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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第64話

その後ラヴェンヌ村に到着したエステル達は果樹園が丸ごと焼き尽くされている村の凄惨たる光景を目の当たりにして、言葉を失ったが気を取り直して、村長に状況を聞き、アガットは竜を追って北――廃鉱に行った可能性があったので、急いで廃鉱に向かった。



~廃鉱~



「あ……!」

仲間達と共に廃鉱に到着したエステルは入口が開いている廃鉱を見て声を上げた。

「ここって……廃坑の入口だったよね。扉が開いているってことはひょっとして……」

エステルは廃鉱が開いている事に驚き、ティータは入口の傍に落ちている鎖を見つけて調べ、驚いた後エステル達に言った。

「お、お姉ちゃん!この落ちてる鎖……ついさっき外されたみたい!」

「や、やっぱり……!」

「アガットの仕業ね。中に入ったんじゃないかしら。」

「急いで追いかけないと………!」

シェラザードの推測を聞いたプリネは不安げな表情で言った。

「オッケー!」

「はいっ!」

そしてエステル達はアガットを探して廃鉱に入った。



~廃坑・露天掘り場所~



エステル達が廃鉱に入ったその頃、古代竜が何かに抗うかのように暴れていて、レーヴェは冷静に見ていた。

「………………………………」

そしてレーヴェは”ゴスペル”を取り出して、暴れている竜を鎮めた。

「よし……それでいい。ふむ、データを取るにはまだしばらくの時が必要か。まったく、面倒な仕事を押しつけてくれるものだな。」

目を細めて竜を見つめてレーヴェが呟いたその時

「……何が面倒だと……?」

「お前は……」

アガットがレーヴェに近づいて来た。

「その金色の剣……やっぱりあの時の赤い隊長か。ずいぶん久しぶりじゃねぇか。」

アガットはレーヴェが持つ剣を見て、不敵な笑みを浮かべた。

「ランクC”重剣”、アガット・クロスナー。いや、クーデター事件の後、Bに昇格したそうだな。」

「ヘッ……さすがは元・情報部だ。あの時はネズミみたいにコソコソしてやったが……。今回はまた、ずいぶんと派手にやらかしたもんだぜ。」

レーヴェの言葉を聞いたアガットは鼻を鳴らした後、武器を構えた!

「……今度ばかりは逮捕だの悠長な事を言うつもりはねえ。その澄ましたツラごと八つ裂きにしてやるよ……」

「威勢のいいことだ。だが、あの程度の被害、派手というほどではあるまい?10年前……お前が見た光景に較べればな。」

「!!」

レーヴェの言葉を聞いたアガットは顔色を変えた。

「この国の遊撃士の経歴は一通り調べさせてもらった。フフ、やはりお前はどこか俺と似ているようだ。」

「………………………………。クク……似てるだと?何も知らねえ野郎が適当な事を抜かすなあああッ!」

レーヴェの話を聞いていたアガットはレーヴェを睨み、いきなり攻撃を仕掛けた!

「……腕の差が歴然なのは前の手合わせで分かっている筈だ。加えて竜の脅威もあるだろう。なのに何故、あえて1人で挑む?」

アガットの攻撃の回避や反撃をしたレーヴェはつばぜり合いの状態でアガットに尋ねた。

「勝算なんざ知ったことか……。てめえは気に食わねぇ……ただ、それだけなんだよッ!」

「やれやれ……その程度か。これでは竜を使うまでもない。」

アガットの言葉を聞いたレーヴェは呆れた表情で言った。

「なに………!?………うおっ!?」

レーヴェの言葉にアガットが驚いたその時、レーヴェは一瞬で3回斬り込み、アガットを吹っ飛ばした!



