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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第二話 昇格試験 アクシデント

昇級試験、出会った三人。

それぞれの思いを胸に、若き魔導師達は試練に立ち向かう。



魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。




outside

スタートの合図と同時に数十メートルを駆け抜けたティアナは、アンカーガンからロープを打ち出した。

ロープがビルの外壁に当たり、魔法陣が現れる。ロープはそのまま壁に固定される。

「飛ぶわよ!スバル、アスカ!」

ティアナは二人に合図を送る。

スバルはウンと頷いてティアナの腰に手を回した。

ティアナがロープを巻き戻し、スバルを抱えて空中へ飛び出す。

そのままショートカットし、スバルは目的のビルの中に、ティアナはロープを伝って屋上に駆け上がる。

「へー、考えたなぁ」

その様子を見ていたアスカが感心したように呟く。

「って、見物しててもしょうがないし、行きますかっと!」

ストレージデバイスを構えたアスカは、魔法を発動させた。

「エリアル・ウォーク!」

アスカの足下、正確には靴の裏側に張り付くように魔法陣は発生する。

「そらよっと!」

そのまま普通に走り出すように、アスカが空中に躍り出た。

「エリアル・ダッシュ!」

更に魔法を重ねる。

空中に駆け出したアスカは、スバルが突入したビルに飛び込む。

アスカの空戦適正はCランク。

これは空中に浮く事ができる事。そして、補助魔法がなくて低速移動ができると言うレベルだ。

エリアル・ウォークは空中を歩く魔法で”飛ぶ”とはニュアンスが違う。

エリアル・ダッシュは100メートルほどの短距離を直線状に高速移動する魔法である。

この二つの魔法を組み合わせて、アスカは空中を大雑把に移動できるのだ。

「速い!」

ビルの上からそれを見ていたティアナが唸る。

「足が速いってのは、ダテじゃなさそうね」






アスカside

ダッシュでビルに飛び込んだオレは、目の前でスフィアをドッカンドッカンぶち壊しているスバルを目にする。

……いやさ、女の子なんだから、その迫力ある攻撃は如何なものかと。

しかもさ、オレが飛び込んできてスバル自身はビックリしているのに、リボルバーはまるで別の生き物みたいにガンガンスフィア狙って行くし。

っと、呆けている場合じゃねぇや!

「こっちも負けてらんねぇぜ!インパルス・グレイヴ!」

オレは数少ない手持ちの攻撃魔法を発動させる。

杖型のデバイスの先から、白い薙刀のような魔力刃が生えてくる。

これがオレの切り札、インパルスグレイヴだ。

切れ味抜群の魔力刃を使って、オレはスフィアをまっぷたつにする。

オレの術式は近代ベルカ式。だけど、使っているデバイスはミッド式の標準杖型ストレージデバイス。

その為、魔法を使う場合は一度近代ベルカからミッドへ変換して使わなくてはいけない。

面倒だけどデバイスは支給品だし、099部隊の大半は近代ベルカだしで自分で何とかするしかない。

二機落としたところで、スバルがジト目で言ってきやがった。

「え~、アスカの攻撃ってそれだけ~」

……泣くぞ、このやろう……

確かに、オレの攻撃はスバルと比べたら明らかに見劣りする。

「あー、だから二回も試験に落ちてんの」

自分で言って情けないが、攻撃力の無さがオレの欠点だ。

オレの言葉を聞いて、スバルはポン、と手を叩いてウンウンと頷いた。

どうやら理解していただけたようだ。

って、それはそれで虚しい……ああ、空が青いなぁ

現実逃避したオレは悪くない筈だ!

「でも防御魔法は得意なんだよね?じゃあ、私が攻撃担当で、アスカが防御担当って事でいいよね!さあ、行こう!」

え?えええ!

いや、いいけどさ!

驚きの声を上げる間もなく、スバルは次のポイントへ、向かった。

オレの防御魔法、まだ見てないだろ?何でそんなに信用するかな~?

遙か先を先行しているスバルを、オレは慌てて追いかける。

「益々足を引っ張れなくなったじゃないか……よし!やってやるぜ!」






outside

ティアナはビルの屋上からアンカーガンを構えている。

「落ち着いて、冷静に……」

自分に言い聞かせるように呟くと、眼下のビルにいるターゲットに狙いを定めた。

足下に魔法陣が発生し、アンカーガンに魔力弾が装填される。

それを確認して、ティアナは引鉄を引いた。

ガン!ガン!ガン!

