもあるさかい」
「こっちも屋台も」
「随分用意がいいな」
 先生もこの手際のよさには感心はする。
「それに食材かて」
「どれだけでもあるんじゃんけえの」
 これもであった。
「すぐにでもできますで」
「もう今にでも。家帰って」
「まあ待て」
 流石にそれは止める先生だった。
「今はいい」
「ええんでっか」
「じゃあ何時なんですか?」
「今度の日曜だ」
 時間は先生が指定するのだった。これは教師の権限でいささか強権的だったがそうでもしないとこの二人は従わないのがわかっていたからだ。
「今度の日曜。いいな」
「ええ。何時でも」
「二言はありませんけえの」
 二人もそれで異存はないようであった。先生はそれを確かめてからまた言う。
「その間に宣伝をしとくか」
「宣伝!?」
「そうだ。今のところ知ってるのはこのクラスだけだな」
 声をあげたクラスの面々に対して答えた言葉だった。
「だからだ。他のクラスや学年にも勝負のことを知らせてだな」
「全校を巻き込むんですか」
「無差別テロみたいですね」
「その通りだ・・・・・・ってこら」
 生徒達の言葉に頷きかけたところで止まる先生だった。
「人聞きの悪いことを言うな。俺は北朝鮮の工作員か」
「違うんですか?だって」
「この連中の騒動に巻き込むってやっぱり」
「この騒動を終わらせる為だ」8
 先生の主張ではこうであった。
「その為にだ。皆に確かめてもらうんだよ」
「皆にですか」
「そうだ。全校でこの二人のお好み焼きを食べてもらう」
 先生が言うのはそういうことだった。
「それでな。どっちが美味いかアンケートを取ってな」
「それで白黒つけるってわけですか」
「どうだ?」
 ここまで話したうえで皆に尋ねた。
「いい考えだろ。これなら話がすぐに終わるぞ」
「何か今日の先生冴えてるよな」
「確変ってやつか?」
 生徒達は先生の考えを聞いてもこれまでと態度を変えずにこう言うのであった。
「いつもはマジでゴリラブタなのによ」
「こりゃ明日台風と地震がいっぺんに来るな」
「・・・・・・あのな、御前等」
 言われっぱなしの先生も流石に腹に据えかねて彼等に言ってきた。
「俺を何だと思ってるんだ?」
「ですから先生だって」
「そう思ってるんですけれど?」
「嘘つけ、嘘を」
 少なくとも普段からボロクソに言ってくれていることはわかる先生だった。そうでなくてはここまで言う筈がないからである。これだけはわかった。
「まあいい。それでだ」
「ええ」
「これでいいな?」
 あらためて彼等に問うのであった。
 
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