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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第231話 最強姉妹

 
前書き
~一言~

いやぁ、世間一般様では、GW真っ只中でしょう! 人も多くて賑やかで良いですね~…………… お仕事だったりも、しますが、辛く無いです…………涙 だ、だって 人が多かったら大変だしー、渋滞も凄いしぃ……… 休み中の勤務はそれなりに色、つけてくれるしぃ……………………… 涙涙

っとと、愚痴はこの辺でやめておきます! とりあえず、空いた時間にちょこちょこ書いてたのが、1万字越えたので、投稿をっ! 何とかバトル開始ー! まではもって行けました。そして 文字通り、挨拶がわりまで!

《絶剣》ちゃんw は兎も角、剣聖さんが()なのかは、この話で明らかにしました。
当たったー! と言う人もいれば、違ったー、そして がっかり…… と言う人もいると思いますが……、温かい目で、見ていただけたら幸いです。

 ようやく接点が生まれました。彼女達と彼女達、そして 彼ら。これから、どーなっていくのか………、をちょこちょこ考えていく次第であります!!m(_)m

最後に、この二次小説を読んでくださって、ありがとうございますっ! これからも、頑張ります!!

                                じーくw 

 
 色々と一悶着あったが、気を取り直して一行は横一列で低空で飛行し、名も無き小島の中央を目指した。梢の連なりが途切れると、直ぐに大きな丘が視界に入る。
 その頂上には、まるで世界樹イグドラシルの小型版の様な立派な樹が四方に枝を伸ばしていた。

――この樹も、数十年、数百年、もしくは数千年後には、あの世界樹(イグドラシル)の様になるのかもしれない。

 と、仮想世界である事を忘れてしみじみ思い浮かべると、樹を目指して、更に速度をあげて飛び続ける。

 その樹の根本には、もう沢山のプレイヤー達が集まっている様で、大きな輪を作っていた。どうやら、既にデュエルは始まっている様で、離れていても、声援が津波の様に揺れながら届いてくる。

 数秒後に、その輪から少し離れた空きスペースに到着すると、翅を畳み歩いて輪の切れ目に入っていった。

「おんやー、珍しい。どうやら、タッグ戦してるみたいね?」
「ですねー」
「ん。みたいね」

 リズが、辺を見渡して、そう呟き、リーファとシノンが同意していた。どうやら、ここの上空で戦っている様であり、鍔迫り合いの様な衝撃音も聞こえてくる。タッグ戦をしている事が判ったのは、当然だ。通常の1対1の対戦であれば、《絶剣》か若しくは《剣聖》が、樹の丁度根元付近に待機していて、デュエルが終わるのを待っている筈なのだ。
 だけど、その定位置には誰もいない。――つまり、今2人とも戦っていると言う事。

「信じられませんよねー? あの2人とタッグ戦するなんて……」
「うぐっ……、わ、悪かったってば」

 シリカがジト目で、リズを見てる。……どうやら、まだまだ根に持っている様子で、リズもいい加減 からかう様な返答はせずに、謝っていた。シノンはややしょぼくれてしまったシリカの頭を軽く撫でていて、その時だった。


「「―――――あぁぁぁぁぁぁぁぁ」」


 と、なんとも情けない悲鳴と共に、2人のプレイヤーが落下してきたのだ。
 1人がまず落下し、まるでギャグ漫画の様に、落下の衝撃で人型の穴を作ると、2人目が、丁度交錯する様に、落下して、✖の字が地面に出来上がっていた。

 あまりの突然な事に、呆気にとられるレイナとアスナ。
 そうこうしている間に、穴から にゅっ…… と、手が出てきて、我先に我先にー と這い出てきた2人組。どうやら、その容姿から火妖精族(サラマンダー)槍使い(ランサー)だった。……武器が判った理由は、2人から少し遅れて 落ちてきて地面に突き刺さった為だ。

 2人は、衝撃で少々頭が揺れるのを懸命に我慢すると、殆ど同時に両手をあげて大声で喚いた。

「ま、参ったー!!」
「降参ーーこーさんーー!!」

 大声で白旗を振る様に言うと、次はハモった。

「「リザイン!!!」」

 《降参》や《参った》、《負けた》では、認識されない様だったから、ちゃんと、《リザイン》の宣言。すると、デュエル終了のファンファーレが宙に鳴り響き、更にいっそう大きな拍手と歓声がそれに続いた。

