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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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インターミッションⅡ 帰郷~迷いの果てに~ 第170話

数日後、ザクセン鉄鉱山の事件によって”帝国解放戦線”は壊滅し……それとガレリア要塞での功績を認められたリィン達”Ⅶ組”のメンバー全員が帝都のバルフレイム宮に招かれた。



エレボニア皇帝、ユーゲントⅢ世。アルフィン皇女達の実の母君であるプリシラ皇妃。二人に拝謁し、労って貰った一方、リィン達は改めて帝国を二分する勢力の領袖たちに対面することになる―――



帝国各地を支配し、絶大な権力を持つ、”四大名門”と呼ばれる4人の大貴族。帝都と鉄道網を中心に改革を進める”鉄血宰相”と、その盟友たる帝都知事。リィン達を労いながらも、両勢力はテロリストの存在を巡って互いを牽制し、静かな火花を散らし続け……最後には、呆れ果てた顔になったユーゲントⅢ世に釘を刺されるのだった。



しかし、テロリストが壊滅したことで彼らを密かに支援したと見られる貴族派は表立って動きにくくなり……革新派も、独立問題でクロスベル方面が騒がしくなったことへの対処もあり……図らずも、帝国内部における対立はしばし小康状態に落ち着きそうだった。



そしてリィン達はオリヴァルト皇子の提案によってエレボニア皇家が用意した小旅行――――リィンの故郷である”温泉郷ユミル”への小旅行に赴く事になった。









10月3日―――





~”温泉郷”ユミル~



「うわ~……!」

「ここがお兄様の故郷ですか……」

「エリオット、セレーネ。上を見ながら歩くと階段から落ちるぞ。」

階段を登っていたリィンは自分の故郷を興味ありげな表情で見上げるエリオットとセレーネに忠告した。



「ご、ごめん。雰囲気のある建物だね。」

「ええ……それに今まで訪れた町では見かけない建物ですわね。」

「こちらが皆さんが宿泊する”鳳翼館”になります。その昔、時の皇帝陛下より恩賜されたという由緒正しい逗留施設です。」

「こ、皇帝陛下から……!?」

「シュバルツァー家と親交がある話は聞いていたが……」

案内役であるエリスの説明を聞いたマキアスとユーシスは驚きの表情で自分達が宿泊する逗留施設―――”鳳翼館”を見つめた。



「ハハ……マキアスもユーシスもそうかしこまる事はないさ。それにしても……まさかエリスが迎えてくれるなんて。……ビックリしたな。」

「兄様?シュバルツァー家の次女として皆さんをご案内するのは当然です。本来でしたらエリゼ姉様の役割なのですよ?」

「ハハ……エリゼは殿下の専属侍女長として忙しいから仕方ないよな……」

エリスにジト目で見つめられたリィンは苦笑しながら答えた。



「ここまでの道のりで見えた素晴らしいロケーション……赴きのある宿泊先……そして案内役は魅力あふれるリィンの妹君。俄然、温泉に入るのが楽しみになってきたね♪フフッ……なんだか今からのぼせてしまいそうだよ♪」

