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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第175話(インターミッションⅡ終了)

~ユミル渓谷~



「ハア、ハア、ハア…………」

奥義を放ち終えたリィンは突如襲ってきた疲労によって息を切らせ

「魔獣が……!」

「消えて行く……」

「それに……吹雪も止んでいくぞ………!」

仲間達は消えて行く魔獣や止み始めた吹雪に驚いていた。



「やったの!?」

「ああ……もう気配は感じない……石碑に封じられた何かが還って行ったみたいだ……」

「フウ、手強い相手だったな……」

「物足りない。どうせなら悲鳴をもっと上げさせながら殺したかったのに。」

「エ、エヴリーヌさん……」

リィンの言葉を聞いて危機が去ったことを察したマキアスは安堵の表情で溜息を吐き、不満そうな表情で呟いたエヴリーヌの言葉にセレーネは呆れた表情になった。



「さっきのあなた……まるで別人みたいだったわ……フフッ、何だか殻を1つ破ったみたいね?」

「みんなのお蔭さ……みんなが俺を……俺の力を受け入れてくれた……だからこそ、俺は自分自身を受け入れる事ができたんだ……!―――ありがとう、みんな!」

アリサの言葉に頷いたリィンは明るい表情で仲間達を見回した。



「フフ、そうか……」

「とにかく、よかったですね……異変も収まりましたし……これで一件落着でしょうか?」

「……………」

「ハア……ほっとした~……」

「いや……―――まだだ。」

「何だと?」

仲間達がそれぞれ安堵している中、真剣な表情で呟いたリィンの言葉を聞いたユーシスは警戒の表情で周囲を見回した。



「―――いい加減、高見の見物は終わりにしたらどうだ!?姿を現してもらうぞ!怪盗”B”!」

そしてリィンがある方向を見つめて叫んだその時!

「ハッハッハッ……!いい物を見せてもらったよ……!そしてよくぞ我が正体を見たり……!その慧眼には素直に評そう」

なんと執行者―――”怪盗紳士”ブルブランが現れ、手を叩いてリィンを称賛した!



「あ、あの人は……!」

「確か帝都の宝物店で王冠を盗んだ……!」

「うむ……怪盗”B”だったか……」

「ガケの上から全部見ていたんだね……」

(へ~……”怪盗”ねぇ?)

ブルブランを見たエリオットとセレーネは驚き、ラウラは真剣な表情でブルブランを警戒の表情のフィーと共に睨み、エマの身体の中にいるヴァレフォルは興味ありげな表情をしてブルブランを見つめ

「へえ?あいつが前にプリネを狙っていた……ちょうどいいや♪」

エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべてその場から転移して消え

「さて……自然の”理”を己の欲望の為に使った者には裁きを与えなければいけませんね……」

更にリザイラがリィンの傍に現れた後エヴリーヌに続くように転移魔術で消えた!



「帝都で遭遇してから3ヶ月ぶりくらいか……―――今回のユミルの異変はあなたの仕業だな!?」

「いかにも!」

「どうしてこんな事を……!」

「チッチッ、質問が違うのではないかね?君はこう尋ねるべきだ………『どうして自分に興味を示すのか』と。」

「なっ……!?」

ブルブランの指摘にリィンは驚いた。



「フフフフフフ……!改めて名乗らせて頂こう!ハッ!!」

そして高笑いをしたブルブランが跳躍したその時!

「くふッ♪撃ち落してやるよ♪」

「な―――グアッ!?」

なんといつの間にか空中に転移魔術で現れたエヴリーヌが神速の矢を連続で放ち、放たれた矢はブルブランの右腕を貫き、右腕を貫かれたブルブランは地面に叩きつけられた!



「グッ……!”魔弓将”、改めて名乗ろうとしている所で邪魔をするなど無粋ではないか……!」

血を流している右腕を庇いながら立ち上がったブルブランはエヴリーヌを睨んだが

「くふっ♪わざわざ名乗って、隙を作るそっちが悪いんだよ♪さっきはエヴリーヌ達を氷漬けにしたんだから、今度はそっちを氷漬けにしてやるよ♪――――凍っちゃえ!氷垢螺の絶対凍結!!」

「うおおおおおおおおおっ!?」

そしてエヴリーヌが片手に溜め込んだ膨大な魔力を解放するとブルブランの周囲に絶対零度の猛吹雪が発生してブルブランの身体を氷漬けにし

「闇に呑まれちゃえ!―――崩壊のディザイア!!」

「グアアアアアアア―――――ッ!?」

エヴリーヌが続けて放った魔術によって発生した暗黒の霧に包まれたブルブランは悲鳴を上げた!