『すげぇ! これで75人! いや、78人か?? わかんねぇ、このペースじゃ 直ぐ100人抜き行くんじゃね?? 特にタッグ戦やってたら、それこそ あっと言う間に!』
『ってか、タッグはもう無謀だろ?? ソロでボスクラスのMobに挑む様なもんじゃなねぇか』
『うおおお、誰か止める奴はいないのかよ!』

 と、賞賛ともボヤキとも取れる声が無数に交錯する。

 確かに、全種族の中でも、トップクラスに土妖精族(ノーム)の次にガタイが良い、ともされる火妖精族(サラマンダー)の2人を一蹴した事、そして ぱっと見ではあり、細かくは判らないが、2人の装備も紛れもなく一級品だと言う事は判る為、それ相応の使い手だろう。その2人を倒して、更にボヤきの中には 『負けて当然』の様な内容が聞こえてくるから、本当に強いと言う事が現時点で判ると言うものだ。

 一体どれほどの者なのだろうか? と当然ながら気になったアスナとレイナは、同じ仕草で、頭上を見上げていた。そこには、大樹の枝が作り出す木漏れ日が広がっている。……その光の中をくるくると螺旋軌道を作って、降下してくる1つの影があった。そして、もう1つは、その螺旋軌道で降りてくる事によって、僅かながら光のループ線が出来ている中央をゆっくりと降りてくる。

 第一印象は、思ったよりも遥かに小柄であると言う事。まだ上空にいるのだが、この遠間でも判る。その名前のイメージから、筋骨隆々たる巨漢コンビをイメージ。いや、《剣聖》の方は、機動性重視、と勝手に考えて、筋骨隆々ではなく、やや痩せ型、所謂 細マッチョだと、予想していたんだけれど、今も近づいているが、間違いなく華奢な体型だ。

 くるくる、と回りながら降下を続ける者は、肌が闇妖精族(インプ)の特徴でもある、影部分が紫がかった乳白色。そして、その中央を降りてくる者は猫妖精族(ケットシー)、それは言うまでもなく特徴的な大きな耳。フサフサな毛並み、そして 長い尻尾が見えてくる。

 パープルブラックの艷やかな長い髪、胸部分を覆う黒曜石のアーマー、その下のチェニックと、風をはらんではためく、ロングスカート。闇妖精族(インプ)の色と言っていい全体的なパープルブラック仕様。

 赤みがかかった茶髪、レッドブラウンの同じく艷やかな長い髪、胸部分を覆うのは琥珀色に輝くアーマー、そしてチェニックとロングスカート。こちらも、猫妖精族(ケットシー)の色、って言っていい全体的にブラウン仕様。

 くるりと一回転した後に右手を胸の中央に、そして左手の指先で、スカートを摘み、まるでお芝居の様な仕草で礼をする。 そして、やや離れた所で、もう1人。こちらは芝居っぽくなく、礼儀正しく、緩やかに一礼をしていた。

 唖然として見つめてしまうのはアスナとレイナ。無敗の剛剣士、そして聖剣士、とも言える《絶剣》と《剣聖》。その2人のイメージ、出来上がっていたイメージが頭の中で徐々にひび割れていくのだ。
 割れるトドメになったのは、全面に前に出ていた闇妖精族(インプ)の方が、満面の笑み、眩しいほどの笑みを浮かべて、無邪気っぽくVサインを作っていた事。それを 何処か微笑ましく……と言うより、呆れ視線も見え隠れしている猫妖精族(ケットシー)。歓声が更に際立った事。――歓声が沸き起こるのも判る。……だって、2人はあどけなさがやや残ってると言っていい、少女(・・)達だったから。

「………ちょっと、リズ……」
「なに?」

 イメージの中の《絶剣》と《剣聖》は、完全に消失し 種族の特徴的な武器防具だけがそのイメージの中に残されていた。だからこそ、アスナは唖然として、リズの脇を肘で突く。

