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異世界にて、地球兵器で戦えり

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第十八話 イタリカの戦い・その後

イタリカで盗賊討伐からしばらく時間がたった後に、アルヌス野戦基地の司令官である坂本中将がフォルマル伯爵家に到着して自衛隊の第四戦闘団の現場指揮官である健軍と共に、フォルマル伯爵家の面々とイタリカに対する交渉が始まった。

なお、どうして坂本中将がイタリカに来たのも、イタリカに対する扱いで自衛隊とアカツキ帝国軍が意見が合わなかったからであった。坂本中将は、本来なら島田からの報告で帝国の皇族であるピニャ・コ・ラーダがイタリカ防衛の指揮を取っているとの情報が入り、ゾルザルが即位して皇位継承はなくなったが、それでも重要人物であることには変わりはなく、そこで盗賊討伐後は、ピニャを確保して、その後にイタリカも占領しようと提案したのだが、そこで狭間陸将が反対した為に、その案が消えたのだ。

坂本は狭間陸将に対してピニャは帝国の皇族であり、ゾルザルの様な過激な主戦派でもないので、帝国の和議派とも協力してくれるはずだがら、ここでピニャを保護という名目で確保すれば帝国との早期解決が出来ると狭間陸将に対して何度も言ったのが、自衛隊にそこまでの権限がないとされて、イタリカの占領に対して反対の意見を述べたのだ。そこで仕方なく、自衛隊との妥協案を提案して、占領に対する責任はこっちがもつと提案を出したのだ。無論、フォルマル伯爵家の内政権に干渉するつもりはない事も伝えた。それでも不満はあった狭間陸将であったが、現状の帝国の事もあり、またイタリカに盗賊でも来た場合にイタリカの防衛に対する貧弱差が明かであった為に、この提案に渋々しながらも飲む事になった。

占領という事になれば野党もマスコミもうるさいと思うが、下手に民間人にこれ以上の被害が出れば更にうるさくなると判断して、例え占領であっても敵国の人間でも民間人の被害が出ないなら、これで良いと考えたのだ。

1 イタリカ及びフォルマル伯爵領はアカツキ帝国の占領下に置く
2 現当主であるミュイは11歳であり、アカツキ帝国の法律において義務教育を受ける年齢であるため、フォルマル伯爵家の教師とアカツキ帝国より派遣される教師と共に教育を受ける義務がある。
3 イタリカの内政権については、アカツキ帝国の協力のもとフォルマル伯爵家に一任する。
4 自衛隊とアカツキ帝国の後見とするアルヌス共同生活組合は今後フォルマル伯爵領内とイタリカ市内で行う交易において関税、売上、金銭の両替等に負荷される各種の租税一切を免除する。
5 占領下に置かれたフォルマル伯爵領は、アカツキ帝国の法律が適応される。
6 自衛隊及びアカツキ帝国は、フォルマル伯爵領の治安維持に対して協力する。

条約は以下の通りである。

帝国基準で考えれば寛大な処置であることに驚きが隠せないフォルマル伯爵家であった。しかし特に反発する要素もないし、治安維持に関しても現状のフォルマル伯爵家の戦力では激増する盗賊達の対処に対して難しいので、イタリカで見せてくれた武力が自分達を守る為に使ってくれるなら、フォルマル伯爵家からすれば反対する要素もなかった。こうして、無事に条約は反発もなく無事に受け入られフォルマル伯爵領はアカツキ帝国の占領下に入った。

ーーー。

条約締結後に行われたのは、ピニャと坂本中将との会談である。フォルマル伯爵家と違い、帝国皇族であるピニャは、フォルマル伯爵領をアカツキ帝国の占領下に置くことは反対していたが、薔薇騎士団達に自衛隊やアカツキ帝国軍に対抗できるほどの武力は存在していないので、下手に敵対でもすればピニャは薔薇騎士団共にひき肉となる運命しか想像できなく、アカツキ帝国軍や自衛隊からすれば、いつでもピニャを捕らえる事も可能であるためこの条約を飲むことにしたのだ。