「―――おのが欲望の為に自然を……精霊を利用した事を”精霊王女”である私が許すとお思いですか?」

するとその時崖の上空にリザイラが転移魔術で現れ

「氷の精霊よ!雪の精霊よ!風の精霊よ!そして大地の精霊よ!己の欲望の為に自然を利用した愚かにして(よこしま)なる者に自然の裁きを与えなさい!」

膨大な魔力を両手に掲げて解放した!するとその瞬間、地鳴りがした後崖の上から雪崩が現れ、雪崩はブルブランを襲った!

「な―――――――」

そしてブルブランは雪崩に呑み込まれ、雪崩はそのまま山の斜面に沿って流れて行き、雪崩に巻き込まれたブルブランは山の麓まで流された!



「…………………………」

その様子を見守っていたリィンは口をパクパクさせ

「な、雪崩を人為的に起こすなんて……!」

「ひ、非常識な……」

「もはや歩く自然災害と言ってもおかしくないぞ。」

「リザイラであるからこそ、今のような事ができるのだろうな……」

「ええ……彼女は何といっても自然と同調している”精霊”を統べる”精霊王”と同等の存在ですからね……」

アリサは信じられない表情をし、マキアスとユーシスは疲れた表情をし、ガイウスの言葉にエマは重々しい様子を纏って頷き

「雪崩に巻き込まれてしまったあの方……大丈夫でしょうか?」

「気にする必要はないと思う。今回の元凶で”結社”の”執行者”だから、むしろ今ので死んでいたらラッキーだね。」

「ア、アハハ………さすがにちょっと可哀想な気がしてきたよ。」

「まあ、名乗る暇すら与えて貰えなかったのだからな。」

心配そうな表情をしているセレーネに答えたフィーは静かに呟き、エリオットは冷や汗をかいて苦笑し、ラウラは困った表情で雪崩が去った場所を見つめていた。



「くふっ♪元凶にもお仕置きをしたし、これで一件落着でいいんじゃないの?」

「あ、ああ……それじゃあ、戻ろうか。(というか、エヴリーヌさんとリザイラの問答無用な攻撃のお蔭で怪盗”B”が何の為にこんな事をしたのか、全然聞けなかったんだが……)」

そしてリィン達はユミルへと戻って行き、ユミルに戻った後リィン達は線路の雪だまりを除去し終えた後動けるようになったケーブルカーで帰る事にし、シュバルツァー男爵達に見送られようとしていた。

~ユミル・ケーブルカー乗り場~



「そうですか……もう出発するのですね……」

「はい……予定より少し遅れてしまいましたが、父さん、母さん……元気で……」

残念そうな表情をしているルシア夫人の言葉に頷いたリィンはシュバルツァー男爵とルシア夫人を順番に見回した。



「本当にお世話になりました……!」

「気を付けてな。」

「兄様や皆さんにはもっとごゆっくりして頂きたかったのですが……」

両親と共にリィン達を見送るエリスは残念そうな表情でリィン達を見回した。



「”身喰らう蛇”がまさかユミルに姿を現すなんてね……それでリィン。”怪盗紳士”はリザイラが起こした雪崩に巻き込まれたそうだけど死んではいないのね?」

「はい、リザイラの話では山の麓まで流されたけど生きている事はユミルの山に住む精霊達に聞いたようです。」

「そう。チッ、そのままくたばってくれたら”執行者”が一人減ってラッキーだったんだけどね。」

「だったら、次に会った時はエヴリーヌが殺してあげるよ、キャハッ♪」

リィンの答えを聞いて舌打ちをしたサラ教官と凶悪な笑みを浮かべて言ったエヴリーヌの物騒な発言を聞いたリィン達は冷や汗をかいた。



「今回の狙いは結局何だったのかわからずじまいだったけど……」

「テロリストに手助けしているくらいだ……組織として他の狙いが何かありそうだが……」

「”身喰らう蛇”……一体何を目的としている組織なのでしょう?」

アリサとガイウスと共に考え込んでいるセレーネは不安そうな表情をした。



「どちらにせよ、彼はこれだけの事件を起こして見せた……油断できない連中なのは、間違いないだろう。次に出会う時の為にも、俺達はもっと成長しないとな……!」

「うん、頑張らないと!」

「フフッ、リィン。どうやら老師の宿題は解けたようだな?」

決意の表情のリィンの言葉にエリオットは力強く頷き、微笑ましそうに見守っていたシュバルツァー男爵はリィンに尋ねた。



「はい……正しいかどうかはわかりませんが、今まで俺は自分の中にある得体のしれない”何か”を畏れ……どこかで自分を誤魔化していました。父さんと母さん、そしてエリゼとエリスに後ろめたく思うあまりに……