「アンゼリカさん……(よこしま)な事を考えていませんか?」

「絶対考えているね。あの眼はオリビエの眼と同じだもの。」

うっとりとした様子で自分達を見回したアンゼリカの言葉を聞いたアリサは冷や汗をかき、エヴリーヌは呆れた表情で指摘した。



「アンゼリカに同意する訳じゃないけど、ホ~ント、いい所ねぇ♪景色を(さかな)に酒が進みそうだわ♪」

「付き合いますよ、教官♪」

「んもう、アンちゃん!学生の飲酒はダメだからね?」

サラ教官の言葉に笑顔で答えたアンゼリカを見たトワは頬を膨らませて注意したが

「フフ、付き合うだけだよ♪――そうだ、トワもどうだい?」

アンゼリカはトワの忠告を笑顔で流して逆に誘った。



「ええっ!?ど、ど、どうしようかな……?」

アンゼリカに誘われたトワは驚いた後戸惑いの表情で考え込んだ。

「こ、この人達は……」

「どんな場所でも変わらないな……突っ込みたい気持ちはわかるが諦めろ、アリサ。」

その様子を見ていたアリサとマキアスは呆れ

「それだけ肚が座っているのだろう。」

「ガイウス、上手い。物は言いようだね。」

「ありがとう、フィー。」

ガイウスの言葉を聞いたフィーは感心し

「アハハ……みんな、気に行ってくれて何よりだ。来られなかったメンバーがいたのは本当に残念だな……」

「はい……お姉様と一緒に温泉につかりかったのですが……」

リィンは苦笑した後それぞれの所用によって小旅行に来られなかったクロウ、ミリアム、プリネ、ツーヤ、レーヴェを思い出してセレーネと共に残念そうな表情をした。





~逗留施設”鳳翼館”~



「お部屋はこの2階に用意してあります。今いる共用のロビーを挟んで左側が男性の皆さんのお部屋。右側が女性の皆さんのお部屋になります。上級性の皆さんやサラ様にもそれぞれ別室を用意させました。」

「私としてはトワもアリサ君達もぎゅうぎゅう詰めの同室がよかったんだけどねぇ?」

エリスの説明を聞いたアンゼリカは口元に笑みを浮かべてアリサ達を見回し

「私は別室で安心しました……」

「そだね。オリビエの女版なんて、性質が悪すぎだもん。」

安堵の表情で溜息を吐くアリサの言葉にエヴリーヌは頷き

「エ、エヴリーヌさん。オリヴァルト皇子に対して失礼ですよ?」

「うむ。オリヴァルト皇子と戦友の間柄で親しく、オリヴァルト皇子に対して軽口をたたく事は理解できるが、さすがにオリヴァルト皇子を侮辱するのはどうかと思うぞ?」

エヴリーヌの言葉を聞いて冷や汗をかいたエマはラウラと共にエヴリーヌに指摘した。

「みんなはオリビエの”本性”を知らないから、そんな事が言えるんだよ。あいつがリベールを旅していた時なんて、しょっちゅうナンパして、その後にエステルやシェラザードに武器で叩かれて漫才していたし。」

しかしエヴリーヌが呟いた話を聞いたリィン達全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「フフ、何かありましたら従業員をお呼びください。ユーゲント陛下とリウイ陛下の両陛下から言伝を賜り、誠心誠意皆様をもてなすと張り切っておりましたので。」

「えへへ、ありがとうございます!」

エリスの説明を聞いたトワは無邪気な笑顔を浮かべて答えた。



「早速部屋に荷物を置かせてもらいましょうか。」

「あ、委員長ちょっと待ってくれ。学院祭でするステージの打ち合わせをしたいから”Ⅶ組”のみんなは荷物を置いたらロビーに集まって欲しいんだ。」

「わかりました。」

「それじゃあ一時解さ……ん?どうした、エリス?」

エマに提案したリィンは自分の服を引っ張るエリスに気付いて不思議そうな表情で尋ねた。



「あ……に、兄様。その……」

「アハハ……心配しなくても屋敷には後で顔を出すさ。中途半端で帰ってきて、父さん達もエリスと同じで呆れているかもしれないけどさ。」

恥ずかしそうな表情で自分から顔をそむけているエリスの意志を理解したリィンは苦笑した後複雑そうな表情で呟いた。

「そ、そんな事はありません!私だって、とても楽しみに……」

「え?」

慌てた様子で否定した後何かを言いかけたエリスを見たリィンは首を傾げ

(うふふ、相変わらず初々しいわね♪)

(ふふふ、既に何度も交じり合っているというのに、相変わらずですね。)

(アハハ……微笑ましくていいと思いますよ。)

(フフ、それだけリィンの事を愛している証拠ね。)