条約を結んだ後に会談したいと言われた時は困惑したピニャであったが、坂本中将はアカツキ帝国の高級士官である事を知ると直ぐに会談を了承したのだ。

「つまり、妾が和議派と共に新政権を作れと?」

「ええ、アカツキ帝国の最高指導者でもあります前田閣下は、帝国とは良い関係を築くことを望んでいます。ですが現政権の帝国では、それは難しいと判断しています」

この内容を聞いて、自分が帝国に対して反旗を起こせとも言っている内容に対してピニャは当初は「ふざけるな!」と怒鳴ったが、坂本中将のある言葉により沈静化する事になる。

「ではピニャ殿下。現在のゾルザル皇帝の政権が続いて帝国に未来があると思いますか?」

そのような言葉を返されてピニャも押し黙ってしまう。ピニャ自身も当初は主戦派に近い位置にいたが、アカツキ帝国軍と自衛隊の武力を見て考えは変わった。これまでどうして帝国がアカツキ帝国軍と自衛隊相手に一度の勝利もなく敗北を繰り返した事を、イタリカで起きた盗賊の虐殺劇を自身の目で確認して理解してしまったからだ。

このまま戦争が続けば帝国が滅ぶ事もピニャは理解しており、現政権のゾルザルは徹底抗戦の考えを変えていない。ゾルザルの家臣の中にも和議を唱える家臣はいるが、ゾルザルが効く耳を持っていないので和議の道は険しいと感じてもいる。

「現在、我々は前皇帝の家臣でもあるモルト皇帝の和議派に属しています家臣を援助しています。」

「それは真か?」

「勿論です。そして現在、我々アカツキ帝国は、異世界の国家である日本と近々首脳会議を行う予定です」

それを聞いてピニャは困惑する。つまりアカツキ帝国と日本は、同盟関係にあり、そして帝国領土に対する分配の取り決めを行うものだと勘違いしてしまったのだ。このままゾルザル政権のままでは、帝国領土の利益を二国で支配しようと考えていると判断したピニャは焦りでいっぱいであった。

(妾が二国と交渉しなければ、後は知らないという事か!!)

ピニャはアカツキ帝国が帝国に対する最終通告と判断したのだ。このままズルズルと現政権に対して反旗を起こさなければ後はアカツキ帝国と日本で決めると判断して、ピニャはついに決断を下した。

「妾も会議に出席してもよろしいか?」

こうしてピニャは、アカツキ帝国と日本に対する首脳会議に出席する事を決めた。この情報は直ぐにアカツキ帝国本国にも届き、直ぐに健太郎のもとに伝わった。

ーーー。


「そうか……帝国の皇族がついに交渉の場に来てくれるか」

健太郎はこの報告を聞いて少し微笑む。何しろ和議派に皇族がいてくれれば、新政権樹立に対してスムーズにいくと判断したからだ。実際に帝国にいるモルトの子供で皇位継承権があるのは三人だけであり、ゾルザル、ディアボ、ピニャしか存在しない。その中の一人がついに和議派に属して交渉してくれるのは都合がよかった。

実際にゾルザルは、モルトの意識不明の状況でクーデターに近い形で皇位を継承した実績があり、そして徹底抗戦を主張して現在の帝国の現状を作った責任もある。そのため、アカツキ帝国と日本側に寄りの皇族が現在の帝国に対して反旗を決断すれば、大義名分もこれ以上の者がないからだ。実際に戦争終結後は、ファルマート大陸で商売はしたいが、出来れば領土を得るという事は出来ればしたくないアカツキ帝国からしても新政権が誕生して、ゾルザルが起こした問題を帝国に負担して欲しいと思っているからだ。

「帝国の皇族の対応に対して厳重の注意を払え。分かっているな」

「無論です。アカツキ帝国本国にて保護しました和議派にも伝えるように連絡を入れます」

「頼むぞ。ピニャ殿下と和議派との交渉結果で、帝国に対する扱いが決まるのだからな」


こうして三国による会議が着々と進んでいくのであった。

 
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