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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第152話

9月20日―――



昼休み――



翌日、リィンは昼休みを使ってアリサ達にトワ達のコンサートの映像をみせた。



~トールズ士官学院・端末室~



「うわああ……っ!」

「あはは、かっこいいー!」

「ノリノリで楽しそうだね。」

「フフ、そうですね。」

「あのような音楽は初めて聞きましたが、きっと盛り上がる事間違いなしでしょうね!」

「そうだね。」

映像を見終えたエリオットとミリアムは興奮し、エヴリーヌとセレーネの意見にプリネとツーヤはそれぞれ頷いた。



「ふむ……大したものだ。」

「結構すごかったかも。」

「た、確かに素晴らしかったですけど……」

「あ、あんな露出の衣装を私達に着ろっていうわけっ!?」

ガイウスとフィーが感心している中、ある事に気付いていたエマは表情を引き攣らせ、アリサは声を上げた。



「いや、衣装についてはステージの方向性しだいさ。曲次第で、どういう衣装が向いてるかも変わるだろうし。そうだよな、クロウ?」

「まーな。去年やったのはロック調の曲。となると、衣装の方もああいうハードなヤツじゃないとステージの完成度は上げられないのさ。ま、女子の衣装はどんな場合でも露出が多い方が喜ばれるけどなぁ。」

「や、やっぱり……!」

「それが本音ですか……」

「クロウさん、最低です……」

「プリネやエヴリーヌ達を邪な目で見た奴等、全員殺す。」

「さ、さすがにそれはやりすぎですよ。」

リィンの問いかけに頷いて答えたクロウの答えを聞いたアリサはクロウを睨み、ツーヤとセレーネは絶対零度の視線でクロウを見つめ、エヴリーヌが呟いた言葉を聞いたプリネは冷や汗をかいた。



「まあ、衣装についてはともかく、試みとしてはかなり斬新だろう。Ⅰ組の小歌劇(オペレッタ)にも負けないものに仕上げられる可能性もありそうだ。」

「音楽となると、この中ではやっぱりエリオットだろうが……」

「こういうステージを俺達が実現できる見込みはありそうか?」

「ちょ、ちょっと待って……このクラス、何気に楽器を嗜んでいる人がいたよね……?リィンとか、お父さんからリュートを習ってたんでしょう?」

ユーシスに尋ねられたエリオットは考え込みながらリィンに問いかけた。



「ああ、簡単な曲なら何とか弾けるくらいだけど。」

「アリサとプリネはヴァイオリンだよね?」

「え、ええ……お祖父様に教わったものね。」

「私はヴァイオリン以外にもオカリナやピアノもできます。」

「そしてガイウスは確か”シタール”だったっけ?」

「ああ、オレもそれなりだ。」

「ツーヤはフルートで、セレーネはピアノだったよね?」

「ええ。まあ、アルフヘイムの王女だった時に、他の楽器もそれなりに習っていましたが。」

「そうですね。立派な淑女になる為に幼い頃からピアノの他にはヴァイオリンも習っていましたわ。」

「僕もピアノも弾けるからそれだけで演奏担当のメンバーはほぼ揃っていることになる……これで曲と歌詞を練って、ボーカル担当を割り振れば……」

「エリオットよ、我の事を忘れてもらっては困るぞ!」

エリオットが仲間達ができる楽器を聞いて考え込んでいるとアムドシアスがエリオットの傍に現れた。



「アムドシアスさん……!アムドシアスさんは見ての通り、竪琴だよね?」

「フッ、芸術を愛する魔神たるこの我を舐めてもらっては困るな。我は全ての楽器を扱えるぞ?」

「そうなんだ……!」

アムドシアスの予想外の答えを聞いたエリオットは明るい表情をし

「アムドシアス、貴女ね……貴女はⅦ組のメンバーじゃないから、コンサートに参加するのは無理でしょうが……」

「まあ、指南役くらいだったら構わないと思いますが……」

プリネは呆れた表情で指摘し、ツーヤは苦笑しながら言った。



「お、良い事を思いついたぜ!どうせなら、Ⅶ組のメンバーがそれぞれ契約している人型の使い魔連中も参加してもらえばよくねえか?人型の使い魔連中は麗しい女性ばかりだから、絶対に盛り上がるぜ!」