魔力弾がターゲットを次々と破壊していく。

更に奥からターゲットが湧き出てきて、ティアナはそれに向かって魔力弾を放つ。だが……

「!?しまった!」

魔力弾を放ってからティアナは気がついた。追加のターゲットの中に、攻撃してはいけない物があったのだ。

(リカバリーは…間に合わない!)

ミスショット。

そう思った時、ターゲットの前に魔法陣が出現し、ティアナの魔力弾を弾き返した。

(防御魔法、アスカ?)

ティアナの思った通り、アスカがヒョッコリと顔を出して、右手の親指をグッっと立てた。

ティアナもサムズアップを返して次の行動に移る。

(一つ、借りができたわね)





三人はすぐに合流した。

「いいタイム!」

走りながらスバルが嬉しそうに言う。

「当然!」

満更でもない様子でティアナも答える。

「この調子で行こうぜ!」

アスカも、上手くコンビネーションに入っている為か機嫌がいい。

ティアナは併走しているアスカに話しかけた。

「さっきはありがとう、助かったわ」

「オレの仕事をしたまでだよ。防御だけは人一倍だからな」

ニッと笑うアスカ。。

そのやりとりに気づいてないスバルが、前方に現れたターゲットを確認すると大きな声を出した。

「よーし、行くぞぉ!!」

「スバルうるさい!」

「ははは!」

即席チームは、明るく試験に挑んでいた。






フェイトside

ティアナのミスショットを、防御魔法でリカバリーするなんて。

当たり前すぎて逆に思いつかなかったな。

私ならザンバーで切り落としただろうし、なのはなら誘導弾で撃ち落としたかな?

もしあそこでリカバリーに失敗していたら、流れが悪い方へ変わっていたかもね。

「へー、やるなぁ。急造チームにしては息が合ってる」

はやても感心しているみたい。

「そうだね。ティアナの射撃、スバルのシューティングアーツ、アスカの防御魔法……でも……」

これは言うべきじゃないかも?私はちょっと口ごもってしまった。

「ああ、そうやね~」

流石はやて。長い付き合いから私が思っている事を察したようだ。

「アスカ君の攻撃は無いわなー」

「うん」

思わず即答してしまった。

ミッド式のデバイスを強引に近代ベルカ式に変換して使ってるけど、今までそんな人見たことないよ。

普通なら、アームドデバイスに切り替えるのに。

今の状態は、ライフルの先に銃剣をつけて射撃なしで使っているようなものだから、バランスが悪くてしょうがない。

まあ、ティアナとスバルがいるから、攻撃はあんまり考えなくてもいいのかもしれないけど。

「このまま最後まで行くかな?」

私ははやての意見を聞いてみる。

「どうやろなぁ」

ニヤリと笑うはやて。

あ、これは悪巧みをしている時の顔だ。

「最終関門の大型オートスフィア。受験者の半分以上は脱落する難物や。コイツをうまく捌けるか?」

モニターに2メートルはあろうかと言うオートスフィアを映し出すはやて。

確かに、これを落とすのは一苦労しそうだ。

「今の三人のスキルだと、普通なら防御も回避も難しい中距離自動攻撃型の狙撃スフィア」

スフィアのスペックは、三人合わせた総合戦力を上回る。

狙撃ならティアナよりも遠くから正確に撃つ事ができるし、近接戦であればスバルの攻撃力ではバリアを抜く事ができない。

アスカのエリアルダッシュで翻弄はできたとしても、それも長くは続かない。

「どうやって切り抜けるか、知恵と勇気の見せ所や」

はやての言うとおり、足りない部分をどうやって補うのか、これがこの試験のもっとも重要視されている部分。

それを見るために、私もはやてもここにいる。

その時、ふと思った事が口から出てしまった。

「「アスカ(君)の攻撃力がもっとあれば、楽勝かもしれないけど」」

はやてと綺麗にハモってしまった……






outside

フェイトとはやてに酷評されているとは知らずに、アスカは必死にバリアを張っていた。

「Middle Protection!!」

オートスフィアの攻撃をミドルプロテクションで一身に受ける。

「そのまま引きつけて!」

アンカーガンを構えたティアナが魔力弾を撃つ!