「え、え……?」
「ん? どうした、レイナ?」

 そしてレイナはと言うと、何度も何度も瞬きをしながら、2人を見ていて、その隣でいたリュウキもそれに気づいた様で、首を傾げていた。

「だ、だって――――」

 レイナは、混乱冷めやまぬ様子で、ゆっくりと、それこそ芝居がかった動作でリュウキに向き直る。丁度、同じタイミングでアスナがリズの両肩を掴み、揺らしながら、2人の姉妹は、声を合わせたかの様に言うのだった。

「「ふ、2人とも、女の子じゃないっ!?」」

 そう、《絶剣》も《剣聖》も女の子(のように見える外見)なのだ。

 ステレオ感が何とも言えない気がするが、そこは仲良し似た者姉妹だ。先程のイチャコラ、ラブコメも、打ち合せをしていたのではないか? と思える程殆ど同時進行だったから、それ程は驚かないのだが、やや 旗色が悪い?のは アスナの急接近を受けたリズだった。あまりの剣幕だったから。

「あ、あっれー? 言わなかったっけ?」
「言ってないよ!」

 やや視線を反らせているから、リズ自身も言っていない事を分ってるだろう。

「ん。確かに性別に関しては――いや、GGOでは紛らわしいアバター番号があるから……、一概には言えない………な」

 訝しみつつ、そう返すのはリュウキだった。
 キリトも、それを訊いて思わず頷いてしまう。《M9000番台》とやらのレアケースも無きにしも非ず、と何処かで思った様だったが。

「ちゃんと、女の子でしたよ? 私……、ちょっとドジしちゃって、2人に倒れ込んでしまっちゃって……、それで、ハラスメント・コードが出ませんでしたから」

 疑問解消をしてくれたのは、シリカ。
 彼女は戦闘後、ボコボコにされてしまって、その衝撃の余韻がそれなりに残っていた様だったから、足元が覚束なくなって、倒れ込む様に抱きついた、との事だった。
 相手が、本当に男の子であれば、……困った事になりそうだったが、異性に過剰に接触すると、つまり抱きつくと、間違いなく発生する《ハラスメント・コード》がアナウンスされなかったから、間違いないのである。

「そう、か。……随分と大変だったんだな? シリカは」
「ぅ……、そーでしたよ………」

 しょぼん、と耳を伏せてしまうシリカ。
 ピナが、『きゅるる……』と励ます様に頭上で翅を羽ばたかせているのが、何処かまた、愛らしかったのは、また別の話。

「そ、それでも驚くよっ、だって、色々とすごい事、訊いてたらさっ! 通り名だって、すっごく強そうなんだしっ。なんっていうか、筋骨隆々? みたいな印象だったもんっ!」
 
 まだまだ興奮冷めぬレイナ。だが、それを訊いたリュウキは、実に対照的だった。

「ん……、そうか? 女性プレイヤーに付く様な通り名じゃないだろうな、と一般的にも思える名前が、身近に何人かいたし。それで十分先入観はなくなると思うんだが……」

 身近な例を、悪気もなく、ちゃっかりと上げちゃうのはリュウキ。

 そう――確かに、自分たちのパーティには、イメージをいうだけであれば、負けていない者がいる。

 1人は、《バーサクヒーラー》
 更にもう1人は《バーサクソンガー》

 どちらも女性プレイヤーに名付けるには……少々抵抗が有る、と言うものだ。
 後、もう1人、猫妖精族(ケットシー)の《弓兵(スナイパー)》も何処か負けていない気がするが、古来より、凄腕狙撃手(スナイパー)には、女性が多数いたから、まだ弱かった、と言うのはリュウキの意見である。

 その返答を訊いて、頬を思い切り膨らませるのは誰なのか……、もはや言うまでもないだろう。

「もーーっ、リューキくんっ!」
「ひ、ひどいよー。それに 好きで名乗ったんじゃないし、そもそも名乗ってもないのに、もぉ……」

 レイナは、腰に両手を当てて、仁王立ち。アスナは 何処か窶れた様子。何度もいわれてきているからだろう。
 少々、2人の琴線に触れてしまったと言う事で、そうそうに手を挙げるのはリュウキだった。
 それを訊いて、回りではニヤニヤと笑ってしまっている。……勿論、リズ中心に。

