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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第56話

~メンフィル帝国・帝都ミルス・マルーダ城内・謁見の間~



「お主にはいつも驚かされてばかりだったが、聞けば魔に堕ちようとしたリウイをお主の中に眠っていた2人の協力を得て、止めたと聞く。礼を言うぞ、エステル!」

「あはは………騙すような形になったけど、あの時はああするしかなかったのよね~……」

リフィアにお礼を言われたエステルは苦笑しながら答えた。

「……プリネから君にラピス殿とリン殿の魂が眠っていた事、そして2人の魂と同化した事を聞いて、正直驚いたよ。……それにしても2人と同化する時、君は怖くなかったのか?」

「へ?何でですか??」

シルヴァンに尋ねられたエステルは首を傾げて尋ねた。

「……シルヴァン兄さんが尋ねているのは貴女が”貴女”でなくなるかもしれない事に恐怖を感じなかったのか尋ねたのよ。」

「あ、その事ですか。……2人と同化する時、同じ事を尋ねられましたが答えは変わりません。あたしは”あたし”だって事に!あたしの中に眠っていた2人も”あたし”なんですから!」

カミ―リに言われたエステルは頷いた後、太陽のような笑顔を見せて答えた。

(フフ……まさか”私”と同じ答えとはね………)

(エステルさん………貴女が持つ太陽のような明るさで”私”が逝って悲しんでいたヨシュアに笑顔を取り戻させてくれたんですね……フフ、ヨシュアも素敵な娘を見つけたものね……)

エステルの答えを聞いたイリーナとプリネは微笑んでエステルを見ていた。

「フッ、そうか。……ではまず最初に君をずっと支え、これからも君を支えるであろうミント・ブライトに私からささやかだが、餞別を授けよう。リフィア。」

「ウム!」

シルヴァンに言われたリフィアは自分の椅子の横に用意してあった何かの紋章が描かれた白銀の外套と外套に描かれてある同じ紋章の首飾りとそして異空間より神々しい雰囲気を持つ剣取り出し、それらを持って、ミントの前に来た。

「あ……それってもしかしてあたしが修復を頼んだ剣?」

リフィアが持って来た剣を見て、何かに気付いたエステルは尋ねた。

「ああ。余が見込んだ通り、ウィルが見事修復してくれた!……残念ながら剣の銘は一部が欠けていて完全にわからん。ミント、よければ使い手となるお前がこの剣に新しい名前を付けてやれ。」

「ミントが?う~ん……じゃあ、この剣を直してくれた人に付けて貰っていいかな?ミントじゃ、いい名前が思い浮かばないし……」

リフィアに言われたミントは剣を見て悩んだ後、苦笑しながら答えた。

「だ、そうだぞ?ウィル。」

「お、俺!?」

いきなりリフィアに話をふられたウィルは驚いて声を上げ、そして広間にいる人物達はウィルを注目した。

「うっ…………」

「やれやれ……このぐらいでおじげづいていたら、ユイドラが低く見られるわよ?」

「そうですよ、ウィル。今の貴方は昔と違って、ユイドラを代表する領主なのですから。」

たくさんの視線を受けておじげづいているウィルにエリザスレインは呆れた表情をして指摘し、セラウィも同意した。

「ウィル。さっさと決めちゃってよ。」

「……ハア…………わかったよ。…………………」

エヴリーヌに言われたウィルは溜息を吐いた後、少しの間目を閉じて考えた後、目を開いて言った。



「……”エスぺランサー”。それでどうだい?」

「”エスぺランサー”?何か意味があるの??」

ウィルが言った言葉に首を傾げたミントは尋ねた。

「……古代語の意味で”希望を拓くもの”です。フフ、こんな良い名前を思い付くなんて、さすがはウィルですね。」

「あはは……思い付いたというか、なんとなくその剣にはその名前が思い浮かんで、その名前であるべきのような気がしたんだよね………」

セラウィに微笑みかけられたウィルは苦笑しながら答えた。

「だったら、最初からその名前を言って渡せばよかったものを………」

ウィルの答えを聞いたエリザスレインは呆れた表情でウィルを見ていた。

「”希望を拓くもの”………うん!この剣の名前……”エスぺランサー”でいいと思う!ミント、この剣の名の通り、この剣と一緒にママ達の未来を……希望を”拓く”!」

「ミント…………」

嬉しそうに言うミントの言葉を聞いたエステルは感動した表情でミントを見ていた。

「………その剣には我が母、シルフィアが残した聖なる魔力が込められている。その剣を与えると同時にミント・ブライト。君には”ルーハンス”の名を授ける!」

「え?」

シルヴァンの言葉にミントは訳がわからず、首を傾げたが

「う、嘘!?”ルーハンス”!?その名前ってリフィアが尊敬している人であり、軍神(マーズテリア)から破門され、処罰によって”神核”を失って逝った”メンフィルの守護神”と称えられたシルフィア様の名前なんじゃ……」