「ええっ!?」

「Ⅶ組どころか、士官学院生でもない彼女達がコンサートに参加するなんて無理だろうが……」

クロウの提案を聞いたリィンは驚き、マキアスは呆れた表情で指摘し

「へへっ、そこはオレが教官達を口で丸め込んでやるから、安心しな。全員、一応”Ⅶ組”のメンバーだし、異種族との交流の為にとかを名目にしたら、規則に五月蠅いハインリッヒ教頭あたりも文句は言いにくいしな。」

クロウの話を聞いたリィン達全員は冷や汗をかき

「う、う~ん………それって反則になりませんかね?」

「かなり微妙な所ね……」

困った表情をしているエマの言葉を聞いたアリサは不安そうな表情で考え込んだ。



「リィン、アリサ、プリネ、委員長。悪いけど今この場で契約している人型の使い魔の人達を呼んでくれないかな?全員の使える楽器も聞きたいし。」

そしてエリオットは真剣な表情でそれぞれの使い魔達と契約しているリィン達を見つめ

「ハハ、わかった。―――ベルフェゴール、リザイラ、メサイア、アイドス!」

「―――ミルモ!」

「―――ペルル、フィニリィ!」

「―――ヴァレフォルさん!」

見つめられたリィン達はそれぞれが契約している人型の使い魔を召喚した。



「い、言っておくけどボク、楽器なんか触った事はないよ!?」

「フフ……面白い試みだけど、私も楽器で演奏した事はないわね。」

「私もないよ。リザイラ様は色々な楽器を演奏している所をたまに見た事があるけど。」

「私はピアノとヴァイオリンでしたら経験はあります。」

召喚されたペルル、アイドス、ミルモ、メサイアはそれぞれ答え

「リザイラはやっぱり笛だよな?武器としても使っているし。」

「ええ。後は東方の弦楽器―――”琵琶”と”琴”を嗜んでいます。狂った精霊達を鎮める”儀式”の際に必要な楽器ですので精霊達を鎮める役割も担う”精霊王女”なら扱えて当然ですが……”精霊女王”はわかりませんね。」

(わたくし)を馬鹿にしているのですか!?私だって、貴女が嗜んでいた楽器くらい当然全て嗜んでいますわよ!」

リィンに尋ねられた後意味ありげな表情をしたリザイラに視線を向けられたフィニリィはリザイラを睨んで答えた。

「い、意外な事実ね……」

「え、ええ……まさかフィニリィさんが東方の楽器を嗜んでいるなんて……」

フィニリィの答えを聞いたプリネとツーヤは目を丸くしてフィニリィを見つめた。



「ヴァレフォルさんはどうですか?」

「ワタシ?ワタシなら一通りの楽器なら演奏できるわよ。”怪盗”としてお金持ちの家や城に潜入する時に必須のスキルだし。」

エマに尋ねられて答えたヴァレフォルの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「貴様……素晴らしき芸術の一つである音楽を盗みに活用するとは……!―――まあ、今はそこは置いておくとして……―――”怠惰”。男を喰う事が趣味のお前はどうせ何もできんだろう?まあ、男共を興奮させる事が出来る踊りならできると思うが。」

アムドシアスは顔に青筋を立ててヴァレフォルを睨んだ後呆れた表情でベルフェゴールを見つめた。



「相変わらずしっつれいね~!残念ながら貴女の予想と違って、楽器くらい私も弾けるわよ。私は確か”エレキギター”と”キーボード”、後は”ドラム”とかいう楽器ならできるわよ。”イアス=ステリナ”に人間の姿で紛れ込んだ時に人間達と一緒に”ロックミュージック”をやった時に自然と覚えたし。」

