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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第161話

9月26日――――



翌日、シャロンが用意した朝食を取ったリィン達はRF本社ビルを出た。



~ルーレ市~



「ふわ~っ……」

「ねむ……」

ビルを出たクロウはあくびをし、フィーは眠そうな表情をし

「うーん、空気が美味しい。山間部にあるから、結構空気も澄んでるよね。」

「ああ、そのあたりは帝都とかなり違う印象だな。」

「はは、帝都はとにかく人口が途轍もないからな。」

「…………………………」

エリオットの言葉に答えたマキアスの意見に苦笑しながら頷くリィンの様子をアリサはジト目で見つめ

「ア、アリサさん。もう、許してあげてはどうですか?」

「……まあ、アリサさんがリィンさんを睨むのも仕方ないよ。」

その様子を見守っていたセレーネは冷や汗をかき、ツーヤは疲れた表情で呟いた。



「えっと、アリサさん?」

一方アリサの視線に耐えきれなかったリィンは冷や汗をかいて苦笑しながらアリサを見つめたが

「フン、何でもないわよ。」

アリサはそっぽを向いて不満げな表情をした。



「はあ、だから悪かったって、何度も謝って――――」

「何でもないって言ってるでしょう!……まったく、人とテラスであんな話をしておきながらその直後になんて……本当に油断も隙もないわね……ブツブツ。」

リィンの謝罪を声を上げて制止したアリサはジト目でブツブツ呟き

(リィンがたくさんの女の人と付き合う事をアリサは了承しているのに、どうしてアリサはいつも怒るんだろう?)

(うふふ、どうして”鈍感”は”大罪”じゃないのかしらね♪)

(確かにそうですね。”七大罪”すらかすむような”罪”ですものね。)

(さ、さすがにそこまではないと思うのですが……)

(フフ、あんまり嫉妬深いのもどうかと思うわよ?)

アリサの様子を見たミルモは首を傾げ、ベルフェゴールとリザイラの念話を聞いたメサイアは苦笑し、アイドスは微笑みながらアリサを見つめていた。



「やれやれ。すっかりお冠だねぇ。」

「まあ、この状況だ。クレア大尉は信用できると思うが一人で出かけたのは感心しないぞ?」

「そうですね……単独行動は危険過ぎでしたね。」

「はい。せめて”パートナードラゴン”であるわたくしを連れて行って欲しかったですわ。」

「ああ、それについては水臭かったと思っているよ。」

マキアスとツーヤ、セレーネの指摘にリィンは静かな表情で頷いた。



「うーん、それにしてもクレア大尉も大胆だよねぇ。私服に着替えていたとはいえ、領邦軍が巡回している状況で一人で行動してるなんて。」

「多分、かなりの腕だと思う。得物はちょっとわからないけど。」

「しっかし、あの大尉さんの私服ってのは見てみたかったぜ。最初に一人で出かけたって事はちょっとは期待してたんだろ~?」

「ギロッ……」

口元をニヤニヤさせるクロウの指摘を聞いたアリサはリィンをギロリと睨んだ。



「い、いやいや。想像もしてなかったって。」

「でも、最初に見た時、けっこう見惚れてたような。去って行くときもぼ~っと見送ってたし。」

「リ・ィ・ン~~~??」

(ヒッ!?お、落ち着いて、アリサ~!)

そしてフィーの指摘を聞いたアリサは膨大な威圧を纏ってリィンに微笑み、その様子のアリサを見たミルモはアリサを怖がった。



「むむ、綺麗なお姉さんと差しつ差されつとは……なんて羨ましい―――じゃなくて実習中なのにケシカランぞ。」

(お姉様、今一瞬マキアスさんの本音がでましたよね?)

(アハハ、マキアスさんも男の子だから仕方ないよ。)

マキアスの指摘を聞いたセレーネとツーヤは小声で会話しながら苦笑し

「二人とも聞こえてるぞ!僕は副委員長として当然の注意をしただけだぞ!?」

二人の小声の会話を聞いたマキアスは二人を睨んで反論した。



「はあ、だから誤解だって……いずれにせよ、大尉の情報で大まかな状況は整理できた。これで俺達なりに動く事ができそうだけど……いいんだな、アリサ?」

肩を落として溜息を吐いたリィンは気を取り直してアリサを見つめて問いかけた。

「……うん、覚悟はできてる。」

「”第一製作所”の秘密と、鉄道憲兵隊の査察の動き……領邦軍がそれを阻止するため露骨に動いているんだったよね。」

「その”第一製作所”は貴族派で占められてるんだったな。」

「ええ、ここ数年、取締役たちが好き勝手なことをやっていたのは知ってたけど……母様は、各部門を競争させてグループ全体の収益を上げる為にあえて放置してきたの。それがこんな事になるなんて……」

「痛し痒しだね。」

「フィ、フィーさん。」

「もうちょっとオブラートに包んだ言い方をしてあげてくださいよ。」

疲れた表情で答えたアリサの話を聞いて指摘したフィーの言葉を聞いたセレーネとツーヤは冷や汗をかいた。



「ちなみにそれ以外の部門はそれぞれ何派なんだよ?」

「そうね―――簡単に説明すると…………」

クロウに尋ねられたアリサはリィン達にラインフォルトグループの構成を簡単に説明した。



第一製作所



鉄鉱/大型機械全般 貴族派





第二製作所



銃器/戦車/兵器全般 革新派





第三製作所



導力列車/導力飛行船 中立派





第四開発部



導力通信技術/戦術導力器  会長直轄





「勿論、こんな風に単純にわかれてるわけじゃないけど。それでも、各部門を統括する取締役たちのスタンスは明確だわ。特に第一製作所と第二製作所はお互い熾烈な競争をしていた。でも、だからといって軍の査察が入るような事まで第一製作所がしていたなんて……」