「っと、それより、キリト君?」
「え? どうした??」

 アスナは、話題を逸らせようとしたのだろうか、或いはキリトに本当に何か聞きたかったのか、恐らくは両方であろう。表情を一変させると、視線をやや鋭くさせてキリトを見た。

「キリトくんが、あの人に負けた理由って――……」

 じぃぃ、っと横目でキリトを見ていた。
 レイナも、『そういえば……、ありえそうな気がする』と、腕を組んで考え込んでいた。
 
 それを訊いたリュウキは、確かに判らなくもない、と肯定も否定もしなかった。『女性は護るもの』と教えられて育ってきたから。……かと言って、手を抜いていい話でもないのは確かだ。

「で、どうなんだ?」

 リュウキが、説明を求める様に キリトに訊くと慌てつつ、必死に真顔を作って、ぶんぶんぶん、と首を横に振っていた。

「ち、違うって、ほんと! 女の子だから、手加減をしたー、とかじゃないって。もう、超マジでした。ほんと……」
「ん――……。嘘を言っている様には見えないな」
「……そーだろうよ。だって、お前の前で、あからさまな嘘なんか、正直つけないし……」

 はぁ、とキリトはややため息。負けた事を力説するのは、何処となく悔しさがこみ上げてくるものがあるから仕方がない。それにしても、自分の事をなんだと思ってんだ? とリュウキが改めて思ってしまうのも仕方がない。

「むー………、ほんとっぽいなぁ……」

 アスナは少々複雑なモノがある。何故なら、キリトとリュウキの絆? は、自分達、即ち アスナやレイナのそれに負けてないのは周知の事実だから。一番長らく共に戦い続けてきているから、それも当然だと思えるが、もしも どちらかが異性だった……、と思うと互いに背筋が凍る想いだったりする。

「あ、あはは……ん? あっ、お姉ちゃん」

 レイナは苦笑いをしていた時、丁度 あの2人。どちらが絶剣で、どちらが剣聖か判らないけど、闇妖精族(プーカ)の方の女の子が声をかけていた。もう片方の猫妖精族(ケットシー)の女の子が、『この子の面倒を見ます。とても世話を焼いています!』と、見て判る様で、埃を払う様に 身嗜みを整えてあげつつ、ごく低位のヒール魔法を掛けてあげていた。

「えーっと、次に対戦する人、いませんかーー、2人でも、1人でも、いいですよーっ」

 その声は、アバターににあった高く可愛らしい響きだ。口調もまた歴戦の勇士、とは思えない明るさ、そして無邪気さを漂わせていた。

「ほーら、まだ終わってないから、慌てないで、ちょっとで良いから、じっとしてなさいって」

 そして、何処か穏やかささえその声質に現れている様なトーン、柔らかな口調。こちらもアバターに十分すぎる程合っていると言えるだろう。


――何処か、雰囲気が似ている気(・・・・・)がする。


 そう思ったのはレイナである、が 直ぐにその考えは息を潜めた。
 
 あの2人を見て、他にも もっと色々と感じる所があるから。

 ALOでのアバターは基本的にランダム生成をされているから、年齢や体格までは反映されない。自分の望んだ姿になるには、生成をし直さなければならない。手間も金額もかかってしまうから、あまり好ましくないのだ。(因みに、皆のアバターは殆ど現実のモノと変わらないのは実に幸運だと言えるだろう)

 だから、決して現実と今の姿がリンクしている訳ではないのだが……、あの2人 《絶剣》と《剣聖》の2人の仕草、そして 声は、それが実年齢に即した姿であると。そして、現実でも、ああやって気にかけているんだと。……姉妹か、それ程仲の良い間柄なのだと信じたくなる程のナチュラルさだった。