「うおぉぉぉ!!」

負けじと、スバルもリボルバーナックルでオートスフィアを粉砕する。

そのエリアの全てのターゲットが破壊され、攻撃が止んだ。

「よし、全クリア」

ティアナが周囲の安全を確認してアンカーガンを下ろす。

「この先は?」

プロテクションを解いたアスカがティアナに近づく。スバルも合流した。

「このまま上。上がったら最初に集中砲火がくるわ。アスカ、エリアル・ウォークで上がって防御魔法、頼める?」

「了解だ、タイミングはそっちに預ける。合図してくれ」

アスカは頷き、デバイスを構える。

「スバル、オプティックハイドを使ってクロスシフトでスフィアを瞬殺。やるわよ?」

「了解!」

作戦は決まった。

ティアナが頭上の高速道路に開いた穴を見据える。

「アスカ、7秒過ぎたら下に隠れて。後はコッチでやるわ」

背中を向けているアスカに言うと、彼はグッと右手の親指を立てた。

「じゃあ始めるわよ……GO!」

その合図で三人は動いた。

「エリアル・ウォーク!」

アスカは天井の大穴めがけて空中を駆け上がる。立て続けに防御魔法を発動させた。

「こっちだ!撃ってこい!Ball Protection!!」

自分を包み込むように球体の防御魔法を展開するアスカ。

ほぼ同時にオートスフィアの集中砲火が襲いかかる。

プロテクションを破られないように注意しながら、アスカはカウントダウンを始めた。

「……7、6」

アスカを攻撃しているオートスフィアの背後から、ローラーブーツの音が近づいてくる。

「5、4!」

一体のオートスフィアが突然凹み、大破した。

「3!」

宙から浮かび上がるように、スバルが姿を現す。

「2!」

リボルバーナックルが高速回転を始める。

その音に反応したスフィアが、アスカからスバルへ照準を変えようとする。

「1!」

残り一秒でティアナも浮き出てきた。

すでに三発の魔力弾が形成されてティアナの周囲に浮かんでいる。

「0!」

大穴に飛び込むアスカ。同時にティアナとスバルが仕掛ける。

「クロスファイヤー!」

「リボルバー!」

「「シュウゥゥゥト!」」

ティアナのクロスファイヤーが、スバルのリボルバーがオートスフィアを一瞬で殲滅した。

周囲が沈黙する。

「おお、すげー。本当に一瞬で決めやがったよ」

ヒョッコリと大穴から顔をのぞかせるアスカ。その口調は感心していると言うよりは、呆れている感じだ。

「イェイ!ナイスだよ、ティア!一発で決まったね!」

スバルは嬉しそうに非攻撃型のスフィアを粉砕する。

(……おい女の子、それでいいのか?)