「ん?なぜ、エステルがシルフィア様の事をそこまで知っている…………?余はそこまで話した事はないはずだが………なるほど、ラピスとリンの記憶か。」

エステルが驚いて口を開き、エステルの言葉を聞いて首を傾げたリフィアだったがエステルがラピスとリンの記憶を受け継いでいる事を思い出し、納得した。また、その様子を見守っていた周囲の人物達もざわめき始めた。

「皆、落ち着け。」

ざわめき始めた広間だったが、シルヴァンの言葉を聞き、広間は静寂に包まれた。

「………我が母、シルフィアは父を支え、そして民の為に常に戦い続けた。………ミント。君も我が母のように、君にとってかけがいのない存在であるエステルを支え、そして民を守ってくれるか?」

「はい!ミントはママの事、大好きでずっと支えますし、遊撃士でもあるから”国”に拘らず、民間人を守ります!」

シルヴァンに尋ねられたミントは頷いた後、笑顔で答えた。

「フッ、母上とはまた違った”聖騎士”になるかもしれないな。……リフィア。」

「ウム!ミント・ブライト。」

「はい!えっと……ツーヤちゃんみたいにすればいいの?」

「ん?ああ。」

リフィアの言葉を聞いたミントはツーヤのように、その場で片膝をついて跪いた。

「ミント・ルーハンス・ブライト。これよりお主は”ルーハンス”を名乗る唯一人の者にしてルーハンス家の当主だ。その名を誇りに民を守り、そしてお主の”パートナー”であるエステルを支えていくがよい!」

「はい!」

そしてリフィアはミントにルーハンス家の紋章が描かれてある白銀の外套を羽織らせ、首飾りをかけた。。

「……”断罪の聖騎士”の名を受け継ぐ娘に歓迎の祝福を!」



パチパチパチパチパチ………!



シルヴァンの言葉をきっかけにその場にいる全員が大きな拍手をした。

「おめでとう、ミントちゃん!」

「ふ、ふえ~……ミントちゃんまで貴族になるなんて……2人が遠くかんじちゃうよ……はう~………」

「そうですね………孤児院にいた頃が懐かしいです……」

ツーヤは拍手をしながら笑顔で祝福の言葉をミントにかけ、ティータは驚きの表情をした後、溜息を吐き、クロ―ゼはティータの言葉に頷いた後昔を思い出すかのように遠い目をした。

「ハハ、貴族の遊撃士という前代未聞な遊撃士ができてしまったな。」

「フン。今回の件で調子にのらなきゃいいけどな。」

ジンは豪快に笑いながら拍手をし、アガットは鼻を鳴らしてミントを見ていた。

「フフ………まさかシルフィア様の名を受け継ぐ娘が現れるなんて、思わなかったわ……」

「はい。でもシルフィア様ならきっと微笑んでミントさんがご自身の名を受け継ぐ事を喜ばれるでしょうね……」

「…………そうかもしれないな。」

イリーナとペテレーネは微笑みながらミントを見て呟き、リウイは口元に笑みを浮かべて頷いた。

「ママ、これからもよろしくね!ずっとママを支え、そしてママと一緒に民間人を守っていくよ!」

「あはは………まさかミントがあたしより身分が高くなるなんてね………でも、例え身分が変わろうとも貴女があたしの”パートナー”である事には変わりないわ!これからもよろしくね!」