「リィン……」

複雑そうな表情で語ったリィンをルシア夫人は心配そうな表情で見つめた。

「でも、やっぱり俺は俺自身の真実を無視できません。この身に眠る得体のしれない”力”がなんなのか……そして12年前、俺を吹雪の中に残して行ったのは誰なのか、知りたい……それが偽らざる本心です。」

「兄様……」

「エリス、心配しないでくれ。俺はどこにも行かないからさ。」

「え……」

「俺が俺を知りたいのは真の意味で”リィン・シュバルツァー”でありたいからだ。胸を張って大切な家族の一人として……そして仲間の一員である為に、俺は何としてでも真実を見つけたいと思うんだ。」

「どんなに厳しい真実だとしてもか?」

決意の表情で語ったリィンの話を聞いたシュバルツァー男爵は真剣な表情で問いかけた。



「はい。受け止めるだけの器を養って見せます……!トールズ士官学院で、みんなと共に成長する事で。」

「そうか……いい仲間を持ったようだな。―――合格だ。これを受け取るがいい。」

リィンの答えに満足したシュバルツァー男爵は懐から巻物を取り出した。



「この巻物は……」

「八葉一刀流”中伝”目録。お前が剣の高みに可能性を示した時に渡して欲しいと、先日ユン老師から託されていたものだ。」

「老師が……!」

シュバルツァー男爵の説明を聞いたリィンは目を見開いた。

「ハハ、彼もお前の成長を期待してくれたのだろう。謹んで受け取るがいい。」

「確かに……賜りました。」

シュバルツァー男爵が持つ巻物を受け取ったリィンは嬉しそうな表情になった。



「よかったね、リィン!」

「おめでとうございます、お兄様!」

「受け取ったからには今後は一層励む事だな。」

「ああ、勿論だ!」

エリオットとセレーネはリィンを祝福し、口元に笑みを浮かべるユーシスの言葉にリィンは力強く頷いた。



「フフッ、私からも祝福させてもらおうか。」

「アンゼリカ先輩……」

「この調子だと、”例の返事”も期待していいのかな?」

「アンちゃん………導力バイクの件だね。」

アンゼリカの問いかけを聞いたトワは静かな表情でアンゼリカを見つめた。



「ああ……―――リィン、心は決まったか?」

「はい!ありがたく受け取らせて頂きます……!」

「そうか……!」

リィンの答えを聞いたアンゼリカは満足げな表情で頷いた。



「でも、預かるだけですよ?いつか先輩が戻ってくると信じていますから!」

「………………フフッ、ハッハッハッ……!これは一本取られたな……!わかった、その時まで君に預かってもらうとしよう。」

リィンの答えに呆けたアンゼリカは突如笑い出した後口元に笑みを浮かべてリィンを見つめた。

「はい。」

「ふふっ、アンちゃん嬉しそう♪」

「フフッ、今回の旅行も貴重な経験になったみたいね?……おっと、そろそろ時間よ?」

「あ…………」

サラ教官の言葉を聞いたリィンは時計を見てケーブルカーの発車時刻である事に気付いた。



「リィン、次の休暇にまた帰ってくるがいい。今度はエリゼと一緒にな。」

「フフ、このユミルこそがあなたの故郷(ふるさと)なのですから……」

「はい!」

両親の言葉にリィンが頷くとケーブルカーの発射を知らせるベルが鳴り響いた。



「どうかお元気で……!兄様、学院祭、楽しみにしていますから……!」

「ああ、待っているよ。―――それじゃあ、また……!」

そしてリィン達はケーブルカーに乗り込み、ユミルから去って行った。



こうして……小旅行はトラブルもあったが、何とか無事に終え……学院に戻ったリィン達は学院祭の準備に向けて猛特訓を始めた…………






 
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