軽々とスフィアを粉砕してはしゃいでいるスバルを見て、そう思ったアスカに罪はないだろう。

「まあ、アスカが攻撃を引きつけてくれてたからね」

思った通りの作戦で上手くいったからか、ティアナも安堵の表情を見せる。

「普段はマルチショットの命中率あんま高くないのに、ティアはやっぱ本番に強いな!」

ローラーブーツで軽く走りながら、スバルがつい口を滑らせる。

「おいおい」

思わず苦笑するアスカ。ティアナっがムッとした顔になる。

「うるっさいわよ!さっさと片づけて次に……」

不機嫌そうにスバルを見たティアナの目が見開く。

「しまった!」

その意味を瞬時に理解したアスカはスバルに向き直る。

「?」

キョトンとした顔をしているスバルの背後に、撃ち漏らしていた一機のスフィアが狙いを定めていた。

「エリアルダッシュ!ミドルプロテクション!」

地面を滑るように高速移動したアスカが、プロテクションを展開しながらスバルとスフィアの間に飛び出した。

スフィアが射撃する。

「キャッ!」「スバル、動くな!」

プロテクションでスフィアの攻撃を防ぐアスカ。

何とか防御に成功したが、スフィアの攻撃がランダム過ぎて下手に動けない。

「クッ!」

ティアナは二人から離れ、反撃を試みる。だが、

「あっ!」

地面の窪みに足を取られ、転倒してしまった。

「ティアナ!」「ティア!」

アスカとスバルが叫ぶ。

「なんのぉ!」

ティアナは地面を転がってオートスフィアの攻撃を避け、アンカーガンを撃った。

二発の内の一発がオートスフィアを破壊する。

流れた弾丸が、監視用サーチャーを破壊したが、三人はそれに気づかない。

「ティア!」

スバルがティアナに駆け寄る。

「騒がない!なんでもないから」

「嘘だ!グキッていったよ!捻挫したんでしょ?」

「だから何でもない……痛っ!」

心配するスバルをよそに立ち上がろうとしたが、左足首に激痛が走りうずくまる込むティアナ。

「見せて見ろ!」

アスカもティアナに駆け寄る。

「……」

ティアナは近くの隆起したコンクリートに腰を下ろして、左足を出す。

アスカはティアナの足を取ると、僅かに捻ってみた。

「……っ!」

「痛むか?」

「……少しね。でも大丈夫よ」

ティアナは強がってみせるが、その顔色をみれば歩く事さえ困難な事が分かる。

「とにかく、応急処置だ」

アスカは髪留めに使っていた黄色いバンダナを解くと、ティアナの靴ごと足首を圧迫固定した。

「ちょ、ちょっと、汚れちゃうわよ?」

「洗えばいいだけだ。気にすんな」

慣れた手つきでバンダナを巻き終えるアスカ。

「……アリガト……」

礼を言うティアナだったが、その口調は沈んでいた。

「悪い……油断した。これはオレのミスだ」

悔しそうにアスカは顔を歪める。

「……別に、アンタの所為じゃないでしょ。打ち損じたアタシのミスよ」

ティアナが憮然とした表情で答える。誰が悪いと言う訳ではない。

あえて言うとしたら、自分の運が悪いとティアナは思っていた。

「でも……」

「それより!」

まだ何か言いた気なアスカを、ティアナは強引に黙らせる。

「先行して様子を見てきてくれない?この先のポイントが、最大難関なんだからさ」

「……ああ、わかった。スバル、ティアナを頼む」

アスカはティアナとスバルをその場に残し、先へと進んだ。





アスカside

クソ、クソ、クソ、クソ!

油断した。

もっと気を配っていれば防げた攻撃だった。自分の不甲斐なさに情けなくなってくる。

自分に苛立ったまま、オレは高架橋の切れ目から目的地のビルをのぞき見る。

前の試験じゃここまでこれなかった。ティアナとスバルのおかげで、オレは今ここにいる。

「リタイアにも、(おとり)にもさせねぇ……絶対三人でゴールしてやる!」

オレがそう決意を決めて高架橋から飛び出す。

それを待っていたかのように、目的地のビルから魔力弾が打ち出されてきた。

正確にオレを狙っていやがる。

「チッ!」

バリアでそれを防いだが、気を抜くと落とされてしまいそうだ。

「上等!」

少しでも情報収集するべく、オレは攻撃を誘いまくった。





ティアナside

アスカが先行して、アタシとスバルがその場に残った。

「ティア……ゴメン、油断してた」

消え入りそうな声でスバルが謝ってくる。見て分かるくらいに落ち込んでいる。

「……さっきも言ったけど、アタシの不注意よ。アンタに謝られると、かえってムカつくわ」

確かにスバルは油断していたけど、安全確認を怠ったのはアタシだし、バックスとしてはやってはいけないミスだった。

ここでアタシがお荷物になっちゃダメだ。

アスカもいるし、スバルも目標がある。なら……仕方ないか。

「走るのは無理そうね……最終関門は抜けられない」

「ティア?」

アタシの言葉に、スバルが不安そうな顔をする。

もう、そんな顔するんじゃないわよ!

「アタシが離れた位置からサポートするわ。そうしたら、アンタとアスカだけならゴールできる」

動けないなら、せめてフォローして二人の手助けをしたい。

それがアタシの出した答え。でも、スバルは納得しないだろうな。

「ティア!!」

やっぱりね。泣きそうな目でアタシを見ている。でも、これしかないの!

「うっさい!次の受験の時はアタシ一人で受けるって言ってんのよ!」

アタシは叱りつけるように叫んだ。

「次って、半年後だよ!?」

わかってるわよ!そんな事は!でも、アンタの足を引っ張る訳にはいかないでしょ!