「うん!」

エステルに笑顔を向けられたミントも笑顔で返した。

「フフ……エステル。そういうお前も他人事ではないぞ?」

「へ??」

口元に笑みを浮かべて言ったリフィアの言葉にエステルは首を傾げた。



「さて………待たせたな、エステル。君にはリフィア達の件といい、色々と世話になったな。」

「あはは………あたしは遊撃士としてただ依頼を受けただけですよ。」

シルヴァンに言われたエステルは苦笑しながら答えた。

「フフ……16歳という若さながら謙遜しすぎよ♪……でも、その様子なら今から私達があげる褒美を貰っても問題なさそうね。」

「へ?」

カミ―リの言葉にエステルが首を傾げた時、シルヴァンはエステルが貰う褒美を言った。

「……エステル・ブライト。君には”ロード”の称号を与える!」

「ロ、”ロード”!?」

シルヴァンが言った言葉にクロ―ゼは信じられない表情で驚いた。

「ク、クロ―ゼさん。”ロード”って何なんですか?凄く驚いていますけど……」

驚いているクロ―ゼにティータは不安そうな表情で尋ねた。

「………”ロード”とは爵位を持つ方の称号の一種であり”主”または”支配者”を意味する言葉でもあります。つまり少なくともエステルさんは伯父様と同じ身分になるんです。」

「え!?お、お姉ちゃんが!?」

クロ―ゼの説明を聞いたティータは驚いた。一方クロ―ゼと同じ説明をリフィアから聞いたエステルも驚いた。

「あ、あたしが公爵さんと同じ身分~!?」

「正確には”侯爵”だ。……確かに爵位は授けるが、お前には領主の継承権はない。……ぞれぞれの領にも跡継ぎの子もいるしな。お前がこれから貰う名の”公爵”は既にいるし、さすがに”あの2人”の転生した者とは言え、皇家とは関係のない上、帝王学も学んでいない者にセルノとバルジアの領主を任せる訳にもいかぬしな。お前は今まで通りで構わん。父は幼い頃から”闇夜の眷属”の偏見を感じず、そしてそれを他人に伝え、”人間”と”闇夜の眷属”、そして様々な種族との”共存”を導く1人になってほしいという意味を込めて”ロード”の称号を与えるのだ。」

「よ、よかった~………って、セルノとバルジア!?まさかあたしが貰う名前って………!」

リフィアの話を聞いて安堵の溜息を吐いたエステルだったがある事に気付き、声を上げた時

「……アリア。グラザ。前に。」

「はい。」

「ハッ。」

シルヴァンが2人の名前を呼び、呼ばれた2人は返事をした後、アリアは何かの紋章が描かれた真っ白な外套と紋章の首飾りを、グラザは髪飾りを持って、エステルの前に来た。



「えっと………」

自分の前に来たアリアとグラザを見て、エステルは戸惑った。

「フフ……プリネやお父様から最初に聞かされた時は耳を疑ったけど、2人がそんな嘘をつく訳がないし、貴女を見て確信したわ。……貴女からお母様から感じた独特の気配があったもの。」

「ああ。………まさか母上がラピス様と共に転生したとは思わなかったな。」

戸惑っているエステルにアリアとグラザは微笑んだ。

「………………………フフ。2人とも、相変わらず仲がいいようで何よりね。」

2人に微笑まれたエステルは少しの間黙った後、ラピスの力を解放し、黒髪と翡翠の瞳になって、ラピスの口調で微笑んだ。

「!!」

「え!?お、お母様!?」

黒髪のエステルに微笑まれたグラザは驚き、アリアは信じられない表情で尋ねた。また、周囲の人物達も変貌したエステルを見て驚いた表情をしていた。

「ほう………2人と同化した事によって武術大会で見せた時と違い、自由自在に2人の力を解放できるようになったのか………今のお前は”エステル”か?」

変貌したエステルを見て、感心したような声を出したリフィアは尋ねた。

「うん、勿論”あたし”よ。えっと……驚かせるような事をしてしまってすみません。受け継いだ2人の記憶の中でアリアさん達が今でも仲良くしているか気にしていましたので……」