 そして、次の対戦者を募集中の所。
 周囲からは、

『お前行けよ』
『やだよ、即死だよ』

 等のチャリ取りが聴こえてくるだけで、なかなか名乗り出るものはいなかった。先程の100人抜き~的な声が結構答えているのだろうか。

 そこで、今度はリズがアスナの脇を肘で突く。

「ほら、レイもいってるじゃん? 行きなさいよ」
「うんっ、頑張ろ、お姉ちゃん!」
「えっ、で、でも ちょっと、気合入れ直さないと……」

 アスナは、レイナと違って消極的だった。あの2人の容姿を見たから、と言う理由もあるだろう。……因みに、レイナが気合が入っているのは、先程のリュウキとのやり取り、レイナにとっては、最高の激励があったから、と言うのは別の話。後々に アスナがキリトにボヤくのも別の話、と言うより後々の話である。

「なーに、妹が気合充分だっていうのに、姉が情けないこと言ってんのよ。それに、そんなもんあのコ達と一合撃ちあったら、バリバリ充分入るって。さ、行った行った!」
「わっ」

 どすん、と背中を押されて、アスナは数歩つんのめりながら進み出た。
 レイナは、軽く皆に手を振って アスナに続いた。

 アスナは転びそうになるのを、何とか翅を広げて回避。レイナはアスナの手を取って、支えた。何だかいつもとは実に対照的な2人であるが、こういう時があっても良いだろう、と他のメンバーはにこやかに笑っていた。
 そして、丁度お色直し? を終えた2人とアスナとレイナの目がしっかりと合った。

「あ、お姉さん達。やる?」
「初めまして、よろしくお願いします」

 本当に随分と対照的な2人だなぁ、と思いつつも、アスナとレイナは頷いた。

「えーと、じゃあ、やろうかな」
「こちらこそー、宜しくねっ」

 最初に考えていた絶剣と剣聖のイメージが完全に払拭しきれていない様で、やっぱり毒気を抜け切れてない様子のアスナ。対照的に、やる気マンマンなレイナ。

 そんなこんなしてる所で、周囲から一斉に歓声が沸き起こった。

「おおお、アスナとレイナだ!」
「最強姉妹!!」
「月例大会の表彰台常連の底力、みせてやれーーっ」

 最初の方は……、まだよかった。
 恥ずかしかったけれど、それでも……よかった方だった。だけど、後半部分は………。

「《絶剣》と《剣聖》に一泡吹かせてやれー、バーサク姉妹!」
治癒師(ヒーラー)やめちまえー、歌姫(ディーヴァ)は……癒されるからありで! 付与(エンチャント)より、そっちの方が力が出るから!! 今度また、歌ってーーっ」

 レイナの方が人気がやや出てきているんだけれど……、最終的には。

「ってか、なんで前衛選ばなかったんだよー、2人ともー!」
「バーサクヒーラー!」
「バーサクソンガー!」

「「「ツイン・バーサーカーっ!!」」」

 不名誉極まりない二つ名が周囲の歓声と共に、この場に渦巻いてしまったんだ。

「ぅぅぅ………」
「閃光の方が…………まだ…………」

 いたたまれなくなってしまい、顔を覆う二人。
 そんな事情はつゆ知らずな、絶剣と剣聖の2人。と言うより、一体どっちが絶剣で、どっちが剣聖なのか、判らなかったのだが、その疑問は直ぐに解消された。

『絶剣も、頑張れよーー』

 と、その容姿から 明らかに腕試しより、ファンになりそうな勢いのプレイヤーも多いから、少なからず彼女達への声援もあったのだ。

 《絶剣》の方に反応したのは、第一印象、元気いっぱい! な感じの闇妖精族(プーカ)の少女。
 《剣聖》の方に反応したのは、物静かでお淑やかな印象の猫妖精族(ケットシー)の少女だった。

 本当に実に対照的な2人であり、闇妖精族(プーカ)の彼女は、にこやかにピースサインを向けていたかと思えば、猫妖精族(ケットシー)の彼女は、少々恥ずかしそうだけれど、丁寧に、優雅に、と言った様子だった。

