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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第72話(5章終了)

~霧降り峡谷・北西部・最奥頂上~



「えいっ!」

「そこだぁ!ドラグナーエッジ!!」

戦闘開始早々ティータとアガットは武器やクラフトで遠距離から竜を攻撃した!しかし竜の体は固く、傷がついている様子はなかった。

「グオッ!!」

そして竜は尻尾でティータとアガットを薙ぎ払った!

「グッ!?」

「はうっ!?」

竜の攻撃を受けた2人は吹っ飛ばされた!

「癒しの水よ……傷つき者達に降り注げ!ヒールシャワー!!」

竜の攻撃を受けたアガットとティータを見たツーヤは治癒魔術を使って、2人を回復した。

「はう~。あ、ありがとう~。」

「………助かった。礼を言う。」

治癒魔術を受けたティータとアガットはツーヤにお礼を言って立ち上がった。

「……………………」

一方リタは魔術の詠唱を開始した!その一方戦闘開始早々詠唱をしていたミントとアムドシアスの魔術が放たれた!

「異界の円環よ!捉えし者を浄化の炎で焼き尽くせ!オキサイドリング!!」

「美しき我が角の魔力、受けるがよい!!」

そしてミントは魔術によって描いた暗黒の魔法陣を地面を這わせて放ち、魔法陣の中に閉じ込め、暗黒のエネルギーで焼き尽くす魔術――オキサイドリングを、アムドシアスは自らの一本角に秘められる魔力を解放する魔術――角電撃を竜に放ち、命中させた!

「グオオオッ!!」

2人の魔術は命中したが竜はあまりダメージを受けている様子はなく、2人に炎を吐いた!

「!!」

「ああ、美しき我が動き!!」

炎に気づいたミントは回避し、アムドシアスは自己陶酔に陥りながらも回避した。

「グオッ!!」

さらに竜はエステルに噛みついて来た!

「!!」

竜の攻撃に気づいたエステルは回避した後

「行っくわよ~………!」

棒に聖炎を宿らし、そして!

「聖炎棍!!」

竜の顔に棒に”聖炎”を宿らせた強烈な一撃のクラフト――”聖炎棍”を命中させた!

「グオッ!?」

エステルの攻撃に命中した竜は少しだけのけ反った後、口に炎を溜め始め、そして!

「グオオオオオオオオッ!!」

魔術を詠唱しているリタに向かってすざましい炎を吐いた!

「大海に呑まれなさい!……デネカの大海!!」

するとリタの魔術の詠唱も終わり、異空間から現れた津波が竜を襲った!しかし竜が吐いた炎とぶつかり、お互いの攻撃を相殺した!



「剛震突き!!」

さらにリタは突進力を利用した突きのクラフト――剛震突きを竜の頭に放った!

「……グオッ!!」

しかしリタの攻撃は効かず、竜はリタに噛みついた!

「!?リタ!!」

それを見たエステルは叫んだが、竜の噛みつきはすり抜けた!

「え!?攻撃がすり抜けた!?」

「フフ……霊体の私に物理攻撃は無意味ですよ。行けっ!連続水弾!!」

攻撃がすり抜けたことにエステルは驚き、リタは不敵な笑みを浮かべ後、魔術を放った!

「グオッ!!」

「!!」

リタの魔術を受けた竜は怒った後、リタに炎を吐いた!炎に気づいたリタは回避した。

「エステル!竜は私が引き付けておくから、エステル達はその間に集中攻撃を!」

「了解!みんな!」

空中を飛びながら竜を引き付けているリタの言葉に頷いたエステルは仲間達に号令をかけた!



「目に焼き付けろ!精密射撃!!」

「えい!スパイラルフレア!!」

エステルの号令に答えるかのようにアムドシアスは弓技で、ティータはアーツで真っ先に攻撃し

「ヤアッ!!」

「十六夜……”斬”!!」

ミントはジャンプした後、地の魔力を纏いながら急降下して攻撃するクラフト――アースストライザーで、ツーヤはクラフト――十六夜”斬”で竜の足をそれぞれ攻撃した!

「行くぜっ!うおぉぉぉぉ!うらっ!せいっ!はぁっ!どりゃあぁぁぁぁぁっ!」

「さあ、行くわよ!まだまだまだまだまだまだぁっ!とどめっ!!」

そこにアガットはSクラフト――ダイナストゲイルを、エステルは武器を剣に持ち替えてクラフト――剣技・八葉滅殺を放った!