「フフ……そうだったの。……でも、ありがとう。お母様にまた会えた気分よ。」

「ああ。………やはり君になら私達の名を名乗る資格があるな。」

苦笑しながら謝るエステルにアリアとグラザは微笑んだ。

「あ、後。ラピスとリンからアリアさんとグラザさん、それぞれに伝えたい事があるんですけど、伝えさせて貰ってもいいですか?」

「ええ。ぜひ、お願いするわ。」

「……冥き途へと旅立ち、そして転生した母上達の今の言葉……聞かせてくれ。」

黒髪のエステルに尋ねられたアリアとグラザは頷いてエステルを見た。そしてエステルは深呼吸をした後、ラピスの口調で言った。

「……アリア。時代は常に動き続けるけど……森の恵みを忘れないように……グラザと一緒にこれからもセルノの森を守ってね。グラザ、アリアをこれからもずっと支えてね。」

「……はい。お母様の……”森の守護者”の娘として、お母様が愛した森をずっと守り続けます。」

「……はい、ラピス様。アリアは私がずっと支え続けますのでご安心下さい。」

黒髪のエステルに微笑まれたアリアは微笑んで答え、グラザは頷いた。そしてエステルはリンの力を解放し、金髪と紫紺の瞳になって、凛とした表情でリンの口調で言った。

「……グラザ。ラピスお姉様が……私が望み、ようやく実現したセルノとバルジアの統合が崩れる事がないよう、”ファラ”の名を冠する者の1人としてしっかり見守っておくのだぞ。……アリア。グラザの事をこれからも頼む。」

「……はい、母上。この私グラザ・ファラ・マーシルン、そしてラピス様のご息女であり、我が妻アリアが居る限り……もう二度とセルノとバルジアが袂を分かれさせるような事はさせません。」

「……お任せ下さい、リン様。リン様もお母様と共に新たな幸せを手に入れる事を心よりお祈りしております。」

金髪のエステルの言葉にグラザとアリアは頷いて答えた。そしてエステルは元の姿に戻った。



「これから与える名はやはり君にとっても相応しい名だな。……エステル・ブライト。”ロード”の称号を与えると同時に”ファラ・サウリン”の名を与える!アリア、グラザ。」

「……はい。」

「ハッ。」

シルヴァンに言われたアリアとグラザは頷いた後、それぞれ凛とした表情でエステルを見た。

(えっと……あたしもツーヤやミントのようにすればいいのよね?)

見られたエステルはツーヤやミントがしたように2人の前で片膝をついて跪き、頭を下げた。

「……セルノ・バルジア統合領主グラザ・ファラ・マーシルンの名において。」

「……その妻、アリア・サウリン・マーシルンの名において。」

グラザとアリアは重々しい口調で言った後、2人同時に言った。

「「貴女をセルノ・バルジア統合領家の一員として認める。」」

そしてまずグラザが髪飾りをエステルの頭の上からかけた。

「……その髪飾りは母上の記憶を受け継いだ君もわかると思うが”ファラ”の名を冠する者だけが付ける事を許される髪飾り。加えてそれは母上――リンが生前付けていた髪飾りだ。……大事にしてくれ。」

「……はい!」

グラザに微笑まれたエステルは頭を上げて頷いた。そしてアリアは持っていた何かの紋章が描かれた外套をエステルに羽織らせ、そして首飾りをかけた。

「……その外套はグラザが渡した髪飾りのようにお母様――ラピスが付けていた外套にセルノ・バルジア統合領家の一員としての証明となる紋章が描かれてあります。そしてその首飾りもまた、その証の一つ。……バルジアの誇り、セルノの優しさと共に生きてね。」

「はい!」

そしてエステルは立ちあがった。

「……”森の守護者”と”聖炎姫”を受け継ぐ少女――エステル・ファラ・サウリン・ブライトに歓迎の祝福を!」



パチパチパチパチパチ………!



シルヴァンの言葉をきっかけにその場にいる全員が大きな拍手をした。

「おめでとうございます、エステルさん!フフ……遊撃士の”ロード”ですから、”ブレイサーロード”とお呼びした方がいいかもしれませんね。」

「お、おめでと~、お姉ちゃん!」

「フフ……似合っているわよ、エステル!」

「ハハ……旦那が知ったらきっと驚くだろうな。」

「ま、遊撃士としての本分を忘れるなよ。」

(フッ。まさかエステル君がメンフィルから爵位をもらうなんてねぇ……世の中何があるかわからないね……フム。いざとなればエステル君とミント君を頼らせてもらおうかな♪)

クロ―ゼやティータ、シェラザードは笑顔で祝福の言葉をかけ、ジンは豪快に笑い、アガットとオリビエは口元に笑みを浮かべていた。

「さて、エステル。お前の友として、そしてメンフィルを統べる”王”の継承者としてお前に餞別をやろう。……まずは現在契約している者達を召喚してくれ。」

「へ?うん。……みんな!出て来て!」

リフィアに言われたエステルはパズモ、サエラブ、テトリ、ニルを召喚した。

「まずこれがメンフィルを統べる”王”の継承者としての餞別だ。」

そしてリフィアはエステルに2つの紋章を渡し、テトリ、ニルにもそれぞれ一つづつ渡した。

「?これって何?」

(……もしかしてこれは……)

紋章を渡されたエステルは首を傾げ、ニルは何かに気付いた。

「使えばわかる。……まずその紋章を”炎狐”に掲げてやれ。」

「う、うん。」

リフィアに言われたエステルはサエラブに紋章の一つを掲げた。すると紋章は光を放ち始めた!