「似たところもあるが……俺とお前は決定的に違っている。それは剣を振るう理由(わけ)だ。」

「な、なんだと……?」

レーヴェの言葉に驚いたアガットは立ち上がり、武器を構えなおしてレーヴェを見た。

「俺が剣を振るうのは人を捨て修羅となるがため……。しかしお前は、己の空虚を充たすがために振るっている。」

「………………………………」

「重き鉄塊を振るうことで哀しき空虚を激情で充たす……。怒りで心を震わす間は哀しさから逃れられるからだ。だが、それは欺瞞に過ぎない。」

「…………やめろ………………」

レーヴェの言葉を聞き、何かを耐えるような表情でアガットは呟いた。

「そして、欺瞞を持つ者が前に進むことはありえない。”理”に至ることはおろか”修羅”に堕ちることもない。今のままでは……お前はどこまでも半端なだけだ。」

「黙りやがれえええッ!!!」

そして続けて言ったレーヴェの言葉を聞いたアガットは大声で叫んだ!



~廃鉱内~



「ア、アガットさんの声!?」

「この響き方だと露天掘りの場所みたいね。とにかく急ぎましょ!」

アガットの叫びを聞いたエステル達は急いで向かった!



~廃坑・露天掘り場所~



「ッらああああああッ!」

アガットは吠えながら激しい攻撃を何度も行ったが全て回避された。

「ク、クソが……」

「無様だな……。せめてもの情けだ。そろそろ終わらせてやる。はあああああああッ……」

そしてレーヴェは剣を構え、力を込めた!

「クッ…………」

その様子を見たアガットは一歩退き、武器を構え直そうとしたが

「―――せいッ!」

それよりも速く、レーヴェが一気に間合いを詰めてアガットに斬り込んだ。

「……かはッ………」

レーヴェの攻撃をまともに受けたアガットの両手剣――『火炎剣ルバニオン』はアガットの手から弾き飛ばされ、アガットの傍に落ち、アガット自身は崩れ落ちた!

「………………………………」

崩れ落ちたアガットを一瞥したレーヴェは竜を見た。

「さてと……そろそろ時間のようだな。今のうちに『ゴスペル』の制御式を調整しておくか……」

「……ま、待ちやがれ……」

レーヴェが何かをしようとしたその時、アガットは傍に落ちていた武器を拾って、武器をレーヴェに向け立ち上がった!



「ま……まだだ……。まだ終わっちゃいねえぞ……」

「この期に及んでまだ戦おうとするとは。いいだろう。至らぬ身のまま果てるがいい。」

レーヴェがアガットに止めを刺そうとしたその時!

「だめーー!!」

なんと導力砲を持ったティータがアガットを守るかのように、アガットの前を立ちはだかった!

「チビスケ…………なんで……こんな所にいやがるッ……」

ティータの登場に驚いたアガットは信じられない表情でティータを見た。

「えとえと………アガットさんが心配で、それでお姉ちゃんと…………」

アガットの疑問にティータが答えたその時

「ティータ!!」

「ティータちゃん!!」

エステル達もアガット達の所に走って近づこうとしたが

「……留めろ。」

レーヴェがゴスペルを出して呟くと、鎮まっていた竜がエステル達に向かってドラゴンブレスを吐いた!

「くっ……!」

「チッ、やっかいな……」

竜の攻撃によって、エステル達は近づく事ができなかった!

「……………………」

プリネは決意の表情になり、身体能力を生かして、素早い動きで竜の視界から離れるように廻りこみ、気配を殺してアガット達に近づき始めた。



「………………………………」

一方エステル達を留めたレーヴェは静かにアガットたちの所に歩み寄った。

「あ、あう………こ、来ないでくださいっ!」

近づいて来るレーヴェに慌てたティータは武器を構えた。

「ば、馬鹿野郎……。そんな物が通用するかっ!いいから……とっとと逃げろ……!」

ティータの様子を見たアガットはティータに警告した。

「ラッセル博士の孫娘、ティータ・ラッセルか……。天才少女と聞いていたがいささか無鉄砲が過ぎるな。女子供を手にかけるのは趣味ではないが―――必要とあらば斬る。大人しくそこをどくがいい。」

一方レーヴェはティータに警告した後、ティータに剣の切っ先を向けた!

「き、貴様ああっ!」

ティータに剣を向けたレーヴェをアガットは悔しそうな表情で睨んだ!

「ど、どきませんっ!」

一方ティータは決意の表情でレーヴェを見て言った!