 暫く見てみると、この2人も姉妹関係の様に見えてしまうのは皆同じ気持ちだろう。


――……おてんばな妹を、しっかりものの姉が面倒を見る。


 アスナとレイナの姉妹とはちょっとばかり違う所があるが、それでも こちら側も実に理想的である。

「えっへへー、オッケー! それにしても、タッグの二連戦は初めてだねー?」
「ええ。楽しみね。じゃあ、簡単なルールを決めましょうか?」

 にこっ、と笑いつつ、承諾した様で、指をパチン、と鳴らす少女。そして、手招きをしてバトルの詳細を決め様としていた。デュエル形式、と言う訳ではない。システム的制限ではなく、任意決定のモノだ。

「えーと、ルールはありあり、でいいのかな?」
「うんうん」

 アスナがそれを訊くと、2人は示し合わせた様に、頷いていた。

「うん勿論。魔法もアイテムもばんばん使っていいよ。ボクと《姉ちゃん》は――」

 にこっ と笑いかけると、お互いに腰に差した剣の柄を数度、叩くと言った。

(これ)だけ――だけどね?」



――どうやら、2人も姉妹なんだ………当たった。


 と思いつつ、間違いなく妹っぽく、おてんばな少女を見て。

――《ボク》と言う一人称がよく似合うなぁ。

 とも、感じていた、が それも一瞬だ。
 何故なら、2人とも共通しているのは、本当に良い笑顔だと言うこと。つまり、無邪気なまでの自信があり、と言う事だ。

『魔法を使っても良いし、アイテムを使っても全然良い、――剣一本あれば問題ない』

 と言っているのだ。

 通常、デュエルに置いて、魔法は詠唱中の無防備時間や遅延が長く発生する為一概に言えないのだが、アイテムともなれば、話は別。回復アイテムは言わずもがなであり、少々値は張るが、ステータスブースト系アイテムも使えば、更に有利である事は間違いない。

 それらの大きな有利性(アドバンテージ)を相手に与えても、自分たちは問題ない。と言う事。それらが、アスナの戦意をぴりっ、と刺激させた様だ。
 レイナに関しては、元々気合は入っていた、と言う事もあるが、この自信をみせられた事や、リュウキに気合を入れてもらった事を相乗させて、更に気合充分な様子だった。

「じゃあ……」
「うん」
「「私達も剣だけで……」」

 この2人も姉妹である事は、周囲の歓声と そして 容姿もよく似ている事から、驚かなかったが、息がぴったりあっている事、何も話し合ってないのに、直ぐに決まった所を見て、絶剣と剣聖は、少し微笑みを見せていた。

「あ、ユウ。まだ決めなくちゃ」
「おーーっとと、そーだったねー」

 お互いが姉妹と言う事もあって、『よっしゃ! 早速だー!』 と気合を空回りさせてしまった絶剣の少女をブレーキさせたのは、剣聖の少女の方だった。

「お姉さん達は、地上戦と空中戦、どっちが好き?」

 それに虚をつかれてしまったアスナとレイナ。まだ得意とは言えない空中戦も覚悟をしていたのだが、リーファの一件もある。

「――どっちでも良いの?」

 代表して訊いたのが、アスナ。
 それを訊くと 2人はニコニコしながら頷いていた。これも……ある意味 一首の駆け引きの類か? と思わず勘ぐってしまうのだが、2人の笑顔にはまるで邪神の欠片さえ、感じられない。無我ゆえの強さ、境地とでもいうのだろうか……? とも思ってしまったが、そんな集中力の類も見えない。

――初見では、どう見ても強さが測れない。

 つまり、リズの言うとおり、打ち合ってみないと判らない。ぶつかってみないと判らない、と言う事だった。

 そして、アスナは一瞬だけ レイナを見て、レイナも頷いた。自分たちが最も得意とする場所が何処なのか、それはよく判っている筈だ。

「「地上戦で」」

 また、寸分違わずに、揃うアスナとレイナ。
 何処か、それが嬉しいのか、或いは面白いのか、2人はまた笑顔を見せて答える。

「ふふ、おっけー! ジャンプあり、だけど翅を使うのは無しね!」
「エリアも、この広場限定にしましょう。空中なら、境界線が難しいですが、地上戦なら、問題ないですね」

 2人ともが了承した様だ。

 其々の種族を象徴した翅を畳む。直ぐに色あせてゆき、完全に2人の背にあった翅、先程までの戦闘で使用していた翅が消え失せた。
 それに、答える様にアスナとレイナも、僅かに現れていた翅を、翅消去のアクション・コマンドを入力し、消した。