(フッ。……まさかこんな形で新たなる力を手に入れる事になるとはな……)

紋章を掲げられたサエラブは口元に笑みを浮かべながら、光に包まれた!

「えっ!?一体何が……!」

「フフ……すぐにわかる。」

その様子を見たエステルは驚き、リフィアは口元に笑みを浮かべた。そして光がなくなるとそこには尾が一本増えたサエラブがいた。



「あ、あれ??永恒の尾が一本増えてない??」

(当然だ。我は”昇格”したのだからな。)

尾が一本増えたサエラブを見て首を傾げているエステルにサエラブは答えた。

「”昇格”??何それ??」

「”昇格”……ある一定の力を持った者だけがさらなる”力”を得る事だ。先ほどエステルが使ったのは”火の紋章”。火属性を持つ者を”昇格”させる古代より伝わる品だ。」

「え!?じゃあ、サエラブ、前より強くなったの!?」

リフィアの説明を聞いたエステルは驚いた表情をして尋ねた。

(ああ。”炎狐”は尾が一本増えるごとにさらなる力を手に入れる。尾が一本を増えた我の新たなる力……今後の戦いで知るがよい。)

驚いているエステルにサエラブは不敵な笑みを浮かべて念話を送った。

「フフ……じゃあニル達もお言葉に甘えて”昇格”しましょうか。」

「はい!」

そしてニルとテトリは渡された紋章――”光の紋章”と”地の紋章”を掲げ、光に包まれた!そして光が消えると付けていた髪飾りが光輝くティアラに変わったテトリと、かぶっていた帽子と身体に纏っていた大きな光の輪がなくなり、その代わりエリザスレインが装着している髪飾りを付け、小さな光の輪を頭の上に浮かせているニルが現れた!

「”妖精王女”テトリ!森の力と共にこれからもエステルさんを支え続けます!」

「第5位”力天使(ヴァーチャーズ)”ニル・デュナミス。これからも貴女を”守護”し続けるわ!」

”昇格”したテトリとニルはエステルに笑顔を向けた。

(ハア………人間と契約している変わり者が私と同じ位になるなんてねぇ……ま、それを言ったらウィルに惹かれ、メロディアーナみたいに人間と天使の子供を作ろうとしている私も人の事を言えないわね……)

その様子を見守っていたエリザスレインは溜息を吐いた後、横目でウィルを見た後、苦笑していた。

「2人ともこれからもよろしく!……パズモ。後はあなただけね。」

(ええ。お願い、エステル。)

そしてエステルはパズモに紋章――”風の紋章”を掲げた!すると紋章は光を放ち、パズモは光に包まれた!光がなくなると、そこには背中に生えていた小さな羽が小さな真っ白な翼が生えたパズモがエステルの目の前にいた!

「わあ……パズモは羽が白い翼に変わったわね……前より可愛くなったわよ!」

エステルは小さな白い翼が生えたパズモを見て、喜んだ。

(”嵐の守護精霊”パズモ・メネシス!聖なる光、そして嵐の力とともに貴女を守るわ!)

「うん!これからも一緒にいてね!」

パズモの決意の念話にエステルは笑顔を向けて頷いた。



「そしてこれが”友”としての餞別だ。」

そしてリフィアは異空間より一本の剣を取り出した。

(え!?リ、天秤の十字架(リブラクルース)!?……いえ、違うわね。形は同じだけど感じられる力は微妙に違うわ……この魔力……もしかしてセリカの……)

剣の形状を見て驚いたパズモだったが、剣から伝わる力を感じ、首を横に振って否定した後、驚いた表情で剣を見ていた。

「あれ?この剣、あたしが武術大会の決勝戦の時の……」

「うむ!なんとなくだがあの時の剣がお前が持つべき剣と思って、ある剣を元にウィルに形状等を改造してもらったのだ!」

「そうなんだ………ありがと、リフィア。そろそろ剣も使おうかな~って思っていたの。……リンの技も使えるし、助かるわ。」



リフィアの説明を聞いてお礼を言ったエステルが剣を受け取ったその時、剣が眩い光を放った……!


 
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