「わたし……アガットさんに助けてもらってばかりだから……。こういう時くらいしかお返しすることができないから……。ううん……違う……。ぶっきらぼうで……フキゲンな顔ばかりして……いっつもわたしのことチビスケって子ども扱いするけど……。本当はとっても優しくて……いつも見守っていてくれて……。大好きで……大切な人だからっ!」

どこか優しげな様子を見せて語ったティータは導力砲を地面に置きそして――

「だからわたし……ゼッタイにどきませんっ!!」

両手を広げてアガットを庇い、叫んだ!

「……あ…………」

「フッ、健気なことだ。その半端者に、そこまで慕う価値があるとも思えないが……」

ティータの言葉にアガットは呆け、レーヴェが感心したその時!

「………よく頑張りましたね、ティータちゃん。………ハアッ!!」

なんとプリネがレーヴェの背後を襲いかかった!



「何!?」

プリネの奇襲に驚いたレーヴェはプリネの攻撃を回避し、レイピアを構えているプリネを警戒した様子で剣を構え直した。

「……………………………」

一方プリネもレーヴェを警戒するかのようにレイピアを構えていた。

「プリネさん!」

「マスター!?」

「い、いつの間に…………!」

プリネの登場にティータとツーヤは驚き、エステルはいつの間にかアガット達の所に行ったプリネに驚いていた。

「……………”姫君(プリンセス)(オブ)姫君(プリンセス)”か。なるほど。さすがは”剣皇”の娘だけあって、奴らとは違うな………」

竜が留めているにも関わらず、自分達の所まで来たプリネにレーヴェは感心していた。

「…………”剣帝”……いえ。”レーヴェ”。どうしてこんな事をしたの?」

プリネは静かにレーヴェに問いかけた。

「!?(なっ………!?どういう事だ!?以前とは比べ物にならないほど目の前にいる娘が”あいつ”と重なるとは……まるで”あいつ”に見つめられ、語りかけられているように感じるのは一体……!!)」

一方問いかけられたレーヴェはプリネが自分が知る”ある人物”と重なり、信じられない表情をしたが、すぐに表情を戻して答えた。

「……質問の意味がわからないな。」

「……どうしてこんな事――非力な者達――市民達を傷つけるような人に貴方はなったの?……以前は”力を持つ者が非力な者を守るのは当然”と言っていた貴方が。」

「!!な……ぜ………その言葉を………知って………いる………」

プリネが静かに呟いた言葉にレーヴェは目を見開いて驚き、信じられない表情で後ずさり、プリネを見た!

「…………プリネ・K・マーシルン。これが”今の私”の名前よ。貴方なら”K”に隠された本当の名前が………わかるのではないかしら?」

「……(”K”…………バカな………”あいつ”の訳がない!)…………………………ふざけるな。」

プリネが問いかけた言葉にレーヴェは心の中である人物が浮かび上がり、プリネとある人物が重なったが、すぐに否定して静かに呟いた。

「え?」

レーヴェの呟きが聞こえたプリネは首を傾げた。

「セイッ!!」

そしてレーヴェはプリネに斬りかかった!

「!!」

一方斬りかかられたプリネは回避して油断なくレイピアを構え、いつでも迎撃できるような態勢に入っていた。



「……なぜ貴様が”その言葉”を知っているかは知らんが………”あいつ”の代わりに語るつもりなら……斬る。”ハーメル”の名を知る貴様が”あいつ”と重なる等………不愉快だ。」

「…………………(どうして”私”だとわかってくれないの…………レーヴェ…………)……………そう。なら、力付くでも貴方を止めて見せる。”以前の私”と違って、”今の私”にはかつての…………いえ、今の貴方以上の”力”があるわ。」

レーヴェに睨まれたプリネは心の中では悲痛な思いだったが、それを顔には出さず、決意の表情でレイピアの切っ先をレーヴェに向けて言った。

「フッ、一度敗北したとはいえ、”剣帝”が舐められたものだ。その慢心に抱かれて消えるがいい。」

プリネの言葉を聞いたレーヴェは皮肉気に笑った後、プリネに攻撃を仕掛けた!



今ここに哀しき戦いが始まった……………!


 
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