「グオオオオオッ!!」

エステル達の集中攻撃を受けた竜はそれでも倒れず、大きく羽ばたかせて、自分の足元にいるエステル達を吹き飛ばした!吹き飛ばされたエステル達はそれぞれ受け身をとった。

「っと!……う~ん……もっと強烈な一撃を与える必要があるわね………」

受け身をとって着地したエステルは考え込んだ。

「フム。なら我に任せるがいい!」

「アムドシアス?何か考えがあるの??」

アムドシアスの提案を聞いたエステルはアムドシアスに尋ねた。

「……ソロモンの一柱たる我が大魔術なら、さすがの竜であろうとも倒れるであろう!」

「わかった!頼んだわよ!みんな、アムドシアスの詠唱が邪魔されないよう、竜の注意を引き付けるわよ!」

アムドシアスの言葉を聞いたエステルは仲間達に指示をした。



「う、うん!い、行きます!やあぁぁぁぁぁ!!」

エステルの指示に頷いたティータはSクラフト――カノンインパルスを放ち

「そこだぁ!ドラグナーエッジ!!」

「玄武の地走り!!」

「落ちよ!大地の怒り!ロックフォール!!」

「聖なる水よ……奔流となり、我が仇名す者達に裁きを!リ・カルナシオン!!」

「暗黒の炎よ、我が仇名す者を燃やし尽くせ!闇界獄滅炎!!」

さらに続くようにアガットとリタはクラフトを、ミントとツーヤ、エステルは魔術を放って、総攻撃をした!

「グオオッ!?グオオオオオオオ――――ッ…………………」

エステル達の総攻撃を受けた竜は呻いた後、雄たけびをあげ、足元の地面に何かの”気”が発生させ、静止した!

(エステル、気をつけて!あの地面から大量の魔力が感じるわ!今までとは比べ物にならないくらいの………それこそ大魔術が放たれてもおかしくないわ!)

「!!わかった!アムドシアス!まだなの!?」

ニルの念話での忠告に頷いたエステルはアムドシアスを見た。

「フッ、ちょうど今完成したところだ!………ソロモンの一柱たる我の力……称えるがよい!我が名は……アムドシアス!!」

エステルに見られたアムドシアスは長い詠唱が終わり、大魔術を放った!

「我招く、訃音(むいん)焦熱(しょうねつ)是非(じひ)は無く!」

すると複数の小さな隕石が竜の周りに降り注ぎ――

(なんじ)にあまねく(やく)を逃れる(すべ)も無し!!」

さらに巨大な竜をも圧し潰せそうな巨大な隕石がゆっくりと竜の頭上に降り

「メテオスウォーム!!」

「グオオオオオオオッ!?」

そして竜を圧し潰した!!宇宙より隕石を召喚し、敵を圧し潰す古代の大魔術――メテオスウォームを受けた竜は悲鳴をあげ、アムドシアスの大魔術によって竜の行動は中断され、竜の足元の地面から漂よう”気”はなくなり、竜は地面に倒れたが

「グオオオオオオオ――――ッ!!」

竜はすぐに起き上がり、辺りを響き渡らす雄たけびをあげ、飛び上がって暴れだした!



「何!?あれを喰らって、まだ倒れないだと!?」

「あ、あう……」

「くっ……。普通ならとっくに倒れているはずなのに……!!」

暴れだした竜を見たアムドシアスは驚き、ティータは不安そうな表情で竜を見て、エステルは信じられない表情で竜を警戒していた。

「あう~……あれだけ攻撃して、まだ倒れないなんて……!」

「なんて生命力………!」

「……驚きました。ひょっとすると生命力に関しては”邪竜”と並んでもおかしくありませんね。」

ミントは焦り、ツーヤは信じられない表情で見て、リタは驚いた表情で竜を見ていた。その時アガットは周りを見て、高台を見つけた後、ティータを見て言った。

「ティータ!閃光弾を持ってるか!?」

「ふえっ……はいっ!」

アガットに呼ばれたティータは一瞬呆けたが、頷いた。

「そいつで竜のスキを作れ!エステル!一瞬でいい、お前達は動きを止めろ!」

「ええっ!?」

自分の指示に驚いているエステルの返事も聞かず、アガットはジャンプして、高台へと登り、両手剣をしまった後、先ほど竜に攻撃した重剣を取り出し、重剣のユニットを起動させて、構えた。

「あ……」

「なるほど……。そういうことですか。」

アガットの行動の意味がわかったティータは明るい表情をし、リタは納得した表情で頷いた。

「……あたし達が攻撃するにしても、撃ち落とさないと………ミント、ツーヤ!ティータが閃光弾を打ち上げたらあなた達は”竜化”してドラゴンブレスで竜を撃ち落として!」

「わかった!ハアアアアアア…………!」

「わかりました!ハァァァァァァ………!」

エステルの指示に頷いたミントとツーヤは”竜化”をして、竜になった!