その様子を見守っていたベルフェゴール達は微笑ましそうにエリスを見つめた。



「と、とにかくっ!お、お待ちしておりますから……!それでは皆さん、失礼致します!」

「フッ、微笑ましい限りだな。」

「ええ………お兄様の事を本当に大切に思っている証拠ですわ………」

「ハ~……やはり可憐だ……あの娘を見ていると私のリビドーがどうにも抑えられなくなってくるよ……」

顔を赤らめて走り去るエリスの様子をガイウスとセレーネは微笑ましそうに見守り、アンゼリカは酔いしれた表情をした。



「あのですね……」

「ふふっ、妹御の可憐さについては同意だな。リビドーとやらには理解しかねるが。」

「アハハ………ラウラは理解しなくていいさ。」

苦笑した後眉を顰めて考え込む仕草をするラウラを見たリィンは冷や汗をかいて苦笑した。



その後荷物を部屋に置いたリィン達はロビーに集合した。

~鳳翼館・ロビー~



「みんな、集まったみたいだな。」

リィンはソファーに座っている”Ⅶ組”の面々を確認した。

「ええ。」

「打ち合わせができるということは学院祭のステージ内容が詰め終わったという事か?演目は聞いたが、肝心の構成を聞いていなかったな……」

「フン、随分ともったいぶったものだ。」

マキアスの言葉に続くようにユーシスは鼻を鳴らしてリィンを見つめた。



「すまない。でも、エリオット達のおかげで何とか纏まったよ。」

「実習明けに伝える予定だったんだけど、小旅行をする事になるなんて思ってもいなかったからさ。」

「確かに……それなら致し方あるまい。」

「それにザクセン鉄鉱山の件が落ち着いてからすぐにヘイムダルに向かいましたしね……」

エリオットの説明を聞いたラウラとセレーネは納得した様子で頷いた。



「クロウとアムドシアスさんは僕とリィンに任せるって事だから早速発表するよ。演奏する曲は3曲。必要なのは導力楽器を演奏するバンドと男女と異種族のボーカルと、バックダンサーだね。」

「フム……かなり本格的だな……」

「さ、三曲もやるのか……?しかもバックダンサーまで……」

「よくわかんないけど、めんどくさそう。」

「エ、エヴリーヌさん……練習する前からそんな事を言わないで下さいよ……」

エリオットの説明を聞いたガイウスは考え込み、マキアスは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ジト目で呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたセレーネは呆れた表情になった。



「お客さんも一曲じゃ物足りないと思うし、インパクトを考えるとバックダンサーは必要かなと思って。それに三曲目はアムドシアスさん達――――リィン達が契約している異種族のメンバーばかりだから、実質僕達がやる曲の数は二曲だよ。」

「ま、エリオットがそう言うなら……」

「フン、見込みがあるなら特に拒む理由は無い。」

エリオットの説明を聞いたフィーは納得し、ユーシスも鼻を鳴らして同意した。

「ふふっ、これがステージの構成と当日の衣装案。」

そしてエリオットは”Ⅶ組”のメンバーにステージの構成と衣装案が書いてある書類を配った。



「……えっ!?」

(おっ!エマのソロボーカルか~!フフ、どんな歌を歌ってくれるのかしら♪)

ステージの構成の自分の役割を見たエマは驚き、ヴァレフォルは興味ありげな表情をし

「ふむ……”リードギター”がリィンとリザイラ、”サイドギター”がアリサとプリネ、それにヴァレフォル、”ベース”がガイウスとツーヤ、アムドシアスか。私は……?」

それぞれの役割を見た後自分の役割を見たラウラは首を傾げた。



「ラウラはベルフェゴールと同じ”ドラム”だな。そして……ヴァイオリンとキーボードがエリオットとセレーネ、それにフィニリィとメサイア。」

「あ。バックダンサーがわたしとミリアム、後はエヴリーヌにペルルとミルモ……それと一曲目のボーカルが……マキアスとユーシス……二曲目がエマ……三曲目がアイドス……」

「”バックダンサー”?何それ。」

ガイウスやフィーと共に自分の役割を見ていたエヴリーヌは首を傾げ

「えっとね、バックダンサーって言うのは―――」

エヴリーヌの様子を見たエリオットは説明しようとした。



「「ちょっと待った!!」」

するとその時ユーシスとマキアスが同時に机を叩いて立ち上がって声を上げた!