「バカなっ!?」

「じゃあ、ベルフェゴールはロックミュージックをやった経験があるんだ……!」

ベルフェゴールの口から出た予想外の答えにアムドシアスは驚き、エリオットは明るい表情をし

「い、意外すぎる事実だな……」

「え、ええ。あのベルフェゴールが楽器を演奏できるなんて……」

リィンとアリサは信じられない表情でベルフェゴールを見つめ

「というかベルフェゴールさん、何気に凄い事を口にしましたよね?」

「そ、そうね。”イアス=ステリナ”と言ったら、”ディル=リフィーナ”になる前の二つに分かれていた世界の内の一つじゃない……」

「まあ、”七大罪”の一柱ならその時代から生きていてもおかしくないね。」

遥か昔の時代を生きている事を口にしたベルフェゴールにツーヤとプリネは表情を引き攣らせ、エヴリーヌは納得した様子で呟いた。



「……うんっ……!ステージの方向性しだいだけど十分良いものにできると思う!」

その時考え込んでいたエリオットは声を上げ

「そうか……」

「そ、そこまで言われたら悪くない気がしてきたわね……」

「そうですね……お祭りらしい気もしますし。」

「いいんじゃない?」

「ゼッタイやるべきだよー!」

「わたくしもやってみたいです!」

「フン、ならば決まりだな。」

「そうだな……今日中に決めないと教官が無茶振りをしてきそうだし。」

エリオットの言葉を聞いたリィン達もそれぞれ賛成した。



「しかし音楽についてはエリオットとアムドシアス任せでよいのか?」

「ああ、二人には歌と演奏の方向性とチーム編成を検討してもらおう。二人とも、構わないか?」

ラウラの問いかけに頷いたリィンは二人に確認し

「うん、いったん任せて!」

「芸術を愛する魔神たるこの我がいるのだから、大船に乗った気でいるがよい!」

二人はそれぞれ力強く頷いた。



「それから……クロウ。衣装とか、必要な機材について相談に乗ってもらっていいかな?できるだけ俺達だけで頑張るようにはするからさ。」

「ハハ、せっかくだし、俺も一肌脱いでやるっての。期間限定だがⅦ組の一員……お前らが勝負に出るっていうなら全面的に力になってやるぜ!」

「クロウ……」

「クロウさん……」

「……私、あなたのことちょっと誤解していたかも。」

クロウの答えを聞いたリィン達はそれぞれ感心した様子でクロウを見つめたが

「てなわけで、ステージ衣装は大船に乗った気分で任せてくれや♪お前ら全員、特に女子どもやリィン達と契約している麗しいお姉様方はあざとく輝かせてやっからよ♪」

笑顔で言ったクロウの言葉に全員冷や汗をかいて呆れた。



「……前言撤回。」

「欲望丸出しだね。」

「あはは……」

「ううっ、お願いですから肌をかなり露出するような衣装だけは止めて下さいね……」

アリサとフィーはジト目になり、エマは苦笑し、セレーネは疲れた表情をし

「というかアイドスがさっきのコンサートで着ていた衣装を着た事をセリカが知ったら、セリカ、クロウを斬るんじゃないの?」

「さ、さすがにそこまではしないと思うのですが……」

「フフ、わからないわよ?何てったってこの身体はセリカが愛するアストライアお姉様の身体だし。」

「アハハ、少なくともいい感情は抱かないと思います……というか、アイドス様を含めた異種族の方達が学院祭でコンサートをする事をお父様が知ったら、絶対頭を抱えるでしょうね………」

エヴリーヌの推測を聞いたツーヤは表情を引き攣らせ、アイドスは微笑み、プリネは大量の冷や汗をかいて苦笑し

「……その男が暴走せぬよう、リィン、くれぐれも頼んだぞ。」

ラウラは真剣な表情でリィンを見つめ

「りょ、了解。」

リィンは苦笑しながら頷いた。



こうして……学院祭の出し物がようやく決まり…………実技テストの日がやってきた…………




 
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