 話をしておくと、アスナとレイナの空中戦に関しては、別段問題ないレベルにまで到達している。

 ズブの素人だった彼女たちなのだが、SAO時代ででも、抜群のセンス、仮想世界を動かす為に最も必要とされるイマジネーションやインスピレーション、と言った精神的な強さは太鼓判だ。だからこそ、攻略組のトップクラスになれたんだと言って良い。
 それらの経験が活きているのだろう、補助コントローラーが無くとも飛行可能となる《随意飛行》を初日でほとんどマスターしてしまっていて、今ではアインクラッド実装以前からの、古参プレイヤーたちとも十分すぎる程渡り合っているのだ。

 それでも、『どちらでも良い』とは言わず、《地上戦》を選んだのは、やはりあの2年間の戦いがあったからこそ、と言うまでもない。

 そして、絶剣と剣聖、アスナとレイナ(二つ名は彼女たちに拒否されちゃったので、今ここでは書かない事に……)。

 システムウインドウを手馴れた動きで操作して、デュエル申込みをした。
 勇ましいSEと共に、デュエル申し込みウインドウが出現した。最上段の文字列は――。


【Yuuki and Run is challenging to you all.】


 《ユウキ》そして 《ラン》と読むのだろう。

 4人は其々の剣をだし、構えた。
 まだ、笑顔の崩さない絶剣と剣聖、対照的に集中し、研ぎ澄まさしているアスナとレイナ。集中し、対戦者の名を、改めて確認する。

 絶剣の方の名が《ユウキ》であり、剣聖の方の名が《ラン》である事の確認出来た。

 徐々に緊迫感が辺りに広がってゆく。

 次第に、観客(ギャラリー)にも伝わった様で、あれだけ騒ぐ元い、歓声をあげていたと言うのに、まさに嵐の前の静けさ、となっていた。

 そして、その空気は当然勝負を見守っている者達にも伝わっている。ほとんどのメンバーが息を飲んで見守っていた。

「……どうやら、キリトが負けた、と言うのは 別に慢心でも、油断でもない。ましてや相手が女の子だから、と言う訳でもない、……みたいだな」

 緊迫する空気の中の4人。……否、主に絶剣と剣聖の方を見ていたのはリュウキだ。自分の目で視て(・・)、あの2人の強さを感じ取った様だった。

――……只者ではない。

 一目で強さが判る。伝わるのは、本当に随分と久しぶりの事だった。

「ああ……。アイツ、オレがやったのは絶剣の方だけど……、一言でいえば《異常》だったよ。―――段違いだった」

 視線を4人に向けたまま、一瞬も逸らさない様にしながらキリトは、リュウキの言葉に、そうつぶやいていた。直に接した、戦ったキリトだからこその感想だったのだろう。それを訊いたリュウキは、自然と笑みを浮かべていた。

「……お兄さん、笑ってます」

 そう言ったのはキリトの肩にいたユイ。リュウキが笑みを見せている事に気づいた。その笑みは、その種類(・・)の笑みは何度か見た事があった。

「――そう、か?」
「ああ。……その笑み、随分と久しぶりに見たよ」
 
 そのリュウキの表情は、レイナと一緒にいる時の愛しむ様な表情でなく、キリトや他の仲間達と一緒に、笑っている時の様な表情でもなく――。

 本当に、ワクワクしている。心躍る、と言う表情が全面に出ている満面の笑みだった。目を、輝かせている、と言っていい。それは、年相応の本当に楽しそうな笑顔だった。



――やがて、リュウキの笑みが止むこともなく、進行していたカウントが0になり、デュエルが始まった。

 【DUEL】

 その文字が一瞬の閃光を発すると同時に、アスナとレイナは同時に全力で地を蹴った。
 タッグ戦の場合は、協力し 連携が命とも言えるのだが、基本的にはマンツーマンだ。其々が、ターゲットを決めて、出だしを図る。つまり 挨拶がわりの一発目、と言う訳だ。