「迷惑な足手まといがいなくなれば、アタシはその方が気楽なのよ。わかったらさっさと……クッ!」

立ち上がろうとしたけど足がまた痛み出して、アタシはよろけてしまった。

近くの瓦礫に掴まって、何とか立っている状態だ。

スバルはまだグズっている。このままじゃタイムオーバーになっちゃうでしょ。

「ホラ、早く!」

アタシはスバルに先に進むように促す。落ちるのはアタシ一人で十分だ。

悔しいし、諦めたくないけど、誰かを巻き込む事なんてできない。

「ティア……私、前に言ったよね。弱くて、情けなくて、誰かに助けてもらいっぱなしな自分が嫌だったから、管理局の陸士部隊に入ったって」

いきなりスバルが語り出した。何度も聞いた話だ。

「魔導師目指して、魔法とシューティングアーツを習って、人助けの仕事に就いた」

「知ってるわよ。聞きたくもないのに、何度も聞かされたんだから」

アタシはスバルに背を向けた。

聞く耳持たないというアピールだったけど、スバルは構わずに話を続ける。

「ティアとはずっとコンビだったから……ティアがどんな夢を見てるか、魔導師ランクのアップと昇進にどれくらい一生懸命かよく知ってる」

背中越しでも、スバルの声が震えているのが分かる。

「だから!こんな所で!私の目の前で!ティアの夢をつまづかせるのなんて嫌だ!ティアを置いていくなんで絶対に嫌だ!」

どんな我が儘よ!

スバルがそう言ってくれるのは……正直嬉しいけど、そう思ってるのはアンタだけじゃないのよ?

アタシだって、アンタの夢の邪魔をしたくないの!

「じゃあどうすんのよ!走れないバックスを抱えて、残りちょっとの時間でどうやってゴールすんのよ!」

アタシは振り返って強く言った。そうすれば、怯むかと思ったから。

でも、スバルは意外にもしっかりした言葉で答えてきた。

「裏技!反則取られちゃうかもしれないし、ちゃんとできるかも分からないけど、うまく行けば私もティアもゴールできる!」

自信満々にスバルが言う。

「……本当?」

半信半疑でアタシはスバルに聞き返した。

「あ……えと……その、ちょっと難しいかもなんだけど……ティアにもちょっと無理してもらう事になるし、よく考えるとヤッパ無茶っぽくはあるし……」

おい、さっきまでの自信はどに行った?

「なんて言うか、えと、ティアがもしよろしければって、その……」

ブチッ

「あー!イライラする!」

思わずキレたアタシは、足の痛みを忘れてスバルの胸ぐらを掴んで引き寄せた。

「グジグジ言っても、どうせアンタは自分のワガママを通すんでしょ!どうせアタシはアンタのワガママに付き合わされるんでしょ!だったったらハッキリ言いなさいよ!」

ちょっと驚いた表情のスバルだったけど、すぐに真剣な目になる。

「二人でやればきっとできる。信じて、ティア」

その言葉に、不思議と安心するアタシ。スバルから手を離して時間を確認する。

「……残り時間、あと六分。プランは?」

「うん!」

嬉しそうに頷くと、スバルはアタシに耳打ちした。

そのプランを聞いて、アタシはギョッとする。

「ちょ……それ、本当に反則ギリギリじゃない!試験官の受け取り方次第じゃ減点よ?」

「でも、やるしかない!でしょ?」

イタズラっぽくスバルが笑う。

この子、時々大胆になるのよね……

思わず苦笑してしまった。

あ……一つ大事な事がある。

「でも、アイツは巻き込めない、三回目なんだから」

今、この場所にいないアスカの事を思い出す。

「うん、そうだね。これは私たちが勝手にやる事だから」

スバルも同じ事を考えていたのか、同意してくれる。

アタシは少し考えてプランを練り直した。

「アスカには先行してもらうわ。アタシも、フェイクシルエットでフォローする。スバルは作戦通りに動いて」

アタシ達の行動と切り離せば、アスカを巻き込む事はない。

そこまで話した時に、アスカが帰ってきた。ギリギリまで粘っていたのか、所々埃を被っている。

「ラスボスは手強いぜ、近中距離射撃型だ。離れているのに、コッチの位置に正確に打ち込んできやがる」

当然、アタシ達の作戦を知らないアスカは、見てきたことを伝えてきてくれる。

「アスカの防御魔法で何とかなりそう?」

スバルがアスカに聞く。どう動くにせよ、まずはアスカに攻撃を引きつけてもらいたい。

「まあ、短い時間って事なら……何か作戦あるのか?」

聞き返してきたアスカに、アタシはスバルと顔を見合わせて笑った。

「「任せて!」」 
 

 
後書き
つたない文章ですが、読んでもらえてとても喜んでいます。
これからもよろしくお願いします 
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