「アムドシアス!あなたはミント達といっしょに強烈な魔術を放って!」

「既にやっている!…………………」

そしてアムドシアスにも指示をし、指示されたアムドシアスは既に詠唱を始めていた!

「カファルー!!」

さらにエステルはカファルーを召喚した!!

「カファルー!ミント達と同時にブレスを吐いて、あの竜に攻撃を!」

「グオッ!」

エステルの指示に頷いたカファルーは口にすざましい炎を溜め始めた!



「ティータ!当てないで撃ち上げちゃって!あたしたちで動きを止めるから!」

「うんっ……!」

そしてティータは閃光弾を竜の頭上に撃った!閃光弾が放った光に竜は一瞬気を取られた!

「今!ミント、ツーヤ、アムドシアス、カファルー!!」

それを見たエステルはミント達に指示をした!

「天の風琴が奏で流れ落ちるその旋律!凄惨にして蒼枯なる(いかずち)!ブルーティッシュボルト!!」

エステルの指示に答えるかのように異空間より召喚した、雷で形どった竜をぶつけるアムドシアスが持つもう一つの大魔術――ブルーティッシュボルトをアムドシアスは放ち

隕石石化大地震撃(メテオペトロアースクエイク)!!」

「氷金剛破砕撃 (ダイヤモンドアイスバースト)!!」

「グオオオオオッ!!」

ミントはすざましい地のドラゴンブレスを、ツーヤはすざましい吹雪のドラゴンブレスを、そしてカファルーはすざましい炎のブレス――獄熱ブレスを同時に放った!4属性のすざましい威力がこもった一撃は竜の翼に命中した!

「グギャアアアアッ!?」

すざましい攻撃が翼に命中した事によって、竜は地面に落ち、立ち上がった状態で暴れていた!

「リタ!行くわよ!」

「うん!」

それを見たエステルは剣を鞘に納めて、棒を取り出し、棒に魔力を流し込んで輝かせた後、聖炎を宿らせてリタに指示をして、二手に分かれて竜の足に向かい、そして!

「行っくわよ~!極光!聖桜炎花!無双撃!!」

「魔槍と霊体の本領……見せてあげる!奥義!魔槍憑依!!」

エステルは棒に光と聖炎を宿らせ、連続で攻撃する”桜花無双撃”の魔棒技でありSクラフト――極光聖桜炎花無双撃を、リタはSクラフト――魔槍憑依を竜の足を攻撃した!

「グオオオッ!?」

足を攻撃された竜は地面に倒れた!

「………………………………。」

それを見たアガットは石のアクセサリーを強く握りしめた後、重剣を構え、そして!

「これで決まりだ!!らあぁぁぁぁぁぁ……!ふおらぁ!」

その場で力を溜めた後高台からさらに高くへと跳躍し

「うおぉぉぉぉぉぉ……っ!だぁぁぁぁっ!」

空中で竜の姿を形どったすざましい闘気を纏い、そして!

「行くぜっ!ドラゴンダーーイブ!!」

竜の額に付いている”ゴスペル”めがけて、突進した!



常人離れした跳躍から繰り出される、炎を纏った突進技にしてSクラフト――ドラゴンダイブを竜の額に付いている”ゴスペル”に命中させた!すると重剣は真っ二つに割れ、”ゴスペル”も完全に壊れた!