「こ、こいつと僕が二人組のボーカルだと!?」

「しかも……同じ衣装を纏ってなどと……!」

「ヒ、ヒラヒラしているぞ!?」

「え、え~と……王子様みたいでカッコイイでしょう?」

二人の反論にエリオットは戸惑いながらリィン達に問いかけた。



「うん……わりと女子受けはいいんじゃないかしら。」

「二人なら結構映えるかも。」

「ええ。お二方とも容姿が整っていますしね。」

「だ、だよね~。インパクトもあると思うんだ。マキアス、Ⅰ組に負けたくないんでしょう?」

自分の説明に納得している様子のアリサやフィー、セレーネの意見に頷いたエリオットはマキアスを見つめて問いかけた。



「そ、それは……!」

「俺もフォローでボーカルに入るから二人とも何とか頑張ってみないか?」

「む、むう……!」

「フフッ、折れるしかなさそうだな。」

リィンの意見を聞いて言葉を濁しているマキアスの様子を見たガイウスは苦笑しながら呟き

「え、え~と……二曲目はさすがに冗談ですよね……?」

エマは冗談であって欲しい事を強く願いながら冷や汗をかいてエリオットに尋ねた。



「ううん、これがベストっていうのがクロウの意見。眼鏡を外して、ギャップを出して脇をフィーたちで固めれば完璧なんだって。」

しかしエマの願いは虚しくエリオットは首を横に振って説明をした。

「ギャ、ギャップって言われても……」

(おっ、わかっているじゃない♪)

説明を聞いたエマは冷や汗をかいて戸惑い、ヴァレフォルは笑顔になった。



「なるほど……」

「ア、アリサさん!?眼鏡を返してください……!」

「じっとしてて。」

「え……わ、わあ!?あ、あの……!」

「はい、できたわ♪眼鏡を外して、髪を下ろしただけだけど、どう?」

するとアリサはエマの眼鏡を外した後三つ編みにして束ねているエマの髪を下ろしてリィン達に問いかけた。



「こ、これは……!」

「とっても綺麗です……!」

「別人に見えるね。」

眼鏡を外して髪を下ろしたエマの姿を見たマキアスは驚き、セレーネははしゃぎ、エヴリーヌは静かに呟き

「うむ……これは見違えたな。」

「ああ……さすがに驚いた……」

感心した様子のガイウスの意見にリィンは呆けた表情でエマを見つめながら頷いた。



「うんうん、前々から勿体ないって思ってたのよ。」

リィン達の反応をアリサは満足げな様子で見つめて頷いた。

「フム……普段からこちらの方がいいのではないか?」

「そ、そんな~……からかわないで下さいよ~……」

ラウラの意見を聞いたエマは顔を赤らめて恥ずかしそうな表情をした。



「わたし達がその委員長の脇を固め、アイドスがボーカルの時はミルモ達がアイドスの脇を固める……結構良さそう。」

「で、でも……こんな肌が露出するような衣装でボーカルだなんて……」

「これでも女性の衣装は初期案から大分露出を抑えてもらったんだ。少し大胆だけど、曲のイメージには合ってるとは思う。」

「まあ、確かに品性を疑うほどではないか。それにしても……初期案はどれほど過激だったのだ?」

エマを説得しようと説明をするリィンの話を聞いたラウラは納得した様子で頷いた後ある事が気になって首を傾げ

「ア、アハハ……」

(それはもうかなりギリギリな衣装だったわね♪)

(私もさすがにあの衣装は絶対に着なかったでしょうね。)

(わ、私もです……さすがに睡魔族の衣装とほとんど変わらない衣装はちょっと……)

(フフ、セリカが見たら卒倒するかもしれなかったわね。)

ラウラの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいて苦笑し、ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラの念話を聞いたメサイアは冷や汗をかいて頷き、アイドスは微笑んでいた。



「フウ……曲のイメージに合ってるって言うなら観念するしかないみたいね……エマ、私とプリネもボーカルのフォローに割り当てられているし、一緒に頑張りましょう?アイドスだって、突然の抜擢に文句を言わずに引き受けたのよ?」