「アリサ……」

「アリサさん……」

静かな怒りを纏ったアリサの様子をリィンとセレーネは心配そうな表情で見つめた。



「こうなったら、こっちはこっちで独自に色々と調べてやるわ!状況を打開する情報を手に入れて母様に恩を着せてやるためにも!」

「そだね。」

「ふふっ、その意気だよ。」

「それでこそアリサさんですよ。」

強気になったアリサの言葉にフィーは頷き、エリオットとツーヤは微笑んだ。



「まあ、これも実習活動の範疇だろう。」

「ええ。わたくし達も出来る限り協力しますわ。」

「……ありがとう。」

仲間達の心強い言葉を聞いたアリサは仲間達に微笑んだ。



「やれやれ、若いねぇ。」

「はは……とりあえず、シャロンさんから預かった今日の依頼を確認するか。」

そしてリィン達は課題内容を確認した。



「うん、何とかなりそうだね。」

「まだ朝の8時だし、時間は十分にあるだろう。」

「依頼を片付けつつ、第一製作所や他の部門の情報を関係者や市民たちから集める。――――Ⅶ組A班、2日目の実習活動を始めよう!」

「ええ……!」

「らじゃ。」

「はい!」

「合点だぜ。」

「あの……少しいいですか。」

リィンの言葉に仲間達が頷いている中、ツーヤが申し出た。



「お姉様?どうされたのですか?」

「うん……あたしの知り合いに誰よりもRFグループの事を把握していると思われる人がいるの……―――下手をしたらイリーナ会長よりも把握しているかもしれない。」

「ええっ!?会長の母様より把握しているなんて、ありえなくない!?」

セレーネの質問に答えたツーヤの話を聞いたアリサは信じられない表情で声を上げ

「一体誰なんだ?」

マキアスは不思議そうな表情で尋ねた。



「…………レンさんです。」

「ええっ!?な、何でレン姫が!?」

ツーヤの答えを聞いたエリオットは驚き

「そう言えば昨夜、”殲滅天使”がタイミングよく現れたけど、もしかしてそれも関係あるの?」

ある事を思い出したフィーは真剣な表情で尋ねた。



「……恐らくレンさんはハッキングでリィンさんとフィーさんのARCUSの電波を拾って現在地を確かめたからだと思います。」

「ええっ!?」

「”ハッキング”……ガレリア要塞の時のあれか……確か導力端末に不正侵入する技術、だったよな?」

「え、ええ……クロスベルにはあるけど、帝国ではハッカーを取り締まる法はまだ無いから、今は違法ではないけど……」

疲れた表情で答えたツーヤの答えを聞いたリィンは驚き、マキアスに尋ねられたアリサは戸惑いの表情で答えた。



「レンさんは数ヵ月前にクロスベルに滞在していた時、暇潰し代わりにハッキングをしていましたから、その気になれば、ラインフォルトグループ全ての情報を引き出せると思いますよ。」

「さ、さすがにそれはありえないわよ。導力端末に明るい”第四開発部”がハッカー対策をしているから。」

ツーヤの話を聞いたアリサは戸惑いの表情で答えたが

「……最先端の導力端末技術を使い、エプスタイン財団から出向しているスタッフによるハッカー対策をしているIBCにも侵入して、情報を抜き取ったことやハッカー自身の端末にハッキングして情報を抜き取った事すらあるんですよ?」

「……………………」

ツーヤの話を聞いて冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「め、滅茶苦茶だ……」

「ぼ、僕たちでは全く理解できないレベルだよね……」

「というかレン姫はそのような技術を一体どこで学んだのでしょうね?」

「おいおいおい、何だよ、それ……どう考えてもチートの域だぜ……」

一方マキアスとエリオットも表情を引き攣らせ、セレーネは苦笑し、クロウは疲れた表情で呟いた。



「――まあそういう訳で、ハッカーの中でもトップクラスのハッキング技術を持つレンさんに頼めば高確率でRFグループのイリーナ会長ですら把握していない情報も手に入ると思いますが?」

「う、う~ん……さすがにそこまでする必要はない……というか、そんな危ない橋を渡るような真似は止めておこう。」

「そ、そうだな。あくまで士官学院の実習として動くのだから、違法行為ギリギリな真似はするべきではないな。」

「それにあの”殲滅天使”がタダでやってくれるとは、到底思えない。昨夜の時も、クレア大尉に自分の持つ情報を交換する代わりに同席したし。」

ツーヤの問いかけにリィンとマキアスは仲間達と共にアリサを気にしながら答え、フィーはジト目で呟き

「ううっ、今の話を聞いたら、別の心配が出て来たわよ……ハア……」

アリサは疲れた表情で溜息を吐いた。



その後リィン達は課題の消化をしながらRFグループの情報収集を開始した。




 
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