「やった……!」

「ええ……!」

ゴスペルが壊れるのを見たエステルとリタは明るい表情をした。

「うむ!この我がいるのだ!当然の結果だな!」

「よかった~!もう、これで戦わなくてもいいんだよね!?」

「うん……!本当によかった………!」

「………………………」

一方アムドシアスは胸を張り、ミントとツーヤは”竜化”を解いて安堵の溜息を吐き、カファルーは竜を一瞥した後、エステルが装着している腕輪に戻った。 そしてエステル達はアガットに駆け寄った。

「アガットさん……凄いです!」

「見事な一撃でしたよ。」

「ヘヘヘ……。竜も何とか倒せたし、一件落着といった所か―――」

ティータとリタの賞賛を聞いたアガットが安堵の溜息を吐いたその時

(…………見事だ………………)

突然、エステルに念話が届いた。

「え……」

「い、今の声は……」

「どこから聞こえてきた!?」

突然の念話にエステルとティータは驚き、アガットは周囲を見回した。

「………まさか。」

「えっと、もしかして………」

「あの竜から………ですか………?」

一方リタとミント、ツーヤは竜を見た。すると竜はゆっくりと起き上がった!



(見事だ……人の子……そして異界の者達よ。我が名は”レグナート”。この地に眠る竜の眷族(けんぞく)だ。)

「あ……」

「これは……お前が喋っているのか!?」

竜――レグナートの念話にエステルは呆け、アガットは驚いた表情で尋ねた。

(私は、おぬしらのような発声器官を持っていない。故に『念話』という形で語らせてもらっている。おぬしらはそのまま声に出して語りかけるがいい。)

「そ、そうか……」

「ふえぇ~……」

「ミント達とはまた違う竜なんだね………」

「うん、そうだね。」

レグナートの説明にアガットは戸惑いながら頷き、ティータは呆けた声を出し、 ミントは首を傾げて呟き、ツーヤはミントの言葉に頷いた。

「こ、言葉が通じるのなら確認したいんだけど……。もう、あたしたちと戦うつもりはないのよね?」

(うむ、あの(はたらき)に操られていただけだからな。よくぞこの身を戒めから解き放ってくれた。礼を言わせてもらうぞ。)

「あはは……ど、どういたしまして。」

レグナートにお礼にエステルは苦笑しながら受け取った。

「フン……礼はいい。俺たちがここまで来たのはてめぇを解放するためじゃねえ。これ以上の被害を防ぐためだ。」

(私が被害を与えてしまった街や村の事だな……。意志を奪われていたとはいえ、確かに私にも責任があるだろう。さて……どう償ったものか。)

「ま、まあ、悪いのは”結社”の連中なんだし……。ケガ人は出ちゃったけど、亡くなった人もいなかったし……。誠意さえ伝われば許してもらえると思うわよ?」

「そうだよ~!レグナートさんが悪いわけじゃ、ないよ!」

アガットの言葉を聞いて考え込んでいるレグナートにエステルとミントは慰めの言葉を言った。

(ふむ、誠意か……。このような物で伝わるか自信はないのだが……。人の子よ、もう少しこちらに近付いてはもらえまいか?)

「う、うん?別にいいけど……」

「……ったく、何だってんだ。」

そしてレグナートのはエステル達に念話である事を伝え、レグナートの念話に首を傾げたエステル達はレグナートに少しだけ近づいた。すると大きな金色の結晶がエステルとアガットの手に現れた。

「な……」

「わぁ……!」

「ほう………これが七耀石の結晶とやらか。うむ、そこらの宝石に負けぬほど美しく、輝いておる!」

突然現れた金色の結晶にアガットは驚き、ティータは目を輝かせ、アムドシアスは興味深い視線で結晶を見た。

「金色の輝き……。空の力を秘めた金耀石(コルティア)の結晶ですね。」

「……確かプリネちゃんから聞いた話だと、金色の結晶が一番価値があるんだよね?」

「うん、そうだよ!金色の七曜石が一番高価なんだよ!」

ツーヤは結晶の説明をし、リタはプリネから教えられた知識から思い出して呟き、リタの言葉にミントは頷いて答えた。



(私が付けた爪痕の償いだ。どうか、おぬしらの手から街と村の長に渡してもらえぬか?)

「な、なるほど……。うん、そういう事なら―――」

「―――駄目だな」

レグナートの頼みにエステルは頷こうとしたが、アガットは断った。

「ちょ、ちょっと!?」

「アガットさん……」

(ふむ、やはり物では誠意は伝わらぬという事か?)