 アスナとレイナ側から見て、左側にユウキが、右側にランがいる状況。閃光の様な速度で突進し、アスナがユウキを、レイナがランを手に持ったレイピアで穿とう、と気合を見せていたのだが――。

「「ッ!!」」

 突如、視界から 2人がまるで消えた様な錯覚に見舞われた。

 それは、ランの視界から、レイナが消えたのだ。軌道上では、マンツーマン。レイナがランに向かって突進、攻めていたのだが、突如 左方向へと進むベクトルを代えたのだ。アスナも直線からやや左側に逸れ、丁度 ユウキを左右から挟み込む様に突進した。

 相手は、百戦錬磨と言っていい程の戦績を誇っている。生半可なフェイントの類は見破られるだろう、と睨んでいての選択だった。――だから、小細工なしの全力の速攻で攻める。

 アスナとレイナの2人は、一心同体、と回りは称する程 息があっている。事、戦いに置いては尚更だった。長く共に《血盟騎士団(KoB)》を支え続けてきたからこそ、たどり着ける極地だといえるだろう。

 軈て、ユウキとの距離をほとんど詰めた瞬間、鋭角に軌道を折りレイピアを突き立てた、交差(クロス)させる様に、放つ細剣単発技《リニアー》

 それは、あの世界、SAOで必殺とも呼べる業へと昇華させた物。ALOに来ても研鑽を積み続けてきた必中の業だ。と、説明はしたのだが、実は厳密に言えば違う。無闇矢鱈にソードスキルを放てば、遅延時間が発生し、不利になりえるから、これは通常(デフォルト)技。 

 つまり、リニアーに似せた、ただの単発の突きだ。ソードスキルに比べたら威力は当然ながら落ちるが、速度は決して落ちない。

 それは、どんな屈強な鎧も、どんなモンスターの硬質な鱗や皮膚も貫いてきた獰猛な連携技。

――先手は貰ったっ!

 恐らく2人が同様に思っただろう。
 だが。

「ユウ」

 瞬きすら許されない刹那の瞬間。声が聞こえた気がした。
 そして、その次の瞬間には、渾身の突きが弾かれた。

「「なっ!?」」

 2人の突きが交差した瞬間に、斬り上げをされ、2人の剣が上へ弾かれたのだ。完璧なタイミングでの弾き(パリィ)。驚く所はその正確さではなく――、弾いたのは、狙った《ユウキ》ではなく、《ラン》の方だった、と言う事実だ。

 そして、ランが剣を弾いたその息つく暇もなく、ユウキがランを躱し、レイナを狙う。黒曜石の剣が、レイナの胸部分を切り裂こうとした、が。

「レイっ!!」

 咄嗟にアスナは、レイナの襟首を ぐいっ、と掴みあげると、後方へ向かって投げる。
 レイナも、アスナの筋力(STR)に合わせて、咄嗟に地を蹴っていて、後方宙返りをしつつ、着地。何とか直撃をする事なく、回避する事が出来た。
 ……直撃(クリーンヒット)こそは、されていないが 胸元に斜めラインの薄いダメージエフェクトは出来ている。丁度、掠めた様だった。

 そして、残されたのはアスナ。

 兎に角、距離を取ろうとしたのだが、今度は ユウキの方ではなく、先程攻撃を弾いたランが、自分の懐深くにまで急接近していた。

 その刹那、アスナの頭は急速に回転し、驚愕する。

『一体いつの間に、スイッチをっ!?』

 そう思っても無理はない程の速度、そしてあまりの急接近。
 驚きのあまり、思わず足を取られてしまって、バランスを崩して後方のめりに倒れそうになってしまった。が、それが功を呼び、僅かに攻撃範囲の外だった為、アスナも胸元に僅かな傷を作ったものの、直撃《クリーンヒット》はしておらず、ダメージは最小限度に止めていた。


 この時、アスナとレイナ、そして その2人の腕前を知っているメンバーは全員、元々知っていた者を含めて、改めて思った事だろう。


―――強い、と。


 そんな中で、誰もが息を飲む展開の中で――、手に汗握る一瞬、まさに閃光が瞬く瞬間程の時の中で。



 
 目を輝かせてみている者が約1名――いたのだった。






  
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