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悔いあらためよ

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3部分:第三章


第三章

「もうね」
「さらにですか」
「そう、かなりです」
 また言うのである。
「絶対に驚かれるかと」
「左様ですか」
「特にはじまりの日です」
「はじまりというと」
「一年のはじまりの日です」
 その日が特にというのである。
「その日です」
「一体何があるのですか?」
「それはお楽しみに」
 今はこう言って多くを語らないパヴァロッティ神父だった。
「是非共」
「楽しみにですか」
「面白いものが見られますので」
 こうは言うが多くは言わないのであった。
「是非」
「わかりました」
 こうやり取りをして年末を迎えた。するとまずは。
 周りはキリスト教一色になった。ツリーが飾られ話題もクリスマスのことばかりである。ゴンザレス神父はこのことに感心することしきりであった。
「これはいいことです」
「いいことだというのですね」
「日本人も神を信じているのですね」
 満面の笑みでの言葉である。
「やはり」
「そうですね。信じていると思いますよ」
 その彼に対するパヴァロッティ神父の言葉である。
「それは間違いありません」
「何か引っ掛かる物言いですね」
 パヴァロッティ神父の言葉に顔を向ける。今二人はクリスマスのその街の中を歩いている。音楽はクリスマスを祝う歌ばかりだ。まさに神を祝福する中であった。
 その中で、である。ゴンザレス神父は言うのであった。
「ここまで神を讃えているというのに」
「またわかりますよ」
 しかしパヴァロッティ神父は笑顔でこう返すだけである。
「やがて」
「やがて、ですか」
「まずはクリスマスは静かに楽しみましょう」
 それはそのままだという。
「そして」
「そして?」
「一年の終わりと一年のはじまりを迎えましょう」
 それもだという。
「それで宜しいでしょうか」
「ええ、それでは」
 ここでゴンザレスはまた神の僕として応えるのだった。
「神を讃えるその言葉を聞いて」
「そうですね」
 今ゴンザレス神父は喜んでいた。そのうえで聖夜を迎えた。二人の神父はその夜をワインとささやかな食べ物で質素に祝った。そうして一年の最後の日の夜は。
 また二人は外にいた。一年の最後の日の夜を二人で歩いていた。これもパヴァロッティ神父の誘いである。ゴンザレス神父はこの夜は顔を顰めさせていた。
「あの」
「何か?」
「何なのですか、今日は」
「何なのかといわれますと」
「あのクリスマスまでは何だったのですか」
 彼は顔を顰めさせてパヴァロッティ神父に問うていた。
「あの神を讃えていたのは」
「今は違うというのですね」
「この鐘の音は」
 今夜の街に鐘の音が鳴り響いていた。しかしその鐘の音はゴンザレス神父が知っている鐘の音ではなかった。その鐘の音は。
「仏教の鐘の音ではありませんか」
「その通りです」
「何故急に仏教に!?」
 彼は怪訝そのものの顔でパヴァロッティ神父に問うのだった。
 
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