説明を聞いて納得したアリサは溜息を吐いた後エマを諭し

「え、え~と……その……ハア……わかりました。何とかやってみます。」

アリサに諭されたエマは肩を落として溜息を吐いた後ようやく納得した。



「しかし歌はともかく、演奏は何とかなるのか?”ベース”とやらは全くやったことがないが……」

「私も楽器自体ほとんど触れた事がないくらいだ。」

「わたくしもこの”キーボード”という楽器でちゃんと演奏できるのか、不安です……」

「うん、今回は”導力楽器”を使うんだけどガイウスは”シタール”が弾けるから”導力ベース”もこなせると思うんだ。ラウラのリズム感とパワーは絶対ドラム向きだと思うし、リィンは”リュート”、セレーネはピアノ、アリサとプリネ達もヴァイオリンの経験があるから何とかなると思う。」

ガイウスやラウラ、セレーネの疑問を聞いたエリオットは全員に説明をし

(ちょっと~!?その説明だと私も力馬鹿になるじゃない!?)

説明を聞いていたベルフェゴールは不満げな表情をしていた。



「そ、そういうものかしら……?」

「この点はさすがに心配ではあるんだけど、エリオットとアムドシアスさんの見立てだし、練習さえがんばれば何とかなる気はするんだよな。」

「まあ、ダメなら弾けるまで練習してもらうだけだけどね。」

「あ、ああ……」

「エ、エリオットさん……何だかちょっと怖いんですけど……」

威圧のある笑顔を見せてエリオットにリィンは戸惑いながら頷き、エマは冷や汗をかき

「音楽に関しては真剣そのものだからな……」

「さすがは”猛将”の息子と言った所か……」

「ユーシス、それ上手い。」

マキアスは疲れた表情になり、ユーシスの言葉を聞いたフィーは感心した様子で指摘した。



「うん……概要は了解した。」

「私も乗った。みなと切磋琢磨できるなら、遣り甲斐もあるというものだ。」

「わたくしもです!大勢の方達と一緒に演奏をするなんて、今から楽しみですわ♪」

「……ま、プリネ達と一緒にやるんだから、エヴリーヌも頑張るよ。」

ガイウス、ラウラ、セレーネ、エヴリーヌはリィン達の案にそれぞれ賛成の意を示し

「フウ……せっかくリィンやエリオット達が頑張って纏めてくれたんだ。何とか実現させるのがスジか……」

「肚をくくるしかあるまい……」

「そうですね……」

マキアス、ユーシス、エマもそれぞれ疲れた表情で覚悟を決めた。



「ひとまず、大体の方針はこれに決定しよう。学院に帰ったらすぐに練習を始めないとならないけれど、その分今日と明日の二日間はしっかりと英気を養ってくれ。―――それじゃあ解散。この後は夕食まで自由行動だ。」

了解(ヤー)。」

「全く、どういうつもりなんだ……!僕がユーシスと……ブツブツ……」

リィンの指示を聞いたフィーは立ち上がって仲間達と共にどこかへと去り、マキアスはブツブツ呟きながら去って行った。



「リィン、この後はどうするの?」

「そうだな……エリスと約束もしたし……実家にちょっと顔を出してみようかな……」

「ちょっとなんて言わずにゆっくりしてきたら?」

「でも……」

アリサの言葉を聞いたリィンは戸惑いの表情をしたが

「半年ぶりの故郷なんだろう?オレ達に遠慮するな。」

「あー……それじゃあ、お言葉に甘えて。」

ガイウスの言葉に頷いて実家に長居する事を決めた。



「行って来るがいい。いずれ、男爵閣下に挨拶させてもらうつもりだが、家族の団欒を邪魔するつもりはない。明日にでも伺わせてもらおう。」

「わかった。伝えておくよ。それじゃあセレーネ、一緒に行こうか?」

「え……よろしいのですか?」

「ああ。父さん達への手紙でセレーネの事も書いて、父さん達もセレーネに機会があれば会いたいって書いていたしな。」

「わかりました。そう言う事でしたらわたくしもご一緒に伺わせてもらいます。」

そしてリィンはセレーネと共に実家に向かった。




 
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