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緋弾のアリア-諧調の担い手-

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第四話



時夜side
《自宅・自室》
AM:7時14分


「……もう、朝か」


擦れた声で、そう呟く。
声とは裏腹に。今日は寝惚ける事もなく、自然と起きる事が出来た。

うん、お目々も遅くまで起きていた割にはパッチリだ。
昨日は美咲の対処に追われて、図書館では結局の所、勉強する事が出来なかった。

だって、人の顔を見る度に瞬間沸騰機の様に顔を真っ赤にして意識を手放す。結局原因は解らなかった。
それの繰り返しを何度続けた事か。イリスには朴念仁とよく言われるし、よく解らない日であった。

流石に放っておく事も出来ない故に。
結局は読書感想を書く為に本を借りただけで、勉強は家で行ったのだ。

それで普段より、少し遅い時間帯まで起きていた、ウチの学校は先にも言った様に宿題が多い。
その為か、大学生の頭脳を持つ俺でも少し時間が掛った。

締めきられたカーテンの隙間から漏れる陽光から察するに、今日もいい天気なのだろう。
網戸からそよぐ、心地よい朝風が俺の顔をくすぐる。


「……さて、起きようか」


そうして、ベッドから起き上がろうとすると―――


「…な、なんだ……?」


思わず、その現象に戸惑う。
まるで何かに押さえ付けられているかの様に、身体が微動だにしない。

昨日のフィアの時とは違い、腕一本だけではない。
身体全体が言う事を聞かない。これは、俗に言う…。


「…金縛りってやつかな」


実際に体験するのは初めてだ。
よくテレビとかでは体験談とかは聞くが、本当に身体が動かなくなるんだな。

……実に、興味深いな。いや。そんな、悠長に思案している場合ではない。

こういう場合、一体どうすればいいのだろう?対処方法が全く見当がつかない。

俺は唯一身体で動く首を若干であるが浮かして、自身の身体を確認する。
そこで、俺は自身が着ているタオルケットが異様に膨れている事に気付いた。

そして冷静になると、人肌の様な柔らかさと暖かさを感じられる。
とりあえずの所は、金縛りという訳ではなさそうだ。

ひとまず肩の荷を下ろす。なんだろうか。また昨日の様にフィアが入ってきたのか?


「…いや、それにしたって」


それにしては膨れ過ぎだろう。薄地のタオルケットの為にシルエットが浮かび出る。健やかな寝息をたてているのか、布越しに身体が僅かに上下する。

ソフィアの容姿は五歳児並みの身体年齢の為に、ここまで膨れる事はない。
シルエットに映る姿も違う。目測だが、見た目は俺と同年代位だろう。

仮にだが、絶対に無いがリアが入ってきていた場合は今の場合よりも膨れ上がる。
―――ならば一体誰なのか?

唐突に、そして自然に出てくる疑問。得体の知れない正体。

―――コレハダレダ?

そこに思わず、若干の恐ろしさを感じる。
そう感じて、俺は動く事が出来ずにいた。背筋に嫌な汗が伝う。

声を出す事も躊躇われる。だが、此処で行動しなければどうしようもない。


「……おい、起きろよ。誰だか知らないけど」


俺は恐る恐る声を掛ける。


「……んっ?」


そう声を掛けると相手は俺の上で身じろぎをする。
声から察するに女性の様だ。

タオルケットの中から、か細い腕が俺の顔に向かって伸びてくる。
…早くこの場から逃げたい。

自身の部屋なのにまるで自身の部屋ではない様に感じる。
先程まで心地よかった朝風さえも、肌に触れる度に怖く感じる。

心臓が嫌な鼓動を始める。

けれど、俺は動きたくても動けない、女性が俺の身体に乗っかっているからだ。
それもあるが、俺の心境的に動けないでいた。

この間見た、夏の恐怖特集の映像が頭の中で再生されていたからだ。

今の俺と同じ様に、女性の霊に金縛りにあった男性の話が過る。
その男性がどうなったのかは、あまり考えたくはない結末だ。

髪の長い女性の霊に頭を爪で刺し貫かれる。

今まさに、俺の頭に向かって手が届こうとしていた。
その手は俺の頭に絡み付く、そうしてタオルケットの中から長い栗色の髪の少女が出てくる。


「………んっ?」


恐怖を余所にして、俺は出て来た少女に見覚えがあった。
美しい栗色の髪をした、幼いながらにも整い、完成された美しさと言ったものがあった。


「……カ―――」


彼女の名前を呼ぼうとする前に、俺の頭は彼女の胸に包まれた。
未発達ながらも、そこには二つの丘が存在していて女性らしい柔らかさを有している。


「―――むっ?!むっ!!」


俺は息がしづらく、もがくがガッチリと固定されてしまった。
もがく度に、甘い匂いが俺を包む。女の子の匂いというヤツだろう。

更には足にも彼女のハリのある足が絡み付いて、俺の動きを完全に封殺した。
何時の間にか、恐怖は完全に消えていた。


「―――!!」


―――…不味い。
体の中心に血が集まる様な感じが俺を襲う。とある症状を知らせる感覚だ。

俺は必死に煩悩を払おうとするが、感覚は持続していく。
努力も虚しく、そうして俺はなってしまったのだ、父親の血筋である“HSS”に。




その後、俺が解放されたのは数十分ほど後の事であった。
俺はHSSも切れて、部屋の片隅で事故険悪していた。

未発達な少女の身体に性的興奮に陥ってしまった事に。


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