アガットの言葉にエステルは驚いた後ジト目でアガットを睨み、ティータは心配そうな表情で見て、レグナートは静かな様子でアガットを見た。

「そういう意味じゃねえ。この大きさだと………1つ、1千万ミラといった所か。1万分の1でいい。これと同じ結晶を寄越しな。」

「へ………?」

アガットの提案にエステルは首を傾げた。

「犯罪でも絡まない限り、遊撃士を雇うのは有料でな。品物の運搬料だったら1000ミラ貰えりゃ充分だ。それさえ払えば引き受けてやるよ。」

「あ……」

「まったくもう……。素直じゃないんだから。」

(ふむ、そういう事か。それでは受け取るがいい。)

アガットの言葉にティータは安心し、エステルは呆れながら安堵の溜息を吐き、レグナートは頷いた後、アガットの手に小さな金色の結晶を出した。

「よし……契約成立だな。この2つは、責任をもって村長と市長に届けてやるぜ」

(うむ、頼んだぞ。ふふ……しかし、先ほどの一撃は中々だったぞ。銀の剣士と戦っていた時は何とも頼りなかったが……。一皮剥けたようではないか。)

「なっ……」

「 廃坑の事を覚えているんですか?」

レグナートの念話を聞いたアガットは驚き、ツーヤは尋ねた。

(操られてはいたが、意識は残っていたからな。小さき娘よ。おぬしの勇気と健気さにはなかなか感服させられた。ふふ……だから人間というのは面白い。)

「あ、あう……」

「あはは、意外とお茶目な所があるじゃない。」

レグナートの念話にティータは照れ、エステルは苦笑した。



(ふむ、そしておぬしは……。なるほど、道理で覚えのある匂いがするわけだ。”剣聖”の娘だな?)

「へ……!?」

「おいおい、どうしてオッサンを知ってやがる!?」

レグナートの念話を聞いたエステルはレグナートがカシウスを知っている事に驚き、アガットは驚きながら尋ねた。

(20年前、眠りにつく時、最後に会った人間の1人だ。剣の道を極めると言って無謀にも挑んできたのだが……。いまだ壮健でいるのか?)

「う、うん……。ピンピンしてるけど。……まさか竜とまで知り合いとは思わなかったわ。」

レグナートに尋ねられたエステルは頷いた後、呆れた表情で溜息を吐いた。

「わあ………お祖父ちゃんって、こんな大きな竜さんとも知り合いだったんだ!」

一方ミントははしゃいだ。

(フム…………それにしても、まさか我以外の”竜”達がいるとは思わなかったぞ………それも我とは異なった”竜”のようだな………人の子と”絆”を結ぶ竜等……今まで聞いた事がない。)

「………どうやら、あたし達の方が”竜”として、変わった存在のようだね、ミントちゃん。」

「う~ん………竜はみんな、ミント達みたいなのばっかりと思っていたんだけどな………」

レグナートの念話を聞いたツーヤはミントを見て言い、ミントは首を傾げながら言った。

(フフ……お前達のブレス………中々の威力だったぞ。100年も生きていない竜のブレスとは思えないほど、見事な威力だったぞ……)

「あ、あはは…………」

「す、すみません………」

レグナートの賞賛にミントは苦笑し、ツーヤは申し訳なさそうな表情で謝った。

(何、気にするな。…………それより我が眠りについている間に、世界は随分変わったようだな………)

そしてレグナートはアムドシアスとリタを見た。

「我はアムドシアス!ソロモンの一柱にして、美と芸術を愛する魔神ぞ!」

「冥き途の見習い門番、リタ・セミフ。お見知りおきを。」

見られたアムドシアスは高々と言い、リタは会釈をした。

(ほう………異界では、ソロモンの悪魔が現存しているとはな……それも人の子達に力を貸しているとは…………そしてそこの娘。お主からは命の息吹が感じられん………そしてその”魔槍”……普通ならそのような魔槍、手にした瞬間に正気を失ってもおかしくないのに、お主は理性を持っているようだな………)

レグナートはアムドシアスを見た後、リタを見て念話を送った。

「フフ。ある方達に救ってもらいましたから、今の私がいるんです。」

レグナートに見られたリタは可愛らしく微笑んで答えた。



「あ、そういえば……。ねえ、”レグナート”。ちょっと聞いてもいいかな?」

そしてエステルはある事を思い出し、レグナートに尋ねた。

(ふむ、なんだ?)

「あなたに”ゴスペル”を付けたのは、あのレーヴェっていう男なのよね?”実験”とか言ってたけど……一体、何の実験だったか分かる?」

(ふむ……誤解を解いておくが。漆黒の(はたらき)を私に付けたのは、あの銀の剣士ではない。『教授』と呼ばれていた得体の知れぬ力を持つ男だ。)

「ええっ!?」

「なんだと……!?」

レグナートの説明を聞いたエステル達は驚いた。

(銀の剣士は、『教授』の供としてここに現れた。そして私が暴走してからは、被害が大きくなりすぎぬよう様々な手を尽くしたのだ。彼が暴走を押さえなければ私は街や村を破壊し尽くすまで止まらなかったに違いない。)

「う、うそ……」

(もしかして……火事の時、先生やミント達を助けてくれたのは……あの人なのかな?)

(……かもしれないね。先生の話でも、助けてくれたのは”銀髪の青年”って言ってたし……)

「野郎……どういうつもりだ。」

レグナートの念話を聞いたエステルは信じられない表情をし、ミントはある事を思い出してツーヤと小声で会話をし、アガットはこの場にいないレーヴェの真意がわからず、考え込んだ。

(そして、『教授』の目的はただ1つ。あの(はたらき)が私に効くかどうかを見て完成度を確かめたかったのだろう。”輝く環”の”福音”としてな。)

「な……!?」

「か、”輝く環”!?」

「ちょ、ちょっと待って!もしかして”輝く環”がどういう物か知ってるの!?」

レグナートの念話を聞いたアガットとティータは驚き、エステルは血相を変えて尋ねた。、

(………………………………。それは、何処にもないが(あまね)く存在しているものだ。無限の力と叡智と共に絶望を与える存在でもある。それを前に出した時……人は答えを出さなくてはならぬ。)

「へ……」

「フム……どういう意味なのだ?」

レグナートの意味ありげな念話にエステルは首を傾げ、アムドシアスは尋ねたが

(私から言えるのはここまでだ。これ以上の関与は古の盟約により禁じられている。おぬしらを助けることも彼らを止めることもできない。)

レグナートは答えず、翼ををはためかせた。

「わわっ……」

「お、おい!?」

(さらばだ、人の子と異界の者達よ。おぬしらが答えを出した時、私はもう一度姿を現すであろう。その時が来るのを祈っているぞ。)

そしてレグナートは空へ飛び去っていった。



~ボース地方・上空~



一方その頃、モルガン、ユリア、ナイアル、ドロシーはアルセイユの艦首にて連絡が来るのを待っていた。

「ずいぶん遅いですねぇ。エステルちゃんたち、大丈夫なのかな~。」

「まさか、返り討ちにあったんじゃねぇだろうな……」

中々連絡が来ない事にドロシーとナイアルは不安げに呟いた。

「その場合、危機を知らせにジークが戻ってくるはずだ。今は彼らを信じて待つしかない」

「ですがねぇ……」

「………………………………。夕刻まであと1時間……それを過ぎたら突入を開始する。大尉、準備をしておけ。」

「了解しました……」

モルガンの指示にユリアが頷いたその時

(その必要はない。)

突如、4人の頭の中に声が響いた。

「な、なんだぁ!?」

「今のは……!?」

「どこから聞こえたのだ!?」

「あれ~?なんか大きいのが下から上がってきますよ~?」

突然の事にナイアル達が驚いている中、ドロシーが何かに気付いた。

「なにっ!?」

すると下から飛んで上がって来たレグナートがアルセイユの前に姿を現した。



(リベールを守る(つわもの)たちに告げる。我が名は『レグナート』。古よりこの地に眠る竜の眷族だ。悪しき者に操られていたが遊撃士たちによって解放された。詳しい事情は彼らから聞くといい。)

ナイアル達に念話を送ったレグナートは返事も聞かず、さらに上空へと飛び立った。

「………………………………」

「はわわ~……。見えなくなっちゃっいましたねぇ。」

「えっと……。追いかけないんですかい?」

あまりにも驚く出来事にモルガンは呆け、 ドロシーは呑気に呟き、ナイアルは遠慮気味にユリアに尋ねた。

「……あの高度まで行かれたらお手上げだ。”アルセイユ”が無事でも我々の方が窒息してしまうだろう。」

「やれやれ……。これは、あやつらから徹底的に顛末を聞き出さなくてはならんな。」

ナイアルの疑問にユリアは溜息を吐いて答え、モルガンは溜息を吐いた後、口元に笑みを浮かべた。



こうして、ボース地方を騒がせた古代竜の騒ぎは幕を閉じた。エステル達は、モルガンに詳しい事情の説明を求められ……ようやく解放されてから、レグナートから預かった金耀石の結晶を市長と村長にそれぞれ届けた……………





 
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